【感想・ネタバレ】給水塔から見た虹はのレビュー

あらすじ

あなたと私は違う。だから、一緒にいよう――。
『ふがいない僕は空を見た』『夜に星を放つ』の著者が、今を生きる人々に贈る感動作。

【各界からの反響続々!】
なんて誠実な小説なのだろう。今、この時代に、この本と出会えてよかった。――武田綾乃(作家)

白か黒かでしか断じない、この時代に絶対に有効な“あわい”の物語。――早見和真(作家)

何度も胸が潰されそうに痛かった。彼らの日々に、どうか幾重にも虹がかかりますように。――町田そのこ(作家)

その人の涙のわけを知らない。分からない。けど私たちは何かを思うことが出来るから見つめながら目を逸らさずに、あなたの話を聞きたい。――山本奈衣瑠(俳優)

【あらすじ】
中学二年生の桐乃は、団地での暮らしに憂いていた。
郊外にある古い団地群には、様々な国にルーツを持つ人が生活している。そのせいか桐乃のクラスは衝突が絶えず、ベトナム人のクラスメイト・ヒュウがいじめの標的になっていたのだ。
家に帰っても、母の里穂は団地に住む人々を国籍問わず日夜助けており、「娘の私より、他人を優先するんだ」という思いがどうしても消えない。この場所で生活することに対する桐乃の嫌悪感は、日々強まっていく。
そんな中、中学校で起きたとある出来事をきっかけに、桐乃はヒュウと話すようになる。ヒュウは、理由は違えども、桐乃と全く同じことを望んでいた。
「この団地から出て、遠くに行きたい」と。

はじめてできた友達、母とのすれ違い――。
桐乃・ヒュウ・里穂のそれぞれの視点から、社会に蔓延る様々な分断に翻弄される2人の“こども”が少しずつ“おとな”になるひと夏を描いた、ほろ苦くも大きな感動を呼ぶ、ある青春の逃避行。

【著者略歴】
窪 美澄(くぼ・みすみ)
1965年東京都生まれ。2009年「ミクマリ」で女による女のためのR-18文学賞大賞を受賞。受賞作を収録した『ふがいない僕は空を見た』が、本の雑誌が選ぶ2010年度ベスト10第1位、2011年本屋大賞第2位に選ばれる。また、同年に同作で山本周五郎賞を受賞。12年『晴天の迷いクジラ』で山田風太郎賞を受賞、19年『トリニティ』で織田作之助賞、22年『夜に星を放つ』で直木賞を受賞。他の著書に『夏日狂想』『タイム・オブ・デス、デート・オブ・バース』『夜空に浮かぶ欠けた月たち』『ルミネッセンス』『ぼくは青くて透明で』などがある。

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Posted by ブクログ

強烈な孤独に抗うのは難しい。移民の子どもの孤独だけでなく、それに寄り添う日本人の孤独も描き、最底辺から上を見上げる子どもたちの物語が胸を痛くする。とても胸が痛い。

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2025年11月01日

Posted by ブクログ

秋の夜長にじっくりと読むのにぴったりの一冊。
物語の世界に引き込まれ、日本で暮らす外国の人々の現実にも深く考えさせられた。

親子のすれ違い、学校や家庭での孤独、ベトナム難民としての家族の歴史、2世・3世の苦悩、技能実習生たちの葛藤。
社会のさまざまな問題が描かれているのに、物語は美事に調和していた

主人公は、ベトナム難民の三世で団地に暮らす中学2年生のヒュウ。
同じ団地に住む同級生の桐乃、そして困っている外国人を放っておけない桐乃の母・里穂。
3人の視点で物語は進み、それぞれの心の揺れやすれ違いが描かれる。
里穂の行動はもどかしかったし、ヒュウと桐乃の友情には胸が熱くなった。

多くのことを感じたけれど、特に印象に残ったのは、
同じベトナムにルーツを持つ人々でも、難民として来日した家族と、技能実習制度で来た人々とでは、目的も経緯も立場もまったく違うということ。
“ボートピープル”という言葉をあまり知らなかったので読後に調べ、
ベトナム戦争後、命がけで逃げてきたベトナム、ラオス、カンボジアの人々を、
日本が1978年から約25年間で約1万1千人受け入れていたことを知った。

また、難民として来た家族とその2世、3世が、それぞれ違った悩みや葛藤を抱えていることにも気づかされた。

いま日本で働き暮らす外国の人は増えているけれど、本書を通してその背景や思いの違いを知り、多様な人々と共に生きる日本の社会を考えさせられる作品でした。

この本は「みん読・秋の部」で、いるかさんが選んでくれました。
いっちゃん、ありがとうございます!

仕事に追われる毎日だけれど、この本を読んで、久しぶりに感動して、考えて、調べてって充実した時間を過ごしました。
もし読まなければ、自分の身近な環境のことを深く考えることもなかったと思う。
読み応えありましたっ!
本当に、貴重な読書の時間をありがとう(^^)

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2025年10月19日

Posted by ブクログ

昭和に建てられた巨大な団地群の一室に両親と住む桐乃・中学2年生
同じ団地に母と二人で住む同級生のベトナム人・ヒュウ
困っている外国人を放っておけず支援に奔走する桐乃の母・里穂

三人の視点で描かれる ひと夏の成長物語



この団地にはベトナムの他、中国、カンボジア、フィリピン、ブラジル…
様々な国出身の人々が暮らしている。

この団地ほどではないが、私の周りも急激に外国人が増えたなと感じる。


難民三世のヒュウは学校でも家でも居場所がなく、自分の存在意義を見失っている。

──多少は色がついた存在だった自分が、今ではまるでいないかのように透明だ。──

──日本人でない自分が、なぜ日本という国にいるのかわからない。──


〝自分は透明〟
以前読んだ窪美澄さんの「ぼくは青くて透明で」を思い出した。
窪さんは少年少女のヒリヒリする心情を描くのが抜群に上手いと思う。


夏休み、ヒュウは父親を探すために家を出る。
孤独と閉塞感に苦しむ桐乃もヒュウを追いかける。

──桐乃は駅まで続く道を駆け出した。振り返ると、団地が段々小さくなる。ふわっと心が軽くなる。そんな開放感を桐乃は今まで一度も味わったことがなかった。──

真夏の冒険!
ではあるが、逃避行なのでワクワクした展開にはならない。
その中で二人は、日本で暮らすベトナム人たちの苦しい実情を知る…


桐乃の母は仕事以外の時間を外国人のサポートに費やし、頭の中もその事で一杯だ。
いつでも娘より外国人を優先している。
桐乃が寂しい思いをしていることに気付かない。
学校にも家にも居場所のない桐乃…

どうして自分の娘をちゃんと見ないの?
正直この母の行動は私には理解出来ない。
どんな理由があろうと、子供が最優先でしょ?

そんなモヤモヤを感じながらも、桐乃とヒュウから目が離せなくて…
夢中で読み進めた一冊。


この国で暮らす外国人たちの言語の壁、教育体制の不備、貧困、技能実習制度の闇など様々な問題に触れている本書を読んで、私自身全く理解が追いついてないなと感じた。
性急に外国人を受け入れているこの国に対してあれこれ言う前に、もっと知らなければと思った。





この本は
いるかさん・地球っこさん・松子さんとの
秋の〝みんどく〟
今回の選書はいるかさんです
今、読むべき一冊でしたね
素敵な本と出会えました
ありがとうございます(•ᵕᴗᵕ•)⁾⁾

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2025年10月19日

Posted by ブクログ

すごくリアルで心が抉られた…
窪先生はいつもきれいごとばかりじゃなくて、ちゃんとリアルを伝えてくれる。それはとても辛くて虚しくて儚くて…でも最後には少しだけど喜びがある。その喜びを自分のなかで消化し、現実世界を生きていく糧にして私は生きている。
今回窪先生が見せてくれた世界は、自分には背負いきれず消化までに時間がかかるかもしれないが、必ずこの物語の登場人物たちみたいに、自分なりの答えを見つけていきたいと思う。

主人公桐乃は団地で暮らす中学2年生。彼女の学校や団地には、外国にルーツを持つ人がたくさんおり、言語や価値観が全く通じないのが当たり前の世界。そんな彼女は日々の生活にうんざりし、団地を出ていきたいと強く願っていた。その彼女の考えを植え付けた要因が彼女の母里穂である。里穂は自身の学生時代の後悔から、外国人を異常なほどに献身的にサポートしている。家に読んで日本語を教えたり、生活のサポートをしすぎるあまり、桐乃のことを疎かにしてしまうことも多々あった。
そんな桐乃の日々を大きく変えたのがヒュウとの出会いだった。ヒュウは日本生まれのベトナム人の母を持ち、日本語を上手く話すことができない。それが原因でクラスから浮いてしまい、桐乃が彼を助けたり一緒にバスケをすることから、2人はお互いに日々の生活の苦労を吐露し、支え合う仲に…
ある日ヒュウは父かもしれないという人の写真を入手し、自分の生活を変えるため父らしき人に会いに行くことに。しかしそこにいたのは、元技能実習生のベトナム人たちであり、その父らしき人も別人で悲しみを隠せないヒュウ。挙句の果てに彼は財布を失い、それを聞いた桐乃も母を困らせたい一心で、団地を出てヒュウを迎えにいくことに…そこで桐乃が見たものは、必死に生きるベトナム人たちと、自分と真正面から向き合い労わってくれ国も言語も必要としない人たちとの優しい時間だった。また彼らが警察に捕まってしまい、その後もヒュウのおじいちゃんの家に向かうなど逃避行を続けるなかで、桐乃は自分を見つめ直し、「ルーツが異なっていても相手を知りたい」「共生」という純粋で強い想いだった。

桐乃やヒュウの選んだ道は決して簡単なものでないが、いつも悔しく見上げていた給水塔じゃなくて、虹がかかった給水塔を笑って見上げられる日が来るといいな。

380

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2025年12月08日

Posted by ブクログ

「僕の人生は僕だけのものだ。誰のものでもない。それがどんな人生でも僕はじぶんの人生を愛し,生きる」最後のページで、ヒュウが言った。強い決意だ。みんなが皆、いろんな人生。お互いに助け合い、支え合い生きていけたらいいのに。人種や性別,そんなあれこれに関わらず。桐乃、これからも頑張れ。

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2025年12月05日

Posted by ブクログ

母親がボランティアに精力的すぎて子どもが疲弊するというのは、時々聞く話。私が小学校の頃も外国にルーツのある子はいたけれど、今の時代はまたフェースが違うのかな、という質感。

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2025年11月15日

Posted by ブクログ

排外的な人を見ると、どうしようもなく嫌な気持ちになる。
舞台は外国人が多く住む団地で、所謂移民問題を窪美澄さんが住民目線で描いている。
移民2世や3世や技能実習生や不法滞在者の苦しみであったり、国籍やルーツによるイジメや偏見、さらには親子関係や友達関係も描かれている。
読んでいて胸が痛くなった。
切にしなくてはならない当たり前の感覚。
価値観の違いでは済まされない人間としての倫理や道徳心の話。
個人的に何の為に読書を続けるかという理由の1つに、想像力を広げてやさしい人間になりたいというのがあるのだけれど、自分が考えてこなかったことや知らなかった世界を知る事や考えるキッカケを作ってくれた。
窪美澄さんの本を読むのは2冊目だったのだけれど、人の内面的な揺らぎとか矛盾をとても丁寧に掬い取ってるなぁというのと、瑞々しい感情の描写や言語化が上手だなぁという印象です。
窪美澄さんのインタビューにこうありました。
「社会の中で見えにくい人を可視化するというのは、小説の大きな役割の一つではないでしょうか。その人たちと、現実で深く通い合うということにならなくても全然いいと思うんですよ。ただ、この社会にいる彼らを透明にしない目の力が、私にも今の日本にいる人たちにも求められているのかなと思うんです。」
また意識して窪美澄さんの本を読んでみたいと思いました。

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2025年11月09日

Posted by ブクログ

外国から日本に来て、在留期限が切れて不法滞在の対象になる。
難民申請を出しても受理されず強制送還の対象になりつつ仮放免の状態。
ただその子供は教育を受けるために学校へは通学できる。
そんな状態のスリランカの母子を支えるボランティア(といってもスリランカのランチを食べて話を聞くだけだけど、、)に参加している。
その子供がつい最近大学に合格。
奨学金も受け取れることになった。
ただ経済的にはかなり厳しい。
少しでも役に立てれれば。

人にはいろいろな事情がある。
でも人にはそれが簡単には理解できない。
特に子供は残酷。
自分には理解ができないけれど、それを認める。
それはとても大切なことだと思うけれど、そう思えるようになったのはつい最近のこと。
本を読むようになって、それを理解できるようになったと思う。

この本には多くの問題提起があった。
つらい部分もあったけれど、ただの小説だと思わずに受け入れたいと思った。

小説だけではなく、芸術作品でもタイトルがすべてを語っているように思う。
では、この小説の「給水塔から見た虹は」の虹とは?
なかなか答えはわからないけれど、やっぱりそこが鍵?

この本は地球っこさん、松子さん、aoi-soraさんとの読書会「みん読」で、私が選書したもの。
最初読んでいて、つらい場面が多く、これを選んでよかったのか?すごく不安だった。
でも、読み終えてみると、これもありかな?と思えるようになりました。
今回もとても楽しい読書になりました。
また、次回を楽しみにしています。
ありがとうございました。

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2025年11月02日

Posted by ブクログ

見てみぬふりをしてきた題材。日本にはいろんな事情を抱えて住んでいる人がいるんだよなぁ。善人ぶることはできないけど、いるという事実は受け止めたい。

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2025年10月29日

Posted by ブクログ

古い団地に暮らす中学2年生の桐乃。
桐乃のクラスメイトで同じ団地に住むベトナム人のヒュウ。
桐乃の母親で、外国人のために活動する里穂。

この3人で話は進む。
最近なにかと話題の外国人問題。文化の違いや技能実習生や不法滞在の問題など、それぞれの視点から見ると、それぞれいろんな事情があるよねって。

ワタシ的には、外国人問題の話・・・というよりも母娘の関係についての方に意識が行ってしまう。ワタシも中学生の娘がいるのでね。
娘さん辛いよね、可愛そうすぎる。
最後は、なんだか母娘が分かりあった感じではあるけれど、でも娘が母親を理解して母親側に寄って行った感じで。母親自身は変わってないなって。
母親がこうなった理由もイマイチ、それだけって感じ。もっとトラウマ級のものすごい出来事があったのかと思ったよ。
とにかく、ワタシは娘ファーストで暮らしていく!と決意新たにした本でした。

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2025年10月21日

Posted by ブクログ

『小説すばる』2024.3〜2025.1に大幅に加筆・修正

とても丁寧に紡がれた物語。各々の登場人物の内面が、丁寧に描かれていると感じた。

昨今、在留外国人が大きな問題になっており、政治の世界でもそれが大きな影響力を持っている。外国人が起こす犯罪は怖いと思う反面、この小説のような外国人たちの実態を知ると、彼らだけの責任でもない事例もあるのかなと思ってしまう。

この小説は、在留ベトナム人の少年ヒュウと、母親が外国人ばかりに寄り添っている桐乃の物語。ヒュウやヒュウの母親のように、二世、三世であっても、読み書きがままならず、それが原因でいじめられる人もいることを知った。

ただ、最後が、どう進むのか知りたい気持ちがあった。

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2025年10月22日

Posted by ブクログ

ぜひティーンズに読んでほしい本。
日本にも多様なルーツをもつ人が住んでいて、それぞれの暮らしがあり、様々な思いを抱えながら生きている。桐乃のように、そんな環境のなかで生きづらさを感じながら過ごしている日本人もいる。
桐乃とヒュウの行動は、親目線でみると胸がヒリヒリと痛むことばかり。それでもきっとこれから2人が生きていくうえで、必要なことだったんだと思う。
自分の人生は、自分だけのもの。2人の未来が明るくありますようにと願わずにはいられなかった。

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2025年10月15日

Posted by ブクログ

日本で暮らす外国人の生活を助けるボランティアにのめりこむ母と暮らす中学生の桐乃と、日本で生まれたけど馴染めないベトナム人の中学生ヒュウがいじめ、犯罪、不法滞在などがうごめく社会の隙間に落ちそうになりながら過ごした夏を描いた作品。ヒュウの祖父が戦争がない場所で過ごせているだけで幸せだろうとか、桐乃の母親が苦労している外国人と比較して自分の子供は幸せな方だ、と考えることはわかる。ただ、そうであっても苦しいと訴える二人も理解できる。手を差し伸べる桐乃の母親のような人がいるからこそまわっていく社会なのかなと思った。

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2025年10月15日

Posted by ブクログ

中学生の桐乃とヒュウが愛おしくてたまらない。
古い団地に住むふたり。
桐乃のお母さんはスーパーでパートしながら夜は自宅で外国人(主にベトナム人、ブラジル人、フィリピン人)に日本語を教えたり困ってることの相談を受けたり病院に付き添ったり(もちろん無償で)ほんとに素晴らしい人格者だと思う。
でも、どうしても家庭にことはおざなりになり桐乃にいつも留守番させてひとりでレンチンしたご飯を食べさせ寂しい思いをさせてる。
優しいお父さんは桐乃にとって救いの存在だけど仕事であまり家にいない。
桐乃は頭も良くてバスケも得意で正義感もある。
けど意地悪なケヴィンと喧嘩したことがきっかけでクラスでも浮いた存在に。学校でもひとり、家でもひとり。
ヒュウはもっと悲惨、小さい時に両親は離婚し母親は(ヒュウより日本語が話せない)仕事を掛け持ちし朝から晩までいない。
家は埃っぽく散らかり放題、いつもお腹を空かせてる。
給食代も払ってないからお昼は教室から出ていって食べないようにしている。
そこらへんが変に生真面目なんだよ、給食が唯一の食事なんだからお腹いっぱい食べなよと思うけど。
ベトナム人ってことで(コミュニケーションがとれないってこともあるんだろうけど)皆にバカにされ、臭い、ベトナムに帰れと言われ友だちはいない。
こんなふたりが棟は違うけど同じ団地に住んで少しづつ話すようになって、父親だと勘違いした男性の住む高い煙突のある町にありったけの貯めたお金を持って行く。
王様はいなかったけど、優しい元技能実習生たちともふれ合いがここにきて良かったと思わせる、あとから桐乃も合流して束の間の楽しい夏休みが訪れる。
その後のヒュウのおじいさんの家まで行って二人で海を見たことも一生、忘れなれない夏の体験になったと思う。
ヒュウが抱えていた悩み、寂しさから団地の公園に集まって騒いでいたティエンをリーダーとするグループに初めて自分の居場所を見つけて仲間になり悪事に手を染めてしまったことを誰が責められようか。
桐乃にすべてを話してから警察に話しにいこうと覚悟を決める。
ナイフでティエンの腕を傷つけてしまったそのティエンが現れて殴ら続けられながら見た給水塔にかかる虹。
それらすべてをなんなら桐乃の母親の里穂がベトナム人の友だちタオの気持ちを考えてあげられなかったことの後悔をも
その時代を含めてずっとそこにある給水塔。
桐乃とヒュウの未来に希望あれと祈らずにいられない。

この小説はただのフィクションではなく、外国にルーツを持つ子どもたちの置かれた過酷な状況や日本にくれば稼げると思ってやってきた技能実習生たちのひどい環境の中で低賃金で働かされる現状に言及していて、なんとなく知ってはいたけど、より切実に胸に迫ってきた。

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2025年10月14日

Posted by ブクログ

日本に住む外国の方達の価値観が大きく変わる必要な小説

日本でもあちらこちに外国の方を見受けられます。
少し怖い部分も感じていましたが、相手側の都合もこちらの都合のいいように解釈していました。

学ぶ場でも外国人の方がいる。いろいろな文化で噛み合わない部分もあるし、
私たちはもっと外国人の方の立場を考えて接する必要があるのではとも感じました。

価値観が大きく変わる今の時代には必要な小説だと感じました。

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2025年10月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

わたし自身、“ガイジン”の立場を経験したことがあるので、共感できる部分はたくさんあった。言葉がわからないと目の前で悪口言われてても理解できないし、むしろニコニコとかしちゃって、後から意味を知って落ち込むってことがあったなぁ……。

それはさておき、桐乃ちゃんのお母さん酷すぎるよ。あんなに何度も何度も裏切られてちゃ、そりゃ子どもも心を閉ざすよな……。すったもんだあって最後は母子の関係が丸く収まった風に見えて、結局桐乃ちゃんが諦めた感じだったのも切なかった。

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2025年10月05日

Posted by ブクログ

桐乃とヒュウ
同じ団地で暮らす2人は
「この団地から出て、遠くに行きたい」
という共通の思いで繋がっていく。

中学2年生という親の保護下にあるはずの2人が、
居場所をなくし、自分の存在感価値を見つけられず、
現実から逃避していくことでしか生きていけない。
こんな環境下に成長期の多感な子供達が身を置かれていることに、何度も胸が押し潰されそうになった。

日本人と外国人。
訳あって同じ学校で同じクラスメイトになろうとも、
その意義を説き、人を尊ぶことの大切さを教え導いていく大人が必ず必要だと思う。
学級担任の横川先生も、外国人のサポートに力を注ぐ桐乃の母親 里穂も、それがあまりにも足りず、読んでいてストレスが溜まった。

大人でも居場所を見つけられず、自分の存在価値を失ってしまうことがあるのだから、子供なら尚のことそうだろうと思う。

ちょっとしたすれ違いや、言葉のかけ違いが、時に人の心を大きく左右する。その危うさを垣間見る一方、誰かのひと言で、生きる強さを与えることも出来る。

日本は多くの外国人が当たり前のように暮らす社会になった。ただ、其々の国事情、日本に居住し、働く理由をどこまで理解出来ているだろうか。

巨大な団地とそこから見える大きな給水塔。
本作では何かの象徴のように何度も登場する二者の関係が、まるで、我々の生きる社会とそれを俯瞰する神の目のように感じる。

窪美澄さんが本作を通じて問題提起されている内容に思いを巡らし、読後も物思いにふける作品だった。


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2025年10月04日

Posted by ブクログ

日本中にきっとある「団地」の問題。
団地でなくても、日本人がマイノリティになっているアパートで騒音やゴミの問題があるのを見ると、正直住みたくない、と思うけれど、確かに外国人だから悪いとか、そういうわけではない。

「つらいことがあるなら闘え。それができないのなら耐えろ。終わりのない嵐なんてないんだ。いつか必ず去る。いつか必ず晴れる」

ヒュウ(おそらくカタカナで書くならヒエウだと思いますが)のおじいさんの言葉、苦しんでいる人に伝えたい。

ちなみに技能実習制度がとても悪いように書かれていますが、ベトナムでは確かに日本語学習に高額な費用を払わなければならない事実はありますが、日本語学校の留学生の1年間の授業料が同程度、それを2〜6年に渡って払い、週28時間のアルバイトしかできないのに生活費も負担しなければならない、それでも日本で就職できる保証もない状況を考えると、技能実習生はむしろ恵まれていると思います。

また、ヒュウが自分のフルネームを「トラン ヴァン ヒュウ」と名乗る場面がありましたが、ベトナム人の名字に多いTRAN、TRANGはカタカナにするならチャンなので、違和感を感じました。

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2025年10月03日

Posted by ブクログ

自分の置かれた状況に納得できず、本当の居場所を求めるヒュウと桐乃、それぞれが抱える悩みや苦しみがいつしか友情を育む。知らなかったお互いのことを知り、助け合うことで成長していく2人にどうか優しく穏やかな未来が待っていますようにと願いながら読み切った。厳しさや苦しさの中に時折り優しい光が射してくる物語。

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2025年10月03日

Posted by ブクログ

私たちはなにもわかっていないのではないか。理解していないのではないか。
外国人が日本で働くということ。まるで、良い条件で出稼ぎに来ているように思うが、その実態とは。治安の悪化にもあげられがちな問題も、そもそも原因はなんだろう。
もちろん、白か黒かで決めつけることはできないだろう。例えば、財布のくだりは、その暗喩のようにも思う。ただし、背景理解した上で、考える問題ではないかと思う。
まるで、誰かに対する説教のような感想になってしまったが、本作は主人公と、ベトナム籍の男の子のひと夏の成長物語。ソフトに小説化して、問題提起する窪さんの手腕はさすが。 ★4.0

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2025年10月09日

Posted by ブクログ

日本にいる外国人がどんどんと増えていく現代に、読んでおきたい1冊だと思った。残念ながら私が育った環境にはあまり沢山の外国人はいなかったが、知らない、より、知っていること、ってとても大事だと思った。
外国人の日本での生活の大変さは想像もつかない。外国に留学するのとはまた訳が違うな、と。
自分はあまあまで、ゆるゆるで、イージーな生活をしてきたんだな、と感じてしまった。より小さな幸せをみつめたいと思ったし、『日本人ファースト』という日本人寄りすぎな考えは危険だと改めて思った。
あと、外国人関係なく、コミュニケーションの大切さを感じた。里穂と桐乃の関係性はどこにでもありうるかな、と。コミュニケーション大事。思いを伝えるのも大事だな、と思った。

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2025年12月03日

Posted by ブクログ

楽しい物語ばかりでは
駄目なんですかね。
辛かった。

子供達の成長が
胸を打った

カッコいい大人になるな

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2025年12月01日

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「ベランダでとりをさばかないこと!」
ベトナム人の技能実習生たちの寮に貼られていたであろう注意書きを見たことがある。
そんなバカな、と思っていたけどこの小説をよんで、そのまさかだった!と点と点がつながった気がした。

ベトナム人、技能実習生のイメージは残念ながら悪い。でもそれは彼らだけのせいではないのかもしれない。
文化の違いはもちろん、日本側にも正していかなければいけないことは多いのかもしれない。
ベトナム人日本人に関わらず良い人も悪い人もいるし、誰かにとって良い人でも別の人にとってはそうじゃないこともたくさんある。当たり前のことだけど。
窪美澄さんの作品は人間の多面性を表現することがひとつのテーマになっている(事が多い)と思っているので、今回はまさにそのど直球だったなと。
ベトナム戦争、ボートピープル、技能実習生、ベトナム人は、歴史の中で苦しんできた人が多いのかもしれない。

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2025年11月26日

Posted by ブクログ

団地に住む桐乃がクラスメイトのヒュウと団地を出ていく話

始まりは桐乃とヒュウのクラスでイジメられたり無視されたりする、どうにもならない状況が続き胸が苦しくなる

2人が家出をしてからは職場が酷すぎて逃げ出した技能実習生の話が出てくる。
ボートピープルとして日本に来たおじいさんの話や桐乃の母とタオの話など、どの話も重い。考えさせられて軽く読み流すことはできなかった。

2人ともこの家出で少し成長したことが救いだった

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2025年11月19日

Posted by ブクログ

外国人問題と言っても在日だったりポートピープルだったり元技能実習生だったりといろいろなケースがあり、それに問題を投げかけた小説。
団地を舞台に貧しい日本人と外国人の息苦しさが伝わってくる。そして外国人を助けて娘がなおざりになってしまう母子関係のあり方にも問題提起。私はこちらの主題の方が気になって一気読み。

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2025年11月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

読み進めるのが苦しかった。
桐乃もヒュウも、その境遇の中で生きていこうとする姿が痛々しくて…。
でも中学生だから自分の人生を受け入れて生きていくしかない。
ヒュウがだんだん悪い方へ引きずられていってしまうのとか、もうどうしようもないなと側から見てて感じた。
何かしてあげられたか?と言われると、もうそうなるしかなかったのかな、なんて。

私自身はまだ外国人が身近じゃない世代、場所で育って、周りは日本人だらけが当たり前だった。
桐乃みたいに、当たり前に周りに外国人がいて、言葉も通じない中一緒に学校生活を送って…ってこれから増えていくのかな。
環境を選べない子供達が、辛い思いをすることがないといいな…。

桐乃とヒュウが家出をして自分達なりに色々と考えることができたのは良かったと思う。
でも、それを美化しちゃいけない。
私はやっぱり桐乃の母が許せなかった。
同じ母として、なぜ母でいられないの?って。
子供に依存しすぎだし、自分勝手だし、桐乃の方が許してくれたのではなく、あれは母という存在を諦め見放したんだと思う。
家出までされて、それでもこの人は変わらないのかと思うと…父親もいまいち頼りないし母への苛立ちは募るしで、イヤーな読後感だった。

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2025年11月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

主人公の桐乃と、同級生のベトナムルーツ日本生まれで日本語が苦手な少年ヒュウと、桐乃の母親の里穂の3人の主観から紡がれてゆく物語。
在日外国人の問題はもちろんですが、個人的には母子の問題として読みました。

里穂、ヒュウの母親、どちらも子供からしたらきついです。

夫に捨てられたシングルマザーのヒュウの母親が、日本で朝から晩まで働いて子供に目を向ける余裕がないのは、現状から見たらやむを得ない部分はあるのかなと思いました。でもあと数歩で完全なネグレクト。

対して桐乃の母の里穂は自分から、視界の中央に困っている外国ルーツの人達を置いて、やりすぎるお世話・お節介をするイネイブラーに見えます。
グエンさんの言う通り、お節介は最小限にしないと本人たちの経験値があがりません。
そして、大切なはずの娘、桐乃は視界の隅、時には見切れてしまっている。そんな母親。
自らの拘り、生き方の選択によって、子供がまきこまれています。

過去に何があっても、家庭をもったなら、家族や子供が中心でないというのは、子供側にとってはとても切ない事だと思います。
いわゆる毒親との違いは恐らく里穂の考え方。
桐乃の反抗に対して、子供を悪者にするのではなく、自覚して反省する所。
でも子供からしてみたら愛情や承認欲求を満たしてもらえない点では同じだし、
親側が子供にいつか分かって欲しいと承認を求めるあたりは親子逆転していると感じました。
精神的に未成熟な子供が親からの愛情を求めるのは当然のことで、
桐乃が寂しい気持ちで育ってきて、愛情が満たされずに反発してしまうのは当然だと思うし、
反抗してグレたりもせず成績優秀で己の将来のビジョンに向けて勉強をするものすごく良い子で、そこに感謝することもないほど娘を見ていない里穂という母親にイラっとしました。
全般に、ベトナムスーパーのグエンさんの言葉が的確で、作者の見解なのかなと思いました。

ヒュウと桐乃が家出をしたことは、親子関係を打開する意味ではこの時期に必要な事だったのかなと思いました。
きっとそれくらいしないと親側は分からなかったと思うから。
ただ、何をしても分からない親は子供の性質のせいにするから、その面では悪人はいない所が救いだと感じました。

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2025年11月05日

Posted by ブクログ

ルーツの違いからいじめや差別がなくならずまともに働いても生活が苦しいから悪い道へと進む…悪循環が繰り返されないためにはどうしたらいいのか…読んでいて何度も胸が苦しくなった。

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2025年10月31日

Posted by ブクログ

ネタバレ

大人から見たら何とでもなるような事が子供の世界ではとても困難なことに思えたり、未熟な子供ながらにたくさんのことを考えていたり。

大人同士でも分かり合えないことだらけで上手くいかないこともたくさんあるけど、相手を理解しようと考えたり、他の選択肢を選んだり出来る。
小さな世界観で生きてる人は大人でもとても窮屈で退屈。

他者を変えることはできないから、自分が納得できる範囲で自分を変えたり選択していかなくちゃいけない。ってわかっててもちょっかい出してくる人はどこにでもいて面倒。

私が日本で接するコンビニの店員の外国の人たちは皆んな笑顔で優しくて本に出てくるような苦労は微塵も感じないけれど、たくさん嫌な思いをしているのかな、なんて考えた。
どこにでも嫌な人はいるし、人を見下すことでしか自分のアイデンティティを保つ事ができない人も多いと同じ日本人でも感じることは多いから、キツイだろうな。

この小説の最後は良いようにも悪いようにも取れるけど、私はこの先に明るくて前向きな未来があるって思いたい。

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2025年10月18日

Posted by ブクログ

中学2年の春から夏、期間にすればほんの数ヶ月。
外国の人も多く暮らす団地に住む、同じクラスの桐乃とヒュウを軸に物語は進む。
私が子供の頃よりは、外国にルーツをもつ人を町で見かける事も増えたけど、自分の生活にがっつり関わっているかといえば、地域差が大きいように思う。
そこに住んでいない、当事者ではない私が、ヒュウや桐乃の気持ちを分かったつもりになるのは失礼かもな、って思いを持ちながら読み進めた。
桐乃の母は手助けがライフワークになっていて、桐乃はそこに納得できないし、ヒュウの母は毎日の生活に必死でヒュウに向き合う時間も寄り添う気持ちも作り出せない。
ヒュウや桐乃の気持ちも分かるけど、母親の気持ちも分かってしまう。
2組の親子は子供達の夏休みの出来事があって強制的に向き合えたけど、実際は思春期の子供と向き合い、しかも理解しあうのは難しい。
ひとつ屋根の下に暮らしていても、物理的な距離が近くても、心の距離は近くなったり遠くなったり。
それでも分かろうとする事をやめちゃいけないんだろう。
それは血の繋がりだけじゃなくて、家族以外の人との繋がりにも言える。
ルーツの違い、しょうがいの有無、経済格差、男女の性差。
自分が所属する小さな集団が世の中の全てだと勘違いしないように。
技能実習生の話も他人事じゃない。
不当に安くされている労働力は回り回って自分の生活に関わっているのだから。

私も読む前と読んだ後では、少し変われたのかな。

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2025年10月11日

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