たおやかに輪をえがいて

たおやかに輪をえがいて

小説・文芸
880円 (税込)

4pt

結婚二十年。娘は大学生に育ち、住宅ローンもほぼ完済し、主婦・絵里子の人生は穏やかに収束するはずだった。夫の風俗通い、娘の危険な恋愛、愛した父の不実など、思いがけない家族の秘め事が明らかになるまでは……。妻でも母でもない道が、鮮やかに輝き出す長編小説。解説・島本理生

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  • カテゴリ
    :
    小説・文芸
  • ジャンル
    :
    小説 / 国内小説
  • 出版社
    :
    中央公論新社
  • 掲載誌・レーベル
    :
    中公文庫
  • タイトル
    :
    たおやかに輪をえがいて
  • タイトルID
    :
    1273507
  • ページ数
    :
    416ページ
  • 電子版発売日
    :
    2022年12月21日
  • コンテンツ形式
    :
    EPUB
  • サイズ(目安)
    :
    4MB

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たおやかに輪をえがいて のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    まさに自分のことかと思えるような話だった。
    年齢を重ねて旦那との温度差も出てきてまさしくなやんでた部分がそっくりだったので読んでいてどんどん引き込まれた。
    もうどのページもよかった。
    最後も本当に新しい夫婦に戻れてよかった。
    特に何か特別なことをしなくちゃ人は生きていたらだめなのかな?の言葉は刺さった。どんなつまらなさそうな人生だってその人の人生なのだ。
    私の人生をこれからを大切に生きていこうと思った。

    0
    2026年09月01日

    Posted by ブクログ


    良い。

    人間ってもっと不可解で、全部が全部、
    まっすぐ線が引けるように世の中はできてない。

    登場人物から見た「当たり前」が、
    視点を変えるとそうではなくて。
    どこか答えのない輪っかの中をぐるぐると
    回り続けているような感覚。

    1人の母親の人生を
    見届けてきたが、もっと人間は自由に、
    好きなことを好きなようにやって、
    周りに縛られずに、自分らしく生きていけばいいんだと、学ぶものがあった。

    いろんな人がいていいのだ。
    いろんな考えがあっていい。
    答えを必ず、見つけなくてもいい。
    窪美澄先生からの愛のあるメッセージだと感じた。

    これでこそ、
    人生。

    定期的に読み返したいと思える小説。

    0
    2026年04月03日

    Posted by ブクログ

    じっくりゆっくり読ませてもらった。
    人生の在り方。絵里子を通して考えさせられる。
    様々な女性の生き方。
    心との折り合いをどうやって付けていくのか絵里子と一緒に考えた。
    52歳になったらまた読みたい。

    0
    2025年11月10日

    Posted by ブクログ

    現在40代の自分。すごく刺さる作品。前半の絵里子が他人事とは思えず、自分の行く末を見ているような気分だった。だからこそ変わっていく絵里子が眩しくて格好良くて、私もこんな風に生きたいと思う。

    0
    2025年06月12日

    Posted by ブクログ

    最近は三国志や三体など大作めいたものを読み耽っていた私だが、夫の風俗通いを見つけてしまったとこから始まる小説を楽しめるのか不安だったけど、やっぱり窪美澄さんは最高である。

    登場人物がそれぞれ抱える悩みが身近で、家族や友人、街ですれ違う人や電車で向かいに座った人、全員が大なり小なり悩みを抱えているんだと再認識させられた。

    窪美澄さんの小説は、穏やかに始まって、気づいたらドカ雪が降って、暖かい日差しで雪解け、そこは元の形に戻らないけど、一歩前進した新しい場所になっているみたいな、最後はすごく温かい気持ちになれる。

    大好きな作品になりました。

    0
    2024年06月15日

    Posted by ブクログ

    窪美澄さんの、日常に溢れた描写や感情が丁寧に繊細に言葉にされている感じ、そしてそれが優しく、時にガツンと胸を打つ感じ、とても好き。

    島本理生さんの解説が今まで読んだ"解説"というものの中で1番好きだった。一気読みおすすめ。

    p.71 誰かときっちり縁を切りたいときは、お金をたくさん払ったほうがいいんじゃないかな。身銭を切るって、本当はそういうことなんじゃない。

    p.93 仕事に貴賎は無いのよ。それに仕事をしているからってえらいってもんでもない。自分以外の生き方や仕事を貶める人に、いい写真なんて撮れないよ。

    p.98 しおりの体とは違う華奢な体に抱きしめられながら、絵里子はみなものを印象が、この部屋に来た時から、柔らかくなっていることを感じた。人を愛して、愛されている人間の体は、あたたかく、柔らかい。さて、自分はどうだろうか、と、玄関で2人に見送られながら、絵里子は思った。

    p.129
    父の看病に疲れているとは思いたくなかったが、父の声の終わりを見つめる役目を自分だけが果たしているのかと思うと、頭に重い石を置かれたような気分になる。それでも、このお店で一息ついて、明日、また父の病室に行くのだ。孤高給水場にしよう。長いマラソンの給水所のような場所に。ゆっくりカクテルを飲み終わる頃に、絵里子から少し離れた席に人が座る気配がした。誰かが店に入ってきたことすら恵理子が気づいていなかった。

    p.138 火曜日か木曜日にこの店に来れば、酒井さんに会えるのだ。長距離マラソンの給水所に決めた。この店に、話を聞いてくれる誰かがいること。そう考えたら、重苦しい思いに満ちた絵里子の胸の中に、小さな明かりが灯るような気がした。そして、そのことを絵里子はありがたく思った。

    p.227 夫と自分の関係は今や、伸びきったゴムのようだ。みなもが言うように、離婚や慰謝料をもらうなどと言う考えは、頭の片隅にもないが、絵里子と夫はこの出来事に、まっすぐ向き合わないといけないのではないか。

    p.236 私の夫は、俊太郎さんは、いつから、こんな人になってしまったのだろう。絵里子のとりとめのない話でも、視線を逸らさず、最後まで聞いてくれるあの人はもういない。いや、私たちはいつからこうなってしまったんだろう。夫婦、と言う関係性に安住して、水も肥料をあげてこなかった。萌が生まれた頃までは、みずみずしかった若葉は、今は枯れ果てて、私たちはまるで他人のようだ。

    p.246 まるで私はケーキみたいね。この家の空気みたい。無色透明で目には見えない…でもね、そんなこと、自分でも数子感じていたの…。萌のために、あなたのために、って自分なりにいろいろやってきたつもりだったけれど、それは萌にとってもあなたにとっても、良くないことだったのかもしれないね。愛情の修理。私は、今ね、自分が何したいとかって何が好きとかも、もうよくわからないの。そういう人間は、子供からも夫からも興味を持ってもらえないよね。…でもね、今、少しわかったの。自分が何したいのか。

    …少しね…離れてみたい。

    p.250 長年務めてきたパートだ。正直なところ、クビになるのは辛い。新しい職場を探す気力も湧いてこないような気がした。けれど、それ以上に、今、自分は息ができない。1人になりたい。たとえ、パートをクビになっても、その後の事はその時になったら考えよう。そう思うようにした。

    p.259 すぐにうすはりのグラスに注がれたビールが運ばれてくる。恵理子端端を取る前に1口飲んだ。おいしい、とはっきり思った。ここに来る前、列車の中で缶ビールを飲んだときには、おいしいとは思えなかった。このホテルに来て、音楽を聴きながら海を見ていた数時間で、少なからず恵理子の体と心はゆるくほどけつつあった。

    p.271 いつか誰かが言っていたことを思い出した。風には悪いものを吹き飛ばす力があると。自分の中のもやもやとした薄墨のようなものが全部飛んでくれればいいと思いながら、絵里子は風に吹かれた。いつの間にかいなくなっていた鹿子さんが戻ってきて、小さな紙袋を絵里子に差し出す。

    p.278 弱いですね、私。1日か2日、家族と離れた位で。

    弱いんじゃない。優しいの。絵里子さんの今までの人生の事なんて、私はちょっとも知らないけれど、絵里子さんは今まで、もう十分に家族のために生きてきたんじゃない?あなたは確かに、優しい人だけれど、ご主人や娘さんのために一生懸命やりすぎたのかもしれないね。だから、あっちもつけあがるのよ。これからは、こんなふうに、ふらりと、どこかに出かけるとか、やりたいことやったら。あなたはもう十分に誰かのために生きたんだよ。…私はね、機嫌よく死にたいのよ。ただ、それだけ。この世からいなくなるときに、あんなことしておけばよかった、こんなことしておけばよかった、なんて、後悔したり、誰か恨んだりしたくないの。やり尽くしたー、生きたーって思いながら死にたいのよ。

    p.295 男の人って弱い、本当に弱い生き物なんだと思ったんですよ。笑っちゃう位弱い。私はうんうん、て話聞いてるだけですけど、まじですか、て言う位弱い。私みたいな見知らぬ人間の前で子供みたいに泣いちゃう人がいるんです。普段はそんなに強がってるのか、つながらないといけないのか、そうしないと生きていけないのか、。だからって、それを肯定しているわけじゃないですよ。もっと自由に、楽に生きればいいのに、で私は思う。でも、世の中にはどうしても、それができない人がいるんですよね。風俗に行く人って、ただ強くを解消しているだけに見えるかもしれないですけど、みんな、なんていうか…うまく言えないけれど。

    優しくされたいのは、男だけじゃないよ。男も女も、大人も子供も、みんなそう思って生きてるんじゃない?だけど、ちょうどいいタイミングで、優しさを受け取れない時もある。そういう虚しさを抱えて、人って生きてるんじゃないの。優しくされたいのなら、先に誰かに優しくすればいい。簡単なことだよ。そうすれば、いつか優しくされる日が来るかもしれないじゃない。自分だけ家族に隠れて風俗に行って、女に頭撫でられて、しくしく泣いて、優しくされたいなんて、甘えるにもほどがあるつーの!これだから男は。

    性的な介護でもあり、精神的な介護でもあります。自分は性的な交わりを通して、人を介護しているんだって、それでお金をもらっているんだ、て考えたら、ほんの少しだけ、風俗の仕事への後ろめたさが消えたんです。絵里子さんのご主人がどんな気持ちで風俗にいかれたのか、私もわからない。ただの性欲だったのかもしれない。だけど、やっぱり家族以外の誰かにケアしてもらいたいって気持ち、少しはあったんじゃないですか。絵里子さんも、そういう気持ちになることがありませんか?誰かに体や心をゆだねたいって言う時が。

    体や心をゆだねたいって思う相手は、いつだって夫だったんです。

    p.353 それでも、今、萌が自分押したって、こうしてここにやってきてくれるだけで良い。車検から見れば通りの良い親子関係じゃないのかもしれない。でも、世間なんて、一体どこにあるんだろう。あるように思っているだけで、それには実態が無いのかもしれない。

    p.361 何か特別なことをしなくちゃ、人は生きてたらダメなのかな?この写真のモデルさんの中には、専業主婦の人だっているよ。独身で、子供もいなくて、仕事をしてない女性だっている。車検から脚光浴びたり、ミラーボールみたいにピカピカ輝いている人ばかりじゃないんだよ。この子みたいに、世間には大っぴらに言えないような仕事をしていた子もいる。

    悩んでても、恥ずかしくても、自分のことを卑下したりしない。私はそういう女の人が撮りたいんだ。みんな真剣で、一生懸命で、自分の人生を生きている。だから、みんな、私はただのおばさんです、なんて言わないよ。自分の人生で、いつも戦ってる、どんな時でもバッターボックスに立っている、いつも土俵に立って。そんなお相撲さんみたいな人はいないか。だけどね。私は絵里子さんに会ったとき、本当のことを言えば、絵里子さんのこと嫌いだった。いつだって誰かが自分のことを決めてくれるのを待っている。子供みたいだったもの。旦那さんの事だって、いじいじずっと悩んで、しおりに泣き付いて。だから、恵理子さんを取りたいなんて思わなかった。だけど、恵理子さん、しおりのマンションに暮らすようになってからどんどん変わっていた。この人、やっと、自分の人生を歩き出したんだ、と思ったの。最初に会ったときには知らなかった顔を絵里子さんはするようになった。私が絵里子さんと言う女性を取ってみたいと思う顔をしていた。だから撮ったの。良い女の顔だよ。


    p.403 解説ー島本理生

    白髪を通して、女性同士は多くのことを語る。年齢の事、女性であること、世間の自然と自分がどうありたいか。外見に手をかける。気力が体力の低下とともに失われること。純粋のおしゃれのためだけではなく、社会との折り合いや加齢による様々な影響が、白髪染めと言う行為には反映される。

    本書の冒頭で、主人公の絵里子は、白髪染めについて考える。染めるのは好きじゃない。が、「世間に対して物申しているような雰囲気を醸し出す」のも抵抗があるから、と言う消極的な選択は、とてもリアルで、今の絵里子の生き方も象徴しているようだ。そんな絵里子にとって、友人のしおりは、まるで別世界の住人だ。おそらく学生時代に親しくならなければ、今になって交わる事は絶対になかった。逆に言えば、学生からの友人と言うのは、唯一、過ぎ去った時間を飛び越えられる存在なのかもしれない。同窓会で再会した。しおりは、絵里子に失恋と政経の理由を包み隠さずに語る。これは私の想像だが、しおりは整形前も年齢相応に綺麗だったのだろうと思う。ただ、自分の一方的な恋愛感情に年齢と言う思いが加わった時、その対象となった年下の女性には、恐怖でしかないと言うのもよくわかる。なぜなら、それは多くの女性が若いときには違う感覚だからだ。

    私はこの場面を読んだときに、どうして人が小説に救われるか、わかった気がした。それは誰にも言えないことこそを、小説の登場人物たちは、良さをさらけ出して打ち明けてくれるからだ。恵理子は「心を開いて、自分の本当のことを話してくれる。しおりの存在がありがたいと思った」と感じるが、私も同じ気持ちになった。しおりの店の下着を初めて身に付けた時、絵里子は「なんて醜いおばさん」と悲しみを覚える。その肉体は昨日も一昨日も絵里子のものだったはずなのに、時間の止まっていた。彼女の目には「魔法にかかったみたい」に映る。でも、それは母親の世界においては、珍しいことではないのだ。しおりがみなもから見れば、絵里子は古風な女かもしれないが、どんなに時代が変わっても、子育ては自分よりも優先する命を20年近く世話し続けることだから。動物の子のように産んで、すぐ立ってくれたら良いが、人間の成長には物理的に時間がかかる。そこにずっと手をかけてきた絵里子が今になって「自分でもどうしたいのか、よくわからないの」仕方ないと思う。私はむしろ絵里子が醜いと思った肉体に、深い優しさを感じた。それは私のために積み重ねた時間を内包している肉体だ。そう、絵里子は優しいのだ。一人きりで、癌の父親の世話をし、父の死後に、母親から再婚を告げられた時も、絵里子とっさに責めることができない。どうしてそこをはっきり言ってしまわないのだろう、閉じるたく思う時もあるが、1人で生きていけるほど強くないと言う母親に対して絵里子は考える。「なぜ、哀れむ気持ちが湧いてくるのか」と。

    絵里子はいつもそうやって、自分の感情の前に、相手を慮る。父親の浮気や夫の風俗通いに傷つきながらも、つい「哀れ」を感じてしまう。それは、真実を知ることに対する恐れもあるかもしれない。でも、やっぱりそこには誰よりも優しさがあって、周囲は絵里子に当たり前のように甘えていた。だからこそ、彼女は変わるべきだったのだろうと思った。1人旅に出てから絵里子の心に増えたものがある。それは、美味しい、だ。そんな恵理子に旅の楽しみ方を教えてくれる鹿子も魅力的だ。絵里子よりも年上の女性の口から「私はね、機嫌よく死にたいのよ」と言うセリフが飛び出した時、私、と言う単語とは、裏腹に、その前向きな力強さにはっとした。人は必ず死ぬ。でも、死を待つように生きるか、生きたいように生きるかは、少なからず、自分の意思が左右する。絶望も希望も、私ではなく、生き方の中にあるのだ、と思った。そして、母親の再婚相手の隆の葬式で、絵里子は腹を立てる。私は彼女がようやく正当に怒れるようになったことを嬉しく感じた。絵里子は、夫に風俗通いについても尋問する。「長く一緒に立って共有できないものがある」ことを、頭ではなく、体で知った絵里子は決して絶望の中にはいないように思える。なぜならそれを知る事は、真の意味で他人を知ることだから。

    一方で、それを突き付けられた、夫の俊太郎はこう言い返す。「君はこうと決めたら、誰の言うことに耳を貸すことは絶対にないものな」夫の目には、絵里子がそんな風に映っていたのか、と愕然とする。もしかしたら俊太郎は、自分の言葉に耳を貸してくれない、失望して夜の世界に癒しを求めたのかもしれない。そういう男側の弱さに対するみなもの、「ちょうどいいタイミングで、優しさを受け取れない時もある。そういう虚しさを抱えて、人って生きてるんじゃないの」と言う批判は秀逸だ。一方で、絵里子の母は言う。「親なのに、恵理子のことが怖かったのよ」と。そして「俊太郎さんも絵里子に対して、この人には話せない、と思うことがあったのかもしれないね」と。それはずるい言い方ではあるけれど、正しい人には、理解されない感情を抱えた時、意識的に避けてしまう気持ちもわかる。実際、絵里子は、妹の芙美子の理子も理解できず、それだけで家庭を壊す事ができるものなのだろうか、と腑に落ちずにいるのだ。楓を前にして、風俗に勤める女性のことをどこか見下していたことにも気づく。正しさは大切だけど、安易に物事をジャッジする側に回る危うさもはらんでいる。何より、目の前の人を、一個人として見なくなってしまう。恵理子が自分を失った時、彼女自身もまた、周りの人の中にも「自分」があることを忘れていたのかもしれない。善でも悪でもない輪郭まで鮮明になることで、私は絵里子と言う女性を心に知ることができたように感じた。

    そんな恵理子に、しおりの店の客は、心を開いてうちあけ話をするようになる。あれ、と思う。これってよく考えたら変わる前の絵里子の身にも起きていたことだ。そう、絵里子の言い分は変わっていないのだ。彼女はずっと優しい。ただ、そこに強さと意志が備わった。そして1人の人間になった彼女のもとにメールが届く。「僕が悪かった。君にとても会いたい」と。それは俊太郎もまた1人の男性に戻ったからこそ出た言葉だと思った。以前の絵里子にとって、一人旅もシャンパンも寂しく不謹慎なことだった。これは、古い考えに見えて、多分今も家庭がある大半の女性にとってはそうなのだ。バージニアウルフの『自分ひとりの部屋』の中に、若い女性に向けた「ワインを飲んで、自分1人の部屋を持ちなさい」と言う一文がある。日本の多くの女性は、家庭を持つと、自分の部屋を失う。子供じゃなくなったら、今度はプライベートな空間を失うと言うのは、皮肉なことだと思う。そして家族と離職、すべての境界が曖昧になっていく。それは問題さえ起こらなければ、幸福の1つの形かもしれない。一方で、先程の本には、こんな続きがある。「お金を稼いで、自分1人の部屋をを持ちなさいと申し上げる時、私は皆さんに現実を見据えて生きてくださいとお願いしています」その言葉の意味を、本書とともに、今改めて考えたいと思う。

    恵理子の現実の中で、一貫して他の男性ではなく、俊太郎と向き合いたがっていた。自分が変わったからといって、必ずしも愛が消えるわけではないのだ。同時に、人の感情は、半永久的に所有しておけるものではない。だから、恵理子と俊太郎がそれを望む限り、何度でも出会い、直せばいい。変わった分と変わらない部分頭を擦り直すために。そんなふうに私は思う。

    0
    2023年02月08日

    Posted by ブクログ

    「自分はこうやって、過去の家族との思い出を反芻して生きていくのだろうか」
    「家族の思い出はもうこれから先、ひとつも更新されないような気持ち」
    「家族が幸福だった時期は、とうに終わってしまったのかもしれないな」

    子育てが落ち着いた中年女性の侘しさと焦燥感、余生と向き合う葛藤を題材に、様々な人との出会いの中で変化していく主人公が描かれる。
    私にとっても近く迫り来る課題である。

    母であり妻であることを全うしていれば、満たされていた時間はやがて過ぎ、いつまでも母妻らしくいて自分をもたなければ、疎ましがられるフェーズが訪れるから、残酷なものだ。

    「自分を取り戻す」と言えば簡単だが、長い年月を経て得た「今の自分」を変化させ現状にフィットさせることは、相当に「たおやか」でなければ成し得ない。

    迫り来るミドルエイジクライシスに備え、「女性よたおやかであれ」との作者からのメッセージと受け取った。


    0
    2026年10月05日

    Posted by ブクログ

    絵里子と自分と重なる部分も多くこの夫婦がどうなるのか気になりながら読み進めた。実家、子供、友人、夫との関係絵里子のコミュニティは自分と似ている。自分の殻を破るきっかけは夫との不仲だけれど20年目にその関係を見直せたことでこれからの2人には大いに有意義だっただろう。絵里子が殻を破れたのは友人の存在なしでは難しかっただろう。

    0
    2026年10月04日

    Posted by ブクログ

    周りの友達との関わりから、どんどん主婦から自分の人生を歩んでいく姿に力強さを感じました。

    例え夫婦だとしても、1人の人間だし、自分のために生きていいんだと思えました。

    夫婦や家族の役割にとらわれすぎてその人の可能性を閉ざすのは勿体無い。

    結局は結婚しても自分の人生は自分の人生なので、自分次第だなと。

    0
    2026年05月18日

    Posted by ブクログ

    言葉を飲み込む瞬間が積み重なると、それがやがて歪みとなり、軌道を修正するのに時間がかかることを知った。だからこそ、自分のためにも、将来の家族関係のためにも、感じたことは言葉にして伝えるべきだと思う。
    主人公が自分を取り戻していく姿は、何歳からでも自分次第で変わることができるのだと教えてくれる。今からでも、自分自身を大切にする習慣を身につけていこう。

    0
    2025年06月16日

たおやかに輪をえがいて の詳細情報

  • カテゴリ
    :
    小説・文芸
  • ジャンル
    :
    小説 / 国内小説
  • 出版社
    :
    中央公論新社
  • 掲載誌・レーベル
    :
    中公文庫
  • タイトル
    :
    たおやかに輪をえがいて
  • タイトルID
    :
    1273507
  • ページ数
    :
    416ページ
  • 電子版発売日
    :
    2022年12月21日
  • コンテンツ形式
    :
    EPUB
  • サイズ(目安)
    :
    4MB

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