小説・文芸の高評価レビュー
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自分の愛読、あるいは尊敬している文学者も、教養人も、なにかとドストエフスキーという作家を通ってきている人ばかりなような気がしていたので、自分も大学を出る前に読んでみようと思った。
簡単に概要から。
主人公ラスコーリニコフは経済的に苦しく大学を去った元学生で、彼は「一つの犯罪、過ちを犯したとしても、それ以上の善行を積めば許される」(これは上巻では、酒場の大学生の会話や新潮文庫のあらすじにしか出てこないので、ラスコーリニコフ自身がそう考えているかはわからない)とか、「人間は凡人とは凡人に二分され、歴史に名を残した偉大な偉人たちも犯罪者であるように、犯罪を犯しても正当化される人間が存在する、そして -
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森下典子『好日日記 季節のように生きる』新潮文庫。
『日日是好日』の続編。
その昔、森下典子さんは『週刊朝日』のコラム『デキゴトロジー』の執筆者の1人として活躍し、後に『典奴どすえ』というタイトルで京都での舞妓さん潜入取材記録を執筆した方である。『デキゴトロジー』は新潮文庫からシリーズで刊行され、全て読んでいる。勿論『典奴どすえ』も読んでいるが、テレビドラマにもなり、それも観た記憶がある。もう30年以上も昔の話だ。
あれから幾年月が過ぎ、森下典子さんが『日日是好日』という素晴らしいエッセイを書いていたことには心底驚いた。『デキゴトロジー』の頃は素人同然の文筆家が、これ程の成長を遂げるとは -
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小説風のタイトルと中身で気が付かなかったのだが、実はノンフィクションという恐ろしい小説だった。
占領されるということの恐ろしさを感じた。生活の全てが侵略されている。戦争のずっと前からこんなにも虐げられていて、人権も命も蔑ろにされていたと知った。
一方で、パレスチナの人達の伝統的なあり方、具体的にはあまりにも家父長制的で女性の人権や意思が軽視されていることに素直にショックを受けた。
気持ちや状況があまりにも精緻に書かれていてまるで小説のようだったためだと思う。
これは許されないと思うし、とても好きになれない。しかし、占領されていい理由にはならない。
そのような国でありながら、パレスチナを一度出 -
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前作から引き続き大好き、もうほんと大好き。
現実的で学びや刺さりを得ながらも、物語として面白く儚くて煌めいていて、読んでいる時間がとてつもなく愛おしい時間だった。
正解の形なんてないから、腹を括って自分で悩み決断をし時に失敗し振り返っていくしかない。でもそれは辛いだけの道のりでもきっとない。
読みながらすべてを肯定されている気持ちにもなるし、他の人に対して優しい無関心にもなれる本だなと思う。ほんと、夫婦でも家族でも自分には見えてないもの知らないことが沢山あるんだから、自分の価値観に当てはめて勝手に解釈するのはやめよう。いや、してもいいけど口に出すな、ほんとにダメだぞ自分。 -
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おもしろかったー!!!!
「2週間で2億円」
というノルマを殺し屋という職業でどう達成させるか、というところが見所であり、当然達成させなければ話が成立しないのだが、物語の展開が面白すぎる!!!!
短編的に話が一つずつ進んでいくのかと思いきや、一気にクライマックスに駆け上がっていく感覚で、ページをめくる手が止まらなかった!!傑作!!
主人公の成長(?)も描いていて、徐々にダークサイドへ足を踏み入れていく様があたかも自然な成り行きのように感じられるのも描き方が上手いからだと思う!
ラストへのテンションの上がり方もすごかった!!!読後感もすっきり!!!!エンターテイメント!!!
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ネタバレただの読書術本と侮るなかれ
三宅氏による社会と時代背景から見る読書史、あるいは労働史である。
単にインターネットやそれら媒体の台頭のみでは現代の人々の読書観は語れない。社会が個人の労働観や人生観といったものを時代ごとに変化させてきた。新自由主義という言葉がよく使われるが、特に今日においてはその言葉の意味合いとは裏腹に不自由感が漂う。
現代の、労働が中心的な社会観において、未知はノイズであり、既知が受け入れられるため読書は排除される側にある。
自由が責任を強め、責任が労働の奴隷化を強め、それが趣味を遠ざける。やりたいことで生きていく事へのアンチテーゼや疎外感はそういう社会構造が生み出した鬱屈だ