小説・文芸の高評価レビュー
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Posted by ブクログ
第二次世界大戦後、シベリアの強制収容所 ― 通称「ラーゲリ」へと抑留された日本兵捕虜たちの実話に基づく作品です。
極限状況下における過酷で非人道的な生活描写は、戦争を知らない世代にとって想像を超えるものであり、歴史の現実を確かに突き付けられます。
中心となる山本幡男さんの生き方は、まさに人間の尊厳そのもの。捕虜となっても失わない誇りと矜持。どんな状況でも「生きること」をあきらめず、仲間を励まし続ける強さ、そして必ずダモイ(帰国)できると信じる心。
絶望だらけの中でも希望を見失わない姿に、どれほど勇気づけられたことでしょう。
戦争が奪うものの大きさと残酷さを改めて痛感させられました。
今、 -
Posted by ブクログ
地上の楽園
あの頃、誰もがそこに夢を見た
あの頃、誰もがそこに憧れを抱いた
あの頃、誰もがそこに希望を求めた
日本での酷い差別に、苦しい生活に耐えれず、希望の楽園へ渡ったおよそ9万人の在日朝鮮人(日本人妻は約1800人)
今でこそ地上の楽園なんてものは偽り、そんなものは存在しないということは百も承知である
しかし、あの頃にはそんなことがわかるはずもない
差別のない、希望に溢れ、安定した夢のような生活
彼らはただそれをを求めて祖国へ向ったのだ
だが、希望の楽園へという偽りの国で彼を待ち受けていた真実とは!?
日本以上に厳しい差別が待っていた
その日その日の命をつなぐのが精一杯 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「伊豆の踊子」は行間と空白に満ちていて、自分で埋めていくのがたまらなく心地よい。静かで、切なくて、胸が締めつけられる美しさ。一方、「死体紹介人」は……え、同じ人が書いたの!
死体を運ぶ話がこんなに不気味でいて、ページをめくる手が止まらないってどういうこと!この振れ幅が異常。
”美の極致に達したから次はわざと壊す”みたいな挑戦をずっと繰り返していたんだろうな、と震えた。
自らのスタイルを破壊し続けることでしか到達できない境地がここにある。
さすがノーベル賞……ただただ恐れ入る。正直、意味が掴みきれないところも多かったけど、それでも不思議と苦にならず、夢のなかを漂っているような読書体験だった。
巻