あらすじ
富士山を望む町で暮らす介護士の日奈と海斗
はかつての恋人同士。ある時から、ショッピ
ングモールだけが息抜きの日奈のもとに、東
京の男性デザイナーが定期的に通い始める。
町の外へ思いが募る日奈。一方、海斗は職場
の後輩と関係を深めながら、両親の生活を支
えるため町に縛りつけられる。自分の弱さ、
人生の苦さ、すべてが愛しくなる傑作小説。
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Posted by ブクログ
朝井リョウが出版区で紹介してるのを見てから気になっていた作品。窪美澄初めて。
富士山を常に眺望できる田舎で介護士として暮らす日奈と海斗を主軸に展開される連作短編。周囲を取り巻く人物主観の話を間に挟み、二人の寄る辺のない関係性が最終的にどのような形に収束していくのか、はたまた完全に崩壊してしまうのか。全体的に生命力の希薄な世界観のなか、物語は進んでいく。
作品全体の評価はは朝井リョウの見事な過不足ないあとがきを参照いただきたい。
私は海斗の人物描写の変化に注目する。
最初の二章で描かれる海斗は、正直好きになれない。独りよがりで日奈に対する態度や扱いも粗暴で、言ってしまえばDVではないかという場面もある。こんなやつ日奈から切ってしまえという思いが募る。
後半、新しい恋人の息子との交流がある。
息子の特性上上手くコミュニケーションをとることは難しい。しかし、海斗は突き放すのではなく自分の立場を超えるほど寄り添う。心が通いあう瞬間が生まれる。
ここで、海斗の本質が垣間見える。彼は、どうしようもない孤独に苦しんでいる人のSOSを察知し干渉してしまうのである。
それは、優しさでもありおせっかいでもある。そんな彼に人は感謝することもあり、一定の距離を保ちながらその優しさに甘えてしまうことがある。そんなあいまいな人間関係を過ごしてきた海斗にとって、日奈は親密な嘘偽りない関係を築きたいと本気で思った唯一の相手だったのだろう。だから、制御がきかず暴走してしまうこともあったのだ。だからといって、日奈に対する扱いは肯定することはできないが。
ここで余談を。
トルストイ『アンナ・カレーリナ』の世界一有名な書き出しとは相反する会話がある。
個人的に解釈すると、幸せも不幸も人間一人一人の人生は固有と共通が入り混じっているのだと考える。どの側面に焦点を当てるかによって、あなたと私は似た者通しでもあり、全く違う相いれない存在になるのだろう。
全体的に重苦しい話が続くし、介護・自殺・子育てなど簡単ではないテーマが折り重なっている。しかし、読者は本作を通じて、今まで見過ごしていた他者の孤独や痛みに気づかせる。それは、あなたの視点を拡張し、あなたの人生にある種豊かさも与えてくれると確信している。
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個人的に、一番衝撃だったのが宮澤さん。
彼の生い立ちからくる女性観は相当闇深い。
他人から見て魅力的なのに、人を愛せない、人と生きて行けない人は可哀想で切ない。
でも全く別の場所で違う仕事を選んでも、別の人にはなれないんだよなぁ。
恋愛に感度が高い若い人が読んだらどうかわからないけど、人生も後半になって読むと、お互い忘れられない人の1人や2人いてもいいから、海斗みたいな人情深い人と寄り添って生きていける人生が結局一番いいんじゃないかなぁと思う。
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それぞれの登場人物の不完全さと脆さと情けなさがあまりにも人間らしくて、仕方なくて、愛おしかった。年齢だけ重ねても大人は大人になれないのかもしれない。みんなが騙し騙し生きている現実を、赤裸々に、正直に、自分しか知らないような秘密を開示するように語られる小説でした。それぞれの人がそれぞれの場所で生き、そして死ぬ。世の中って不思議。
「こんなにも間違った人間であることを自覚した上で関わり合いたいと願うほど、あなたは大切な存在なのです、という決意表明。」という朝井さんの解説での文章が素敵だなと思いました。
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性描写が多く、読み始めは嫌悪しか無かった
ただ、次第に耐性が付いて読み進めた
中でも、柘榴のメルクマールが印象に残った
東京出身、お金や異性に不自由することのない、恵まれた人間はこのような人生を送るのか
そういった人間らは、愛を知ることもないのかも知れない
それは幸せなのか
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人の幸福・不幸が色濃く詰まった感慨深い短編集だった。他人を傷つけ自分を傷つけながら、自分の嫌な醜い部分に向き合って、それでも幸せになるために起伏が多い道程を歩もうとする人間という生物の本能と生への執着を感じた。
Posted by ブクログ
2026/4/20
連作短編。
「覚えておいて」
「あんたのおじいちゃんはね。...まだ、死んじゃいないけど、腕のいいケーキ屋なの。だから、あんたも、将来、ケーキ屋になりなよ。
あと、大人になったら、お酒には注意すること。わかった?」
窪美澄さんの小説は、心の弱いところ突いてきて、揺さぶられる。
フラフラしていて半端な畑中が、人と距離を詰めるのが怖くて離れられるよう嫌な事する畑中が、泣かせてきた。
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4人のそれぞれの視点から見れば抱えてる気持ちも理解できる、けどどれも共感はしない。
もっと若い頃に読んでいたら恋することに苦しくなっていたのかな。
魅力的な宮澤さんに溺れる気持ちが今だと懐かしく感じる。
届きそうで届かない人に焦がれて、相手も届かない人に焦がれて、の繰り返し。
4人の摩擦がどこに向かうのか切なくもどんどん傷が深くなり、ひとりになった時ようやく気づくことがある。
たびたび登場する富士山も、美しく描かれがちだけど樹海の死のイメージや地元の億劫な記憶の象徴として描かれていて印象的だった。
そして海斗はすごくいいヤツ。
不器用なんだけど、優しい心を持った幸せになってほしいいいヤツ。
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不倫において情熱的な愛を描くものはよく見るけれど、その情熱が過ぎ去ってしまったあとの惰性のような関係を描くのは初めて読んだので、とても虚しく強く印象に残りました。
皆なにかを抱えた重たい心理描写も、項目ごとに登場人物の視点が切り替わるのもとても読みやすかったです。第1章の性描写の描き方がとても好みでした。
窪美澄さんの小説は初めて読みましたが、作風が好きでしたので他の作品も読んでみようと思います。
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一人になりたい、誰かといたい、孤独でいい、そばにいてほしい
誰かを支えたい、必要とされたい、誰も自分を知らないところに行きたい
登場人物全員の、一部分に自分が当てはまる気がして、しんどくも愛おしかった
めんどくさく、愛おしい
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地方都市の男女の恋愛模様を描いているだけなのだが、なぜか読み続けてしまう。よくある男女関係の聞き飽きたトラブル。それでもストレスなく完読できたのは著者の文章ゆえだと思う。
あえてありふれた不幸を描いたのでは、とさえ思える。退屈な人生をメリハリなく漂う登場人物たち。一方で紡ぐ文章は上手さを感じさせないほど乗り心地が良い。
この著者はスキャンダラスな題材がウリのように思われているが、本質的には文体作家なのではないだろうか。
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生まれ育った故郷で仕事をして生きていくこと、故郷を出て暮らしていくこと、それぞれの生き方を肯定してもらえる作品だと思った。
自分が登場人物に近い仕事をしてるから感情移入しやすかったし、自分の生き方は間違えていないと言ってもらえているようだった。
人と深く関わることで生まれる辛さと、人と関わることで得られる幸せがどちらも丁寧に描かれていてラストはじーん、と胸にくるものがあった。
朝井リョウさんの解説も、大好きです
Posted by ブクログ
久しぶりの窪さん。人は弱いものだ。
誰かに頼らなければ生きていけない。
日奈の人生も、海斗の人生も、宮澤さんの
人生も、どこか孤独を感じさせる。
窪さんの作品はいつも、人の不完全さを
つきつけられる。
それと同時に、みんな器用にたやすく
生きてるわけじゃないんだと安心もする。
日奈の「そばにいてほしい」という素直な
言葉に救われる。
Posted by ブクログ
誰かに縋りたくて、寂しくて、どうしようもない時がある。本来はみんな孤独で死ぬ時も一人だ。それでも誰かと生きることを辞められない。すごくリアルだった。登場人物全員の気持ちが分かった。
朝井リョウの解説も含めてラストはぽろぽろと涙が溢れてきた。
手を握るところで終わるのも良かった。
Posted by ブクログ
最後の浅井リョウの解説が内容をより深く心に刻む。明るい話ではないが、誰でも持ってる人の裏側に潜む複雑なヒストリーが描かれている。30代後半のパートナーと交際したり身内の死を経験した人の方がより過去の自身の経験と照らし合わせて感情を想像しやすいのではないだろうか。
意外とキレイな生い立ちだろうと思っててもダークな家庭環境や不幸な出来事を経て大人になってる人も結構あったりする。。
Posted by ブクログ
*富士山を望む町で暮らす介護士の日奈と海斗はかつての恋人同士。ある時から、ショッピングモールだけが息抜きの日奈のもとに、東京の男性デザイナーが定期的に通い始める。 町の外へ思いが募る日奈。一方、海斗は職場の後輩と関係を深めながら、両親の生活を支えるため町に縛りつけられる。自分の弱さ、人生の苦さ、すべてが愛しくなる傑作小説*
苦しくて、寂しくて、寄る辺なくて。わかっているのに、泣きながら執着してしまう、恋。
そんな自分を突き放して見ているもうひとりの自分。
登場人物毎の目線で語られるストーリーそれぞれに哀愁が漂い、切なさでいっぱいになります。
この方は、揺れ動く情景を文字に起こすのが本当に巧い。
秋の夜長に、じっくりしっとり物思いに耽りながら再読したい本。
Posted by ブクログ
生きるって苦しいけど愛おしいと思える本。
心に残った文章
【責任感じて誰かと生活するっていうのが一番だめだって】
【人の体は永遠に繁茂する緑ではない。
けれど永遠じゃないから私はそれが愛おしい。】
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どうしてこんなにも自分を愛してくれて必要としてくれる人がいるのに違う誰かに惹かれてしまうのだろう。
恋とは本当に恐ろしいものだなと思った。
色んな人を傷つけ、巻き込んでまでも己の愛の為に突き進んでしまう。
最後に残るものは同じなのに自分の気持ちに嘘はつけずに、後悔することがあっても人を愛してしまう。
切なくて苦しい話だった。
Posted by ブクログ
介護士として働く地方民を石川啄木の短歌「働けど働けどじっと手を見る」に重ねて読んだ。一生食いっぱぐれない職と地方では謳われているけど、一生安泰かと言われたら違うもんなぁ。介護についても色々考えてしまう。正直、自分よりも未来のある若者になけなしの給料で介護されるのなら、自分の力で生きて行けなくなった時点で人生の終止符を打ちたいなぁと本気で思う。自分が年取るまでに日本で安楽死制度はできるのかな。
地方民と都会民の超えられない壁の描写も胸に沁みた。人生はいくらでも変えられると言う人もいるけど、結局は生まれた環境が自分の人生の基盤で、どう頑張ってもそこは覆せないんじゃないかなぁと思う。そこを覆すのではなく、その基盤でどう幸せを見つけていく事が、長い人生を過ごす上で大切なんじゃなぁかな。一人一人基盤が違うのだから、自分の価値観を人に押し付けるのは何とも烏滸がましい事なのだと思った。
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作家の朝井リョウさんおすすめの恋愛小説! のっけからの性描写で、この本、このままだと挫折かもと、気を揉んだが、あの朝井リョウさんがおすすめするなら何かがあるはずと読み進めた。柔らかい文体だが、子どもの話、ひどい。一話一話に体温を感じつつも、読んでいて少しずつ何かが抉られていったこの感じは何だったんだろう。
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この本を選んだきっかけは、Twitterか何かで紹介されていたような気がする。性描写がすごく丁寧で官能的で生々しかった。
結局いっときの気の迷いで、よく見える人についていくと、破滅に向かうなということがわかった。
生まれてきた環境の違いで、人生の簡単さがこんなにも変わるのかとある主残酷性があった。
あんまり明るい話じゃないので、気持ちが落ち込んでいるときには読まないほうがいいと思った。
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田舎の閉塞感と人間の弱さ•脆さ•不確かさみたいなものが真綿のように詰め込まれた本。
地方は向上心を持たなくてもいいし、
限られ、閉ざされたコミニュティのなかで
やるせなさと共に傷を舐め合うんよな。
故郷を思い出した。
まあ流されるっていうのも一興なんですけどね。
Posted by ブクログ
自分にはもっと違う生きかたがあるんじゃないか、こんなはずじゃなかったと感じた隙間に出会う人や出来事、、、。
登場人物は歪んだ一面を持ちながらも懸命に生きていて、愛しい気持ちで読み進めることができた。人間ってみんな戻るべき場所に戻っていくものかもしれない。
根無し草のようにいなくなった畑中真弓と裕紀が幸せであれと、この先が気になってしまった。
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「はたらけど はたらけど猶 わが生活(くらし) 楽にならざり ぢつと手を見る」
という石川啄木の短歌は教科書にも出てくるくらい有名な国民的短歌らしい。(知らなった。)
この小説は恋愛小説だが、主人公の日奈と海斗は介護士の仕事をしており、この石川啄木の歌は二人の生活をまさに言い表している。恋愛だけでない色んなことを伝えてくれる小説だと思う。
狡くて滑稽だけど、優しくて愛らしい、すごく矛盾した、一筋縄ではいかない人間の姿が書かれている。恋愛の胸キュンというよりも、日々の暮らしと労働をメインに、誰かに支えてもらわないと生きていけない矛盾だらけの男女の様子を描いている。
海斗の日奈への一途な想いが苦しかった。主人公の日奈の心情は最後まで全然共感できなかったけど、そこも含めてすごく人間らしくて良いと思った。
Posted by ブクログ
TVの番組で朝井リョウさんが推していた作品。だけど、僕には刺さらなかった。最初から最後まで悶々としてしまった。富士山が見える土地で暮らす主人公たちの暮らしが描かれる。一人は一度他の土地に離れるけど、また戻って元の恋人と寄り添い始めるところで終わる。登場する人物が皆んながやるせない日々を送ってます。生活ってそんなものなんでしょうか…
Posted by ブクログ
いきなりSEXの場面から始まってびっくりしたw
登場人物みんな揃いも揃って性欲強めやな。
日奈が少し自分に似てる感じがして好きになれない。
海斗は畑中と生活したことで自分と向き合い、精神的に日奈との距離を取れた感じがする。
日奈も自立できるようになって、何だかんだでこの2人は上手くやっていけそう。
何もかも上手くこなせる人なんて、いないよな。