須藤古都離のレビュー一覧
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タイトルに惹かれて手に取った一冊。
「ゴリラ裁判の日」。
一体どんな物語なのだろうと思いながら読み始めたのだが、気づけばページを捲る手を止められなくなっていた。
この作品を読み終えて感じたのは、ローズを「一頭のゴリラ」として見ていたわけではなかった、ということだった。
一頭でもない。
メスでもない。
ひとりの女性ゴリラ、ローズ。
彼女が何を見て、何を感じ、どのように生きてきたのか。その人生と生きざまを見届けたような読書体験だった。
特に印象に残ったのが、法廷での最終弁論の場面。
物語を外側から眺めているというより、自分自身も陪審員席に座り、これまでローズが歩んできた人生を踏まえて、その言葉を聞いているような気持ちになった。自分ならどう判断するのか。何を根拠に人間とそれ以外を分けているのか。自然とそんなことまで考えさせられた。
そして、最後までつきつけられたのが「人間とは何か」という問いだった。
言葉を持つことなのか。
理性があることなのか。
社会の中で生きることなのか。
普段なら疑うことさえない境界線が、ローズという存在を通して少しずつ揺らいでいく。
読み始めたときには、こんなところまで自分の価値観を揺さぶられるとは思っていなかった。
奇抜なタイトルに惹かれて手に取ったはずが、読み終えた頃には、一人の存在の人生を見届けたような感覚が残っていた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ【人間とは何なのか】スケールの大きなテーマを突きつけられた作品だった。それと同時に【言葉の持つ力】についても考えさせられた。
ローズは人間と同じように話せる。もちろん感情もあり、人間と同じように喜び、悲しみ、怒る。他のゴリラとも違うし、人間とも違う、では一体何者なのか。彼女の中で長い間自問と葛藤があったかもしれない。でも、人間になりたかったわけではなく、ゴリラである自分に誇りを持っているし、言葉を理解し感情も人間らしい部分がある。『自分は自分、ローズというひとつの存在』それがある意味あの裁判で勝ち取ったローズの答えなのかなと感じた。
【私にとって言葉は魔法だった。】
このフレーズから始まるローズの語りも印象的だった。本来言葉は人と人をつなげてくれるものだ。でも、現代ではどうだろう。SNSでは顔も名前も知らない相手に対して、意図的に相手を傷付ける場面をよく目にするようになった。悲しいことだと思う。
最後の心に響いた一文
【全ての命は同じ命として、そこに存在していた。】
この作品は人間とゴリラの話だったけれど、人間と人間であっても全ての命は同じ命であることを強く主張したい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレおなじみの一行目一緒ショートショートのシリーズ。今回は初読みの作家さんが多かった気がする。特に最初の方、ロボットとかAIとかが続いて、大丈夫かいな、と思ったけど、真梨幸子さんや東川篤哉さんはちゃんと違うテイストで来ててさすがと思った。殺人が罪ではないという世界から、死刑等の罪になるという法律ができた、という大沼紀子「もう、ディストピアじゃん」は皮肉が効いてて特に印象的。面白かった。五十嵐律人「革命夜話」も違う切り口でとても良かった。敗戦後の混乱の中、食うにも困っている頃に、理想を夢見て日本国憲法を作った人がいたんだ、ということに改めて気付かされたわ。ありがたいことだ。
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Posted by ブクログ
作品紹介・あらすじ
こんなことになるなんて!
1行目は全員一緒、25編の「大騒ぎ」。
早起きした朝、昼の休憩、眠れない夜ーー。
ここではないどこか、今ではないいつかへ、あなたを連れ出す7分半の物語。
『黒猫を飼い始めた』『嘘をついたのは、初めてだった』『これが最後の仕事になる』に続く、会員制読書倶楽部:Mephisto Readers Club(MRC)で配信(公開)された大人気ショートショート集第四弾。
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25編からなるショートショート集。
Mephisto Readers Club(MRC)が贈る大好評シリーズ第4弾とのこと。既に第3弾と第6弾は読み終えた。
最初の一文は必ず「だから捨ててと言ったのに」で始めなければならない、という括りがある。
他のシリーズと同様に玉石混交。ただ他のシリーズよりも本書の方が面白い作者が多かった。ただ、飛び抜けて面白いというわけではなかった。
以下が面白かった作者。
須藤古都離
黒澤いづみ
岡崎隼人
砥上裕將
清志まれ
舞城王太郎
高田崇史
背筋
多崎 礼
谷絹茉優
夕木春央
最果タヒ
このうち清志まれはいきものがかりの水野良樹のペンネーム。谷絹茉優はChevonというバンドのヴォーカリスト。ミュージシャンが二人参加している。
上記の中では砥上裕將と夕木春央が特に良かった。歳を取ると、こうした小さな感動話に思わずウルっとしてしまう。そして最果タヒの文章。詩人だからなのかもしれないけれど、とても心に響いてきた。