三浦しをんのレビュー一覧
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木暮荘という古くてボロいアパートの住人と、その周辺の人々の連作短編である。
これからどうなるのか気を持たせながら次の人にバトンが渡るところが、三浦しをんさんは絶妙に上手いな。
それにしても、どの話もやばい話だ。
特に、畳を上げて床の板の隙間から下の部屋の女子大生を覗くサラリーマンの男はヤバすぎる。
覗く男というより、男の目がそこに住みついているような異様な状況。
絶対捕まる、これは犯罪だ!とハラハラしてしまった。
ところが、女子大学生は覗かれているのも承知で、そのうち男の覗きが公認になる。
サラリーマンも女子大生も普通じゃないな。
でもヤバいけどなんだか笑えるオチになっていて、ちょっとほっこりしたり切なかったり…。
今は若い人も立派なマンションに住んでいる時代だが、こんなボロアパートを懐かしく思う人もいるんだろうな。
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架空の温泉街、餅湯温泉に住まう5人の男子高校生が主人公の青春小説。
部活動に汗を流し、挫折して、男同士の殴り合いを経て、友情を深め、ちょっとヤンチャな仲間と盗んだバイクで走り出す。
そんなことは一つも起きません。
なんなら大きな事件は何も起きません。なぜならぬるま湯に使ったような餅湯温泉だから。
けれど、何も起きない街に生きる高校生たちの苦しみや悩み、ささやかな幸せを軽やかに、クスリと笑えるタッチで描いている。
高校生の頃に感じていた将来への漠然とした不安、漠然とした希望、自分とは何かという疑問、友人への嫉妬。高校生に戻った気分で読めます。 -
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心中がテーマの短編集。「死」か…と思って読み始めたが、読んでみると「好き」の方に心が寄っていった。すべてが恋愛ものだったわけではないし、恋愛ものであっても、幸せな恋愛だったのかどうか不明なのもあるが、それでも、こんなに好きっていう気持ち、いいなとか、わかるなとか、そちらに心惹かれた。
角田光代の解説を読んで、そういえばみんな死が絡むんだったと思いだした。角田さんは、小説における死とは…といったことにも言及していたり、この作品は生も死も賛美していないだとか、美化してないだとか、そちらを中心に解説されていて、ああそうかと思って少し考え直してみたけど、やっぱり私の受け取り方は、ある「好き」の物語の中の「死」、というものだった。
「星くずドライブ」の男の子のことが、特に切なく感じた。自分のことを好きだという気持ちだけを残して事故死してしまい、死んでもなお近くにいてくれる彼女のことが愛しくてたまらないけれど、やっぱり彼女は遠いし、一緒に老いていくこともできないし、彼女から逃げてしまいたいとすら思ってしまう。けれど、いつか彼女の霊もいなくなってしまうかもしれないと考えるとそれもつらい。そう考えると、「自分は生きながらにして無理やり心中させられてしまったようなものだ」と感じる主人公。
この短編は、本全体の中でも好きという気持ちがいちばん素直だし、気性の激しさや現実の辛さ、報われなかった恋などそういう重さからから生まれる「心中」ではない。いちばん単純で幸せな恋愛小説っぽいのに、それなのにこんなに切ない…というところが、好きだった。ずっとそばにいたい、という願いが叶えば叶うほど、“生者としての孤独”が濃くなるという皮肉。「君は夜」「炎」の報われなさとはまた違う、報われなさが印象的だった。 -
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ネタバレ目次
・森の奥
・遺言
・初盆の客
・君は夜
・炎
・星くずドライブ
・SINK
作者が、この本は「心中」をテーマにした作品集である、と書いている以上、そういう意図をもってこれらの作品は書かれたのだな、と思うべきなのだろうが、非常にわかりにくい、はっきりとは見えていない「心中」をも含むので、思わずこの言葉の意味を改めて調べてしまった。
最初の『森の奥』は自ら死を求める男が主人公で、最後の『SINK』は一家心中の生き残りの男が主人公という、この並びも計算されたものなのだろう。
前者は生かされた思いが前向きな人生をもたらしそうな気がするが、後者はどうだろう。
今までの自分の考え方を反転してみて、生き方を変えることはできるのか。
答えは読者に委ねられている。
「死」とは、その人の人生の終了であり、死んでしまうとその先の人生というものはあり得ない。
しかし、体の方はこの世界で朽ちていく者であり、死んだ人間は生きている人々の記憶の中にまだその痕跡を残すものである。
それが甚だしいのが『炎』であり『星くずドライブ』、緩やかに愛する人の死を自分に溶け込ませるのが『初盆の客』だとすると、死んだ人の痕跡を消化するのは時間ということなのだ。
ことに『星くずドライブ』は、ポップな作風のなかに、死に囚われてしまったということの恐ろしさが、じわじわと効いてきて、背中が寒くなる。
純愛と死病がセットになっている作品がやたらと出回っているが、「死」縛りでこれだけのバリエーションの作品を書けるのが、本来作家というものなのではないかな。 -
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しをんさんのデビュー作
これがデビュー作なのかとびっくりと同時に、本をめくっていきなりお姫様が結婚相手を選ぶのにゾウを選ぶという話から始まって、なんのこっちゃ?いきなりしをんさんの妄想?と思っていたら途中で謎が解けたのだけど、その物語が就職試験の〇〇。
急にあんな話その場で書ける!?ってまた驚き。
そしてK談社や集A社の当時の面接模様が主人公可南子を通して暴露され(笑)
極め道のエッセイで講談社とは一体ナニガ?(・∀・)と思って、この作品を読むことにしたので、
なるほどなるほど。そういうことか。と
令和の今じゃ考えられない面接。
可南子がいつのまにか脳内でしをんさんに変換されている場面も多数w
面白かった!