あらすじ
これは、あなたを魂ごと持っていく物語。
姉・貴子は、矢田のおばちゃんの遺言を受け取り、海外放浪の旅に出る。一方、公私ともに順風満帆だった歩は、三十歳を過ぎ、あることを機に屈託を抱えていく。
そんな時、ある芸人の取材で、思わぬ人物と再会する。懐かしい人物との旧交を温めた歩は、彼の来し方を聞いた。
ある日放浪を続ける姉から一通のメールが届く。ついに帰国するという。しかもビッグニュースを伴って。歩と母の前に現れた姉は美しかった。反対に、歩にはよくないことが起こり続ける。大きなダメージを受けた歩だったが、衝動に駆られ、ある行動を起こすことになる。
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Posted by ブクログ
無条件に面白かったです。
生い立ちからおっさんになるまで、ひとりの人生を覗かせてもらいました。
三巻あるので読む前は一瞬躊躇しましたが、読み始めたら止まりませんでした。
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グッと心が熱くなるような読後感。
信じられるものは自分自身、自分の中にすでにあるもの。だけどそれを見つけるためには人は動かなければいけないのかもしれない。はじめからここあるんだけど、じっと待っていても見えない。動き出したときに見つかるものなのかもしれないと感じた。
サラバ。「生きていることは、信じているということだ」「僕は神様に出会い、出会った瞬間、別れを告げることが出来るのだ」「生まれた場所に触れた途端、別れの気配がしている。でも僕は、決して絶望しない」「僕は僕を、信じている」
生まれた瞬間、死ぬことは決まっている。それが人生。それでも生きていくということは、私は自分自身を信じているということなんだ。信じることができるなら、私はとても強くなれると思う。そう励まされる言葉だった。
Posted by ブクログ
言語を超えたものを言語によって表現すること。それこそ文芸の冥利ではなかろうか。
本作は自分が読んできた中で最もそれに成功している。ずっとこんな小説が読みたくて探し求めていた。殆ど理想そのものと言って良かった。
以心伝心、不立文字。
Posted by ブクログ
完全に登場人物、みんなのファンになっていたので、もうすぐ終わりが見えてきて寂しい気持ちで読み進めた。「生きている、これからも生きていくことを信じる」
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泣くようなシーンはないのに読後涙が止まらなくて、自分でも言葉にできない。
何に感動しているのか、悲しいのか、嬉しいのかも、わからない、感情が爆発しているとしか言いようがない。
最後の数ページは私自身に確実に書かれていた、そう思ってしまう。
私と私の人生を鼓舞して、応援しようとしてくれていると思えた。
「あなたは、あなたの信じるものを見つけてほしい。」、これが言いたいことのすべてだと感じた。
いろいろなシーンの中で、姉貴子と歩が初めて向き合うシーンが心に残った。
生まれた瞬間から33年間ずっと抱いていた姉への嫌悪、怒り、恥ずかしさ、全てぶつける歩と、自分の信じるものを見つけて、人生を得た姉が歩に愛を持って向き合っている姿に、感動した。
不器用で周りをやすりのように削る貴子、軋轢を生まずにその場の最適解を常に探して自分はどこか被害者だと思っている歩。
それはどこか日和見的で、他責的で、うまくやっているつもりが自分の人生を生きていない。そんな歩に「芯を持ちなさい、歩。」と突きつける貴子。
それが愛だとわかっているからこそ、兄弟だからこそ反発してしまう気持ちはよくわかる。
ここからは個人的な話になるが、私は自分のセクシュアリティを家族に伝えられずにいる。
貴子と歩のシーンが特に響いたのは、家族だからこそ長く抱えた思いに向き合うことが難しいと知っているから。
そして、私が信じたいと思っているのは、親と家族からの愛であり承認であるから。
1番劣等感を持つセクシュアリティを含めて愛されることで、私は私が信じたいものを信じられる気がする。
貴子が歩への愛を憚らない姿勢に、私も家族に愛されている疑似体験をした。そして、そこに自分の信じたいものがあるのだと感じた。
自分の中の信じるものに焦点を当てさせる、そんな小説だった。
Posted by ブクログ
面白かった。
劣悪な家庭で育った主人公は周りと健全な人間関係が築けないという病的な側面があるということが歳を重ねることによってわかってくるが最後はなんとかそこから抜け出そうとする。確かにこんなに酷い母や姉は現実にはそうそうおらんやろとは思うがこれは程度の差はあれ誰にでも当てはまるのではないかと思った。そして主人公のように自ら道を切り開けるのかそれともそのまま一生を過ごすのか、自分はどうなのかと考えさせられた。
Posted by ブクログ
上、中では主人公の黄金時代が描かれていたが、下は主人公が落ちぶれていく様を見た。
人と比較して自身の存在を確認し、トラブルがあった時に自分以外の人間のせいにし自分を守る生き方をしていた主人公。容姿など自分の持っているものが他者より劣り始めた時に初めて自分の愚かしさに気づく。落ちぶれていく最中も常に他責思考を忘れない様子は見ていられなかった。しかし、私も普段人と比較してしまうし、他責思考によって自己防衛していることはあった。主人公の子供じみた考えに似た思想があった。
「人と比較するな、自分は自分」という言葉は自己啓発の類でよく見るキャッチフレーズだったが、今まで僕の心に刻むに至っていなかった。しかし、この小説で深く理解した。言葉ではなく心で理解した。
この小説は間違いなく僕の人生の羅針盤の一つになるだろう。
Posted by ブクログ
一気に読める!心情が細かく描かれてるから、それぞれの人物に共感できるところがある。年齢、時代、環境によって変わっていくものもあるけど、変わらない、自分の信じるものを大切にしたいと思う。
Posted by ブクログ
人は変化する。どんなに先が見えない人の人生だって光がある、その逆もある。何を信じるか、どう化け物を解釈して幹を作っていくのか…周りの人は登場人物であって比較するものではないって、主人公を通して壁が壊される。ここ大事な時、私の中で乗り越えるとき、きっと『ザラバ』って脳裏をよぎると思う。
Posted by ブクログ
貴子さんは アンダーグラウンドの世界で
着実にカリスマになっていました。
歩さんは悩みを恋人の紗智子さんにうちあけます。
「 よく話してくれたね。 」
「 辛かったね 」
一番ほしい言葉を言わた歩さんでしたが
次の日の朝、紗智子さんは
「 お姉さんに会えないかな? 」
「 会いたいって・・・・、 なんで? 」
「 お姉さんの写真を、撮りたいの。 」
瞬間別れを決意するほど傷ついての時間でした。
紗智子さんの目がお母さんと同じだと気づいた瞬間
歩さんはカップを床に落としました。
わざとでした、、、、、。
そうして雑誌に、10ページの特集として掲載されて
紗智子さんは
「 傷ついた女性の再生 」を撮ることを
ライフワークとするに至り、
貴子さんは
ただただ罵詈雑言にさらされることになりました。
再び傷ついた貴子さんを救ったのは
矢田のおばちゃんでした。
遺言書に 遺骨は散骨を望む。
散骨は、今橋貴子によってなされること。
そして
「 散骨の際、この紙を持ってゆくこと。 」
墨でべったりと塗りつぶされていた紙、
ある言葉を除いて。
すくいぬし
そして矢田のおばちゃんの、
ある恋にまつわる話を知りました。
貴子さんは遺骨と「すくいぬし」を持って
颯爽と日本を去りました。
それとは対照的に歩さんは
変わっていく容姿や周りの変化に悩みます。
恋人の澄江さんに言ってしまった言葉、、、。
再会した須玖さんや鴻上さんとの友情や絆も
自らを傷つけていくような
言葉をはいてしまいこれ以上ない所まで
落ちてしまいました。
それからは自力では這い上がれないで迷走します。
でも貴子さんが見つけました!
そして結婚もしました!
お父さんとお母さんの事も
お父さんに教えてもらいました。
歩さんはもがき苦しみましたが、
お父さん、貴子さんに凄く愛されている事を
理解して自分の幹を見つけにいきます!
あなたは歩くの。
ずっと歩いて来たのだし、これからも歩いていくのよ。
そして、自分の信じるものを、見つけなさい。
その言葉は歩さんを恐ろしいほどにかき乱しました。
お父さんの告白は私にはとても意外でしたが
私はお父さんではないのでそこは深く考えずに
読み進めました。沢山気になってしまうので、、、
歩さんはエジプトで出会ったヒーローに
会いに行かなければいけませんでした。
ヤコブさんと再会してあの時の
ナイル河の河岸に向かいました。
昔を思い出して語り
これまでの時間という化け物を憎み
それでもお互いに言った言葉、、、
サラバ。
涙は止まりませんでしたが、その一言ですべて
事足りました。
サラバ。
大きな時間の化け物がいたからこそ
繋がっていた事を気づき、
生き続けてゆくことを自身が信じている事だと。
それぞれまた、大きな化け物を背負いながら
出会った時間、出会った人、出会ったものすべてを
受け止めて生きていく。
読み終えて沢山の感情が溢れてしまい
しばらく目を閉じての時間でした。
あなたが信じるものを、
誰かに決めさせてはいけないわ。
僕は僕を、信じている。
「 サラバ! 」
僕は、左足を踏み出す。
Posted by ブクログ
歩は冷笑をしていた。見下していた。だから須玖や鴻上が持っている何かを見落としていた。そしてそれは周囲に伝わっていた。
この作品を通して、信じるものの必要性や宗教や神が存在する理由を学んだ。
誰しもの人生にピークはあると思っていて、それは大学以降に来ることが一番いい、という理論が自分の中にある。それ以前に来てしまったら、(人にもよるが)人生の難易度や世界の広さを見誤るような、そんな気がするから。
今回の話では、貴子のピークは大人になってから来て、歩のピークは学生時代に来ていた。だから、歩には「見誤り」のようなものがちらほら伺えたのではないかと少し思った。
Posted by ブクログ
押す人の熱量が高いので読んでみた。
びっくりするほどつまらなかった。
主要登場人物が全員サイコパス。
そのくせ幸せとか人生とか夢とか求めているので気持ちが悪い。
星一つだけど、一周して星四です。
Posted by ブクログ
個性的な家族の中で主人公圷歩が身につけた処世術は受け身の姿勢。それでも外見の良さもあり女性には常にモテて、仕事もフリーライターとしていっぱしになっていた。これが上巻中巻までのお話。下巻では状況が一変する。中年にさしかかった歩の頭髪が薄くなり始め、仕事もうまくいかなくなる。付き合ってやってる、くらいに思っていた彼女には浮気という裏切りを受け、みるみる間に自信を無くし、卑屈になっていく。
どこで間違ったのか、歩は悩み、人との関わりも避けるようになる様がリアルだった。
結局、自分が信じるものは人の価値観に委ねてはいけない、ということなんだと
思った。
Posted by ブクログ
自分が大切にするものは人の目や体裁を気にせず決める。別にそれが信仰じゃなくてもいいと思うが、自分の軸を持ってないといざというとき揺れるんだよな
私は全然ちっぽけだが、毎日きちんとした食事と睡眠をとることを自分のバロメーターというか、大切な軸にしたいなと思っている。(姉にとってのヨガ的な)これがないと生きていけない!サトラコヲモンサマ!みたいなものはないけど、これがあると人生豊かになるな〜の手札は持っていたいのが私
Posted by ブクログ
失うものがあって、得るものがあり、ずっとあるものがある。歩のまわりには、すごく魅力的で、優しい人たちがいる。紆余屈折、遠回りしたけれど、歩は幸せに生きてほしいと思った。
Posted by ブクログ
クセツヨ奇行お姉ちゃんが、亡くなった矢田のおばちゃんに救われ、世界を放浪して信じるナニカを見つけて「マトモ」になっていくのに反比例するように、自慢できる容姿を失い、思ったよりちっともうまく世の中を渡っていけてない捻くれてしまった歩くんが、誰のものでもない自分の信じる確固たるものを見つけることができた…のかな
自分だけが「マトモ」だと思って、お姉ちゃんをはじめずっと周りの人のせいにしてきた人生だったね
矢田のおばちゃんの話、両親の離婚の理由、いろいろな人の想いを受け止めて、自分をみつめなおして、やっと進むべき道がわかった歩くんはこれからはもう迷わないね
ものすごいグローバルな話だった
世界情勢や災害も絡めてひとりの少年の成長を見てきた
最後にヤコブに会えてよかった
サラバ!
Posted by ブクログ
須玖と鴻上が付き合うところキツいなあ。
自分がずっと揺れてることに気付いてなかったのに、あの姉によってそれを突き付けられて、そこから逃げた先でのこれは、トドメすぎる。
主人公歩が生まれた時から始まって、最後は37歳で終わる。私の今の年齢。もう一つの別の人生を追体験したような感覚。
あなたが信じるものを、誰かに決めさせてはいけないわ。
良い言葉だ。
Posted by ブクログ
第五章:残酷な未来
第六章:「あなたが信じるものを、誰かにきめさせてはいけないわ。」
圷歩 東京での成人期
幼い時は「気配を消す」しかなかったアユム。
でも徹底して戦わなかった、自分と向き合わなかったツケが大人になって押し寄せる。
アユムがすごく心配で、どうなるかとハラハラでしたが、まさか姉があんなに成長するとは‥。
そして素晴らしい友人がいて良かった。
又吉の解説が私の気持ちを100万倍にして書いてくれているー、やっぱり作家さんって凄い!
Posted by ブクログ
なぜ、主人公の人生を追いかけないといけないのだろう。
上巻の読み始めはそう思っていた。
きっと、つまらないだろうと決めつけていた。
下巻を読み始めた頃は先が気になってしまっていた。主人公が山あり谷ありの人生をどう乗り越えていくのか、気になった。
人生は誰かのものではない。
自分のものだ。
良いことも悪いことも含めて、それがその人の軌跡なのだ。
自分もまだまだ、これから。
自分だけの信じるものを見つけて、芯のある人生を過ごしたいと思った。
Posted by ブクログ
上巻から考えると、読み終わるのにかなり時間がかかってしまいました。
中巻までの歩は、家族に煩わされながらも、自分に備わっていたルックスや才能を活かして、周りからみて順風満帆な生活を送っていました。下巻は、そこからの転落劇を描いています。
きっかけは、ルックスの変化。他者軸で生きていると、ささいなことではないですが、それだけでこんなにも人間や生活が変わってしまうとは、と恐ろしい展開です。そのあたりは、器用に生きているつもりな私に響くところが多分にありました。
上中下巻の全体を考えると、長さに対して満足度は低めです。響く部分は確かにあるのですが、そこまでの助走が長すぎるような。。
Posted by ブクログ
急に髪の毛の描写が増えたのが面白かった笑
自信を持てなくなると人って卑屈になるんだね〜
順風満帆な人生を送る勝ち組の人ってずっとそう生きていくんだと思ってたけど、こんなにも脆くステータスって崩れ去るんだなあ
信じるものは何か?私はわざわざ探して何かに頼らなくてはいけないとは思わない。自分自身を完璧とは思っていないけれど根拠なき信じられる気持ちがある。でも何故だろう。ヤコブのように信じることが日常なのか?そうでもない気がする。一度自分自身を振り返るきっかけになった本です。
Posted by ブクログ
上中巻と淡々と一人の男の自叙伝が続く。人に流され生きる主人公らしくその内面の心情表現は乏しく記録的なので読みが進まなかったが、中巻の後半から下巻にかけて中年期に人生が大きく動く事に従って主人公の心情の動きに読む側の心理状態も影響され翻弄される。題名の「サラバ」という言葉に最後主人公は救われるが、そういうものがあって、そしてそれを見つける事が出来たのは幸せだったろう。それとも皆そういうものを持っているのか。
Posted by ブクログ
自叙伝という形にしなければいけない理由がよく分からなかった。自分と自分語りが大好きな人にしか見えない。
少年期のヤコブとのエピソードが好きだっただけに、再会の話は非常にがっかりした。ここまで来て悲劇の主人公を気取ってしまうのか……。
魅力的な章も多々あり楽しく読めたが、終始他責思考の語り手にはうんざりした。大切に温めていた父母のエピソードが「こんなもんか」なのはリアリティがあった。
Posted by ブクログ
自分を誰かと比較して、踏み出せない自分自身を誰かの所為にして、自分を正当化してなにかを信じることから逃げていないか。長い物語のラスト、一気に開かれてゆく主人公の世界の明るさは爽快でもある。又吉さんの解説も素敵。
Posted by ブクログ
今まで家族に振り回されながらも順風満帆に人生を歩んできた主人公の歩が成人後にどんどん失落していき、逆に周りがどんどん幸せになっていくことにイラつきながらも何とか挽回する話。
上巻でタイトルの語源が判明するが、予想通り下巻でも出てくる。
そんなに上手くいくか?という気持ちもありつつ、結局は気の持ちようだよねっていうところに落ち着くところが綺麗事に感じてしまう。
純粋な心の持ち主なら気持ちよく読めるんだろうなという作品だった。
Posted by ブクログ
西加奈子の文章は生き生きとしていて読みやすい。終盤にかけて、作者の主張が強すぎると感じることもある。欲を言えばもっと物語として落とし込んでほしかった。
Posted by ブクログ
あれほど大きい存在だったヤコブを思い出さなくなってしまったこと、ページを読み進め主人公の新たな生活を追ううち、中巻半ばの頃には私もヤコブを思い出さなくなって、まるで追体験をさせられている気持ちになった。
「僕は何かことが起きると、いつも自分がそれにどれだけ関与しているか確認した。そして、『僕は悪くない』と安心していた。」
これは自分にもある無意識の癖でささった。
弱さからくる逃げや自分の中で人のせいにすることで安堵するような性質。わかってつらい。
歩がハゲてきた頃からの心の小ささには目を逸らしたくなった。
これに打ち込んでいる!これをがんばっている!がある生き物は強い。それが趣味であれ仕事であれ。
歩が今までのことなんて嘘みたいに輝いたことにつきる。素直に羨ましい。
そして姉のように、人からどうみられるかなどそもそも頭にない生き方も強い。
背すじをのばして、胸を張って生きたいと思った。