あらすじ
島で暮らす中学生の信之は、同級生の美花と付き合っている。ある日、島を大災害が襲い、信之と美花、幼なじみの輔、そして数人の大人だけが生き残る。島での最後の夜、信之は美花を守るため、ある罪を犯し、それは二人だけの秘密になった。それから二十年。妻子とともに暮らしている信之の前に輔が現れ、過去の事件の真相を仄めかす。信之は、美花を再び守ろうとするが――。渾身の長編小説。
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Posted by ブクログ
全体を通して暗いトーン。
最初は登場人物が何かの感情だけ抜け落ちているのかな?という印象。
後半になると出てくる人全員が自分は悪くないという想いをもっているのかな?と感じた。
一気読みして、内容も面白く、終わり方まで個人的には良かった。
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おもしろかった!殺人側の視点で物語が進んでいくのが新鮮で、とてもよかった。解説を読んでみると、人は理由をつけて瞬間的な衝動を正当化したがるとあり、えーたしかに!と感心した。今の自分に責任を持たず、自己陶酔だけで生きていないかハッとさせられた。過去とのつながりは、実はそこまで重要じゃないんだよなと。
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小さな島を襲った津波ですべてを失い、生き残った3人の子どもたちが、長じて愛し合い、殺し合う。3人ともに壊れてしまって、一見普通に生活をしているようで、計り知れない闇を抱えている。
ラストシーンで生まれ育った島を再び目の当たりにして、主人公はいったい何を思ったのか。いや、何も思わなかったのか…
しかし主人公の妹は不憫すぎる。津波の前、出かける主人公に「あたしも行く」と何気なく言った言葉を聞き入れてあげていれば、生き残ることができたのに。
「また今度ね」「わかった」。素直に聞き入れた言葉が可哀想過ぎる…。
「わかった」。この言葉、辛いなあ…。
そして父となった主人公の娘も、夫婦のすれ違いの中でただ泣いている。
やっぱり小さい子たちが辛い目にあう状況は、胸に痛い…
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ヒメアノ〜ルのように息詰まる描写と疾走感がある。振り返る度霊が近づくように、捲る度危うさが近づいてくる。
津波による被害の描写は首元を締められるように、じりじり恐怖を感じさせて細やかだ。
臭いまで伝わる。
地震雷火事親父。
光る角度により影のように見え隠れする暴力性を、「どこにでも存在する」と気づかせる。
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いやぁ、参った…すごい、すごすぎる…
物語はずっと不穏な空気に包まれ、
圧倒的な理不尽や現実がドロドロ重くのしかかってくる
救いはないし、ずっと脳天を殴られ続けてるのに
読むのをやめられない、この感じ!
先がもっと知りたい。
作品に呑み込まれいくのを感じました。
もちろん読後のすっきり感もないし
人によっては二度とない読みたくないような
暗くて重い作品かもしれないけど、
私は愛に縋って縋って、それがエゴだと気付かず
ひとりよがりに狂っていく信之も輔も愛おしく感じた。
"死ぬことでしか、ひとは秘密から逃れられない。"
最後の最後、
秘密を手に入れた南海子の思惑の恐ろしさと、
なにくわぬ顔をしていつも通り過ごす信之の
静かで暴力的な魂といったら…ゾクゾクしました
しをんさんの文章がとても好きです。
終わり方が想像力を掻き立てられて堪りません。
今まで読んだ小説で1番脳汁出た作品かも。
Posted by ブクログ
これまで何冊か読んだ三浦しをんさんの作風と全く違うように感じてこんな作品も描かれるとは驚きました。自分とかけはなれたシチュエーションではあるけど暗く薄汚れた場所で藻掻く冷酷な描写に引き込まれます。終章にむけての展開は目が離せませんでした。
Posted by ブクログ
タイトル〈闇〉にしなくて大丈夫ですか。 俺に言わせりゃ救いが無い。 主人公の狙いは、罪の報いとはいえ果たされず、主人公に執着していた弟分は糞みたいな人生の末に死んでしまった。 「あの島に、あの親の元に生まれた時点で詰みじゃね」って言葉で片付けてしまいそうになる。
Posted by ブクログ
今までの作風とは違ってかなりシリアス。
読後、どんよりと重たい空気に包まれ、あ〜不幸だ....
でもさすがにしっかりと読まさせてくれる。
Posted by ブクログ
面白かった。それぞれの欲が交錯し、過去が神聖化され、罪や欲や想いが正当化されていく様が痛々しかった。津波で島がなくならなければ、みんなそれぞれ平凡な人生を歩んでいけたかもしれない、、、切ない。
生き残った者たちにあったのは、絆ではなく、執着と憎しみ。人間の心のうちは誰も分からないものだ。生き残ってよかったのか悪かったのか。壮大なストーリーだが、根っこは私達の中にもある普遍的な欲や執着や自己正当化という普遍的なものであると思う。だからこそ、深く刺さる。
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光なんてどこにもない物語だった!
与えられた暴力は日常に潜み、密かにこちらを狙い、知らぬ間に表出する。この作品の暴力性の始まりである島一面に咲いた椿という花を名付けられた子どもは、将来どうなってしまうのだろう。途中で発生する椿に襲いかかった悲劇も、「暴力はめぐる」というテーマの底気味悪さがじっとりと染み付いてた。
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小さく美しい島を津波が襲い、生き残った中学生の信之、同級生で恋人の美花、父親から虐待を受ける輔。
島を離れる直前、美花を助けるために信之は殺人を犯す。
その後成人し家庭を持った信之に、輔が異常な執着を見せる。そんなお話。
登場人物の誰もが誰かを見下し蔑んでいる。
人も自然も、暴力は帰ってくる。
1番恐ろしいのは美花なのかもしれない。
Posted by ブクログ
三浦しをんにしては珍しい性的描写、非日常的なストーリーに普段よりハラハラされられた。
ただやはり情景描写、感情描写の解像度が高く食い入るように読み進めてしまった。
求めるものに求められず、求めぬものに求められる、最大の不幸であってよくある出来事。それを軸に壮大なストーリーが展開され殺人など非日常な題材の中で自分の日常と重なる部分が多くあり考えさせられる作品だった。
Posted by ブクログ
三浦しをんさんは こういうのも書くんだ!というのが最初の感想。他の方と同じで なんとなく 読後感がどよんとした。けど、よく考えたら あってもおかしくないことだ。暴力には 暴力。目には目は当たり前のことで、わかっているからこそ 口をつぐんでしまうんだろう。何年かすぎたあとの 信之一家を読んでみたい。
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この人こんなのもかけたのか…という小説。
津波に始まり強姦、暴力、殺人など人間の暴力に目を向けた作品。
吉田篤彦の解説が面白かった。
光なんてなかった。
Posted by ブクログ
『舟を編む』のイメージを持って手にとってみましたが… ギャップがあまりにもあり過ぎ‥
狂気か、いや、日常のある深い部分、普段は表になかなか出てこない部分を飾り気無く表現している様にも思われます。
川崎の街を舞台に、その影と光を演出してます。
『光』の救いを求めているのか、『光』そのものが無い世界なのか、よく分かりません
Posted by ブクログ
つれぇ。椿ちゃんが一番可哀想で辛い。
作者の趣味を知ってるせいか、結局信之が一番人間的な感情で好きだったの輔じゃん、と思えてならなかった。
椿ちゃんが居なければ、信之の罪が暴かれて逮捕されたら良いじゃないか、と言うところだが、椿ちゃんが居るので、せめて彼女が救われて成長できるまで信之が逃げ延びてくれたら良いなと思った。
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どんどんのめり込める作品たが
途中で犯罪のことをさらりと語ることに読んでいて抵抗を感じたり。作者はすごい!と思えたり。複雑な心境になりました。
正直、グロテスク
Posted by ブクログ
軽快で明るく、ひたむきな作品の印象がある三浦しをんさんが、こういう小説も書くのかと少し驚いた。けれども確かに、小説やエッセイにおいて、心情の核のようなものを常にまっすぐ捉えているしをんさん
だから、われわれ人間の裡にぽっかり空いた空虚な闇も、こうして静かな視線で見つめているのかとも思う。
正直言って、この作品の登場人物すべてが嫌いだ。私が言えた義理じゃないけど、どの愛もすべて身勝手で歪んでいる。信之の美花への、輔の信之への、偏執的なそれは、かつて津波という「暴力」で大切なものを損なわれた代償なのか。
いや、一番気持ちの悪いのは信之の妻の、津波とは何の関わりもない南海子だ。夫からかけらほども愛されていなかったことに気づいた後も、世間的な体裁を取り繕うことに腐心し、夫の罪に気づきながらも、なにごともなかったかのように元通りの毎日を送ることを選ぶ。彼女を歪めたのは何だろう。日常という、圧倒的な現実だろうか。だとしたら、日常も時に暴力に匹敵する理不尽な現象なのだろうか。自然災害や犯罪行為、果ては家庭内で振るわれる暴力をすべて内包して、日常は存在する。私たちはその日常をどうにか生きていかなければならないのだ。
「美浜島は、暴力の痕跡を内包したまま、禍々しいまでの生命力で海のうえに再生していた。〜暴力はやってくるのではなく、帰ってくるのだ。自らを生みだした場所―日常のなかへ。」p362
タイトルの「光」の意味を考える。
解説の中で吉田篤弘氏が「光」を「神」と解釈している。
希望、とは読めない。
何らかの審判やメッセージなどなく、ただ照らし出すもの、というイメージがある。光を受けた分だけ、その暗さを深めていく場所もある気がして不安になる。
Posted by ブクログ
そこまで長くなかったけど読み応えはあった。まほろばで期待したけどこの本は登場人物全員闇を抱えて全体通して暗い。誰も救われず皆んな鬱々としてる。こわい。
Posted by ブクログ
建物、人、全てを押し流した津波の後に美浜島で生き残った数名のうち、信之、輔、美花の3人を描いた物語。決して明るい希望のある話ではなく、完全に過去に囚われる者、過去を切り捨て華々しく生きたい者、過去の復讐を望む者たちを、誰もが抑えて生きている本能的な暴力性や破滅への傾倒を時に出す姿を描いている。
これが東日本大震災前に書かれたものだと知り、驚いた。津波が全てを攫っていく。その死の描写のリアルさ、選別無き死が訪れる救いの無さ。私はまだ大きな地震や災害を経験したことがないのだが、この作品を通して人間じゃ対抗できない自然の大きな力に絶望した。
Posted by ブクログ
・こんな陰鬱な話の後に『舟を編む』を書いたのかよ……と信じられない気持ちになった。隠しておきたい過去を巡って、ねじくれた愛(というより執着?)に狂わされた人々の話だった。うーん。時間がなく、しかし面白くて早足で猛然と読んだ割に、なんだか項垂れてしまって何を思えばいいのかわからない。
・まず、東日本大震災の前に全てを薙ぎ倒す津波のイメージを持てていたことがすごいなと思った。それが現実に起こるのだということが一番残酷に思えるけど。
・美花は俺だけのものだと思っていたのは信之だけだったんだろうなあ。島にいた時から他にもそういうことはたくさんあったんだろうな、と思った。山中のこともそのうちの一つに過ぎないというかね。全然、"過ぎない"で済ませられることではないんだけど。知らぬ間に美花の反応が良くなっていると思いきや「あの日から何も感じないの」との美花の発言により、上手な演技を覚えただけであることが示唆されたのは地味に痛快だった。
・秘密を巡る暴力の連鎖。人間ってこんな嫌なやつばっかり?あたしもここに放り込まれたらそんな風になっちゃうのかな。でもそんな気もする。南海子のバカ高いプライドが妙に怖くもあった。しかし団地と幼稚園とお教室が生活の全てなのでそこから受ける眼差しを異様に気にするのは当然のことなんだろう。
・たぶん、輔は色々と気づいた上で、信之に殺されてもいいやって思うくらい信之に構って欲しかったんだろうね。どんな女と寝るよりも、信之に構ってもらえない1人の暮らしよりも信之が殺した人間として人生に刻みつけられることを選んだんだな。とんだヤンデレ妹ならぬヤンデレ幼馴染である。かわいいやつだね〜。
・ていうか、まあみんな本当のことは分かりつつうっすら目を逸らしてて、やっぱそうか〜……みたいになってた感じがする。なんか、大きな力に全てを薙ぎ倒された経験をすると、本当に空っぽになっちゃうんだろうな。「家族を愛したい」と思っているのにイマイチ身体も心もついてこない感じの信之が可哀想だなと思った。美花にも拒絶されたらもうあとの人生、消化試合だろう。自分ならいつか失望して自ら死ぬと思う。その不幸を味わわずに死ねますように、私は狂わずに長生きして安寧に死ねますように、って最悪なことを思った。
Posted by ブクログ
覚悟していたけど、衝撃が大きい。津波という目に見えて大きな暴力と、闇の深い人の暴力。こんなに救いがないなんてことあるの?読み出して止まらなかったけど、疲れてしまって消化しきれていない。
Posted by ブクログ
借り物。作者のイメージがガラッと変わった。
天災ですべてを失った中学生の信之。共に生き残った幼なじみの美花のため、彼はある行動をとる。それから二十年後、信之の前に、秘密を知るもう一人の生き残り・輔が現れ──。
Posted by ブクログ
人、自然の「暴力」を題材とした作品。
三浦しをんさんはこんな作風も描くのかと驚いた。
南海子を除いて、他の登場人物の行動に対してはあまり共感できなかった。
読んでいて胸が苦しくなりました。
Posted by ブクログ
タイトルとあらすじだけでは想像をなし得ない、圧倒的な世界があった。
光なのか闇なのかわからない気持ちになった。
しをんさんのエッセイを読んだあとだったので、いろいろ脳内が整理し切れていない。
Posted by ブクログ
中学生という年齢では、どこで生きていても世界はそう大きくはないだろうけど、本土から離れた島だと、さらに顕著でしょうね。
島の中だけで生きていると、良くも悪くも人間関係がすべて筒抜け。
ただ、狭い世界だからこそ、絆は強くなるのかもしれない。
島を襲った大災害。
そこで生き残ったとなれば、そのメンバーの結束はさらに強くなりそうなもの。
エピソードだけ聞いていると、勝手に美しい物語を想像したくなります。
そして災害から20年。
島とは関係ない人が主人公となり、何の話だ?と思っちゃいましたが、後からつながってぞわっとしました。
それぞれの時間を生きてはいても、忘れられるわけはない。
みんな何かに依存しているのか。
どう決着するのかと思いましたが、まさかこうなるとは。
人間は怖い生き物。