窪美澄のレビュー一覧
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窪美澄さんの5つの短編集
「こどもをもつかもたないか」ということに真っ直ぐに向かい合った物語で、それぞれの主人公なりの考え方や生き方が描かれていて、正解を導くことはなかった。ここには、生まれ生きていく中で、新しい命を成すかどうかは、誰でもない自分あるいは自分たちで決めて行くのだから・・・という作者の意志が強く感じられた。
妊娠・出産といったテーマを多く描かれている窪美澄さんらしく、多様な場面や人物設定だった。どの物語でも主人公の意志が、ごく自然体で表現されていた。読み手は、きっと主人公達の何処かに気持ちを寄り添わせることが出来る作品だとも思う。「こどもをもつ」ことに否定も肯定もしない姿勢は、どんな生き方も尊重されているように感じた。
奥ゆかしさを美しんできた日本人は、性に対する意識がまだまだ閉鎖的だと思う。結婚適齢期には敏感だが、妊娠適齢期には鈍感なのも、その影響があるように思えてならない。昨今の初婚年齢の高齢化による高齢出産、それによる妊婦・こどもへのリスク、また女性特有の疾患や夫婦で取組む不妊治療に対する知識の乏しさ。
当事者になって初めて知るケースが余りに多く、男女平等が叫ばれる中、男性と肩を並べて社会に出て働いて来た女性達が嘆き悲しむ場面を、私も身近に幾つも見て来た。
第5章 金木犀のベランダ
作中の節子さん曰く
「昔はね、ふたつも選べなかった。結婚と仕事、ふたつ手に入れることは難しいことだったの。今の人は結婚も、仕事も、子どもも、手に入れることができる。ほんとうにいい時代になった。」
とあった。
まさにその通りだと思う。
今の時代はどちらも手に入れることが出来る選択肢があったとしても、その両方の表だけでなく裏も側面も知った上で、「こどもをもつかもたないか」ということに向き合うための知識と教養を培うことが大切だと思う。日本では学校教育の場でこの分野について教わることは僅少だ。受け身で待っていては手遅れになることも多い。
本作を手にした方にとって、そこに向き合うための一助となるように・・・という作者の温かい願いを感じる作品だった。
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主人公にまったく共感ができず、序盤はかなりイライラした。
52歳の主婦絵里子は、夫と、20歳のひとり娘の3人暮らし。一見どこにでもいる家族だが、それぞれがフラストレーションを抱え、それが積もって絵里子は家を出る。
絵里子は言いたいことを言わず、怒らず、家族のためを思って家のことをこなしてきた。絵里子の内面が描かれているから、余計に思っていることがあるなら言って!と思ってしまう。
溜め込むタイプの人は爆発すると怖いな。
家族だろうと親友だろうといくら心が通っていると思っても、言いたいことはやっぱり口で伝えなきゃいけない。わかった気になっているのがいちばんダメ。
絵里子が家を出てからの変貌ぶりはすごい。絶対こっちの絵里子のほうが魅力的。ただ、ここにたどり着くまでが長い、、、絵里子のうだうだしてる時間が長すぎてキツかった。 -
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◆心に刺さったワード◆
⚫一日の中に締切があると、規則正しく進む
⚫中途半端な人こそ自分を天才に見せようとして横柄になる
⚫仕事してる間は、自分の内側のことで悩まなくていい。それに、金銭が発生すると「社会に必要とされてる」と思えて、自分のなかの欠落感が埋まった気になる。その「必要とされてる感」を失う怖さ。今仕事がなくなったときに、その欠落とうまく付き合う 技術や、人間 力への自信がない。そこから来る 強迫観念かもしれませんね。
⚫強い心は強い肉体に宿る
◆読んでみたい本◆
⚫変な恋愛の短編を集めたアンソロジー 岸本佐知子 『恋愛小説集』
⚫肩の力を抜きたい人 森鷗外 高瀬舟
⚫世界の実相をつかみたい人 古井由吉 辻
⚫次から次に変人が出てくる 村上龍 ライン -
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主人公となる専業主婦の絵里子は、結婚して20年近くなる52歳。
夫の俊太郎、娘の萌の3人暮らしで、なんの疑問もなく、ごくごく普通の主婦として夫の世話と娘の子育てにと、あたりまえのように日々暮らしていたが、ある日夫の秘密を知ってからと云うもの、これまでの自らの人生に大きな疑問を抱くようになる。
ある日絵里子は、夫が風俗に通っているのではとの疑惑が生じる。
絵里子は、そもそも風俗とはどのようなものかも知らず、サイトで検索したりして実態を知る。
がしかし、夫に真相を聞き出す勇気が絵里子にはなく、疑惑を抱いたまま悶々とした日々を過ごす。
そんな絵里子の唯一の理解者である親友の詩織は、親身になって絵里子のチカラになる。
詩織は絵里子とは正反対の性格で、可能な限り整形で若さと美しさを保ち、高級ランジェリーのショップを経営している現代に生きる女性だ。
そんな詩織と密に接することにより、絵里子は徐々に新たな考え方と生き方を模索するようになる。
妻でも母でもない、絵里子自身の道を見つけることはできるのか⋯、静かながらも新たな女性の生きる指標が綴られた物語だ。