あらすじ
富士山を望む町で暮らす介護士の日奈と海斗
はかつての恋人同士。ある時から、ショッピ
ングモールだけが息抜きの日奈のもとに、東
京の男性デザイナーが定期的に通い始める。
町の外へ思いが募る日奈。一方、海斗は職場
の後輩と関係を深めながら、両親の生活を支
えるため町に縛りつけられる。自分の弱さ、
人生の苦さ、すべてが愛しくなる傑作小説。
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Posted by ブクログ
けれど、介護の仕事に携わる時間が長くなるほど、生の終わりの決定権を誰一人持っていないことを思い知らされる。介護をされている三好さん自身にもその権利はない。(P、171)
人の体は永遠に繁茂する緑ではない。けれど、永遠じゃないから、私はそれがいとおしい。(P、306)
Posted by ブクログ
誰かに縋りたくて、寂しくて、どうしようもない時がある。本来はみんな孤独で死ぬ時も一人だ。それでも誰かと生きることを辞められない。すごくリアルだった。登場人物全員の気持ちが分かった。
朝井リョウの解説も含めてラストはぽろぽろと涙が溢れてきた。
手を握るところで終わるのも良かった。
Posted by ブクログ
梅雨のようなじっとりとした空気が物語全体に漂っていたが、繊細でリアルな描写のおかげでかなり読みやすい恋愛小説だった。性描写も多々あるが、私としては綺麗でいやらしさがなくて良いと感じた。
私はどちらかと言えば宮澤や仁美ではなく、日奈や海斗に近い生活をしているので、職は違えど共感できる部分が多くあり感情移入してしまった。休日はショッピングモールに行き、特別欲しくもないものを買ってストレスを発散する。恋愛も身近な人と。生活水準が同じくらいの人でないと関係を続けて行くのは難しいし、日奈たちもそういう感じなんだろう。
恋愛模様と生死がいつも隣り合わせで、恋愛の浮ついた様子があまり描かれていなかったのが、私には心地が良かった。
『永遠じゃないから、私はそれがいとおしい』
Posted by ブクログ
*富士山を望む町で暮らす介護士の日奈と海斗はかつての恋人同士。ある時から、ショッピングモールだけが息抜きの日奈のもとに、東京の男性デザイナーが定期的に通い始める。 町の外へ思いが募る日奈。一方、海斗は職場の後輩と関係を深めながら、両親の生活を支えるため町に縛りつけられる。自分の弱さ、人生の苦さ、すべてが愛しくなる傑作小説*
苦しくて、寂しくて、寄る辺なくて。わかっているのに、泣きながら執着してしまう、恋。
そんな自分を突き放して見ているもうひとりの自分。
登場人物毎の目線で語られるストーリーそれぞれに哀愁が漂い、切なさでいっぱいになります。
この方は、揺れ動く情景を文字に起こすのが本当に巧い。
秋の夜長に、じっくりしっとり物思いに耽りながら再読したい本。