【感想・ネタバレ】じっと手を見るのレビュー

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

性描写があるのは好きではないけど
各話の心情をあらわすには必要なことで
幸せな読後感があるわけではなかったけど
頁をめくり続けてしまった

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2024年06月10日

Posted by ブクログ

窪美澄はやはり好きだ。おもしろい。
でも今回初めて思ったのは、地方に住む若者の閉塞感をリアルに描いてるようで、やはり地方出身者の感じているそれとは全然違うということ。
私と同じ故郷をもつ辻村深月に感じた、あなたなぜ私のそのドス暗い感覚ぜんぶ知ってんの⁈見てた⁈というリアルさには到底及ばない。
地方の置かれた現実を身をもって知ってるのか、知識としてただ知ったのかの違い⁈のような。
繰り返すが、この本はおもしろかった。窪美澄はダントツいま現在一番大好きな作家さんである。
でも、やっぱり地方に住む人間のもつ感覚との違いは感じた。いま私は田舎に住んでるわけでもないのに。
東京タワーになぞらえる宮澤の描写は、私には感覚としては理解はできないが、そっちこそリアルな気がした。窪さんは都会出身なのだと思う。

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2023年07月15日

Posted by ブクログ

なんと胸が詰まる話しであろう。

この人の小説は、とんでもなく胸が苦しくなって、最後に少しだけ幸せの希望が見える感じか本当にクセになる。

良さが上手く説明できない、自分の恋愛観がおかしいって感じてる人達はぜひ読んで欲しい。

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2023年06月22日

Posted by ブクログ

読みながら身も頭も心も重くなった。

田舎と都会とでは
暮らしていく上で触れる情報・刺激・見聞に
圧倒的に差があるよな。
日奈のように、
そこまで欲がなく大人になってしまうと
自分のやりたいこととか、目標、希望が
育たず見つからないのかと思った。

一方宮澤の感覚はすごくわかる気がする…。

しがみ付くのは、自分が1人だからか。
日奈と海斗に光が差し込むといいなぁ。

朝井リョウの解説もかなりよき。

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2023年04月08日

Posted by ブクログ

綺麗事抜きの生々しい感情。そばにいたい、そばにいてほしい、好き、好かれたい…。
お互いが同じ気持ちならなんの問題もないのに。楽な方を選んでいい、その“楽な方”ってなんだろう。フィットする空間が見つかるって幸せなことなんだろうなと感じた。

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2023年03月26日

Posted by ブクログ

誰もが弱くて寂しいから
それがどんなにずるくても 嘘でもいいから
誰かの温もりに触れていたくなるんだろう

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2022年12月18日

Posted by ブクログ

介護職の現状が生々しく繊細に描かれている
長く続く若者ほど心が淡々と平坦になってゆく
福祉に従事する人々の「自己」そして「感情」
遠くからそっと大事に温めてあげたいと思った

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2024年05月04日

Posted by ブクログ

初めて窪美澄さんの作品を読んだけれど、全体を通しての印象はとてもきれいな文章だったということ。

終始じっとりとした空気感だったけれど、人間の心の機微が細やかに丁寧に美しく描かれていた。

他の作品も読んでみたいと思った。

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2024年04月23日

Posted by ブクログ

介護の仕事ってほんとうに大変だけどなくてはならない仕事だしなあ、、と思いながら読んだ。
窪美澄さんの作品いくつか読んだことあるけどこの作品はなかなか暗くて生きるって難しいと思わされる。
主人公2人のような恋愛経験はないけど描写が細かくて読みやすかった。

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2024年02月19日

Posted by ブクログ

今を切り取っている高齢者介護の現場に立っている主人公たちの生き行くさまが心を打つ一冊。この物語が綴られた2018年より一層深刻となっている介護現場の人不足。そんな中でも人を支える仕事に身を置く人々の惑い続けるこころを強く思い入れなく書いた世界に久しぶりに心が揺れた。この後の作品も読み進めていこうと思わせる初めての窪美澄さんだった。

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2024年02月17日

Posted by ブクログ

山本文緒著の絶対泣かないを読んで
もうちょっと頑張ってみよう!
ってなった後に読んだので
あ〜生きるってしんどいな〜という気持ちに
一気に落っこちた感覚。

リアルでじっとりとした感じ。
性の描写も多少あるので好みは分かれそう。

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2024年01月19日

Posted by ブクログ

私は窪美澄の作品が好きだ。ゆっくり読みたいのに気づいたら一日で読み終えてしまうほど彼女の書く文章に惹き込まれている。まだ二冊目だが2冊とも同じ末路。この本は朝井リョウの解説をみて購入を決めた。「こんなにも間違った人間であることを自覚したうえで関わり合いたいと願うほど、あなたは大切な存在なのですというカミングアウトに近い決意表明、に駆られる」という一文を見て惹かれた。本作品はまさにこの通りだった。好きとか愛とかではなく、それをも超越した自分という存在を認めてくれる相手と私は出会えるのだろうか、と思った。と同時に今一緒にいる相手のことをちゃんと知ることが出来ているのか不安になった。

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2024年01月06日

Posted by ブクログ

なんか生きるって大変なんだというドヨンとした気分になる、これまで正視してこないようにしていた現実を目の前に突きつけられました。
小説にはこういう役割もあるんだなと改めて発見しました。
ま、今後とももがくしかないんだろうな…(嗚呼)。

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2023年12月18日

Posted by ブクログ

男女は色々あるし、時間が経てば感情も変わる。関係性も変わる。いま思う通りに過ごすしかない、と思わせられた。

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2023年08月19日

Posted by ブクログ

主人公は男女2人。
始まりは2人ともが20代前半の時の話。
そしてこの2人を取り巻く人の視点からも話は描かれていき2人も歳を重ねていく。
続きが気になるのでどんどん読めてしまう。
久々にページが止まらなくなる本に出会えた。

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2023年08月07日

Posted by ブクログ

読みやすいのに加えて独特な題材を取り上げる、そして終わり方がどれも、これもひとつのハッピーエンドなんだろうなと思わせるお話が多いなあ。
巡り巡って選ばれた2人は、この先どの形でも幸せになればいいなと思う。
幸福のほうがバリエーションが、不幸よりもあるの表現が最高だったし、わたしはそういう表現が好きだなと思った瞬間でした。

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2023年08月03日

Posted by ブクログ

地元で働き生活する閉塞感がとってもリアル。生まれてきた環境によって生活の感覚も否応なく左右され、生き方のベースになってしまうのもやっぱり逃れられない事実だと思わせられる。

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2023年07月01日

Posted by ブクログ

『もしかしたら私はこの人のことが好きなんじゃないかと、そのとき初めて思った』

あなたは、そんな瞬間を感じたことがあるでしょうか?

恋愛感情の訪れはさまざまです。”一目惚れ”という言葉があるように、初めて出会ったその瞬間に一気に恋に落ちてしまう、そんな感情の訪れもあります。そんな想いがもし成就したとしたら、それはまさしく運命の出会いなのだと思います。

しかし、恋愛の全てが”一目惚れ”というわけではないでしょう。『一度目に会ったときはそうでもなかった』はずの相手にも関わらず、『二度目に会ったとき』にピンとくるものを感じた、運命の瞬間が到来し、恋に落ちてしまう、そんなこともあるでしょう。そして、そんな瞬間ほど、それは他愛のないタイミングに見ることも多いのだと思います。恋愛感情というものもとても不思議なものだと思います。

さて、ここに、『居酒屋の銭湯風の玄関』で『薄汚れたすのこに座り込み、靴ひもを結ぶ』彼の『背中を見て、抱きつきたい、という気持ちが突然わき上がってきた』という女性が主人公となる物語があります。『どこに行っても富士山が見える町で生まれ育』った女性はそんな男性を特別な想いの中に見ていきます。この作品は、そんな女性が『介護』の現場に生きる姿を見る物語。そんな女性が二人の男性と関わりを持つ様を見る物語。そしてそれは、そんな女性が重ねた『手のひらの重さと温かさを感じ』る瞬間を見る物語です。

『もしかしたら私はこの人のことが好きなんじゃないかと、そのとき初めて思った』と『目の前にいる宮澤』のことを見るのは主人公の園田日奈(そのだ ひな)。『私の動きと、ふいに突き上げる宮澤さんの腰の動きが合致したときに、思いもよらないくらい奥深くに到達する。その瞬間に、私のなかから温かな水があふれ出た』という日奈は、『海斗(かいと)としているとき、こんなふうになったことはなかった…宮澤さんとセックスするようになって、それは起こるようになった』と感じる中に宮澤と初めて出会った『今年の一月のこと』を思い出します。『東京にある編集プロダクションの人』という宮澤は日奈が卒業した『介護福祉専門学校の入学案内パンフレットを作ってい』ました。『卒業生を紹介するページ』へ出るよう校長から泣きつかれた日奈は、渋々引き受けることに…。『ディレクションをする宮澤です』と紹介され、『ライターの女性』からさまざまな質問を受ける日奈は、『おじいちゃんと二人暮らしで、将来、おじいちゃんを介護してあげられる』という理由から『介護士』になった、しかしそんな祖父も昨年亡くなったという今の暮らしを説明します。そして、話の流れから『彼氏いないんです』と答えます。『去年の今頃は、確かに彼氏と呼べる人がいた』と『専門学校の同級生だった海斗と、恋愛の輪郭をなぞるような恋をしていた』ことも思い出します。祖父が亡くなって『そばにいた海斗に頼った』日奈は、一方で『本当に好きじゃない人といっしょにいてももっと寂しいことに気がつ』き別れを切り出してしまいます。しかし、その後も『月に一、二回』『手作り弁当持参で』やってくる海斗。場面は変わり、取材から二か月経った頃、『原稿と写真の最終チェック』に校長先生に呼び出された日奈は、終了後、校長と、宮澤の三人で飲みに出かけます。『千鳥足』で『タクシーに飛び込むように乗って』しまった校長を見送ると、宮澤は、日奈を送っていくと申し出ます。『妖怪ハウスと呼ばれ』る『築三十五年の廃墟のような』自宅へと送り届けてくれた宮澤は、あたりを見渡し『庭の草を刈ってあげようか』、『っていうか、刈らせてもらえないかな』と申し出ました。それに、『はい、お願いします』と答えた日奈は、『すんなりと再会の約束をさせてしまった宮澤さんと、それを受け入れてしまった自分の大胆さに驚』き『耳が熱』くなります。そして、『介護士』としての日常の中に、宮澤の訪問を受け入れていく日奈、そしてそのことに気づく海斗のそれからが描かれていきます…という最初の短編〈そのなかにある、みずうみ〉。物語の全体概要を提示しながら、主要登場人物である日奈、海斗、そして宮澤の人となりを垣間見せる好編でした。

「じっと手を見る」という書名が、“はたらけど はたらけど猶わが生活楽にならざり ぢっと手を見る”という石川啄木さん「一握の砂」の一節を思い起こさせもするこの作品。七つの短編が連作短編を構成する短編集となっています。石川さんの歌集がどんなに働いても楽にならない生活を謳っていることに想起させられるように、この作品では『介護』の厳しい現場が『介護士』をする三人の登場人物の目を通して描かれていきます。まずは、そんな表現を取り上げたいと思います。

まずは、介護の現場を『宮澤さんが思っているよりはるかに重労働なんですよ』と説明する校長先生の言葉です。

・『日奈のいる特別養護老人ホームなんかは本当のところ、姥捨山みたいなもんです。そんな人たちのおむつを替えたり、口のなかをきれいにしたり、吐いたものを片付けたり。ある程度は体力と気力で何とかなります。だけどね、そんなことを毎日毎日していると、食欲が湧かなくなる日もあるんですよ』。

・『介護士は就職率が高いが離職率も高い。給料も安い。若い子は次から次へとやめていく』。

これは一般的な『介護』の現場のイメージとも言えます。物語では、この前提説明を裏付けていくように『介護』のリアルな現場の風景が描かれていきます。

・『火曜日は週に二回の入浴の日だった。先輩の緑川さんと二人で、二十人の利用者さんの入浴をサポートする。終わる頃には汗みどろになる』。

・『今日は中介(なかかい)担当の日だった…中介担当の日は、浴室に入る前に、ポカリスエットを必ず飲む…以前、浴室のなかで脱水症状を起こし、そのまま倒れて、タイルの床に後頭部をぶつけたことがあるからだ』。

・『今年の春も四人の新人が入ってきて、すでに二人やめた。そりゃそうだ。若いやつらにとって楽しい仕事じゃない。毎日、毎日、皺だらけの老人に囲まれていれば気も滅入る』。

そんな厳しい現場の中で仕事を続けていくには、

『介護の仕事は、どこかで感情のスイッチを切らなければ続かない』。

そんなリアルな現場の感覚が伝わってきます。さらに、

・『強い責任感を持って介護士になった人ほど、すぐに燃え尽きて、現場から消えていった』。

・『仕事に対する熱は、すぐに現場に吸い取られ、その人自身をも壊していく。現場の問題は、何も解決されないままで』。

読めば読むほどに高齢化社会がどんどん進んでいくこの国の未来が不安になってもきます。『介護』の現場の”お仕事小説”の側面も見せるこの作品。日奈、海斗、そして畑中という三人の介護士それぞれの『介護』の捉え方、『介護』への向き合い方を描くことでよりさまざまな視点から見えてもくる『介護』の現場。予想はしましたが、物語の展開とは別に『介護』が描かれる限り、そこに光はなかなか見えないものだと改めて思うと共に、そんな場を支えてくださる『介護士』の「じっと手を見る」姿を書名に思い起こせさせもします。

また、物語では、背景となる町の風景描写が印象的に描かれてもいきます。それが『富士山』です。七つの短編それぞれに『富士山』が登場します。

『目の前に大きな富士山が見える。ここに来る人はみんなそう言う』。

この国の象徴の一つとも言える『富士山』をマイナス感情で見る人は普通にはいないと思います。しかし、

『富士山なんて、たまに見るからありがたみが生まれるのだ。どこに行っても富士山が見える町で生まれ育つと、あまりに当たり前すぎて感動がない』。

そんな風に身近すぎるが故の感情がそこにあることがわかります。それは、当たり前の風景だけにとどまらない効果を物語に生み出してもいきます。”物語の舞台は、富士山が’誇るべき世界遺産’としてではなく、外の世界へ出ようとする者を阻む壁、または外の世界に出た人間を引き戻す巨大な磁石のように感じられる町だ”と語る〈解説〉の朝井リョウさん。この朝井さんの感覚が読者が感じるところを見事に表現してくださいます。『富士山』が描写される場面というのは、本だけでなく、さまざまな媒体が想定されますが、この作品のような使い方をした物語は珍しいのではないでしょうか。『富士山』の登場によって、そこにどんな景色が見えるのか、そこに暮らす人々に『富士山』がどう見えるのか、これからお読みになられる方は『富士山』が描写される場面の登場人物の心持ちも是非意識いただければと思います。

そんな七つの短編からなるこの作品では短編ごとに視点の主が交代していきます。

・〈そのなかにある、みずうみ〉: 日奈視点
・〈森のゼラチン〉: 海斗視点
・〈水曜の夜のサバラン〉: 畑中視点
・〈暗れ惑う虹彩〉: 日奈視点
・〈柘榴のメルクマーク〉: 宮澤視点
・〈じっと手を見る〉: 海斗視点
・〈よるべのみず〉: 日奈視点

一般的に連作短編と言えば各編で視点を変えるもの、二人の間で視点を変えるもの、同一人物で通すものに分けられると思いますが、この作品は上記した通り極めて変則的です。しかし、最初と真ん中、そして結末に日奈が登場することからも、この作品を通しての主人公はやはり日奈なのだと思います。『幼稚園に入る直前、私の両親は私を置いてこの世からいなくなった』という幼き日の出来事。その後、『おじいちゃんは、それ以上の愛情を注いでくれたし、何不自由なく私を育ててくれた』というそれからの人生を生きてきた日奈は、『だから、恩返しをしたくて、介護士の道を選んだ』という今を生きています。そんな日奈の前に現れたのが二人の男性、同級生の海斗と、編集プロダクションに務める宮澤です。祖父が死に、ぽっかりと空いた穴を埋めてくれた海斗に対して、『視線の温度の低さが妙に心地よかった』という宮澤との出会いという全く対象的な二人の男たち。そんな二人にも視点が移ることで、二人の違いがさらに鮮明に読者の前に明らかになってもいきます。第三の存在とも言える畑中視点が入ることで物語は絶妙なアクセントも得て、海斗という人物の生き様に対する説得力を増してもくれます。そして、二人の間で気持ちがさまざまに揺れていく主人公・日奈の物語は、閉塞感のある暮らしの中にそれでも日々を生きていく他ない一人の人間の逞しさと脆さを合わせて見せながら描かれていきます。そんな日奈が最後に見る景色、そこにはこの物語の描写を経たからこそ見える景色があったのだと思います。

『宮澤さんが来るようになって、季節が過ぎるのが加速していくような気がした』。

『富士山』を当たり前の景色として見る閉塞感のある町に『介護士』としての日々を送る主人公の日奈。この作品では、そんな日奈の前に現れた宮澤という男性の存在が日奈の日常を変化させていく様が描かれていました。『介護士』の”お仕事小説”の側面も見せるこの作品。『富士山』がマイナス感情の象徴としても描かれる不思議感を感じるこの作品。

第159回直木賞の候補となった作品らしく、しっとりとした恋愛物語の中に、人が生きていくことの悩み苦しみを鮮やかに描き出した作品だと思いました。

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2023年05月17日

Posted by ブクログ

介護士は大変だ、給料も少ない、といったマイナスのイメージが植えつけられているような気がします。
だからこの小説で描かれる介護士の主人公の二人は、リアルに見えてしまいます。

将来が見えず、地元に縛られた介護士の二人、日奈と海斗。恋人だった二人だが、日奈が次第に東京のデザイナーに惹かれ始め、二人の介護士は違う道を歩み始める…。

ここに出てくる登場人物はいろんな顔を持っています。一本筋の通った人間がいないようです。でもそれが人間のリアルなのかなあ。ふわふわとその日暮らしのような恋愛。
読んでいるうちにもどかしい気持ちになってきます。
でもそんな人たちを単に悪い人たちだ、と見るのは違うなと思います。もっといいところを見つめたいね。

リアルなストーリーの中にいくつかキラーフレーズが潜んでいるのですが、これは私にもグッときたなあ!
心して読んでほしい作品です。

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2023年02月02日

Posted by ブクログ

読み始めたら止まらなくなって一気読みしました!情景や心理描写が良くてとても読み易いです。
終わり方も良かった。

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2022年10月18日

Posted by ブクログ

静かに静かに進んでゆく、そんなテンポが心地のいい小説でした。

後遺症、痕跡、親知らずを抜いた後の穴。互いに、誰かに影響を残し合いながら生きている。この作品を通して感じたことです。

読みながら記録のためにも一編ずつ色々書き残していたのですが、柘榴のメルクマールあたりから書くことが思いつかず尻切れとんぼになってしまいました。
一応、備忘録として下に残しますが、すべて朝井リョウさんによる解説に集約されていると感じました。




・そのなかにある、みずうみ
日奈の話。いくら世話を焼いてくれていても、海斗のことを好きになれなくて謝る日奈へなお優しく接する海斗はなんて優しくて哀れなんだろう。自分を救ってくれる人と、好きになる人が違うなんてことはありがちな話で。救って欲しくて、自分に好意のある人に縋るのは本当は良くないことだが縋られる側は嬉しいだろう。あまりに不毛な関係。

・森のゼラチン
海斗の話。一転、酷いDV彼氏(元彼)でろくでなしのように思える描写に溢れる。
しかし彼もそれなりの苦しさ、遣る瀬無さ、報われなさに追いやられてしまい、ダメだと分かっていながらこうするしかないと、荒れている。
自ら捨ててやると別れを選んだところは、切なかった。しかし海斗、あなたの日奈への気持ちは確かに愛だったと思うよ。

・水曜日のサバラン
畑中の話。家庭環境と自ら生まれ持ってしまった容姿のせいで、どこか諦念をもって日々を自暴自棄気味に生きる彼女。彼女の言動の節々からは自傷行為ともとれるものが滲み出ている。
しかしそれゆえか、彼女が息子に面会するときの態度には感心できない部分が多くあった。幼い子供を連れて喫煙席へゆくし、キツイ物言いもする。ケーキ屋になりなよ、なんて見方によれば無責任なことも言う。子供はえてしてそういったしょうもないことを覚えているものだ。すぐに忘れてしまうと高を括るのは良くない。まあ、今の彼女には子育ては向いていなかったのだろう。
彼女はトラウマを、自らの傷を癒やし乗り越えることができるのだろうか。きっと、少し重くて世話焼きな彼が、連れて行ってくれると信じたい。

・暗れ惑う虹彩
日奈の話。
冷めてしまった熱に、過去の記憶に、縋り続ける。
そんなことが続くはずはなく、2人の関係は終わりを迎える。2人とも正反対に、元いた場所へ戻ってゆく。
「お姉さん、私、アイドルになりたかったの」「東京よりも先に、とりあえず明日学校へ行く」三好さんの孫の愛美璃は、現状から逃避するため抱いていた夢を諦め、現実に向き合う。
日奈もまた現実に向き合い、元いた場所へと帰る。
防潮堤で見た荒波の如く、終わりを迎えてしまった一つの関係。
背後、太陽に照らされた黄金色に、過去の大切だった記憶を重ねる。
かつて通じ合っていた2人は、それぞれの方向を向いて歩き出すことができた。彼らが過ごした時間は、きっと無駄ではなかった。

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2022年10月15日

Posted by ブクログ

他者から見て新たな世界に行くわけではないが、本人にとって新たな扉を開いていく様が丁寧に描かれていた。

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2024年06月09日

Posted by ブクログ

よかった。
この作品をよかったと言うことは、なかなか外には出しにくい自分の内なる本質を自認することになりそうで、怖い部分もあるけど、よかったのだがらしょうがない。
永遠じゃないから、いとおしいというのはとてもよくわかる。
解説で朝井リョウさんが言っていた別作品も読もうと思った。

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2024年03月24日

Posted by ブクログ

この話の中で起こっていることが、まるで自分に起きているような錯覚に陥った、、
つまり、終始先が気になり、同時になかなかしんどいということ。。
みんな、色んなものを抱えて生きている。
言わないだけで。
人は永遠じゃないと思った上での判断は、正しいのかもしれない。

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2024年02月16日

Posted by ブクログ

高評価みたいだけど自分はあまり好きじゃなかった。暗い。主人公のじとっとした感じに魅力を感じない。そんなもんかもしれないけど色々と身勝手に感じる。主人公をとりまく男2人もそれぞれ勝手なところがあり浅はかに感じる。
啄木を彷彿とさせる題名どおり、もがいても何しても楽にはならない人生について書いている本だという、題名と主題が一致している点は好き。もしそのこと自体を狙ってるとしたらすごい。

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2024年01月12日

Posted by ブクログ

好きな人と一緒にいる
っていうただそれだけのことがどれほど難しいことなのか思い知らされた。
大人になるにつれて、
いろんな気持ちが邪魔してくるけど、
いつかは、今が幸せと思える瞬間を生きていきたい!

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2023年09月15日

Posted by ブクログ

みんながそれぞれ理屈通りではない自分の感情を持ちながら生き続けていて、それを他人としてみると、こういうものだよなあ生きるのってって思う

登場人物みんな好きでも嫌いでもない

終わり方が綺麗

人の体は永遠に繁茂する緑ではない。けれど、永遠じゃないから、私はそれがいとおしい。

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2023年09月05日

Posted by ブクログ

読後感はとにかく切なすぎるぅ……
という感覚。

すべてが愛おしくなる傑作小説とあるが、そこまでの愛おしさよりも、どうしても切なさの方が勝ってしまうように感じられた。

人間の弱い部分や自分勝手な感情が絶妙な表現で描かれているからかな。

感傷に浸りたい時に読むといいかも…

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2023年05月03日

Posted by ブクログ

短編同士が繋がっていて主人公が変わる小説。
朝井リョウさんの解説が良かった。(小説家としての物語の構成の仕方に言及しているところ)
人は1人では生きられない。ただあまり上昇志向がなく同じ生活を続けるところ、結婚するつもりがない人と一緒にいるところ、そこを特に言及しないところ、愛にしがみつくところ。
それぞれの人間的弱さがナチュラルに表現されていた。
自分はこうはなりたくないなと思いつつ、それって既に家族や友達や恋人に愛されているというセーフティネットに守られているからなのかなと。
114/140

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2023年02月22日

Posted by ブクログ

富士山の麓の町で生まれ育った、海斗と日奈と、彼らとすれ違った人達の、連作短編7編。窪さん得意の生きづらさを主体としている。恋や家族が寂しさを埋めてくれるとは限らない。
じっと手を見る時は、苦しい時が多いでしょうか。
地方の町の閉塞感。彼らの息抜きは、ショッピングモール。
各章では、家族の事故死、自殺未遂、倒産、育児放棄、登校拒否、発達障害、そして家族介護と生きづらさのショッピングモール。生きどころを探す迷子の大人達。
介護士という過酷な職業を、海斗と日奈は、コツコツとこなしていく。それは、彼らの生きる糧。介護士の過酷さや低賃金を窪さんは、否定的ではなく、社会的にもっと認めさせたくて書いているんだと思う。(思いたいかな)
優しい人や条件の整った人を好きになれたら良いのだけどねえ。寄り道したけど、たぶん、これで良かったと思えそうな、二人の湖。


富士山の見える町に長い間住んでいた事がありますが、本当に富士山が、方位磁石的になりますね。そして、日常生活では、全く気にならなくなる。そのくせ、毎年、初冠雪の日は、思わず写真撮ってしまう。

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2023年02月12日

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