須藤古都離のレビュー一覧
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特殊な機器を身につけることによって、男性である自分と女性である他人との意識が自分と共有される、という現象が起こる話である。
SF的要素もあるが、性同一性障害についても考えさせられた。
自分が男であることの違和感、女性でいられる間が本当の自分だと感じること。
そしてアイデンティティとは?
この作者の作品はゴリラ裁判に続き2冊目だが、主人公や舞台が日本、日本人、ましてや人間に留まらないことによって、いかに普段、自分が国や性別、そのようなものに囚われすぎているのか、を知る。
しかし、これだけ世界中がネットで繋がる世の中になると、顔や声は必要なく、国も必要なく、ただ、そこには意識が存在するだけ、そんな価値観も広がっていくと感じた。 -
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すべて 「だから捨ててと言ったのに」 という一文から始まる25編のショートショート。
1行目は同じでも作家さんによって不穏な雰囲気だったりファンタジー寄りだったり、話のテイストが様々で面白かったです。
お気に入りだったのは以下の作品。
重政の電池 / 荒木あかね
武士のような言葉を話す犬のお話…?と思いながら読んでいったらあれよあれよと展開が変わっていて、最後はなるほど…!と思いつつ心が温かくなる一編でした。
海に還る / 多崎礼
普段ファンタジーはあまり読まないけれど、読みやすく世界観に引き込まれました。
切なさの残る読後感も好みでした。
猟妻 / 谷絹茉優
真実を知ってからもう一度最初から読み直すと、何気なく読んでいた一文の捉え方も変わって二度楽しめました。
活躍されているバンドでは作詞もされているとのことで、歌詞を拝見したら言葉遊びがとてもお上手で驚きました。
タイトルの「猟妻」も別の意味がかかっているのかなと思ったり…!
指輪の幽霊屋さん / 最果タヒ
女性同士の特別な関係性の物語がとても好きなので、不穏な話が多めのこの本でこんな物語が…!?と嬉しくなりました。
こういう関係性、とても好きです。 -
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ネタバレゴリラ研究員より母と共に会話の教育を受けて、手話を通じて自在に言語を話せるようになったローズ
父の死をきっかけにカメルーンからアメリカへの移住を誘われ、移住した先で番った夫を4歳の男の子を救うために射殺された
納得いかないローズは裁判を起こす
人の定義とは何なのか、動物の命は人より軽いのか、法の上では命は平等なのか等を説いている
文中のローズが言ったセリフが印象的だ
今の世界、もちろん法律も当然の様であるように
人間主体で作られている
なので、人であるかが論点になってくるのだ
現在AIであるソフィアは既にサウジアラビアで市民権を持っている
今は少数だが、今後市民権を含め自立型AIが人として認められるようになり、裁判員、弁護士、検事などもAIが担う未来は充分にある
そうなった時、現在の人間の立場は一体どのようになり、どのように選択され、裁かれるのかとか考えてしまった
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ネタバレショート・ショートなので、一編が8ページくらい。その短い中で背景をぼかしつつも確信に迫る書き方してたりするものもあり、うまく咀嚼できないまま終わったものもあり、でも面白い短編集だった。
始まりが不穏なので、大体不穏な話が多い中、最初から最後までハッピーに終わる「切れたミサンガ」が好き。
人でも殺したんかと思いつつ、同じ格好ときたのでSFかと思ったら 笑
安定のホラーの「こわくてキモくてかわいい、それ」も好き。
それが不気味だけど、主人公が見下されてることに気付きながらも知らないふりして難を逃れてて、性格悪い私はざまみろと思ってしまった。
「久闊を叙す」も良い。
こんな形で、我が友李徴子を読むとは。新鮮な感覚だった。 -
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積読チャンネルで紹介されていて手に取った一冊です。
ショートショート集なので、少しずつ細切れに読めるのがよかったです。どの作品もそれぞれ面白かったのですが、なかでも米澤穂信さんの「燃えろ恋心」が圧倒的に好きでした。
リズムもテンポもよく、一気に駆け抜けていくように読めて、最後のオチまできれいに決まっています。これはできれば、内容を何も知らずに読んでほしい作品です。
特によかったのが、青春時代の「大人は自分たちのことをわかってくれない」「なんとなくこちらの味方ではない」という感覚の描き方でした。
ラブレターを買ってから、実際に書くまでの過程もいいです。誰かに恋をしているというより、恋をしている自分ごと、恋そのものに精一杯恋をしているような書きぶりがとても素敵な文章でした。 -
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人間の言葉を喋り、思考が同じならそのゴリラは人間なのだろうか。
カメルーンのジャングルから、アメリアの動物園に行ったメスゴリラローズが、夫を殺され裁判を起こす話。
タイトルに良い意味で騙されたのだが、全くギャグや奇妙な話ではなく、いつか起こりそうな未来のsfの物語である。
何より人間とは何かと大きなテーマがあるので、ローズの気持ちに寄り添い、共感していく度に人間の愚かさや不条理さ、そして身勝手さを痛感していく。
ローズの性格がまた良くて、誰も嫌いにならない強くて、格好良いゴリラだ。
裁判の結末はローズにとってある意味本当の自分を知れるきっかけになったのだと思う。