あらすじ
『無窮堂』は古書業界では名の知れた老舗。その三代目に当たる真志喜と「せどり屋」と呼ばれるやくざ者の父を持つ太一は幼い頃から兄弟のように育つ。ある夏の午後に起きた事件が二人の関係を変えてしまう…。
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最初の数ページほどで別世界に誘われるような細かで美しい描写にため息。
私はこれから特別な物語に出会うのだと予感した。
彼らを繋げるものは罪悪感ではなく、きっと...
2人が纏う空気感で物語るというか曖昧に描いているからこそこちらの想像が掻き立てられる。だからこそ、この関係を言葉で表すのはなんだか勿体ない。
夏の匂いを感じる学生時代の話も良い...
感想書けるかなぁ〜と思ってたけど、するする言葉がでてきた。ブロマンスという言葉すら知らなかった私ですが、2人の関係性にとても惹かれた。
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共依存関係のBLやブロマンスが好きな方なら刺さると思います。
古書に愛され古書を愛する二人の男の話です。
ある事件をきっかけに、少年時代に罪悪感という糸にがんじがらめにされたまま成長して共依存関係のようになってしまった二人が過去を精算する物語。
この二人の関係は明言されません。二人とも名前を知るのを怖がっている、なのに互いの存在を求め続けている。
そういう感じで進んでいきます。
しかしそういう名前のつけられない関係って素敵だなと思うのです。
ものすごくBL!という感じではありませんが、ずっと匂わせてくるので、絶妙なニュアンスが好きな私にはかなり刺さりました。
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初めての三浦しをん作品。こんな美しい文体を書く作家さんだったんだ...主人公2人の関係は"罪悪感"によって引き寄せられ、同時に引き離されてもいる。互いがそれぞれの想いを個人で背負って生きていて、それが相手への執着や、防衛本能にもなっている。その罪と2人で向き合えることができたそのあとの、彼らを覗いてみたい気持ちになった。
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古書店や古書の仲買を商いとする人たちのお話。
小説ばかり読んでいるので、専門書や風俗の書籍に触れない僕には分からないのですが、価値ある本がこの世にはたくさんあって古書を扱う人たちにはある意味で使命感があり本を守ってくれているんだなと感じました。
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本への愛情溢れる、迸る、そんな素敵な文学作品でした。ずっとこの作品の世界に浸り続けていたい。三浦しをんさんの作品、きっと全部大好きになるんだろな。
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これは愛の話なのか罪の話なのか。
友情とはまた違う主人公2人の、子どもの頃に起きた大きな問題を軸に、しかし涙したりハラハラするような劇的な描かれ方はされておらず、美しい描写でその情景が思い浮かぶような淡々と進む物語に惹き込まれていった。
これは2人が互いを思いやる愛の話のような、それぞれが自分と向き合う罪の話のような。
親子の葛藤に見せかけた、自分との闘いのような。
水の底の話を読んで、もしかしてこれまで読んでいたものは、先生が書いた2人の未来なのでは?と思ったり(笑)
いやきっと先生はもっと暗い話を書くかな。
とにかく余韻がすごい。
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情景が浮かぶ文章の美しさに虜です。
何度読んでも心の臓を掴まれるような、ぐっと惹き込まれるような。初見のごとく新鮮な読書体験ができる。
古書を扱う職種(せどり)にスポットライトを当てるコアさも素敵。
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「腐」作品として読んだ感想ですので、苦手な方はご遠慮下さい。
授業中に読んだのですが良すぎて発狂するかと思いました笑笑
気持ち的には、心の叫びが大学の屋根を突破して大気圏まで突き抜けそうでした。
1.2年ぶりに再読したのですがその時より解像度が上がってて己の成長を感じました。
そもそも三浦しをんさんの文体がとても好きなのですが、この小説もその文才を遺憾なく発揮させており、素晴らしい情景描写や人物描写が至る所に散りばめられておりました。
お互い想い合っているのに過去の確執のせいでがんじがらめになって、どうにも身動きが取れない二人の関係性がたまらないです。もどかしい感情と関係性が後半の出来事をきっかけに少しずつほころびていきます。
この作品は、もちろん単なる幼馴染の物語としても読むことができますが、幼馴染を超えた禁断の愛憎の物語として読むと、本当に、妄想が捗ります笑笑
再読すると、改めてこの本の持つ魅力にどっぷり浸かる事ができるので、是非何度も読み返したいと思います。
Posted by ブクログ
うわーん苦しい苦しい
お互いをお互いの過去で束縛し合ってるというか永遠に解けない罪悪感で雁字搦めにされてるしそれを甘んじて受け入れてる2人が切なすぎ〜泣この先の妄想が捗ってしょうがない。
三浦しをんさんが書くちょっと悪い男の子たちが大好きです。夏祭りのシーンとか最高に良い。本当にこの尊さを表現する語彙力がなくて悔しい。
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展開に劇的な波はないが、描写の一つ一つはまさに三浦しをんの才能全てが存分に発揮されている。
淡く、切なく、時に激情的に、然しその多くを作中の登場人物に直接語らせることなく、読者の心に強く直接訴え掛けるこの感覚、やっぱりこの作家さんは凄い
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本を愛する者は独占欲が強いらしい
それが本当なら自分もそういう所があるかもしれない
綺麗な本だと思った
ナナオが勧めたから読んだ
いい本だった
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三浦しをんさんのデビュー第2作(2001年)です。『まほろ駅前』シリーズ(2006〜)以前の初期作品を読むのは初めてでした。古書店が舞台の古書をめぐる若い男2人の物語です。
こ、これはBL? オブラートで包む感じで印象をぼかしてますが…、なんかそんな匂いのする関係性ですよね? BL前夜? 失礼ながら今は立派な「貴腐人」も、デビュー時から「腐女子」の片鱗を見せていた? いや、だとしても本作は無粋なBL作品ではありません。
古書店『無窮堂』3代目店主・本田真志喜(24歳)と、安く仕入れた古本を卸専門で販売し利益を得る「せどり屋」の息子・瀬名垣太一(25歳)。
2人は幼い頃から兄弟のように過ごしてきましたが、本の目利きに関わる一件で関係性が変化してしまいます。タメ口をきく様子は普通の友人のようですが、しをんさんの上手さに引き込まれます。
まずは、なぜこうした状況になっているのか、物語の中で追想のように小出しに描かれ、先が読めない展開で興味深いのが一つ。そして2人の微妙な関係性の描写は、時に淡白さにイライラ、時に妖しい甘美さにゾクっとさせる筆致が魅力的です。さらに、古書の取り扱いを生業とする者の姿勢や矜持も描かれ、本好きにはたまりません。
夜のイメージで、揺れる感情を硬質なタッチで描き、あのエッセイなどで爆笑させてくれるしをんさんと、同一作家とは思えないくらいです。
過去を引きずる2人のわだかまりが、月の光の影のごとく寂しさを醸し出し、情景描写も含めてきれいな文章です。読後静かに心地よさが押し寄せ余韻を残しました。
互いに「放って置けない」感ダダ漏れの絶妙表現は、想像と妄想を喚起する秀作でした。
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真志喜と瀬名垣の独特な関係がこの物語を一層輝かせているなと思った。
相手を愛する気持ちと相手を縛る気持ちと、自分自身も同じように相手に思われて引き合っている。
その絶妙な二人の世界が苦しくって気持ちいい。
そんな気持ちがした。
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良質なブロマンス読んでみたいな、と話して勧めてもらった本。読んでみて思ったのは、これブロマンス…?普通にBLでは?だったけれど、あまりに美しい文章で描かれていて、成程たしかにこれはロマンス、これがブロマンスか…と。
古書店というあまり馴染みのない世界を舞台が、繊細な情景描写と美しい表現で描かれているので、どこか非日常を感じさせる。けれどその実、物語の根底に人間の複雑な心情となんとも言えない感情が何層にも折り重なっていて、面白かった。
あさのあつこさんによる後書きがまた美しくて、是非とも最後まで読んでほしい本だった。
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瀬名垣と真志喜の2人の関係性がもどかしい。過去に囚われ罪の意識で前に進めず、お互いがんじがらめになっている2人の絶妙な距離感が堪らない。古書店の様子も普段馴染みが無いので読んでいて面白かった。
水に沈んだ私の村で皆が学校の屋上で花火を見ている場面が好きだった。
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本を通じて兄弟のように育った二人だったが、ある出来事をきっかけにそれまでの環境や関係性が一変してしまう。その後再びきっかけとなった出来事に向き合うというストーリー。因縁の相手との競り買いのシーンはとても見応えがあり、依頼主の本との思い出も感動した。2話目は時代が遡り学生時代の話だったが、1話目ではあまり掘り下げられなかった幼馴染達との関係が描かれており、後から1話目のストーリーを補完していたのが良かった。
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腐女子です。以下は腐女子の戯言です。
なんとも奥ゆかしい純愛小説でした。
あまりリアリティは感じず、キャラクターにしても瀬名垣と真志喜以外はぼんやりとした印象が残るのみです。その分主役ふたりの心情の描写が大変切なく美しい…!透明感のあるどこか幻想的な彼らの世界観。三浦さんは20代半ばくらいでこの物語を書かれたのでしょうから、もう天才としか言いようがありません。バランスが良いし短いのに内容が濃い…
惹かれ合うふたりが抱く激しさであったり、やり取りの軽やかさであったり、ふとした時に垣間見える妖しい関係性。どれもが素敵でした。重要な部分はある程度読者から見えないように書かれているのかなと感じましたが、それが却って想像を掻き立てる要素となり非常に興奮しました。いや、私はもう彼らはそういう関係だと思って(思い込んで)読んでおりましたけれども…
凄く良い…と思ったのは瀬名垣と真志喜、それぞれから相手がどれだけ魅力的に見えているか、という描写の上手さです。くどすぎず良い塩梅でさらりとしているけど、きっちりとポイントが抑えられているので、読み手の私もふ〜んそういうところが好きなんだ…と美点を素直に受け止められるわけですね。
真志喜は瀬名垣の声が好きなのかなと思い、あれこれ妄想して悦に浸っていました。あとは名前で…のくだり、こんなにも良いものを見せていただいて感謝の極みの境地に到達しました。真志喜は色が薄い分赤くなると目立つのでしょうね。
禁断の果実、というエピソードももうねぇ…腐女子やってたら刺さっちゃいます。
何気なく渡そうとしちゃう真志喜の無垢な魔性が眩し過ぎる。その時から瀬名垣は盲目で、しかし真志喜も…ということを過去も絡めつつ現在地点まで書き切って下さってるので、満足感と充実感で今夜は良い夢見れそうです。障子が閉められたところで物語が終わるのもやはり妄想を掻き立てられます。覗き見したい、そんな下劣な欲求しかありませんが、己の浅ましさに少々恥を感じるのはやはり本書が持つ奥ゆかしさの影響でしょうか。
どこか田舎に旅行に行くことがあれば、山々の見える静かな場所で、ゆっくりと時間をかけて再読したいです。とってもよかった〜。
Posted by ブクログ
『きみはポラリス』で三浦しをんを知り、2冊目に手に取った作品がこちらです。私は男性同士の友人以上の関係性に萌えを感じるいわゆる腐女子なのですが、この作品の瀬名垣と真志喜のつかず離れずな焦ったい関係性にも例に漏れず興奮しながら読んでおりました。特に大きな出来事が起こるわけではないですが、2人の主人公がそれぞれ相手と古本とそして過去の罪と向き合っていく過程が、美しく繊細で、どこか官能的な文章で綴られた物語。大きく2部構成になっていて、後半は主人公2人を側から傍観している第三者の視点で書かれています。物語の山場は前半にあるのですが、この後半がいいんです!瀬名垣の「妬心」とか、真志喜の「熱情(第三者からはそう見えるんだとびっくりした)」とか、直接的ではないものの、相手に対して明らかに友人以上の感情を抱いていることが感じ取れる表現があり、好きな人は好きだと思う。あさのあつこの解説も良いので最後まで読んでほしい!
映画化でもなくドラマ化でもなく
この作品をあるシーンまで読んだ時、脳裏に下北沢の駅前劇場くらいのスペースで舞台作品として観てみたいという衝動に駆られました。脚本の力で心の奥底まで引き出せたら、どんなに素晴らしい舞台になるかと想像します。
Posted by ブクログ
BL、ブロマンス寄りの作品だと聞いて購入。
確かに導入から「細い真志喜の首筋がうっすらと桜色に染まった」などおや?と思わせる描写がいくつか。
古書を愛する2人の物語。2人は過去のある事件から共依存のような関係性になってしまった。過去に囚われる2人が長い年月をかけ、古書を通じて問題に向き合う。
直接的な表現はないがずっと匂わせてくる感じが好き。真志喜の思いが強いのかと思ったら瀬名垣も「所有欲も愛着も、本当はものすごくあることを自覚している。いつまでだって撫でくりまわしてじっくり味わいたいし、だれにも渡すもんかと、いつもいつも思っているんだ」と。
なにより解説のあさのあつこの「月魚によせて」がこの作品の全てをまとめてくれていると思う。これは最後まで読むべき。
「月魚という本に大きな感動や驚きはないがこの作品を読んだ後に思い浮かべる情景は月の夜だろう。
私たちの知らない世界にこんな世界があるのだとそっと教えてくれる。今日もきっと、 無窮堂の灯りが灯っているだろう。」
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古本屋の主人とその幼なじみのような友人を取り巻く人達の話だった。
古本屋?と思ってこれは読もうと思った一冊。
クールな主人公とどちらかといえば熱くなる友人のやり取りが面白い。
展開は淡々として読み終わったあと少しだけ拍子抜けた感じがした。
Posted by ブクログ
細かい情景描写、現実とリンクするようなファンタジー要素が散りばめられており、全体的に美しい作品だった。
瀬名垣と真志喜の歪な関係、ある日の事件。人間関係や好きなものに対する執着心、自尊心、嫉妬などほとんどの人間が持ち合わせている暗い感情を上手く表現している作品だと感じた。
才能を持った者が凡人の夢を壊す。小さく強大なプライドが人を呪縛する。全ての物事を時が解決するとは限らないということをまざまざと見せつけられた。
ただそれは、決してネガティブな面だけではなく、業を受け入れて前を向き続ける逞しさも教えてくれた気がする。
以下、個人的に気になってしまった点。
瀬名垣と真志喜の関係性が、できるだけ生々しくならないように綺麗に表現されてるとは感じたが、自分自身が男であることや、著者が女性であることも起因し、著者の性癖のようなものが垣間見えてしまい、少し気味が悪かった。
Posted by ブクログ
これはBL小説? 他に読んだことがないので比較出来ないけどとにかく描写が美しい。情景が目に浮かぶ。
古書店のことBLのこと、全く知らない世界だけど余韻が残る本だった。
Posted by ブクログ
頭の中で映像を浮かべながら読みました。
タイトルには月がついてるけど、個人的には小雨の夜みたいなイメージ。
瀬名垣と真志喜の物理的な距離の近さに反して気持ちは近づいたり離れたり、という感じのもどかしさが読んでて面白かったです。
この先も2人はお互いの傷を舐め合いながらひっそり生きて行くのかな、もう少しだけ続きが読みたくなるような作品でした。
Posted by ブクログ
「匂う」小説として有名な作品だったので手に取りました。
「匂う」とかではなく、直接的な表現を避けた文学的なそちら側の小説という印象を受けました。
まず二人の設定で察しました。
今までそちら側の漫画・小説をいくつか読んできましたが、目を奪われる出会い、お互いへの罪の意識、付かず離れずの関係、これらは確実にそちら側の作品に多用される関係性だと思いますし、確実に我々を誘っています(笑)。
他にも、昔ながらの日本家屋、みすず達理解ある幼馴染、成人男性二人には狭いであろう軽トラ、美しい少年に心奪われる教師、などなど、好きなものが詰め込まれていましたよ、ええ。
あえて言えば、直接的な表現を避けたせいなのか、感情面の描写が少なく、作品が進むにつれた二人の感情の変化などが、読解力が乏しい私にはいまいち伝わってきませんでした。
文庫版を読んだのですが、あさのあつこさんの熱いあとがきが完全にこちら側の意見。素晴らしい語彙力の賞賛の中に答え合わせのような文があって、ほくそ笑みながら読みました。
同作者の『ののはな通信』を以前読んだときにも感じた、「同性同士の微妙な距離感を表現したくて作られた、受け手にとっても登場人物にとってももどかしい気持ちになる作品だな」という印象をこの作品からも受けました。
Posted by ブクログ
透き通った話。月が少し雲に隠れるくらいの天気の夜に読みたい話。
好みは分かれそうな話だけど、私は好き。
この好きをうまく言葉に表せないのが残念だけど、気になった人にはぜひ読んでもらいたい。
Posted by ブクログ
罪悪感や離れられない理由から愛に変わることだってあると思いました。本に囲まれている話なのもあってすこしくすんだ、でも透明感のある関係性や世界観が綺麗でした。
Posted by ブクログ
本をこよなく愛する、本に魅了された、本を取り巻く男たちの物語なのか、美しい青年らの美しいプラトニックなBLなのか…どっちもなんだけど、どちらに神経を研ぎ澄ませは良いのかと言うところでどちらもじれったく結果ぼんやりと終わってしまった。
そんなわけで同時進行ではちょっと勿体無いかなと思いました。
勉強不足で申し訳ないのですが、瀬名垣(せながき)と真志喜(ましき)の物語はこれで終わり?
2人で古本にまつわる謎解きシリーズなどあれば読んでみたいと思う。そんなお話し。
ちなみに月魚…げつぎょと読むそうで、言葉としての意味はないようです。
月と魚は決して同じ場所に共存することはできない…池に映る月くらい危うい関係という比喩的な意味合いであると受け止めました。
今年の7冊目