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これは、あなたを魂ごと持っていく物語。
姉・貴子は、矢田のおばちゃんの遺言を受け取り、海外放浪の旅に出る。一方、公私ともに順風満帆だった歩は、三十歳を過ぎ、あることを機に屈託を抱えていく。
そんな時、ある芸人の取材で、思わぬ人物と再会する。懐かしい人物との旧交を温めた歩は、彼の来し方を聞いた。
ある日放浪を続ける姉から一通のメールが届く。ついに帰国するという。しかもビッグニュースを伴って。歩と母の前に現れた姉は美しかった。反対に、歩にはよくないことが起こり続ける。大きなダメージを受けた歩だったが、衝動に駆られ、ある行動を起こすことになる。
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Posted by ブクログ
歩の姉の言葉、
「信じる気持ちを誰かに任せてはいけないわ」
この言葉は、劣等感の強い私が自信を持って生きていく為に、励ましを与えてくれる言葉となりました。
この言葉を読んだ時、
「そういえば私って、自分で信じる気持ちを決めていたっけ??」と強く疑問に思いました。
過去を振り返ると、私は幼少期から
「他人に自分がどう思われるか?」
を基準にして物事を決めてきました。
自分で信じたことを決めていない……。
人に合わせてばかりいるから…。
だからいつも、生きづらいなー、自分らしさってなんだろう?と思って生きてきたのだと思います。
自分の子どもとの関わりをを思い出すと、
こんなことを言われていました。
↓↓
「お父さんは周りの人にどう思われるかが判断の基準なんだよ! 私のことは考えてない!
人から良く思われたいだけでしょ!」
子どもが私に言うことは正しかったんだな…。
私は信じる基準を他人任せにして、子どもを信じているつもりになっていたんだ。。怒って当然だ。
「信じる気持ちを誰かに任せてはいけないわ」
この本を読んでから、私は物事を決める時にこの言葉を思い出して、
「この決断は私の信じる基準で決めたものだろうか?」と考えるようにしました。
自分の判断に自信が持てずに揺らぎそうな時、この言葉を魔法の言葉として思い出します!
Posted by ブクログ
『非色』から立て続けに、シビレる作品で呆然としている。上巻以上に一気読みだった。
終盤は「自分を信じて生きるとはどういうことか?」という壮大な問いを掲げている。
エジプトの記憶が巻き戻り、歩の人生にとってかけがえのないものとなっていく展開、最後の一文の綺麗すぎる伏線回収で心身まるごと清い渦にのみ込まれた。
本を読み進めながら、自分の仕事の悩みを文章に乗せて考えていた。
何度挑戦しても自信が持てなかったのは、自分の内ですでに根拠をもって意思決定しているのにもかかわらず、
リーダーや先輩から「それは間違ってるかも、うまくいくのか?と問われたらどうしよう」という妄想が常に付き纏っていて、思った通りに行動できていなかったからだと気づいた。
万人受けする選択をして、「本当はこうしたかったのに」という感情を抑え込んで仕事をしていたから自信が持てなかったんだ。
自信がないから行動できないのではなく、思い通りに行動できていないから自信が持てないんだ!
相当な時間悩んでいた仕事観に終止符を打つような最適解を、この作品を通して叩き出せたことは大きい。
自分を信じて生きることに成功した歩の姉は文字通り自信をつけていて、対照的に歩はどんどん自信を喪失させていく。
西加奈子先生に今ものすごいことを言われた気がするんだけれど、まだ完全に自分の丹田に落とし込めていないような、そんな文章に出会えた貴重な作品。悩んだ時にまたこの作品を通して生きる活力としていきたい。
「私が、私を連れてきたのよ。今まで私が信じてきたものは、私がいたから信じたの。
分かる?歩。
私の中に、それはあるの。「神様』という言葉は乱暴だし、言い当てていない。でも私の中に、それはいるのよ。私が、私である限り。」
「僕の好意さえ、誰かに監視されたものだった。
みんなが見て羨ましがるような女か、恥ずかしくない女か。
僕は鴻上を好きにならなかった。澄江を恋人にしていることを恥じた。誰かの言葉を恐れて、それを隠した。僕は自分の何も信じていなかった。僕は自分の周りにあるものばかりを信じた。
その真理に寄り添い、おもねり、自分の感情を無視し続けた。」
Posted by ブクログ
『サラバ!』を読み終えてまず感じたのは、これは一人の男とその家族の半生を描いた物語ではなく、「自分の人生を、自分で信じて生きるとはどういうことか」を描いた小説だった。
主人公の圷歩は、イランで生まれ、エジプト、日本へと居場所を移しながら成長していく。自由奔放な母、存在感の薄い父、そして強烈な個性を持つ姉・貴子。家族に振り回されながら育った歩は、やがて周囲の空気を読み、人から求められる自分を演じることが上手な人間になっていく。恋愛も仕事もそれなりにうまくこなし、外から見れば順調な人生を歩んでいる。しかし、その人生が少しずつ崩れ始めたとき、歩は初めて「自分は何を信じて生きてきたのか」という問いと向き合うことになる。
上・中・下巻とかなり長い小説だが、不思議と長さはほとんど感じなかった。特に上・中巻は、『深夜特急』を読んでいるときに近い心地よさがあった。海外での暮らし、家族との出来事、学校、恋愛、仕事、人との出会い。何か一つの大事件に向かって物語が一直線に進むのではなく、歩の人生を隣で眺めながら、その時々の場所や人間関係を一緒に旅しているような感覚がある。この先どこへ向かうのか分からないまま人生の断片を追っていく時間そのものが面白く、三巻という長さがむしろこの作品の心地よさになっていた。
上・中巻を読んでいる間は、家族の話、海外での生活、恋愛や仕事など、一見するとまとまりのない人生の断片が続いているようにも見える。しかし下巻まで読み終えると、そのすべてが必要だったことが分かる。歩が何を経験したかだけではなく、それらの経験を通して「自分自身の人生を生きる」という場所へたどり着くまでの長い時間そのものが、この小説だった。上・中巻で何気なく読んできた出来事や人間関係が下巻で次々と意味を持ち始め、「ここまで歩の人生を一緒に見てきたのは、このためだったのか」と感じられる。その回収が本当に見事だった。
特に印象的だったのは、歩と姉・貴子の対比である。周囲に馴染めず、問題ばかり起こしてきた貴子と、空気を読み、要領よく生きてきた歩。ずっと歩のほうが「まとも」に見えていた。しかし物語が進むにつれて、その見え方は完全に変わっていく。貴子は不器用ながら、自分が信じられるものを必死に探し続けていた。一方の歩は、他人からどう見られるかを基準に自分を作り続け、自分自身の内側にあるものと向き合わずに生きてきた。うまく生きることと、自分の人生を生きることは同じではない。そのことを二人の人生が鮮やかに浮かび上がらせていた。
読んでいて何度も考えたのは、人は知らないうちに、自分の価値を決める権利を他人へ渡してしまうということだった。仕事で評価されること、誰かから好かれること、世間から「うまくいっている」と思われること。それらを失ったとき、自分には何が残るのか。自分の価値を他人の評価だけに預けていれば、その評価がなくなった瞬間、自分まで失ってしまう。だからこそ、「あなたが信じるものを、誰かに決めさせてはいけない」というこの物語のメッセージが強烈に残った。
そして最後まで読んで、ようやく『サラバ!』というタイトルが好きになった。これは単なる別れの言葉ではない。過去を消すことでも、傷つけてきた人を否定することでもない。家族も、失敗も、これまで歩いてきた人生もすべて自分の中に残したまま、それでも自分の人生を支配してきた他人の価値観には別れを告げる。その先で、自分が信じるものを自分自身で選び直す。その決意が『サラバ!』という言葉に込められているように感じた。
『サラバ!』は、自分探しの物語ではない。どこかに存在する「本当の自分」を見つけるのではなく、何を信じて生きるのかを自分で決め、その選択によって自分自身を作っていく物語である。
そして、この作品は下巻まで読んでこそ完成する。だからといって上・中巻が下巻のための長い前振りなのではない。歩の人生をゆっくり追いかけ、海外を旅し、家族に振り回され、恋をし、働き、人との出会いと別れを繰り返す。その時間が十分に面白い。そして、その長い時間を歩と一緒に過ごしたからこそ、下巻で描かれるものが圧倒的な重さを持つ。
もし途中で「長いな」と感じている人がいるなら、それでも最後まで読んでほしい。下巻までたどり着いたとき、それまで何百ページもかけて読んできた歩の人生が、一つの大きな意味を持ってこちらへ返ってくる。その感覚まで含めて『サラバ!』という小説なのだと思う。
読み終えた瞬間だけではなく、これから仕事や人間関係で迷ったときにも、きっと思い出す小説になる。
自分の人生を決めるものを、他人の評価や世間の常識に預けてはいないか。そして、自分は何を信じて生きていくのか。
『サラバ!』は、その問いをこれからも何度も思い出させてくれる。長い物語を最後まで読んだからこそ、この言葉を迷わず言える。最高の小説だった。
#2026年33冊目
Posted by ブクログ
下巻を読み終えて振り返ると、上巻中巻にも全く無駄な話がなかったなぁと感心した。すべてのストーリーが結末につながる意味のあるものだったことに感動。
中巻で感じていた違和感(歩の苛立ちの身勝手さ)が間違っていなかったことがわかって、個人的には胸のつかえが取れた感じもあって爽快。
あなたの信じるもは、あなた自身で見つけにいかなければならない。そしてそれは既にあなたのすぐそばにあるはず。
この物語ではその一例が登場人物の数だけ例示されているに過ぎず、あくまで表面的なもの。本質の答えはそれぞれが生きる意味、生きる根源を心の芯として見いだせるかどうかだから。
それがある限り、生活に付随する全てはどれもご褒美に感じてしまう。幸せ。
Posted by ブクログ
やあ、面白い小説だった。上中下3巻があっという間に読めてしまう……といいつつ進むのがもったいなくて故意に時間をかけて読みもした。
主人公の歩の前半生(30歳くらいまで)がヤコブや須玖といった親友・ソウルメイトをの結びつきがあるし、高身長のイケメンだしで順風満帆でそのまま痛快に人生を生きていくのかと思いきや、30歳過ぎからどん底に落ち込んだのが衝撃。
しかもそれは、家族や人々の間でうまいこと立ち回ってきたがゆえ、うまいこと立ち回ろうとするがために自分の芯をなくしてしまっていたというわけ。歩が幼い頃から自己顕示欲が強い面倒な存在だと思っていた姉が、それらの言動は実は自分の芯を求めるための遍歴であり30歳を過ぎてすっかり落ち着いたのと正反対であるかのように。
歩が自分に芯がないことを指摘され懊悩するあたりは、これまでの軽快・軽妙なストーリーから一転しなかなか読むのも苦しかった。なぜなら、芯がないとは不甲斐ない自分に向けられた言葉のように響いたから。
それにしても、歩がイランで生まれ幼少期をカイロで過ごしたというのは著者と同じで、ということはこれは自身の体験がかなり反映された作品なんだろうか。だとしたら、著者は女性なのになぜ歩という男性を主人公に据えたのだろうか。でもこういう物語は男子が主人公……というか思い悩んだ末に光が差し始めるという役回りに合うような気がしてしまう。
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