須藤古都離のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ原告ゴリラ、被告動物園。こんな裁判なら何度でも傍聴したい。
裁判の顛末についてはフィクションとして楽しむべきだし、引用されていた判例もおそらくフィクション。
本筋は言語と意思の疎通にあるように感じた。
人間じゃない獣として扱われたローズが、人権を獲得し、人間として自身の行動を選択する。
弁護士に「君は弁護士になるには優しすぎる。僕みたいな冷酷な獣じゃないと務まらない」と言った言葉を受け取るラストシーンが印象的。直感的に「人間が獣を自称し、ゴリラが人間として扱われている」面白さを感じてしまったが、両者共に人間であることを思い直させられた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ
354ページの3行目を読んで雷に撃たれたような衝撃を覚えました。こんな感覚を覚えた本は初めてです。
ゴリラが人語を理解して話す、という時点ですごい設定だな〜と思ったのですが、読み進めるとすぐにローズの虜になりました。
ゴリラとして生きるローズも、人間のように生きるローズもどちらも生々しく書かれています。なので、読んでるうちにずっと私の中の蟠りであった、
"ローズは言葉を覚えたことで、ゴリラとしてのアイデンティティも、人間としてのアイデンティティも曖昧になってしまっているのではないか?"
という思いを、最後にちゃんと汲んで払拭してくれる作者が凄過ぎる。
オマリ銃殺を巡っての裁判は、ダニエル・グリーソンというとんでもないトリッキーな弁護士によって大逆転劇となり。
ダニエルがローズの"人権"を主張し、讃え、守ってくれて本当に良かった。
揚げ足取りの詭弁みたいな弁論がこんなに威力をもつことにも衝撃で、読むのが止まらなかったです。
作中いきなり登場し、ローズを断罪しようと躍起になっていたピーターの、厳格で凝り固まった考えを払拭したローズの一言にも最高に痺れました。
親友のリリーですら、ローズのことを"ゴリラ"として認識して無意識に人間のカテゴライズから外していますが、そのことに気付きつつも"言語の限界"と捉えて責めたりしないローズの優しさったらないです。リリーは彼女なりにローズに寄り添っているのでこれまた優しくて温かい気持ちになります。
ジャングルに戻って少しでも疲れたローズの心が休まりますように。
アイザックとの再会も果たせて本当に良かった。
読んでもなお、私はローズのことをゴリラと捉えてしまっているのがちょっと恥ずかしいです。
-
Posted by ブクログ
良い意味でのタイトル詐欺。
タイトルやあらすじのアオリ文は気にせずに読むのがオススメです。
設定から察するに、
「正義とは何か」「人と獣を分つものは何か」そんなメッセージの、教訓じみた話なんだろう。
(そう思い、子の読書感想文用に購入しました。)
そんな事を思いながら読み始めるのですが、
それはあくまで舞台装置の一つに過ぎず。
ちょっと風変わりで魅力溢れる女性が、自身のアイデンティティを見つける旅を描いた青春小説ですね。
(というわけで、結果的に中高生の読書感想文にも適してると思います。)
ジャングルのゆったり流れる時間も美しく、後半のアメリカでの急展開のスピード感の差を際立たせますが、
この流れに身を任せて読み進めるのも楽しい、エンタメ小説でもありました。 -
Posted by ブクログ
タイトル『それはそれはよく燃えた』の1文から始まるショートショート集。
ネットの炎上、恋心、火事など、こんなものまで「燃える」のかと思える作家25人の25作を1冊の本で読めるのはとても贅沢。
でも後味は25作25様で、ほっこり甘いものもあれば苦々しいもの、ざらっと心地悪いものなど本当にさまざま。
クイズノックのファンなので河村拓哉さん目当てでこのシリーズを読み始めたが、矢樹純さん、三津田信三さんなど、このシリーズは毎回新しい作家さんと出会えて、読書の幅が広がって嬉しい
私は総じてホラーが好きなので、今回の『それはそれはよく燃えた』はぞくっとする話が多くて、とても好み。不穏で悲しくて残酷。年末年始たっぷり楽しめた
-
Posted by ブクログ
ネタバレかなり面白かった
「新しい法律ができた」と言う話を軸に
・AIに絡んだ近未来
・全く関係ない未来
・過去から法律ができたことにより、現代になる
・新しくできた法律の内容が分からない
といった様々な進め方を楽しめた
舞台装置としてのAIの便利さ(我々に身近だが未知のもの)と、法律はルールの為それによって話の土台を作れる万能さに驚いた
〜特にお気に入り〜
矢野帰子先生→おとなも英語を学ばせる話。「英語介護」という考え方が面白かった
潮谷験先生→人々は、作品を楽しむときに作品の裏にいる作者と交流している。AIが作った作品だとその交流ができなくて孤独を感じる。新しい視点だな。オチも良かった。
大沼紀子先生→一番好きだった。人を殺したらokな国(=SFちっく)が、人を殺しちゃ駄目になる(=現代)という逆転の流れ。斬新な視点から、現代を揶揄してて面白すぎた。
五十嵐律人先生→過去から現代に。当たり前だけど憲法も作られたときがあったんだよなぁと。
-
Posted by ブクログ
アメリカの小さな町、ジェスローに住む小説家のトムは新作を書けずにいた。しかしある日、町にゾンビが発生し阿鼻叫喚の地獄絵図となる。地下シェルターに命からがら逃げこんだトムは、極限状況に追い込まれたことで創作意欲を刺激され作品を書き始めるのだが、実はそれは彼の妻の策略だった。さまざまな人の思いが絡み合い、物語が予想もしない方へと転がっていくスラップスティックな群像劇。
予備知識なしに読むほうがいいと思うので詳しいことは書けません。ジェスローの町の人々、マフィアと殺し屋、軍と警察などなどいろんな人の行動が、まさかそういう結果になってしまうだなんて! 数々の勘違いと思い違いがとんでもない惨劇へと発展してしまいそうな危惧もありながら、いや絶対に大丈夫だという強い希望感もありました。
まったく人間らしさを感じさせなかった殺し屋が、意外なものにドハマりしていくさまがとんでもなく愉快です。ここが一番平和な結末かもしれません。 -
Posted by ブクログ
一九六九年八月、スランプに陥っていた作家のトムが不気味な呻き声を聞き、窓の外を見ると、地獄絵図が広がっていた。見知った町の住人たちがお互いを貪りあっているのだ。地下シェルターに逃げ込んだトムは作家エージェント志望のケイティの叱咤もあり、死が迫りくる極限の状況下だからこそ作家は一心不乱に物語を語りはじめる……時を巻き戻して、なんでこんな田舎の町にゾンビが大量発生しているか、というと、実は『世界が終わる日が来たら書くかもな』と嘯いていた作家に小説を書かせるために町ぐるみで彼を騙そうとする計画が進行していたのだ……。
ということで本作は、冗談みたいな映画づくりがやがて意外な(そしてこれこそ冗談みたいな)騒動に発展する、というコメディタッチの作品になっています。まさかあのひとのあの行動が、こんな結果を生むとは……。様々な視点が入り乱れる群像劇スタイルで進んでいくので、途中までは関係図が整理しにくいところはあるかもしれませんが、後半、すべてが綺麗に絡まっていって、この形式だからこその気持ちの良いラストが待っています。読み終えると、なんだか幸せな気分になれる一冊でした。 -
Posted by ブクログ
25編のショートショート集で、ちょっとした時間にも読み進める事ができて楽しかったです。
全て『だから捨ててと言ったのに』の一言から始まり、そのあとは作者さんによって推理物になったり、ホラーになったり、感動物になったりと、ショートショート集なのにとても読みごたえがありました。
知っている作家さんの作品には作家さんらしさが出ていて楽しめました。初めての作家さんの作品もあったので好みの作風の作家さんの他の話も読んでみたくなりました。
このショートショート集をきっかけに読書の幅が広がりそうです。
今回は第四弾目とのことで、前作も読んでみたくなりました。