窪美澄のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
2030年代の日本が舞台だが、その頃の若者は他者との繋がりも希薄化し、結婚はおろか、恋すら遠い存在になってしまっていた。
そこに国が設立したお見合いシステム「アカガミ」に参加することになったミツキは、国に管理された生活の中、出逢った相手サツキと国が推奨する「まぐわい」の末に子を成すのだが、、、。
読んでいて、どうにも胡散臭さがいっぱいなのに、それに気がつけない(疑問に思わない)若者たち。
生きることにも未来にも、あまり意思や欲求が感じられない、言われることにも受け入れるばかりの子たちが、子供を持ち、恋をしり、だんだん私の知っている「人らしさ」を持ち出すのだが、そこで徐々に今の手厚い生活に疑問 -
-
Posted by ブクログ
ネタバレ読み進めるのが苦しかった。
桐乃もヒュウも、その境遇の中で生きていこうとする姿が痛々しくて…。
でも中学生だから自分の人生を受け入れて生きていくしかない。
ヒュウがだんだん悪い方へ引きずられていってしまうのとか、もうどうしようもないなと側から見てて感じた。
何かしてあげられたか?と言われると、もうそうなるしかなかったのかな、なんて。
私自身はまだ外国人が身近じゃない世代、場所で育って、周りは日本人だらけが当たり前だった。
桐乃みたいに、当たり前に周りに外国人がいて、言葉も通じない中一緒に学校生活を送って…ってこれから増えていくのかな。
環境を選べない子供達が、辛い思いをすることがないといいな -
Posted by ブクログ
ネタバレ主人公の桐乃と、同級生のベトナムルーツ日本生まれで日本語が苦手な少年ヒュウと、桐乃の母親の里穂の3人の主観から紡がれてゆく物語。
在日外国人の問題はもちろんですが、個人的には母子の問題として読みました。
里穂、ヒュウの母親、どちらも子供からしたらきついです。
夫に捨てられたシングルマザーのヒュウの母親が、日本で朝から晩まで働いて子供に目を向ける余裕がないのは、現状から見たらやむを得ない部分はあるのかなと思いました。でもあと数歩で完全なネグレクト。
対して桐乃の母の里穂は自分から、視界の中央に困っている外国ルーツの人達を置いて、やりすぎるお世話・お節介をするイネイブラーに見えます。
グエン -
Posted by ブクログ
ちょっぴり切ない5話からなる短編集。
ただ生きているだけで、思いもよらない哀しみがやってくる。
・真夜中のアボカド
ーーー婚活アプリで恋人を探す。
フリーでプログラマーをしているという麻生さんは、妙に女慣れしていなくて、前に出会った人みたいに食事の後すぐに、ホテルに行こうとも言わなかった。
・銀紙色のアンタレス
ーーー 16歳の夏。僕は田舎のばあちゃんちで、泣いてるような顔で赤ちゃんを抱えたあの人に出会う。
幼馴染の朝日は言う「水着着たわたし、かわいかった?」
ーーー真珠星スピカ
酷いイジメにあっている私は、今日も保健室にいる。
亡くなった人は話すことができないのだと知ったのは、死んだ母 -
Posted by ブクログ
東京の、とある喫茶店とメンタルクリニック」。
「純喫茶・純」は、昭和のレトロな雰囲気が漂う喫茶店。
「椎木メンタルクリニック」は、医師の旬さんとカウンセラーのさおりさんが夫婦で開業している一軒家の病院だ。
様々な心の不調を抱える人々が、訪れる「純喫茶・純」と「椎木メンタルクリニック」で癒されていく連作短編集。
全体を通して登場人物たちが精神の不調から回復していく物語で、しんどい描写はあるものの硬くなった心が少しずつほぐされるような、優しい読み心地で良かった。
読んでいて改めて、居場所や頼れる人がいること、そしてそれが複数あることが心の安定や回復には大切なのかもしれないと感じられた。
しかし今 -
Posted by ブクログ
ネタバレ大人から見たら何とでもなるような事が子供の世界ではとても困難なことに思えたり、未熟な子供ながらにたくさんのことを考えていたり。
大人同士でも分かり合えないことだらけで上手くいかないこともたくさんあるけど、相手を理解しようと考えたり、他の選択肢を選んだり出来る。
小さな世界観で生きてる人は大人でもとても窮屈で退屈。
他者を変えることはできないから、自分が納得できる範囲で自分を変えたり選択していかなくちゃいけない。ってわかっててもちょっかい出してくる人はどこにでもいて面倒。
私が日本で接するコンビニの店員の外国の人たちは皆んな笑顔で優しくて本に出てくるような苦労は微塵も感じないけれど、たくさ -
Posted by ブクログ
中学2年の春から夏、期間にすればほんの数ヶ月。
外国の人も多く暮らす団地に住む、同じクラスの桐乃とヒュウを軸に物語は進む。
私が子供の頃よりは、外国にルーツをもつ人を町で見かける事も増えたけど、自分の生活にがっつり関わっているかといえば、地域差が大きいように思う。
そこに住んでいない、当事者ではない私が、ヒュウや桐乃の気持ちを分かったつもりになるのは失礼かもな、って思いを持ちながら読み進めた。
桐乃の母は手助けがライフワークになっていて、桐乃はそこに納得できないし、ヒュウの母は毎日の生活に必死でヒュウに向き合う時間も寄り添う気持ちも作り出せない。
ヒュウや桐乃の気持ちも分かるけど、母親の気持ち -
Posted by ブクログ
ネタバレ窪美澄さんの作品に出てくる登場人物が好きなので読み始めた。
海は、繊細かと思いきや、幼少期のことがあり、さっぱりした性格。
忍と恋に落ちる過程はこの2人が惹かれ合うの?ってびっくりしてしまった。
緑亮さんは結局、海を捨てたけど、幼少期の海を受け入れ、肯定し続けた点は良い親だと思う。
そして、みさこさんは素敵な人。
海だけでなく、忍や璃子のことも大切にしてくれる素敵な人。
みさこさんのセリフが心に残った。
「海と緑亮さんと家族だった毎日は奇跡みたいな瞬間の連続だった。」
家族って当たり前にあるものじゃないんだなぁと。
みさこさんは自分にとって何が大切か、何が幸せか、ちゃんと理解できている人なの -
Posted by ブクログ
「はたらけど はたらけど猶 わが生活(くらし) 楽にならざり ぢつと手を見る」
という石川啄木の短歌は教科書にも出てくるくらい有名な国民的短歌らしい。(知らなった。)
この小説は恋愛小説だが、主人公の日奈と海斗は介護士の仕事をしており、この石川啄木の歌は二人の生活をまさに言い表している。恋愛だけでない色んなことを伝えてくれる小説だと思う。
狡くて滑稽だけど、優しくて愛らしい、すごく矛盾した、一筋縄ではいかない人間の姿が書かれている。恋愛の胸キュンというよりも、日々の暮らしと労働をメインに、誰かに支えてもらわないと生きていけない矛盾だらけの男女の様子を描いている。
海斗の日奈への一途な想い