あらすじ
『無窮堂』は古書業界では名の知れた老舗。その三代目に当たる真志喜と「せどり屋」と呼ばれるやくざ者の父を持つ太一は幼い頃から兄弟のように育つ。ある夏の午後に起きた事件が二人の関係を変えてしまう…。
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設定も登場人物の作り方も決して珍しいものではなく、派手なストーリー展開があるわけでもなく、終始静かに淡々と流れていくこの物語のどこにここまで読者の心を揺さぶる熱が宿っているのだろう、と不思議に思うような、低温やけどしてしまいそうな、そんな作品だと感じた。とても好きだった。
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耽美だ。三浦しをんさんの作品のなかでも浮遊感があり、一抹の寂寞さを感じる一冊。
情景描写から、さも自分がこの冬の山奥に佇む家で本の鑑定をしているような気持ちになる。静謐さと繊細さを文章から感じられ、そこに真志喜と瀬名垣のBLのような関係性がここまで合うとは…。過去に囚われた二人の影と、綺麗な文体が合わさって、物語が特別なものになる体験はこの作品で初めて体感した。
本編は冬の物語なのに夏の夜のイメージを纏っていたたと個人的には感じていて、文体から得る印象は人によって様々なのだなと感じた。
話は戻るが、昨今、凪良ゆうさんをはじめ、BL出身や好きを公言されている方々がままならない関係性を描く作品が増えたように感じる。昔と比べてLGBTが認識されるようになり、さらに恋愛という形も一部変わってきているかもしれない。そんな中、BLを感じる現代の作品のなかでかなり走りの作品として『月魚』があると思っている。これからも多くの世間から認められないような関係性を打ち出す作品が出てくることを願ってやまない。
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読んでいる最中、そして読み終わった後もずっと「これ映像化してなかったっけ?」と思うような作品でした。それくらいまとまりの綺麗な作品です。
好きな登場人物というか妙に共感を覚えたのは宇佐見。あの夏の真志喜の姿が写真で撮ったみたく一生記憶に焼き付いてそうなところが、なんとなく「わかる」といった感じで。
もう一度、今度は冬に読みたくなる本でした。
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三浦しをんさんの小説で初めて読んだのが『月魚』で、BLにハマったきっかけになりました。
張りつめたような静謐な空気と、真志喜と瀬名垣のどこか危うさを孕んだ関係の美しさ。言葉にしきれない感情が静かに、しかし濃密に流れ続けています。
派手な展開があるわけではないのに、その静けさの中にある熱に心を掴まれました。読み終えたあとも、余韻が長く胸に残り続ける一冊です。イメージソングは藤田麻衣子『金魚すくい』
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序盤は美しい表現の数々に溺れてしまい、読み進めるのに時間がかかった。
それに慣れてきた頃には、先の展開が気になり読む手が止まらず。
いったいこの人たちは何に囚われてるのか、何を恐れているのか、なぜ踏み出さないのか。
本から手を離している瞬間でさえも、頭の中では無窮堂の灯りを探していた。読み始めてからずっと、この世界から抜け出せずにいる。
続きを捲るために早足で帰宅し、早々に寝る準備を済ませる。それほど心奪われていた。
読後、私はまだ黒い木々に覆われた旧家の灯りを門前から眺めている。
またすぐに読み返す。
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最初の数ページほどで別世界に誘われるような細かで美しい描写にため息。
私はこれから特別な物語に出会うのだと予感した。
彼らを繋げるものは罪悪感ではなく、きっと...
2人が纏う空気感で物語るというか曖昧に描いているからこそこちらの想像が掻き立てられる。だからこそ、この関係を言葉で表すのはなんだか勿体ない。
夏の匂いを感じる学生時代の話も良い...
感想書けるかなぁ〜と思ってたけど、するする言葉がでてきた。ブロマンスという言葉すら知らなかった私ですが、2人の関係性にとても惹かれた。
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共依存関係のBLやブロマンスが好きな方なら刺さると思います。
古書に愛され古書を愛する二人の男の話です。
ある事件をきっかけに、少年時代に罪悪感という糸にがんじがらめにされたまま成長して共依存関係のようになってしまった二人が過去を精算する物語。
この二人の関係は明言されません。二人とも名前を知るのを怖がっている、なのに互いの存在を求め続けている。
そういう感じで進んでいきます。
しかしそういう名前のつけられない関係って素敵だなと思うのです。
ものすごくBL!という感じではありませんが、ずっと匂わせてくるので、絶妙なニュアンスが好きな私にはかなり刺さりました。
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面白かった。表現が綺麗だった。構成がよかった。静かな夜がほわっと浮かんできた。感じるもの考えることは少なかったかも。重なる部分が少なかったのかも。その分するりするり読めた。世界観にも浸かりやすかった。少し突拍子のない世界に入りこみやすかった。
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一歩間違えたら古書の魅力に取り憑かれ蒐集という妙なる美酒に群がる餓鬼に変わる…
そんな世界で生きる真志喜と瀬名垣の友情とも違う密やかで甘美で謎めいた罪の共有とは…。
長らく積読でしたが冒頭オレンジ色の明かりの灯った古書店『無窮堂』にいざ入ってみると、古書と古書を愛する彼らの世界に引き込まれ一気読みでした。
母親の不在(今はいなくとも昔はいたはずなのに記憶の片隅にも存在しないような)が不思議だったけど気づけば些細な違和感になっていた。
少し引っかかっていた昨夜は「熱かった」 の意味、、
後で読み返して「そういうこと??」と、気づいた。
てっきりお互いに想いはあるもののプラトニックだと思っていたので、まだまだ修行が足りないようです(そのあたりちょっと疎い)
このふたりの物語、もっと読んでみたいとおもったけどシリーズ化はされてないようで残念。
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一緒にいたいのは罪悪感からじゃないってお互いにきっぱり言い切れるほど想いが明白なのすごいね。小さいときから互いのこと考えてきたんだろうなって感じがめちゃくちゃしますね。
はっきりとした描写なく想像で補完させるところと漂う空気にいちいち色気がある。
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耽美で美しい世界観と、紡がれる日本語の美しさに戦慄した
内容はびっくりするくらいBLで、古書店というどこか閉ざされた世界の中で、二人の関係性がより際立ってあまりにも神々しかった
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いつも飄々としている、どこか掴みどころのない人間の本音というのは心が沸き立ちますね。
文庫書き下ろし「名前のないもの」には喰らわされました。登場人物の解像度が一層高まりニヤニヤして読み終えました。
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古書を中心に人間関係が組み込まれている。
新しい感覚だった。才能の有無、伝統、罪……
繊細な文章で丁寧に描かれている。
ブロマンスになるのか?
古書という乾燥したイメージものに比例して
水のテーマもあり面白い。
個人的には、短編「水に沈んだ私の町」の煌めきがより好きかもしれない。
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三浦しをんさんのデビュー第2作(2001年)です。『まほろ駅前』シリーズ(2006〜)以前の初期作品を読むのは初めてでした。古書店が舞台の古書をめぐる若い男2人の物語です。
こ、これはBL? オブラートで包む感じで印象をぼかしてますが…、なんかそんな匂いのする関係性ですよね? BL前夜? 失礼ながら今は立派な「貴腐人」も、デビュー時から「腐女子」の片鱗を見せていた? いや、だとしても本作は無粋なBL作品ではありません。
古書店『無窮堂』3代目店主・本田真志喜(24歳)と、安く仕入れた古本を卸専門で販売し利益を得る「せどり屋」の息子・瀬名垣太一(25歳)。
2人は幼い頃から兄弟のように過ごしてきましたが、本の目利きに関わる一件で関係性が変化してしまいます。タメ口をきく様子は普通の友人のようですが、しをんさんの上手さに引き込まれます。
まずは、なぜこうした状況になっているのか、物語の中で追想のように小出しに描かれ、先が読めない展開で興味深いのが一つ。そして2人の微妙な関係性の描写は、時に淡白さにイライラ、時に妖しい甘美さにゾクっとさせる筆致が魅力的です。さらに、古書の取り扱いを生業とする者の姿勢や矜持も描かれ、本好きにはたまりません。
夜のイメージで、揺れる感情を硬質なタッチで描き、あのエッセイなどで爆笑させてくれるしをんさんと、同一作家とは思えないくらいです。
過去を引きずる2人のわだかまりが、月の光の影のごとく寂しさを醸し出し、情景描写も含めてきれいな文章です。読後静かに心地よさが押し寄せ余韻を残しました。
互いに「放って置けない」感ダダ漏れの絶妙表現は、想像と妄想を喚起する秀作でした。
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真志喜と瀬名垣の独特な関係がこの物語を一層輝かせているなと思った。
相手を愛する気持ちと相手を縛る気持ちと、自分自身も同じように相手に思われて引き合っている。
その絶妙な二人の世界が苦しくって気持ちいい。
そんな気持ちがした。
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「ビブリア古書堂の事件手帖」で古書の知識は得た。あちらは本にまつわる謎とちょっとラノベチックな複雑な人間関係がスリルを醸し出していたが、「月魚」はただただ静か。本を愛する真志喜と太一がともに2代目として古書を扱う中で解決する家族関係。若き日の二人プラスみすずと英郎を描いた短編も暖か。不思議な一冊。シリーズや続編はあるのかな。
映画化でもなくドラマ化でもなく
この作品をあるシーンまで読んだ時、脳裏に下北沢の駅前劇場くらいのスペースで舞台作品として観てみたいという衝動に駆られました。脚本の力で心の奥底まで引き出せたら、どんなに素晴らしい舞台になるかと想像します。
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瀬名垣に対して真志喜は素っ気ないところがあるが、真志喜は瀬名垣を必要としていると認めているところが良かった
二人の関係性を思わせる表現が多い、その表現が読んでてドキドキする(*/ω\*)
古本屋がどういう仕事をするのか知れてよかった
p7
真志喜の白い頬に落ちかかる淡い色の髪に触れる。
p10
茶化すような瀬名垣の言葉に、細い真志喜の首筋がうっすらと桜色に染まった。
p34
その腕をつかみ、低い声で「ましき」と呼ぶ瀬名垣の声が耳によみがえった。真志喜は一人で赤面し、持っ
ていた本を乱暴に棚に突っ込む。
p35
そうだ、私ほどあいつを必要としている人間はいない
p48
ありもしない罪と懲罰が、瀬名垣を真志喜に結びつけている。離さないでほしい、と真志喜は思った。瀬名垣を放そうとしないのは、真志喜のほうなのに。
p168
瀬名垣はまぶたが熱くなるのを感じた。すぐ前に立って、まだ名残惜しげに池を見つめる真志喜を、背中からきつく抱きしめる。
p225
所有欲も愛着も、本当はものすごくあることを自覚してる。いつまでだって撫でくりまわしてじっくり味わいたいし、だれにも渡すもんかと、いつもいつも思ってるんだ。
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家に眠っていたのを発掘し読み始めた。
最初はブロマンスだと思っていたのだが、本の査定をしに行った翌朝の一言で、あれ?と違和感を抱き、察した。
結局これは最後の方に出てきた教師が書いた空想上の物語ということなのか、あるいは、その前の話があった上で今後も…と続いているのかよくわからなかった。ふたりって何歳だったっけ。
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本編から逸れますが。 最初は遺産目当てなのかとも思えた、美津子さんの亡夫に対する怖いぐらいの愛情に心臓つかまれました。本を収めた蔵を脳みそと例え、語る、美津子さんのくだりが好きです。 真志喜と太一の幼いときの全てが変わってしまった日も、真志喜の祖父の優しさが切ない。 序盤は淡々と進むことから性に合わないかと思っていましたが、中盤以降に一気に持っていかれました。きれいな作品。好きです。
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これからも2人幸せに暮らしてねとしか
真志喜には一緒に縛られてくれる瀬名垣がいたけど真志喜の父親はずっと孤独でこれからも閉じ込められたままなんだろうなと それぞれの家のDNAが行動に出てて面白い
瀬名垣がよく真志喜の髪を触るの良い
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描写が繊細でとても好きな文章でした。三浦しをんさんの本を読んだのは初めてだったので、他の作品も興味があります。内容としては、正直なところそこまで刺さらなかったです。裏表紙の「夏に起きた事件によって2人の関係は大きく変わっていく」というのに惹かれて読みましたが、正直期待したほとではなかったです。
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過去の出来事を瀬名垣と真志喜の双方が触れない
触れてしまったら今の関係性が壊れるんじゃないかという恐怖をもっている。その恐怖は誰もがもちえるんじゃないかと思った。
真志喜の父親、自分の居場所のなさ、やり場のない感情も共感できた。真志喜の迎えに来て欲しかったという言葉は普段の態度とは異なり、子供っぽく印象に残った。
Posted by ブクログ
BL、ブロマンス寄りの作品だと聞いて購入。
確かに導入から「細い真志喜の首筋がうっすらと桜色に染まった」などおや?と思わせる描写がいくつか。
古書を愛する2人の物語。2人は過去のある事件から共依存のような関係性になってしまった。過去に囚われる2人が長い年月をかけ、古書を通じて問題に向き合う。
直接的な表現はないがずっと匂わせてくる感じが好き。真志喜の思いが強いのかと思ったら瀬名垣も「所有欲も愛着も、本当はものすごくあることを自覚している。いつまでだって撫でくりまわしてじっくり味わいたいし、だれにも渡すもんかと、いつもいつも思っているんだ」と。
なにより解説のあさのあつこの「月魚によせて」がこの作品の全てをまとめてくれていると思う。これは最後まで読むべき。
「月魚という本に大きな感動や驚きはないがこの作品を読んだ後に思い浮かべる情景は月の夜だろう。
私たちの知らない世界にこんな世界があるのだとそっと教えてくれる。今日もきっと、 無窮堂の灯りが灯っているだろう。」
Posted by ブクログ
古本屋の主人とその幼なじみのような友人を取り巻く人達の話だった。
古本屋?と思ってこれは読もうと思った一冊。
クールな主人公とどちらかといえば熱くなる友人のやり取りが面白い。
展開は淡々として読み終わったあと少しだけ拍子抜けた感じがした。