【感想・ネタバレ】サラバ! 上のレビュー

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Posted by ブクログ 2024年04月26日

はじめ、グローバルすぎてスケール広すぎって思ってたけど、なんかだんだんおもしろくてっておもってたら、ラヴィットでもタレントが紹介してて、有名なんやなあって思った。でも長いけど、面白い。下巻よまねば!

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Posted by ブクログ 2024年03月25日

登場人物のキャラクターがとても魅力的で面白い。心情の表現が素晴らしく、読み進めるうちに自分の身におこったことのように感じ没頭して読んでしまった。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2024年02月24日

下巻まで読み終わっての感想

最初から最後までおもしろかった。ただただこの本の世界に浸かっていたかった。

ヤコブと再会して、ヤコブがサラバ、と小さな声で言った場面、自分までビリビリと震えた。

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購入済み

この先が気になる

2024年01月29日

上巻でやめるつもりだったが、その巻末がとんでもない最後で
先が気になる。家族がうまくいってないことはわかるが、
うまくいっているところもあって、よくないところも
他人事と思って面白くその推移を見ていた。
海外勤務の親の子供たちの様子、それもこの家族に
特有のことも多い。異国の様子が興味深いし、
人と...続きを読む人の結びつきや、成長や変化の様子が
興味深かった。宗教もだんだんといろいろに
その姿を現してきた。これからどうなるのだろうか。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2024年01月23日

3巻まとめて↓

本当に出会えてよかった。もっと早く出会いたかった。なんで上中下巻に怯えてずっと積読にしていたんだよ自分、、、と思いました。

エジプトの魅力的な描写から引き込まれ、周りの顔色を伺わざるを得ない環境で育ったが故の、他責思考の主人公。それはそのまま彼の人間性になるけれど、本人も気付いて...続きを読むいない(ふりをしていた)それに気付かせたのは、その他責思考の人間をつくった張本人で。

だけどやっぱりそれは彼の人生だから彼がコントロールするべきだと、結局はそう思わせてくれるのがすごいです。

めちゃくちゃ主人公に感情移入してしまったし、たぶんみんなこういう気持ちを少なからず抱えて生きているし、それは、そう考えないと生きていけないようなことが本当に多すぎるからだけど、でも結局は自分の人生なんだから嘆いているだけでは変わらなくて「自分が信じるものを自分で決める」ことでしか生きていけないんだ、と本当の意味で気づく物語でした。

「私は歩を愛している。それは歩を信じているからではなくて、歩を愛している私を信じているからだ(趣意)」という台詞には本当に震えました。

あーーーーもっと早く出会いたかった、素晴らしかった!!!

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Posted by ブクログ 2024年01月04日

一行目で完全に心鷲掴みにされて、それからは主人公とその家族の数奇な運命を夢中で追いかけた。受け身は、ある種の優しさだと私は思う。

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Posted by ブクログ 2023年11月10日

上中下、読めるのかという心配は無用だった。
あっという間に夢中で読み終えてしまった。書き出しから秀逸。

海外経験がある人、兄弟や両親に何か思うところがある人
親近感でぐっと引き込まれるのでは。

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Posted by ブクログ 2022年12月16日

主人公は自分のことのように感じられた。

自分はこの本に出会えてよかった。
きっと自分の人生にとって、大きな糧になると思えた。

自分は主人公と同じように、幼少のころから中学高校と、周りからたくさん愛されていたことに気付けた。
きっと自分にも主人公と同じように、信じられるものを見つけられる日が来るだ...続きを読むろう。
今ではないが、きっといつか

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Posted by ブクログ 2022年12月07日

すごく良かったです。
上中下と3巻のものを読んだんですが、正直中巻の途中までは中々読み進めるのがしんどくて、実際上巻の途中で何度も置いてしまいました笑
ただ下巻から西さんの本領というか「らしさ」がすごく出てきて一気に読み終えました。
自分にしては珍しくもう一度下巻を読み直そうかなと思う作品でした。人...続きを読むにも薦めたいです。

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Posted by ブクログ 2024年05月01日

これでもかっ!というほど濃密な人生送ってるなーと思ったけど、これでまだ上巻なのね。
登場人物みんなクセが強い。
ちびまる子ちゃん的な面白みがあって、ちょこちょこ笑える。
でも時々、こちらの心も抉ってくる。
続きが楽しみ。

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Posted by ブクログ 2024年03月20日

お姉ちゃんのハチャメチャ具合が笑える
西加奈子さんの本は初めてだからどんな感じか知らなかったけど、いいっすね。
エジプト編は面白いけどお姉ちゃんがそんなに暴れないので中巻に期待。

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Posted by ブクログ 2024年02月13日

小説っていいなと思える小説。
誰かが言っていたけど、この壮大な物語が白紙から生まれたって考えると凄い。

1人の男性の半生を描いた作品。人生というのは山あり谷ありで、それは読んでいる僕も同じ。ここ数年、あまりうまくいかないこと続きでへこむことが多かったけれど、まあそういうもんだよな、と思えた。

...続きを読む上中下巻あわせての感想

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購入済み

匿名 2024年01月28日

凄く変わった姉、美しい母、大人しい父親、との暮らし、海外での生活など、自分の生活では経験した事がない話しばかりだったので興味津々で読み進めました。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2023年11月18日

自己主張せず、空気を読み、諦める。自分もそのような事をしてしたので、主人公の歩くんに共感した。天真爛漫な母や、我が道を行く姉がいるので、その性格が際立って見える。

彼らを見下さないように、とりあえず笑った結果、彼らを見下した事になってしまった。
物乞いをしている子供達への、接し方は本当に困る。私自...続きを読む身は無表情で塩対応をする事で、そこから逃げ出していた。母のようにキッパリということが正解なのか?どう対応するのが正解かは未だに分からない。

日本人の友達や親族との関係、エジプト人やヤコブくんとの友情、宗教等、扱うテーマは幅広い。従兄弟2人が雑誌を送りつけた意図は何かのだろう?歩くんが嫌な思いをしたので、この2人への印象は個人的に良くない。
親が離婚し帰国後の歩君の様子が気になる。
中編が気になる。

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Posted by ブクログ 2023年11月09日

失敗した。
上中下あるこの作品を、上巻のみ買ってしまったことを。
夜に読み終え、早く続きが読みたすぎて後悔している。
中巻、下巻を楽しみに。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2023年08月27日

圷歩少年とその家族の物語(上巻のみ既読)。

独特の家族の中に愛情があるが、だんだん壊れていくところに心が痛かった。

都合が悪い状況では徹底的に存在を消す歩の気持ちに共感した。

エジプトという見知らぬ土地でヤコブという親友を得ていくさまはテンポが良かった。お金があり豪邸に住みながらも、貧乏なヤコ...続きを読むブを羨ましいと思う気持ちはよくわかった。

中巻、下巻も読むのが楽しみ。

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Posted by ブクログ 2023年08月16日

自分が少年の頃に、似たような感情を母や姉に持っていた記憶が思い返された。ヤコブに対する想いに関しても似たような経験があり、理解できる感情だと思う。そして何より今自分が異国の地で暮らしているので、その点での共感も多かった。続きを読むことが楽しみ。

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Posted by ブクログ 2023年07月27日

常にどこかに逃げ場を作りながら、キズを負うことなく生きる人もいる。いい子であり、いい人であり続けることを良しとする受動的な本能が、いつの間にか相手を傷つけ、やがて守っているはずの自分を追い詰める。
家族だってそれぞれに心に何かを抱えながら家族としてのつながりを持って生きる。
多くの出会いとサラバがあ...続きを読むっての人生。人生とは、生きるとは、何となく問われているような気になる物語。時に涙腺を緩ませながら面白く読ませていただきました。

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Posted by ブクログ 2023年06月12日

個性的な家族が描かれる中で、それを客観視して一歩引いて過ごす主人公が、どことなく自分と重なるように感じつつ、自分だけじゃなかったのかもと安堵みたいなものも感じたりする。
その当時では決してノーマルとはいえない経験を経て物語がどう展開していくのか、後を引く。

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Posted by ブクログ 2023年04月29日

何度も時間切れで読むのを諦めたけど、やっと最後まで読みきれた1作目。
きょうだいの1人である私にとって、一般の方々に知ってほしい現場がうまくまとめられていてよかった。「中」も楽しみです。

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Posted by ブクログ 2023年04月23日

オーディブルで上巻まで聞いた。
上巻までの感想です。

みんなこの本を普通に楽しめるなんてすごい。
僕は歩の家族関係や性格が自分と重なるところが多くて聞くのが辛かった。
自分の見たくないところを正面から見させられているようで、ゲボが出そうだった。
この作品が面白くないという評価ではない、むしろこんな...続きを読むに生々しい気持ちを掘り返されるのは流石としかいえない。
多分僕みたいな人間が1番読むべき本なんだと思う。

はやく最後まで読まないと、はやく結末に到達してくれないと辛すぎる、いい結末であってくれ

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Posted by ブクログ 2023年02月04日

あなたは、『僕らにしか分からない言葉』というものを持っているでしょうか?

すっかり世の中に”定着”してしまった”振り込め詐欺”。2021年の警察庁の統計ではその被害額はなんと282億円にもなるそうです。高齢者を中心としたその被害、なんとかならないものかと、盛んに啓発活動が行われてもいますが深刻な情...続きを読む勢に変化はないようです。

自分にとって大切だと思っている人からの電話、そんな受話器の向こうで悲痛な声をあげる大切な人のことを思う気持ちは、それを忠告してくれる人の言葉より重く響くのはある意味当然のことかもしれません。そんな人の心を踏み躙るこの犯罪、決して許してはならないと思います。

そんな振り込め詐欺から身を守るために言われているのが、大切な人と自分だけにしか『分からない言葉』を持とう!という運動です。他の人、ましてや犯罪者には全く知り得ない二人の間だけで意味をなす言葉、それを口にする瞬間、二人の間には目に見えない糸が繋がります。二人の絆の証になるその言葉、そんな存在が穢らわしい犯罪を駆逐していってくれることを願ってやみません。

さて、ここに『僕らにしか分からない言葉』を大切に思う二人の男の子が幸せな時間を過ごす物語があります。日本人とエジプシャンという二人が偶然に知り合う瞬間が描かれるこの作品。『アラビア語でもない、日本語でもない、ましてや英語でもない、僕とヤコブにしか分からない言葉があったのだ』という言葉を大切に思う二人の時間が描かれるこの作品。そしてそれは、『「さようなら」だけではなく、様々な意味を孕む言葉』になった『サラバ。』という言葉に二人の絆を感じる物語です。

『僕はこの世界に、左足から登場した』と、『日本から遠く離れた国、イランで』『産声を上げた』のは主人公の圷歩(あくつ あゆむ)。そんな歩の『父の赴任先であるイランを決定した』のは『母の直感』でした。『自分のスタイルを変えないタイプの人間だった』母親。そして、『母より8つ年上』の父親は『石油系の会社』に転職し『念願の海外勤務が』決まり『メキシコかイラン』という候補を示すと『すごい素敵な場所に思えた』とイランを選んだ母親。そして、イランへと赴任することになった圷家。そんな圷家には、赴任前に姉の貴子が生まれました。『生まれ落ちた瞬間から、姉は激怒していた』という貴子は、『その場所で一番のマイノリティであることに、全力を注』ぎます。『家中にある植木鉢の土を食べるのをやめることが出来な』いなど、『暴れん坊』の限りを尽くす貴子。『母vs姉、そして、その間をオロオロと揺れ動く父という図式が、磐石な態勢で、長きに渡って顕在していた』という圷家。そんな中にテヘランの病院で生まれた歩は、『家の中で、なるべくおとなしく、目立たないように努め』ながら生きていきます。それでも全体として、『日本から遠く離れたイランで、僕たち4人は、とても幸福な家族だった』という圷家。そんな時、『ホメイニによる、革命が勃発』します。『帰国は自主判断で』という会社の指示に『じゃあ怖いので帰ります』とも言えず、『母と姉、僕だけを先に帰す決心をした』父親を残して帰国した三人。しかし、『帰国後すぐに行動を起こした』母親は、『父の会社に乗り込み、父に帰国命令を出してほしい』と訴えます。そして、『心動かされた上司』の指示により、残った仕事をこなした後、『最後の民間機で帰国の途に就いた』父親。そして、『圷家の日本での暮らし』が『大阪の小さなアパートで』始まりました。その後もエジプトへ赴任する父親と共にカイロへと移り住む圷家。怒涛のようにさまざまなことが訪れる圷家の四人の日常が描かれていきます。

第152回直木賞を受賞したこの作品。文庫本で三冊に分冊され総ページ数950ページの圧倒的な物量で構成されたこの作品。約三年で600冊以上の小説ばかりを読んできた私ですが、一つの作品でこの物量は初めての体験、そんなこともあってなかなか手に取るのを躊躇し続けてきましたが、今回ついにその扉を開けました。そんな作品は『僕はこの世界に、左足から登場した』とインパクト最大級に始まります。

なかなかに読みどころの多いこの作品ですが、印象的なのが『エキゾチック』とも言える海外の街並みと、そこで暮らす人々のリアルな日常の描写です。この作品の上巻では、以下の三つの都市に父親の転勤によって移り住む圷家の日常が描かれていきます。
①テヘラン(イラン)
②大阪(日本)
③カイロ(エジプト)
数多の小説は世界各国に舞台を設定できる余地がありますが、私が読んできた小説群の圧倒的大半の舞台は日本です。海外があるとしても、ハワイなど多くの日本人に馴染みのある都市までだと思います。そんな中であまり馴染みのない都市を舞台にすると、そこには、初めて訪れる地として一種の旅行記としての魅力が生まれます。例えばモンゴルの平原を旅する主人公を描く小川糸さん「さようなら、私」など、多くの読者が初めて知るその世界の描写はインパクト絶大です。それを踏まえると、テヘラン、カイロという『エキゾチック』という言葉そのものと思える地が登場するこの作品は冒頭から読者の期待値Maxに展開します。ただ、この作品は主人公の歩視点で展開するため、よりインパクトの大きいテヘランの描写が少ないのが少し残念ではありますが『1979年に、国王であるパーレヴィが国外に亡命し』、『「イラン・イスラム共和国」が樹立され』、『ホメイニ』が『国の最高指導者となった』と展開する中に翻弄される日本人たち、そして圷家の人々の日常が影響を受けていく様は、歴史が動く舞台を物語の中に垣間見るまさしくドラマティックな展開と言えると思います。

そして、それ以上に魅力的に描かれるのが、歩が小学校1年にして移り住むことになったエジプトの描写です。三つご紹介します。

まず一つ目は、”イスラム教の国あるある”とされる『朝は、奇妙な音で目が覚めた。誰かが歌っている、最初はそう思った。おじさんだ。声が反響していた』と描かれる『アザーン』の描写です。『今からお祈りの時間やで、て、皆に伝えてるねん』と歩に説明する父親は『イスラム教っていう宗教があって、そのお祈りの時間になると、モスク、空港からこっち来るとき見たやろ?玉ねぎみたいなドームとか、塔とか。そっからアザーンを流すねん』と続けます。実のところ私もイスラム教を国教とする国を訪れたことがあり、初日の朝は窓からいきなり聞こえてきたこの声に起こされました。エジプトは訪れたことがないですが、まさしく、”あるある”だと思いました。

次に二つ目は、小学校1年生が見る『ピラミッド』初体験の描写です。『近づいてみると、ほとんど壁だった』という『ピラミッド』を見て『ひとつの石が、僕よりうんと大きかった。それが何万個もつみあがっている様(275万個らしい!)は、スケールが大きすぎて、笑い出したくなるほどだった』と興奮冷めやらぬ歩。そんな『ピラミッド』の中の面白い表現が登場します。『洞窟が奥へと続く感じは、あまりに出来すぎていて、発泡スチロールで出来たハリボテ、といわれても納得するような佇まいだった』。あまり、聞いたことのないような比喩表現がとても印象的です。

そして最後に三つ目。『信号待ちで停まっ』た車の窓を『コンコン』と叩く音に『男の子』の姿を見る歩。『手を差し出し、何か言っている』男の子を見て、思わず『お父さん』と訊くと『物乞いや』と返す父親。『この子は、こうやって停車している車に近づき、お金をねだって暮らしているのだ』という現実を知る歩。『お金あげたらあかんぞ』と言う父親の『冷たい物言い』に『ショックを受け』た歩。そんな歩に父親は『例えばあの子が、花とか、新聞紙を売ってるんやったらええ。花代や新聞紙より、ちょっと多めに金をやったらええんや。でもあの子は働いてないやろ?ただ金くれって言うだけの子に、金をあげたらあかん』と続けます。この父親の言葉の説得力の先に描かれる最底辺に生きる人たちの姿。そんな物語にこの父親の言葉が印象深く響くのを感じます。今から30年以上も前の日常の描写ではありますが、エジプトという、日本人には『ピラミッド』だけがインパクト大な遠い国の現実を垣間見る衝撃的なシーンでした。

そんな物語は、圷家の四人家族の日常に光が当たっていきます。そんな家族の面々に簡単に触れておきたいと思います。

・父親 憲太郎: カメラメーカーから石油系の会社に転職。183センチの長身で『ずっと痩せていた』。姉の貴子を溺愛。

・母親 奈緒子: 『自分のスタイルを変えないタイプの人間』。164センチ。『すべてが小作りで、挙句背が高いので、美人に見られる』。

・姉 貴子: 『生まれ落ちた瞬間から、姉は激怒していた』。『容姿に少し問題』。僕の家を、のちに様々なやり方でかき回す』ことになる。

・歩: テヘランで生まれる。『幼稚園に入園する頃には、すっかり空気の読める子供』。『いかにして自分の気配を消すかを身につけていた』。

上巻は〈第一章 猟奇的な姉と、僕の幼少時代〉と〈第二章 エジプト、カイロ、ザマレク〉の二つの章から構成されていますが、〈第一章〉に描かれる章題そのままの『猟奇的な姉』貴子が描かれる物語は強烈です。『ここまで来といて、何故出ない?』と、なかなか産道から出てこなかった姉・貴子。そんな姉のことを『生まれ落ちた瞬間から、姉は激怒していた』と表現する西さん。『玄関の靴という靴をベランダから放り投げる』、『絵を描くときは画用紙ではなく壁、それも、クレヨンではなく母の口紅』、そして『家にあるビデオテープやカセットテープの中身を、全て引っ張り出さないと気が済まな』いなど、まさしく『猟奇的』な存在として描かれる姉・貴子の姿を見ていると読者まで心配になってもきます。西さんの作品にはこの貴子のようなキョーレツという言葉で表現したくなる人物が度々登場しますが、一方で、全ての人物がキョーレツでは物語は回っていきません。その対になるように、幼くして大成しているとも言える存在として描かれるのが主人公の歩です。『幼稚園に入園する頃には、すっかり空気の読める子供』だったという、現実にいたら、逆にちょっと嫌なやつ、可愛くない子供とも思える歩。しかし、姉が振り切った存在である以上、歩が逆方向に振り切る存在であることで、ある意味でのバランス感の上に物語は展開していきます。そして、そんな物語は一貫して歩視点です。あくまで歩が目にするもの、耳に聞くもの、そして体験していくことが、小学生という歩の瑞々しい感性の上に描かれていきます。恐らくこの先の中巻、下巻への布石と思われるような気になる描写も含めながら、三つの都市に舞台を移していく中に成長していく歩の幼少時代が描かれる物語。そんな中で強く印象に残ったのが、〈第二章〉で描かれるヤコブとの出会いでした。スーパーでの偶然の出会いの先に繋がっていく二人の絆。『シュクラン(ありがとう)』、『アフワン(どういたしまして)』と交わした会話の先に繋がっていく友情。そんな中、この作品の書名に繋がる物語が描かれます。『僕らの「サラバ」は果たして、「さようなら」だけではなく、様々な意味を孕む言葉になった』と説明される『僕らにしか分からない言葉』の誕生。そんな言葉の意味を深く感じる物語の中に、西さんが書名に込められた深い想いが浮かび上がってきます。ここでは、これ以上触れませんが、これから読まれる方には、この作品に「サラバ」という書名を付けられた西さんの想いを、歩とヤコブの友情の物語の中に感じていただければと思います。まさしく、上巻の最大の山場、それこそが歩とヤコブの物語だと思いました。

『世界に対して示す反応が、僕の場合「恐怖」であるのに対し、姉は「怒り」であるように思う』と姉弟の違いを感じながら小学生の今を生きる主人公・歩の物語。そこには、テヘラン、大阪、そしてカイロと、父親の転勤と共に生活の場をダイナミックに移動させていく圷家の四人の日常が描かれていました。1977年から1987年、テヘランで生まれた主人公の歩が十歳を迎えるまでが描かれたこの作品。それぞれの土地の描写の中に、その場所にリアルに生きる人々の生活の息吹を感じるこの作品。

この先に続く大人への階段を着実に上がっていく歩のそれからと、家族のそれからがとても楽しみにもなるインパクトのある上巻でした。


では、中巻へと読み進んでまいります!

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Posted by ブクログ 2022年07月31日

とても深い内容でした。主人公の歩の心の機微に人間味があり、感情移入しやすいです。時に自分自身の価値を見失い、進むべき方向を誤ったとしても、全ては人生の過程であり、結果ではないのだなと。人生にトラブルは付き物ですが、今起きていることの良し悪しは死後、もしくはその先まで、解らないものかもしれない。そう思...続きを読むうと、少しだけ生きやすく…前を向けるかもしれません。

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Posted by ブクログ 2024年01月26日

現在から過去を回想した一家の物語。現実にあり得そうなギリギリのラインの人間関係や出来事等が、読者を飽きさせない気がする。主人公含めた一家の運命と、いつ現在の場面になるのかが楽しみ。

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Posted by ブクログ 2024年01月20日

イランで生まれ、日本で幼い時期を過ごし、エジプトでかけがえのない友人、ヤコブと出会う圷歩。

家族の話がメインで、母、姉ともに‘’クセのある”人たち。そんな家族たちだから、空気を読みながら過ごす歩。これはまさしく2人目の子供の生き方。とは言っても、姉のクセが強すぎるが。

個人的にはエジプトでの生活...続きを読むが興味深かった。エジプトの雰囲気が日本とまったく違うこと、文化や宗教について考えることができた。

小説の世界だが、ヤコブは読者視点からも高貴で憧れる存在。歩にとってヤコブはまさしく恋人のような、一緒にいたいと思える存在だったのかな。

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Posted by ブクログ 2023年11月09日

現代版太宰治みたい。
私と取り巻く環境と、その時の私のヘタレな心情を、
私小説っぽいくつらつら語ったお話。

主人公に感情移入できないので、読んでてイライラが募る。
読み物的には面白いが、イライラするので上巻だけで
もういいかなと思った。

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Posted by ブクログ 2023年07月31日

西加奈子さん、直木賞受賞作。読みたかった本です。全く予備知識を入れないで読み始めて、ひとりの男子・歩君の自伝的風小説と分かり多少驚きました。
父親の海外赴任先のイランで出生した歩。なかなか精悍な父親と美しい母親、そしてその行動に難ありの姉との四人家族。
イランでの誕生、日本への帰国。幼稚園小学校と歩...続きを読む君は、冷めた物分かりの良さで過ごします。
姉は、その体型と多少奇怪な行動から「御神木」と揶揄され、日本に馴染めません。
そして、再び赴任先のエジプトへと生活圏を移していきます。
軽快な文章で、面白く読ませてくれます。ただ、この長編が、どこへ向かっていくのか、まだ読み取れません。
そして、この家族の母親像が、好きなタイプでないのが読み辛いところ。
                中へ

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Posted by ブクログ 2023年07月31日

まずは上を読み終わった。
子ども目線から見える世界の描写を自分の家族、子どもの立場だったらどうだろうと想像しながら読みました。

強烈なキャラのお姉ちゃんがカイロに行ってからの大人しくなりようが、環境の変化はここまで影響するのかと驚いた。

歩とヤコブの友情が素敵で、ヤコブが一番お気に入りな登場人物...続きを読むになりました。

さあ、次は中に進みます。

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Posted by ブクログ 2023年04月19日

大げさな事件とかが起こるわけではないが、一般的な家庭というにはいろいろありすぎる一家の日常の話だが、読み進めていくうちにじぶんのことのように思えてくるのは文章が軽いからだろう このあと中、下とどうなっていくのか楽しみである

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2023年01月05日

主人公一家の女性陣のクセが強く、特に姉のキャラが立っていて、基本的にほとんどが家族の日常についての物語でしたが、最後まで飽きずに、ときどき笑いながら読みました。
結局、この物語の中で主人公とヤコブとの関係が意味することは分かりませんでしたが、主人公は恋愛感情とは違う、特定の同性への特別な感情を持つよ...続きを読むうです。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2022年12月17日

はぁ。。やっと読み終わった。
いつもは自己啓発本とか、斜め読みできるような本を読んでいるので、小説のようにじっくり読まないといけない部類の本をしかも上中下と読むなんて本当に久しぶり。

内容は、最後は、あ、へぇ・・・・という感想。あまり登場人物たちに感情移入ができなかったからかな。特に上巻の子供時代...続きを読むは退屈でかなり読み進めるのに時間がかかった。後から考えれば色々と伏線があるのもこの巻だけど・・・。中巻から物語のスピードが増して読みやすくなった。

歩のような、一見優しい、でも多少歪んだ自尊心や人と自分を比べて自分のほうが勝っていると感じるからこその自己肯定、そんな気持ちは私にもわかるので、下巻の歩の苦悩は読んでいてつらかった。昔は女性にちやほやされて仕事も順調、どこか人生舐めていた感じもある、俺無敵感。今は仕事もなくハゲて太った中年のオジサン。輝かしい時代を知っているだけに気持ちは落ちるよなぁと。そして下に見ていた恋人に浮気をされ、友達だと思っていたふたりが付き合いだしてその幸せを喜べなかったり。

自分より下に見ていた友人(こう書く時点で、それが友人と呼べるのかが甚だ疑問だが、でもそんな気持ちでつるんでいる人って実際多いと思う)が幸せになった途端に、その幸せを喜ぶことができず、屈辱感、裏切られた感を感じてしまったりすることはないだろうか?今「仲がいい」と思っているその人は、自分と同等または下と思っているからではないか?その人が自分を飛び越えて幸せになったら、心から祝福できるのか?自分の好きな人がものすごい周りから評判が悪かったら、でも好き!と言えるだろうか?見かけも職業も関係なく、その人の今を好きだと心から言えるだろうか?その自信は私にもない。

歩は最後、信じるものを見つけることになるのだが、まぁその展開が無理矢理といえば無理矢理だし、おおそうか良かったねぇと思えないような不自然さもままあるけれども、いつも人と比較して落ち込んだりしていた私にとっては、そうだよなぁと思う部分も。ことのつまり、自分の軸を持っている人は強いということ。自分が信じるもの、心から好きと言えるもの、ブレない軸があれば人生は怖いものはないんだと思う。分かっていても、特に日本では他人の目を気にしないというのはなかなか難しいものはあると思うけど。

歩は3年かかって小説を書き上げた。私にも諦めきれない夢がある。他人から羨ましがられる生活や仕事、そういうものを取っ払って、自分の「好き」を突き詰めてみるのもいいかもしれない、と思った年の瀬でした。

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Posted by ブクログ 2022年06月14日

時系列で進んでいく物語。
大きな展開がなく中々読み進まなかったが、段々と歩の人生に入り込んでいき、読み進む手が止まらなくなってきた。

イランでの生活、エジプトでの生活がリアルに想像でき、行ってみたくなった。歩の他人事として傍観してしまう姿に、時々イラついたが、私自身もやってしまうため共感する場面も...続きを読む多かった。

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