窪美澄のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
読書備忘録781号。
★★★★☆。
軽い感じの表紙絵ですが、物語は現代日本が抱える大きな2つの問題を組み合わせている。
でも、決して暗いエンディングではないので読後感は全然良いです。笑
昭和、高度経済成長期に建てられたいわゆる団地。
建物の老朽化と住民の高齢化が進む。
そんな団地に、幼くして父親を亡くし母親は家を突然出ていき、その日その日を必死に生きる棚橋姉妹がいた。
姉の七海は生きるために収入の良いデリヘルで働く。妹のみかげは夜間高校に通い、昼はパン工場で働く。
みかげは、小中といじめに晒され、夜間高校に進学することにしたが、将来に何も希望を持てないでいた。
そんなみかげが夜間高校で初めて友達と呼べる仲間と出会う。在日コリアのむーちゃんと、頭は良いが吃音が激しい倉梯くん。どちらもいじめが原因で夜間高校に通う。
そして、団地ではぜんじろうさんというおじいさんが団地警備員として、高齢者住民の見回りを毎日行い、パンとポカリを手渡していく。そう、じいさんばあさんの生存確認が目的である。生きてるかぁ~!という感じで。
みかげはぜんじろうに誘われて団地警備員に。みかげに感化されたむーちゃんと倉梯くんも団地警備員に参加する。
じいさんばあさんとの係わり、じいさんばあさんの喜ぶ姿、みかげは生まれて初めて目的を持って行動することのやりがいを感じはじめる。
そんなある日。団地の取り壊しと退去の通知がポストに投函される。
そんなひどい話はないと、3人は取り壊し反対署名活動をやりながら、老人たちの引っ越し先を探し手引きしていく・・・。
そしてぜんじろうさんの明かされる過去・・・。
待ったなしの高齢独居老人問題。
住民の高齢化に伴い修繕が進まない集合住宅問題。
そして、少子になっているにも関わらず増える一方のいじめ問題。
そんな暗い暗い問題にも明るい将来は描ける!
死亡時刻と誕生日。
死と再生。
3人の高校生が明るい将来を思い描いて成長していって欲しいです。
★5つにしたかったですが、姉の七海が気に入らななかった。ぜんじろうさんに散々お世話になっておきながらお礼のひとつもない。最初は怪しいじじいだったかも知れないが、まちがなく善人。それが分かったら謝罪とお礼を言うべき。いくら妹を守ることにすべてを捧げていたとしてもである!
あとみかげ。高1のくせに一般常識を知らなさすぎ。こんな奴はいないやろ。
この2点で個人的に★0.5マイナスになってしまった。
でも傑作間違いなしでした! -
Posted by ブクログ
「最悪よりは平凡」島本理生
顔は平凡だけど体がグラビアアイドルなみの魔美は、こんな名前をつける親に育てられたという心の傷と、しょっちゅう男性から誘いをかけられる体質。彼女にとっての幸せな恋愛は?
「深夜のスパチュラ」綿矢りさ
大学生の可那は気になっている男の子に手作りチョコ前日に思いつきあげようとするけど、料理スキルなく、買い物から四苦八苦。オチ秀逸だった。
「フェイクファー」波木銅
主に着ぐるみ作る手芸サークルに入っていた男子の回想。仲間が一人死んだという連絡入る。
「カーマンライン」一穂ミチ
私が五歳の時、母は父と死に別れたアメリカから日本に戻ってきた。双子のケントをアメリカの、父の実家に残して。もちろん、その後は疎遠。大学生になり、ケントが母を訪ねてくる。
「道具屋筋の旅立ち」遠田潤子
優美は短大を出たばかりの、綺麗な細い女性。でも、母親は優美と父に異常にご飯を食べさせる人で、高校始めまで太っていた。そんな優美が付き合っている誠が大学で大食い大会やるという。
「無事に、行きなさい」桜木紫乃
シェフの男と、インテリアデザイナーのミワと新しくオープンしたビストロに来てくれた出来るアルバイト、大人の関係。
「海鳴り遠くに」窪美澄
夫を亡くして千葉の片田舎に持っていた別荘に引きこもった女性が、隣家に絵を描きに来た女性画家と親交深めながら結婚していたときの心の傷と向き合い、新しい恋を始めていく。
最悪より平凡!丁度、久しぶりに(流石に年をとった)飲み屋で知り合っただけのおじさんから奢られ、誘われるという体験をした直後だっただけに、あー、こういう目に合う女性って一定数いるんだろうなー、と共感深く読んだ。断れないとか、怒られないとか、オーラで分かるんだろうな、きっと。 -
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ううん…すごく考えさせられた…
視点が変わると事件の見方がこんなに変わる、
登場人物すべてに共感できてしまって、なんだかつらくなった…
実際に起きた少年Aの事件を題材にしているけれど、犯人像はかなり違う印象。
この本だとAにも辛い過去があって、魔が差した、みたいに読めて
同情してしまったし、更生して欲しいと思った。
だけど本当の事件を調べると全くそんなことを思わなくて。
この小説を被害者家族が読んだら、Aが美化されてて辛いだろう
犯人に対して「仕方がなかったんだな」と感じてしまう描き方は、
関係者にとってはあまりにも残酷ではないだろうか
本を読んだ感想だと
皆、しっかり生き抜いてほしいと
他人ながら悲しく願った
家庭環境って大きい
「違う環境だったらこんな事件を起こさなかったか」
と考えると分からないけど、もっと違う選択をできていたと思う
重いなぁ
特に最後。なっちゃん…
題材があるからこそ、小説の心情が重く感じる -
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短編もいいけど、長編はやはり読み応えがあっていい。
52歳、専業主婦の絵里子、まじめで寡黙な夫が風俗にポイントカードがいっぱいになるほど通ってるって知ってしまって…。
リアルなのよ、悩みがすごく、一人娘の萌もなんだかすごい年上の彼と会っていて警察から電話がかかってきたり。
そうそう、もし自分の夫がそうだったらって考えたら絵里子の悩みも葛藤もすごくよくわかる。
あのカクテルを飲むショット・バーみたいなお店で出会った頃のサカイさんとはあまりに違くて時を経てこんなに変わるものなのかとちょっと納得いかなかった。(ラストの方ではちょっと昔の片鱗はあったけど)
ホームセンターのパートも辞めて、ひとり旅のあと高校時代の親友の詩織の(高級ランジェリーの店長)空いてる倉庫、マンションの一室に住まわせてもううのもラッキーだし、どんどん自分らしく生きることに決めてメキメキ綺麗にセンスよくなっていくのもわかるけど、詩織の2店舗めの店長を任せてもらうことにもなるなんて、あまりにも幸運すぎて(詩織さまさまだよね)少し興ざめしてしまったけど、
ラストは夫とヨリを戻すかどうかは別としていい関係を築いていけそうな余韻を残して、やはり著者の小説は人生讃歌のいい後味を残して読み終わった。
あと風俗の子を風の子、
水商売の子を水の子と呼ぶのが面白いなと思った次第。 -
Posted by ブクログ
50歳をすぎると人生の残りを考えることが増えた。いわゆる定年という仕事の終わりが見えてくるのも大きい。そして比喩的な意味ではなく本当に体にガタが来始めることも影響している。今の生活がいつまで続けられるのだろうかと考えてしまうのだ。
それは男としての機能についての不安も含まれる。自分はいつまで性的な男でいられるのだろうと。女性はどんな思いを抱くのだろうと想像することもある。この本はその一つの答えと言えるかもしれない。
夫の風俗通いがわかりショックを受ける主人公の絵里子。彼女の感じた嫌悪、寂しさを男である自分は完全に理解することはできないかもしれない。でも、求められない悲しさやいずれ訪れる死との向き合い方は共感できる。様々な人とのつながりの中で前を向こうとする姿は気持ちよかった。こんな中年小説もいい。
最後に。「白髪を通して、女同士は多くのことを語る」という書き出しの解説(島本理生さんによるもの)がまたよかった。 -
Posted by ブクログ
書店に平積みされていて帯も作者も見ずに手に取った。完全にタイトル買い。なんといっても雨が好きで雨とタイトルにつ本はとりあえず手に取るし曲も聴いてみる。
雨が好きだという認識を持ったきっかけになった本が、「雨の名前」という写真集だった。
この短編集のなかにその本が出てきたのは創作だろうか、それとも作者もひょっとしてその写真集を見たのだろうか。
とにかくその本(のタイトル)が出てきた場面ではほくそ笑んでしまった。冒頭のちょっと刺激的な描写に最初は引いたけれど。
窪美澄さんは初めてだけど、そうか、「女による女のためのR-18文学賞」受賞作家なのか。ちょっと納得。
きっとワタシと同世代の女性に違いない、だって「記録的短時間大雨情報」のスーパーでパートで働く主婦の、若い男の子寄せる思いや「あたたかい雨の降水過程」でのママ友との会話などリアルすぎる。ときおり切ない、というか、こころに刺さる、というか、自分のことを責められているようで目をそむけたくなる、というような感情に襲われる。文庫本の裏表紙にあった「心を穿つ短編集」。「穿つ」ってなんとなく意味もわからず使っていたような気がして改めて辞書をひいてみたら、「人情の機微に巧みに触れる、物事の本質をうまく的確に言い表す」とあった。ああ、それだ、そのとおりだ。
短編集は久しぶりに読んだ気がするけれど、とても、よかった。
ただ、「ゆきひら」はつらかった。いじめや虐待の描写はただただ胸が苦しい。 -
Posted by ブクログ
5人の作家による恋愛アンソロジー
奥田英朗 「あなたが大好き」
窪美澄 「銀紙色のアンタレス」
荻原浩 「アポロ11号はまだ空を飛んでいるか」
原田マハ 「ドライビング・ミス・アンジー」
中江有里 「シャンプー」
の5編が収録されています。
窪美澄さんの作品を楽しみにしていましたが2016/10/17に刊行された「すみなれたからだで」に収録されていた物で少し残念でしたが、それでも再び読み返したらやっぱり好きだなと感じました。
16歳の男女のすれ違う繊細な恋心にドキドキしたり、おばあちゃんの家や海、龍宮窟の風景が脳内映像に浮かんで来たり、おばあちゃんの作るおにぎりが食べたくなったり、終始無駄のない文章で引き込まれました。
荻原浩さんの作品も素敵でした。
中学校の同級生だった二人が夫婦になり、けれど妻は今病室のベッドの上にいます。
短編でありながら二人の歴史が凝縮されていて温かく、そしてとても切なかったです。
いつまでも余韻が残ります。
大好きな奥田さんの作品は今回も期待通りで、本作も女性心理の細やかさが随所に表現されていて主人公の彩子の気持ちに最初から最後まで共感しながら楽しめました。
文章もリズミカルで温かく優しさもあって大好きな作品です。