三浦しをんのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
三浦しをんの、ちょっと変わったお仕事小説。
ホテルマンと書家が出会って‥?
タイプの違う彼らが、いつしかバディに。
西新宿にあるこぢんまりした老舗ホテルに勤める続力(つづき ちから)。
真面目に仕事に取り組んでいるが、自分ではただ普通にやっているだけで、特に何に熱があるわけでもないという感覚だった。
家族とも友達とも気まずいわけではないが、すごく会いたいというような関係でもない。
ホテルでは字を書く仕事が結構あり、筆耕士(書家)と契約して、その時々の目的に合わせて書いてもらう。
ある日、続力は、初めての依頼のために町の書道教室の先生を訪ねる。
遠田薫という男は、かって契約していた人の書道教室を継いでいたのだ。
自由奔放な雰囲気の遠田薫に驚くが、なぜか居心地がいいような。
子供達の生き生きした様子の自然なことったら。
猫のカネコも、いい味、出してます。
副業として手紙の代筆もしている遠田に、文章を考えるよう無茶振りされ、仕方なく応じると、これがなかなかうまくいって名コンビに。
かってない楽しさを感じるのだった。
特に不満や物足りなさを抱えていたわけではない力だったが、穏やかな人柄や誠実な仕事経験の積み重ねが、ここへ来て花開いたということでしょうか。
友達がそう多くなかった理由は、群れるために群れるような価値観ではなかった、ということかも。
西新宿のホテルに泊まったことあるし(老舗じゃなかったと思うが)、世田谷線にも乗ったことあります。好ましき雰囲気で描かれているので、嬉しくなりました。
ついでに書くと、母は書道を教えていたこともあります。たまたま。私にはその才能はないけれど、端で感嘆して見る気分もかなりわかる(笑)
先代の遠田夫妻が、優しい人達で良かったなあ…!
遠田薫の才能に目を奪われた力。薫が全く違う波乱の人生を送ってきた男だったと知る。
子供たちともすっかり馴染んだある日。
遠田から、急に「仕事を辞める」という連絡が来る。それは‥
現実味もありつつ、ほのぼのとした世界。
30代も半ば過ぎになって、予想していなかった友情が芽生え、それは危機ももたらすが。
応援したくなります。
そう来なくっちゃ!だわ(笑)
さすが、しをんちゃん♡(←勝手に親しみを感じてます)
心地よく楽しめる作品でした☆ -
Posted by ブクログ
辞書を隅々まで読む人はごく少数ではないでしょうか?なのにどこを読まれても良いように万全を期さなければならない。特殊な書物です。
今は、分からない言葉はスマホでちょちょっと調べることが増えました。家では辞書を引きますが、出先ではやっぱりスマホに頼りがちです。でも、この作品に出会い、辞書編集の方たちの地道な作業や執念を知り、やはり人の思い(念?)のこもった生きた説明で調べたいと思い直しました。
私は一体、辞書に載っている言葉の何割程を知り、普段使っているのか、とても気になってきました。調べるのは大変そうですが…
小学生の時に、辞書を読むのが趣味という子がいたな〜、と思い出しました。彼はきっと馬締さんと話が合うのだろうな〜と、ふと思いました。
何度でも読み返したい、素敵な作品でした! -
Posted by ブクログ
本屋を舞台にしたアンソロジーだが、読み終えてみると、「人はどうやって人とつながるのか」「自分の居場所をどうつくるのか」を描いた一冊だったように思う。
印象に残ったのは、本が人と人との間に、ちょうどいい距離をつくっていることだ。
瀬尾まいこの「続きは書店で」にあった「本の中に友達って結構いますよね」という言葉が好きだった。登場人物が友達になり、本そのものが友達にも先生にもなる。本を読むことは一人ですることだけれど、実はたくさんの人と出会うことでもある。
「悩み事は口にした時点でほぼ解決に近い」という言葉も心に残った。すぐに答えを出したり、アドバイスしたりするだけが人を助けることではない。ただ話を聞いてもらうことにも意味がある。
一穂ミチの「勉強はずっとするものです」という言葉もいい。学校を卒業しても、仕事や読書、人との関わりの中で学びは続いていく。年齢を重ねるほど、この言葉の意味を感じる。
また、坂木司の、地域で商売するなら「先に自分が客になる」という考え方も印象的だった。相手や地域に何かをしてあげるのではなく、まず自分もその関係の中に入っていく。仕事にも通じる考え方だと思う。
凪良ゆうの「小鳥たち」では、「誰にも手出しできない私だけの居場所が欲しい」という思いと、「浮き輪を投げてくれる人が私にもいる」という言葉が心に残った。自分だけの居場所を持つことと、誰かに支えてもらうこと。その両方があっていいのだと思う。
そして最後の三浦しをんの「人の心の見晴らしを良くするのが本屋の務めだ」という言葉は、この本全体を表しているように感じた。
本屋は、一人になれるのに孤独ではない。知らない誰かの人生や考えに触れ、自分の世界を少し広げることができる場所だ。
だから私は本屋が好きなのだと思う。
この本を読み終えて、また本屋に行きたくなる。そして本を買う。
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Posted by ブクログ
ネタバレ書店への愛を込めて贈る珠玉のアンソロジー。
私は瀬尾まいこさん、三浦しをんさん以外は初読みの作家さんだったけれど、本との新しい出会いや、書店の存在価値について改めて考えさせられる作品ばかりだった。
やっぱり私は書店が好きだ♪
・続きは書店で(瀬尾まいこ)
あと1ヶ月で閉店してしまう書店にアルバイトで入った菅原くんと、占いをやっている主人公(ルイーズ)の交流の物語。
菅原くんが友達を100人作ろうとしていたけど、友達は必ずしも人ではなくて、本そのものだったり登場人物に対しても友達という感情を抱く視野が新鮮だと思った。
自分にとって支えになる本や登場人物が力を与えてくれることもある。素敵なお話だった。
・歌うように生きて(一穂ミチ)
飲み会で出会った中国人のリウと潤。潤はリウにルンと呼ばれ、二人の交流がスタートし毎週会うような仲になる。大学の生協にある書店で待ち合わせし、大学構内で会うようになる二人だった。
ところがある日、リウは家庭の事情で突然中国に帰国することになる。
そこから数年後リウが逮捕されたとネットニュースで知った潤。過去のことを振り返りながらも、ちょっと切ないけれど、純粋なリウのために居場所の作ろうと日本語と中国語の書籍の並ぶブックカフェを立ち上げた潤。
2016年〜2025年の時系列でストーリーが展開されていくけれど、リウと潤(ルン)の素朴なやり取りに胸が熱くなるところがあった。リウがいつかまた潤(ルン)と再開できる日が来ますように…!
・手に取って見てみろよ(坂木司)
本屋の前で振られた浅井と友人の高木が、高木の祖父母の故郷の岡山のシャッター商店街でお店を開店させるというお話。
本屋の利益率が良くない現実ではあるが、インターネットではなく手に取って本を選べる魅力や、人が集まる空間を作るって素敵なことだと思った。
・小鳥たち(凪良ゆう)
離婚して地元に戻り、父の書店を継ぐと決めた一葉。書店の中にカフェを作ることにした改装中の時期に、同級生の越智が来店し交流がスタートする。越智も家庭の不和や仕事のことで適応障害で地元に戻っていた。
改装後のお店も、今までの常連さんにプラスして越智のようなお客さんも増え、居場所を作り出している一葉。奮闘しながらも結婚や離婚を経験し、「一周回って、わたしは見失った本来のわたしに戻ったと思えばいい。」と前向きになっている姿に励まされた。私も一葉と同年代〜。元気をもらったお話だった。
・見晴らし書店の一日(三浦しをん)
東京の西の郊外で曽祖父が始めた小さな書店「見晴らし書店」。今は祖母と父親と主人公の花布で営んでいる。パートアルバイトさんと、地元の常連さんとの一日。
本の配達も行っている見晴らし書店。「まほろ市」にある設定のようで、「まほろ駅前」シリーズのファンとしては嬉しい気持ちになった♪
書店は高齢者を見守る街のセーフティネットとしても機能していて、街の大切な一つの要素になっているなぁと実感。街の書店は減る一方だけど、書店の存続を希望する人は意外と少なくないのかもしれない。 -
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2012年本屋大賞受賞作
辞書編集部という、本書を読まなければおそらく人生で一度も知ることのなかった世界を味わうことができた。
そもそも辞書編集部という部署が存在することを本書を通して知った。考えてみれば世の辞書も、私の愛用している『三省堂国語辞典』も誰かが執筆している“本”であることに変わりなかった。今まで当たり前のように利用していたが、『舟を編む』によって辞書のありがたさを身にしみて実感している。私が辞書を購入するにあたって『三省堂国語辞典』を選んだきっかけも、文章が独特で面白く、かつ端的でわかりやすいからで、しっかりと読み物としての認識を持っていた。
2012‐2026
出版から14年経ち、私はこの本を初めて読んだが、全く色褪せない内容だった。まるで最近出版された本を読んでいるかのような。
『舟を編む』が読む人を繋ぎ、結び、船に乗ってまた新たに誰かのもとへ物語が届くことを願います。 -
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ネタバレとてつもなく衝動的な感情を直に受けることになった。今まで自分がスポ根魂と揶揄していた正体が、こんなに綺麗でずっと見ていたくなるようなモノだったとは知らなかった。
そりゃあもう、走るしかなくなるよなぁ……。ハイジさんの強い優しさに、全員のハイジさんに対する感謝に、走への羨望に、何度も泣きそうになった。
終盤のアオタケ全員のモノローグは、ここまでの軌跡の答え合わせだった。みんな思うことが違っても、誰かのために、自分のために走っている現状、この苦しみも何もかも自分だけにしかわからないのに、誰かと走っている確信がある。ここだけ共通していた。それが凄く羨ましいと思えた。別段、「走る」ことに対しての話だけじゃなく、生命活動に必要は無いが、自分という存在を証明する呼吸に似たそれがあること。それを共有できる仲間がいること。強くなれること。 生きるとは、そういうことじゃ無いかと思えた -
Posted by ブクログ
色んなことをやったみたいと思わせてくれる作品に出会えた気がします。。
例えば、紙の「ぬめり感」を確かめたくなって読んでいたページの触り心地を確認したり、家にある辞書を数冊引っ張り出してそれぞれで同じ言葉を探して表現の違いを見てみたり。ついついやってみたくなることが多かったです。
また、作品を通して仕事に熱中して何かを成し遂げる人はなんてかっこいいんだろうと思いました。
これは私情ですが、この作品のおかげで、何年も熟読しているとある漫画のタイトルには2つの意味があるんじゃないかな?と思いを巡らせ、違う角度から大好きな作品を楽しむことができました。
個人的に登場人物もみんな個性的で大好きでした。
みんなみんな幸せでありますように。