三浦しをんのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ三浦さんは「舟を編む」から名前を見るとなにも考えずに買い込んでくる。これは2013年の第三刷なのでずいぶん長く積んでいた。気になっていたのでナツイチ2017に上がったのを機に読むことにした。
実はあまり期待してなかった。その前に読んだ「星間商事株式会社社史編纂室」は期待外れだったし。
この作品で新しい三浦さんを見つけ安心した。
まずあらすじを。
小さな島、勾玉に似た形の美浜島に住む中学生、信之・美花・輔の半生。
不意に島を襲った大津波で家族も美しい風景も砂に埋もれて、死体袋が累々と並んでいた。
この後、三人は別の道を歩み始めたが、常に過去を振り返らずにはいられない、心の底辺にいつも居座ったものがある。それが滑り落ちてしまった風景もまた真実だった。
美しい美浜島は隣近所が顔見知りという美しいのどかなところだった。信之と美花は机が隣どうしであり中学生になって自然に二人の交わりは性的なものになっていった。神社の浦山に登った時、沖に白い波の線ができそれが大津波になって島を飲み込んだ。いつも信之の後を追い嫌われて邪険にされてきた輔も、こっそりついてきていて命が助かった。だがその山の上で美花は男に襲われていた。信之は男を絞殺し崖から落としてしまう。
津波の後で生き残ったのは6人だった。灯台守の老人、輔親子、信之、美花。殺された山中。
20年後、信之は養護施設で高校を卒業し、川崎の市役所に勤めていた。結婚し妻の南海子と娘の椿がいた。
美花は女優になりしたたかに生きていた、輔は性に合ったプレス工になり、会社を転々とし、川崎に来ていた。
輔は信之の妻と知りながら南海子に近づき関係を持った。
南海子は何ごとにも無関心に見える夫に物足りなさと疑問を感じていた。
輔は島を出てから信之を探していた。連絡がついて尋ねて来た輔に信之は20年たっても相変わらず冷淡で嫌悪感をあらわにし、南海子とのことを告げても態度は変わらなかった。
輔は酒乱になって転がり込んできた父親の暴力にも耐え、子供の頃の習慣か逆らわず殺風景なアパートの一室で同居していた。信之は輔がほのめかす島での殺人が気になり空き室になっている階下から輔をうかがっていた。
彼は娘の椿が襲われて取り乱した南海子に向って無造作に「殺そうか」という。そうすれば気が済むだろうと口にする。彼は「死」の意味するものが、いつの間にか危うい、はかないものに感じられていた。常ならないことが起きることも、起きない意味も自分の心からすっかり抜けてしまっていた。
邪魔なら「殺そうか」と簡単に口にする。「死」は一度切り抜けると、それでも生きていけると感じていた。彼の心はもう島の死の後空洞のままだった。
ただ、憧れて心の支えにしてきた美花だけは、守らなくてはならない。輔がほのめかす、あの時の証拠写真があるのなら取り返さなくてはならない。
彼は輔の話で死んだ灯台守が暴行と殺人現場の証拠写真を父親に預けたと知る。
父親には睡眠薬を飲ませて事故死させようとしたが酒がもとで死んでしまう。つぎに輔殺害の準備をする。
信之は輔を殺して埋めた。
輔からの手紙が届く。彼も生きたいと思う心の底ではいつも死にたかったと書いてきた。
南海子は彼の出身地が歴史的な大津波があった島だということを知る。彼は生き残りだ。
南海子は信之が少し理解できた。
信之は死んだ家族や多くの人々命が一瞬で流れ去り飲み込まれたときに新しく生まれたのか。
信之は輔を殺し、世界の外で生きていくのかと思えたが、家族のもとに帰ってくる。犯した罪も、死も彼の心に残っていなかったのだろうか。
幸せでない終わり方が信之に似合っている。最後に生まれた島を家族で訪ねるが、島は明るい光で満たされ椿の花が満開だった。南海子が振り仰ぐと信之の顔は逆光になって暗く、よく見えなかった。
今まで読んだ作品は明るさがあった。今回は多少粘着質に書き込んだ物語で、新しい面での実力を知った。 -
Posted by ブクログ
2026/01/21〜2026/01/31
Audibleの『アトロク・ブック・クラブ』で「Audibleで聴くのにオススメの本」として紹介されていた作品。
著者がAudibleのために書き下ろした作品と言うことで、書籍ではなくAudibleで触れた。
同番組でAudibleに適した作品の特徴として「一人称語りの作品」が挙げられていたが、一人称視点で語られる本作のAudibleを聴いて共感した。
自分は小説を読んでいてもあまり脳内に画が浮かぶタイプの人間では無いのだけれど、本作のAudibleは聴いていて滅茶苦茶画が浮かぶのがビックリ。
著者の筆力と、櫻井孝宏さんの声優としての力量が組み合わさって最強となっている。
各キャラクターがイキイキとしている。
三浦しをんさんは男性同士の密な関係性を描くのが巧みだ。 -
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小説を書いたこともいないし、これから書くつもりもないけれど、エッセイとして楽しく読んだ。
属性が同じ(顕著なヲタク)な事、年齢がほぼ一緒な事からか、滾り方に既視感しかない。
それはともかく、EXILE一族に色々捧げてる事と、ハイロウ愛がキワキワだった事しかほぼ残っていないのだが…三浦氏の言葉の選択が面白すぎる。
本題の小説の書き方については、小説を書いたことのある人にはわかるわ!というのがあるのかな。
没入してしまうと何も気にしないので分からないけれど、逆に「なんか読みにくい…」という作品の場合に、内容を照らし合わせて、どこが読みにくい原因なのかを検証してみるのも面白いかもしれない。
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Posted by ブクログ
聖フランチェスカに通う野々原茜と牧田はな。彼女たちは、頻繁に文通を行って、ますます親交を深めている。庶民的な家庭で育ち、頭脳明晰、クールなのの。外交官の家に生まれ、天真爛漫なはな。時代を越え、紡がれ続ける二人の書簡で彼女たちの人生を垣間見る。
手紙だけでここまで描けるのは見事。
設定を分かりやすくするためのト書きが一切無く、全て手紙の文面という趣向なので、読者は序盤に加工されていない設定をどかんと消化しなければならない。情報量は多いし、肝心な表現に最短距離ではたどり着けないし、ちょっと退屈に思う瞬間も少なからずあった。しかし、根気よく向き合うと見えてくるのは、非常にリアルな女子校の学生生活。どこか恥ずかしくも懐かしい見たことのある手紙。ああ、確かにこんな感じの手紙、書いてたな。文章に自分でツッコミを入れる感じなんか、本当にリアル。
中高の女友達の距離感がとてもよく描けている。
全ての人がそうでないかもしれないと前置きは入れるが、私の感覚とかなり近い部分があった。在学中、私は六年かけて作った居心地の良い仲間たちと、どっぷり快適な時間に浸った。ばらばらの大学に進学して、新たな大学生活。恋にバイトに全くの新生活に没頭し、まっさらな人間関係が始まった。それは、とても素敵で、私はもうあの頃の私じゃない、あの頃より大人で洗練されていると感じて、中高時代の仲間とは距離をとった。仲間たちだって様々に変化しているのに、それには全く気が付かないのだ。その後、就職して結婚して出産育児とライフステージが目まぐるしく変わった先で、私はまた中高時代を懐かしむようになる。大学で出会った人では私のルーツに迫れない。本当に私を理解してくれるのは、多感な時期に顔を突き合わせていたあの頃の仲間しか居ないと思うのである。くっついて離れてまたくっついて…ののとはなの時代の変遷を追う程に、よく描けているなあ、と思うのである。
女性同士の恋愛は、全く分からん。
別れても、相手が結婚しても思い続けるのは、これ異性だったら相当未練がましくて気持ち悪いだろうなあ。大人になってからは、はなよりもののからの感情が重くて、ちょっと胸焼けした。完全な親友というポジションを取れないなら、姿を消すべきでは…。女二人の関係性に誠意を感じず、少し減点した。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ高校生の時に読んで、懐かしいなと思って手に取って再読。都会育ちの高卒、平野勇気が放り込まれた職場は三重県の林業の現場、神去村。山と共に生きる個性的な村人達と繰り広げる一年に亘る騒動記。
環境というものは大事だなと改めて思う。主人公が馴染みのない林業にのめり込めていけたのは、神去村の人全員が山に対して真摯に向き合っているからだと感じた。やはり人間、環境に対応していく生き物だと思うし、自分を高めていこうと思うか、現状維持でなあなあに過ごして行くかは周りの環境に左右されると最近思う。主人公が周りの村人達、ヨキや清一さん、巌さん、三郎じいさん、ミキさんや裕子さん、山太、直樹さんにどんどん引っ張られて行く感じが読んでて爽快だし元気も貰えた。
また直樹さんの恋模様が切なくて、直樹さんには幸せになってほしいと思う。男は1人じゃないんだから。