あらすじ
これは、あなたを魂ごと持っていく物語。
姉・貴子は、矢田のおばちゃんの遺言を受け取り、海外放浪の旅に出る。一方、公私ともに順風満帆だった歩は、三十歳を過ぎ、あることを機に屈託を抱えていく。
そんな時、ある芸人の取材で、思わぬ人物と再会する。懐かしい人物との旧交を温めた歩は、彼の来し方を聞いた。
ある日放浪を続ける姉から一通のメールが届く。ついに帰国するという。しかもビッグニュースを伴って。歩と母の前に現れた姉は美しかった。反対に、歩にはよくないことが起こり続ける。大きなダメージを受けた歩だったが、衝動に駆られ、ある行動を起こすことになる。
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Posted by ブクログ
グッと心が熱くなるような読後感。
信じられるものは自分自身、自分の中にすでにあるもの。だけどそれを見つけるためには人は動かなければいけないのかもしれない。はじめからここあるんだけど、じっと待っていても見えない。動き出したときに見つかるものなのかもしれないと感じた。
サラバ。「生きていることは、信じているということだ」「僕は神様に出会い、出会った瞬間、別れを告げることが出来るのだ」「生まれた場所に触れた途端、別れの気配がしている。でも僕は、決して絶望しない」「僕は僕を、信じている」
生まれた瞬間、死ぬことは決まっている。それが人生。それでも生きていくということは、私は自分自身を信じているということなんだ。信じることができるなら、私はとても強くなれると思う。そう励まされる言葉だった。
Posted by ブクログ
泣くようなシーンはないのに読後涙が止まらなくて、自分でも言葉にできない。
何に感動しているのか、悲しいのか、嬉しいのかも、わからない、感情が爆発しているとしか言いようがない。
最後の数ページは私自身に確実に書かれていた、そう思ってしまう。
私と私の人生を鼓舞して、応援しようとしてくれていると思えた。
「あなたは、あなたの信じるものを見つけてほしい。」、これが言いたいことのすべてだと感じた。
いろいろなシーンの中で、姉貴子と歩が初めて向き合うシーンが心に残った。
生まれた瞬間から33年間ずっと抱いていた姉への嫌悪、怒り、恥ずかしさ、全てぶつける歩と、自分の信じるものを見つけて、人生を得た姉が歩に愛を持って向き合っている姿に、感動した。
不器用で周りをやすりのように削る貴子、軋轢を生まずにその場の最適解を常に探して自分はどこか被害者だと思っている歩。
それはどこか日和見的で、他責的で、うまくやっているつもりが自分の人生を生きていない。そんな歩に「芯を持ちなさい、歩。」と突きつける貴子。
それが愛だとわかっているからこそ、兄弟だからこそ反発してしまう気持ちはよくわかる。
ここからは個人的な話になるが、私は自分のセクシュアリティを家族に伝えられずにいる。
貴子と歩のシーンが特に響いたのは、家族だからこそ長く抱えた思いに向き合うことが難しいと知っているから。
そして、私が信じたいと思っているのは、親と家族からの愛であり承認であるから。
1番劣等感を持つセクシュアリティを含めて愛されることで、私は私が信じたいものを信じられる気がする。
貴子が歩への愛を憚らない姿勢に、私も家族に愛されている疑似体験をした。そして、そこに自分の信じたいものがあるのだと感じた。
自分の中の信じるものに焦点を当てさせる、そんな小説だった。
Posted by ブクログ
上、中では主人公の黄金時代が描かれていたが、下は主人公が落ちぶれていく様を見た。
人と比較して自身の存在を確認し、トラブルがあった時に自分以外の人間のせいにし自分を守る生き方をしていた主人公。容姿など自分の持っているものが他者より劣り始めた時に初めて自分の愚かしさに気づく。落ちぶれていく最中も常に他責思考を忘れない様子は見ていられなかった。しかし、私も普段人と比較してしまうし、他責思考によって自己防衛していることはあった。主人公の子供じみた考えに似た思想があった。
「人と比較するな、自分は自分」という言葉は自己啓発の類でよく見るキャッチフレーズだったが、今まで僕の心に刻むに至っていなかった。しかし、この小説で深く理解した。言葉ではなく心で理解した。
この小説は間違いなく僕の人生の羅針盤の一つになるだろう。
Posted by ブクログ
貴子さんは アンダーグラウンドの世界で
着実にカリスマになっていました。
歩さんは悩みを恋人の紗智子さんにうちあけます。
「 よく話してくれたね。 」
「 辛かったね 」
一番ほしい言葉を言わた歩さんでしたが
次の日の朝、紗智子さんは
「 お姉さんに会えないかな? 」
「 会いたいって・・・・、 なんで? 」
「 お姉さんの写真を、撮りたいの。 」
瞬間別れを決意するほど傷ついての時間でした。
紗智子さんの目がお母さんと同じだと気づいた瞬間
歩さんはカップを床に落としました。
わざとでした、、、、、。
そうして雑誌に、10ページの特集として掲載されて
紗智子さんは
「 傷ついた女性の再生 」を撮ることを
ライフワークとするに至り、
貴子さんは
ただただ罵詈雑言にさらされることになりました。
再び傷ついた貴子さんを救ったのは
矢田のおばちゃんでした。
遺言書に 遺骨は散骨を望む。
散骨は、今橋貴子によってなされること。
そして
「 散骨の際、この紙を持ってゆくこと。 」
墨でべったりと塗りつぶされていた紙、
ある言葉を除いて。
すくいぬし
そして矢田のおばちゃんの、
ある恋にまつわる話を知りました。
貴子さんは遺骨と「すくいぬし」を持って
颯爽と日本を去りました。
それとは対照的に歩さんは
変わっていく容姿や周りの変化に悩みます。
恋人の澄江さんに言ってしまった言葉、、、。
再会した須玖さんや鴻上さんとの友情や絆も
自らを傷つけていくような
言葉をはいてしまいこれ以上ない所まで
落ちてしまいました。
それからは自力では這い上がれないで迷走します。
でも貴子さんが見つけました!
そして結婚もしました!
お父さんとお母さんの事も
お父さんに教えてもらいました。
歩さんはもがき苦しみましたが、
お父さん、貴子さんに凄く愛されている事を
理解して自分の幹を見つけにいきます!
あなたは歩くの。
ずっと歩いて来たのだし、これからも歩いていくのよ。
そして、自分の信じるものを、見つけなさい。
その言葉は歩さんを恐ろしいほどにかき乱しました。
お父さんの告白は私にはとても意外でしたが
私はお父さんではないのでそこは深く考えずに
読み進めました。沢山気になってしまうので、、、
歩さんはエジプトで出会ったヒーローに
会いに行かなければいけませんでした。
ヤコブさんと再会してあの時の
ナイル河の河岸に向かいました。
昔を思い出して語り
これまでの時間という化け物を憎み
それでもお互いに言った言葉、、、
サラバ。
涙は止まりませんでしたが、その一言ですべて
事足りました。
サラバ。
大きな時間の化け物がいたからこそ
繋がっていた事を気づき、
生き続けてゆくことを自身が信じている事だと。
それぞれまた、大きな化け物を背負いながら
出会った時間、出会った人、出会ったものすべてを
受け止めて生きていく。
読み終えて沢山の感情が溢れてしまい
しばらく目を閉じての時間でした。
あなたが信じるものを、
誰かに決めさせてはいけないわ。
僕は僕を、信じている。
「 サラバ! 」
僕は、左足を踏み出す。
Posted by ブクログ
自分が大切にするものは人の目や体裁を気にせず決める。別にそれが信仰じゃなくてもいいと思うが、自分の軸を持ってないといざというとき揺れるんだよな
私は全然ちっぽけだが、毎日きちんとした食事と睡眠をとることを自分のバロメーターというか、大切な軸にしたいなと思っている。(姉にとってのヨガ的な)これがないと生きていけない!サトラコヲモンサマ!みたいなものはないけど、これがあると人生豊かになるな〜の手札は持っていたいのが私
Posted by ブクログ
急に髪の毛の描写が増えたのが面白かった笑
自信を持てなくなると人って卑屈になるんだね〜
順風満帆な人生を送る勝ち組の人ってずっとそう生きていくんだと思ってたけど、こんなにも脆くステータスって崩れ去るんだなあ
信じるものは何か?私はわざわざ探して何かに頼らなくてはいけないとは思わない。自分自身を完璧とは思っていないけれど根拠なき信じられる気持ちがある。でも何故だろう。ヤコブのように信じることが日常なのか?そうでもない気がする。一度自分自身を振り返るきっかけになった本です。