須藤古都離のレビュー一覧
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特殊な機器を身につけることによって、男性である自分と女性である他人との意識が自分と共有される、という現象が起こる話である。
SF的要素もあるが、性同一性障害についても考えさせられた。
自分が男であることの違和感、女性でいられる間が本当の自分だと感じること。
そしてアイデンティティとは?
この作者の作品はゴリラ裁判に続き2冊目だが、主人公や舞台が日本、日本人、ましてや人間に留まらないことによって、いかに普段、自分が国や性別、そのようなものに囚われすぎているのか、を知る。
しかし、これだけ世界中がネットで繋がる世の中になると、顔や声は必要なく、国も必要なく、ただ、そこには意識が存在するだけ、そんな価値観も広がっていくと感じた。 -
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ネタバレゴリラ研究員より母と共に会話の教育を受けて、手話を通じて自在に言語を話せるようになったローズ
父の死をきっかけにカメルーンからアメリカへの移住を誘われ、移住した先で番った夫を4歳の男の子を救うために射殺された
納得いかないローズは裁判を起こす
人の定義とは何なのか、動物の命は人より軽いのか、法の上では命は平等なのか等を説いている
文中のローズが言ったセリフが印象的だ
今の世界、もちろん法律も当然の様であるように
人間主体で作られている
なので、人であるかが論点になってくるのだ
現在AIであるソフィアは既にサウジアラビアで市民権を持っている
今は少数だが、今後市民権を含め自立型AIが人として認められるようになり、裁判員、弁護士、検事などもAIが担う未来は充分にある
そうなった時、現在の人間の立場は一体どのようになり、どのように選択され、裁かれるのかとか考えてしまった
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ネタバレショート・ショートなので、一編が8ページくらい。その短い中で背景をぼかしつつも確信に迫る書き方してたりするものもあり、うまく咀嚼できないまま終わったものもあり、でも面白い短編集だった。
始まりが不穏なので、大体不穏な話が多い中、最初から最後までハッピーに終わる「切れたミサンガ」が好き。
人でも殺したんかと思いつつ、同じ格好ときたのでSFかと思ったら 笑
安定のホラーの「こわくてキモくてかわいい、それ」も好き。
それが不気味だけど、主人公が見下されてることに気付きながらも知らないふりして難を逃れてて、性格悪い私はざまみろと思ってしまった。
「久闊を叙す」も良い。
こんな形で、我が友李徴子を読むとは。新鮮な感覚だった。 -
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積読チャンネルで紹介されていて手に取った一冊です。
ショートショート集なので、少しずつ細切れに読めるのがよかったです。どの作品もそれぞれ面白かったのですが、なかでも米澤穂信さんの「燃えろ恋心」が圧倒的に好きでした。
リズムもテンポもよく、一気に駆け抜けていくように読めて、最後のオチまできれいに決まっています。これはできれば、内容を何も知らずに読んでほしい作品です。
特によかったのが、青春時代の「大人は自分たちのことをわかってくれない」「なんとなくこちらの味方ではない」という感覚の描き方でした。
ラブレターを買ってから、実際に書くまでの過程もいいです。誰かに恋をしているというより、恋をしている自分ごと、恋そのものに精一杯恋をしているような書きぶりがとても素敵な文章でした。 -
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人間の言葉を喋り、思考が同じならそのゴリラは人間なのだろうか。
カメルーンのジャングルから、アメリアの動物園に行ったメスゴリラローズが、夫を殺され裁判を起こす話。
タイトルに良い意味で騙されたのだが、全くギャグや奇妙な話ではなく、いつか起こりそうな未来のsfの物語である。
何より人間とは何かと大きなテーマがあるので、ローズの気持ちに寄り添い、共感していく度に人間の愚かさや不条理さ、そして身勝手さを痛感していく。
ローズの性格がまた良くて、誰も嫌いにならない強くて、格好良いゴリラだ。
裁判の結末はローズにとってある意味本当の自分を知れるきっかけになったのだと思う。 -
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タイトルに惹かれて手に取った一冊。
「ゴリラ裁判の日」。
一体どんな物語なのだろうと思いながら読み始めたのだが、気づけばページを捲る手を止められなくなっていた。
この作品を読み終えて感じたのは、ローズを「一頭のゴリラ」として見ていたわけではなかった、ということだった。
一頭でもない。
メスでもない。
ひとりの女性ゴリラ、ローズ。
彼女が何を見て、何を感じ、どのように生きてきたのか。その人生と生きざまを見届けたような読書体験だった。
特に印象に残ったのが、法廷での最終弁論の場面。
物語を外側から眺めているというより、自分自身も陪審員席に座り、これまでローズが歩んできた人生を踏まえて、その言葉を聞いているような気持ちになった。自分ならどう判断するのか。何を根拠に人間とそれ以外を分けているのか。自然とそんなことまで考えさせられた。
そして、最後までつきつけられたのが「人間とは何か」という問いだった。
言葉を持つことなのか。
理性があることなのか。
社会の中で生きることなのか。
普段なら疑うことさえない境界線が、ローズという存在を通して少しずつ揺らいでいく。
読み始めたときには、こんなところまで自分の価値観を揺さぶられるとは思っていなかった。
奇抜なタイトルに惹かれて手に取ったはずが、読み終えた頃には、一人の存在の人生を見届けたような感覚が残っていた。 -
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ネタバレ【人間とは何なのか】スケールの大きなテーマを突きつけられた作品だった。それと同時に【言葉の持つ力】についても考えさせられた。
ローズは人間と同じように話せる。もちろん感情もあり、人間と同じように喜び、悲しみ、怒る。他のゴリラとも違うし、人間とも違う、では一体何者なのか。彼女の中で長い間自問と葛藤があったかもしれない。でも、人間になりたかったわけではなく、ゴリラである自分に誇りを持っているし、言葉を理解し感情も人間らしい部分がある。『自分は自分、ローズというひとつの存在』それがある意味あの裁判で勝ち取ったローズの答えなのかなと感じた。
【私にとって言葉は魔法だった。】
このフレーズから始まるローズの語りも印象的だった。本来言葉は人と人をつなげてくれるものだ。でも、現代ではどうだろう。SNSでは顔も名前も知らない相手に対して、意図的に相手を傷付ける場面をよく目にするようになった。悲しいことだと思う。
最後の心に響いた一文
【全ての命は同じ命として、そこに存在していた。】
この作品は人間とゴリラの話だったけれど、人間と人間であっても全ての命は同じ命であることを強く主張したい。