窪美澄のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ「二度目の恋」でらなく、「二周目の恋」って何? と思いながら手にとった。
恋愛小説のアンソロジー。
同じ人にもう一度恋をする、というより、過去の恋の色んなものを乗り越えて、振り出しに戻って新しい恋をスタートさせる、というイメージかな。だからといって、すべての話がそうとは決まっていない。
もうすでに「付き合ってる」ような感じだけど、明確にするために頑張る女子大生や、結婚を経験したのちに自分らしい恋愛をする女性。脱皮して一回り大きくなった人たちが出てくることは間違いない。
昔は居心地が良かったけど、新しい世界で生きていると、なんだか昔のことを違う視点から見られるようになっている、なんてことはよくある。憧れだったのか、恋をしてるふりをしていたのか、世間体を気にしていたのか。
登場人物たちは、縛られていた何かから放たれて過去を振り返らずに突き進んでいく。
一番良かったのは、一穂ミチさんの「カーマンライン」。空と宇宙の境界部分のことをカーマンラインというらしい。
時代設定が平成初期だけど、意外と良かったのが遠田潤子さんの「道具屋筋の旅立ち」。今も同じような男性はいるだろうな。どんな人もできるだけ自然な自分を出せる相手が何人かいるだけでずいぶん楽になると思う。
あとね、窪美澄さんって苦手かもって思ってたけど、ここでレズビアンの女性の話が出てきて、これが良かった。上手くどこがどう印象的だったのか分からいんだけど、幸せな気持ちになった。
目次
最悪よりは平凡 島本理生
深夜のスパチュラ 綿矢りさ
フェイクファー 波木銅
カーマンライン 一穂ミチ
道具屋筋の旅立ち 遠田潤子
無事に、行きなさい 桜木紫乃
海鳴り遠くに 窪美澄
そういえば、「フェイクファー」を読んでるとき、「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」の小説を思い出した。
-
Posted by ブクログ
窪美澄さんの5つの短編集
「こどもをもつかもたないか」ということに真っ直ぐに向かい合った物語で、それぞれの主人公なりの考え方や生き方が描かれていて、正解を導くことはなかった。ここには、生まれ生きていく中で、新しい命を成すかどうかは、誰でもない自分あるいは自分たちで決めて行くのだから・・・という作者の意志が強く感じられた。
妊娠・出産といったテーマを多く描かれている窪美澄さんらしく、多様な場面や人物設定だった。どの物語でも主人公の意志が、ごく自然体で表現されていた。読み手は、きっと主人公達の何処かに気持ちを寄り添わせることが出来る作品だとも思う。「こどもをもつ」ことに否定も肯定もしない姿勢は、どんな生き方も尊重されているように感じた。
奥ゆかしさを美しんできた日本人は、性に対する意識がまだまだ閉鎖的だと思う。結婚適齢期には敏感だが、妊娠適齢期には鈍感なのも、その影響があるように思えてならない。昨今の初婚年齢の高齢化による高齢出産、それによる妊婦・こどもへのリスク、また女性特有の疾患や夫婦で取組む不妊治療に対する知識の乏しさ。
当事者になって初めて知るケースが余りに多く、男女平等が叫ばれる中、男性と肩を並べて社会に出て働いて来た女性達が嘆き悲しむ場面を、私も身近に幾つも見て来た。
第5章 金木犀のベランダ
作中の節子さん曰く
「昔はね、ふたつも選べなかった。結婚と仕事、ふたつ手に入れることは難しいことだったの。今の人は結婚も、仕事も、子どもも、手に入れることができる。ほんとうにいい時代になった。」
とあった。
まさにその通りだと思う。
今の時代はどちらも手に入れることが出来る選択肢があったとしても、その両方の表だけでなく裏も側面も知った上で、「こどもをもつかもたないか」ということに向き合うための知識と教養を培うことが大切だと思う。日本では学校教育の場でこの分野について教わることは僅少だ。受け身で待っていては手遅れになることも多い。
本作を手にした方にとって、そこに向き合うための一助となるように・・・という作者の温かい願いを感じる作品だった。
-
Posted by ブクログ
主人公にまったく共感ができず、序盤はかなりイライラした。
52歳の主婦絵里子は、夫と、20歳のひとり娘の3人暮らし。一見どこにでもいる家族だが、それぞれがフラストレーションを抱え、それが積もって絵里子は家を出る。
絵里子は言いたいことを言わず、怒らず、家族のためを思って家のことをこなしてきた。絵里子の内面が描かれているから、余計に思っていることがあるなら言って!と思ってしまう。
溜め込むタイプの人は爆発すると怖いな。
家族だろうと親友だろうといくら心が通っていると思っても、言いたいことはやっぱり口で伝えなきゃいけない。わかった気になっているのがいちばんダメ。
絵里子が家を出てからの変貌ぶりはすごい。絶対こっちの絵里子のほうが魅力的。ただ、ここにたどり着くまでが長い、、、絵里子のうだうだしてる時間が長すぎてキツかった。 -
Posted by ブクログ
◆心に刺さったワード◆
⚫一日の中に締切があると、規則正しく進む
⚫中途半端な人こそ自分を天才に見せようとして横柄になる
⚫仕事してる間は、自分の内側のことで悩まなくていい。それに、金銭が発生すると「社会に必要とされてる」と思えて、自分のなかの欠落感が埋まった気になる。その「必要とされてる感」を失う怖さ。今仕事がなくなったときに、その欠落とうまく付き合う 技術や、人間 力への自信がない。そこから来る 強迫観念かもしれませんね。
⚫強い心は強い肉体に宿る
◆読んでみたい本◆
⚫変な恋愛の短編を集めたアンソロジー 岸本佐知子 『恋愛小説集』
⚫肩の力を抜きたい人 森鷗外 高瀬舟
⚫世界の実相をつかみたい人 古井由吉 辻
⚫次から次に変人が出てくる 村上龍 ライン