三浦しをんのレビュー一覧
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隅から隅まで面白かった。「“読む”は読む前から始まっている」という考えは、私もぼんやりと思っていたことではあるが、この四人のおかげで私の罪と罰読書も、読んでないけど始まったぞ!と感じた。
四人の自由で対等な雰囲気がまたとても良かった。罪と罰を読んでない者同士で話すという企画なんだから対等なのは当然だが、誰かの持っていた文学や歴史の知識がヒントになるときも、ガイド役の学者先生的な人の授ける解説を拝聴するみたいな空気は一切なく、プロ作家としての作劇的勘で何かを言い当てようとするときも、「ここできっと二人の対話が八十ページ続くんですよ」とか「結婚式で繰り広げられる七日七晩にわたるロシアの宴の描写でページ水増し作戦に違いない」とか、ただただ面白い。未読読書会の前に十五分の影絵版罪と罰を見たということで「私知ってるのよ、言っちゃっていいのこれ?」と誰よりも優位に立って発言していた浩美さん(矢部太郎さんの解説マンガでは、影絵原理主義者と呼ばれていた)による、後半の衝撃の告白には盛大にずっこけたし、なんて可愛い人なんだと思った。
四人が読んだあとに開催された読書会の様子も収められており、コロンボさながらの倒叙ミステリになっているという指摘と、彼女らによる脳内キャスティングで、松岡修造、スティーブ・ブシェミ、片岡愛之助(あと、私は知らなかったけど皆さんお気に入りの様子だったヴィゴ・モーテンセン)が登場したのも楽しかった。 -
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木暮荘に住まう住民と、それを巡る人たちの物語。
第1話 ある日、3年前に付き合っていた元彼が繭子の家に現れた。繭子にはすでに半年前からつきあっている彼がいるのに、元彼がお金がないという理由で部屋に居座ってしまう。
第2話 木暮荘大家の木暮の友達が死んだ。妻にセックスさせてくれと言ったら断られたそうだ。それをきいてから、死ぬまでにセックスしたいと木暮は考え始める。
第3話 美彌は木暮荘の前を毎日通って職場に通う犬のトリマーだ。ひょんなことからヤクザの前田さんと仲良くなる。
第4話 繭の勤務先のフラワーショップは、隣に喫茶店を併設している。店長の佐伯の夫がやっているのだが、最近佐伯の妻は夫が入れてくれた珈琲は泥の味がすると思っている。
第5話 神崎は木暮荘の201号室の住民。税理士資格取得のために勉強に励んでいるが、木暮荘の壁が薄すぎて生活音がうるさすぎ、勉強に身が入らない。壁が薄いのに気がついた彼は、畳をあげて下の部屋が覗けることに気がつく。
第6話 光子は女子大生。友達が妊娠して、もうすぐ産まれるという。その後行方不明になった挙句、名前もついていない赤ちゃんを預けて去っていった。みんなで子育てに奮闘する。
第7話 繭の元彼並木は、未練タラタラで繭の勤務先を覗き、ストーキングに勤しんでいたが、フラワーショップの虹子と名乗るお客さんに見咎められ、なぜか虹子の家に居候することになる。 -
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ネタバレ『まほろ駅前』シリーズ第3弾。
どうやら今回が最後のお話のようです。
第2弾にも出てきたキャラクターたちが勢揃いして(と言っても残念ながら岡夫人は登場しませんでした)、「狂騒曲」の文字通り「狂おしく騒がしい」感じでしたが、最終話にふさわしい内容だったと思います。
しかし、終盤で南口ロータリーに岡さんたちが出向いたシーンは、何度読んでも面白くて笑ってしまいました。本人たちは真面目にやっているので失礼だとは思うのですが(^^;
「時刻表遵守!」と書かれた旗をなびかせながら行進し、野菜を販売する団体、看板持ちの三つ巴の場所取り合戦は、ぜひ映画でも見てみたいです。
ちなみに「野菜を間引いてもバスは間引くな!」は名言です(。'-')(。,_,)ウンウン
「まほろ市」という架空の街で、一癖も二癖もあるキャラクター達によって繰り広げられる群像劇。
先が気になりすぎて、500ページ超えとは思えないほどサクサク読み進められる疾走感。
あなたもぜひ、多田さんたちと一緒にまほろの街を駆け抜けてみてください!
…と言っても、ネタバレ防止フィルターを使いながらおすすめしてもあまり意味はないですが( ̄▽ ̄;)
岡さんたちの話をどうしても入れたくて、ネタバレにせざるを得ませんでした(*_ _)人スミマセン -
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杉並区の住宅街にある古びた屋敷。そこには4人の女が住んでいる。家主の牧野鶴代、その娘の佐知、佐知の友人の雪乃、佐知の刺繍教室の生徒である多恵美。4分の2は血が繋がってないのだが、"身内"の一員として今日もワイワイと過ごしているのだった。
第三者の目から語られる話型に、かなり面白い構成だなぁと思っていたら終盤で正体が明かされて笑ってしまった。佐知は大変な目に遭っているのに笑。善福川のカラスたちの総意の化身である善福丸の突然の登場にも。両者唐突すぎるのだ、ご登場が。小説なのだが、ホームドラマの映像としてありありと想像できる。(実際テレビドラマとして放送されていたらしい)お嬢様として育ってきた鶴代にまあまあ振り回されているズボラな佐知。それを遠目から微笑ましく見守るクールビューティーな雪乃と、ストーカーに追われていながらも何故か当事者意識の低い多恵美。4人の会話劇が本当に面白く、久しぶりに読み終わりたくない本に出会った。春から真夏にかけての牧野家の様子が描かれ、季節との結びつき行事もすごく楽しそうだった。守衛のご老人山田氏との繋がりもより現実感が生まれる。 -
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くーーーーーーめちゃくちゃ良い読後感。一気に読み終えてしまった。三浦しをんがデビュー当初こんな話を書いていたなんて。エッセイや月魚の印象と違ってかなり好みだった。
解説で重松清に言われて納得してしまったのは、可南子の語り口が古風でありながら鼻につかないこと。変に畏まったり情緒的になられるよりむしろ自然で、2時間スペシャルのドラマに見入っているような気持ちにさせられた。
2時間スペシャルが思い浮かんだのは、政治家の父といけすかない秘書、小言の多い義母、要領のいい高校生の弟たちの存在も大きい。字面だけ見たらドロドロっぽいけど、内容は圧倒的にホームコメディ。ギャグ。渡る世間は鬼ばかり的な(?)くだらなさと、女性として/家の後継としての押しつけられる像から脱却してやるという気概が、可南子の勢いのある語りによって面白く、そして熱く体現されている。単にテーマが設定されているというより、そのテーマとキャラ造形が相互に作用し合ってより面白くなっているから前のめりで読めた気がする。記憶を消してもう一回読みたいランキングに入るかもしれない。感想書いてたらもっと好きになってきた。
家族だけでなく友人の性格も中々に魅力的だった。砂子も父も言動の割に嫌な人に見えないのは「憎めない」のがかなりポイントだと思う。そしてそれは可南子がちょっとずれた呆れ方や怒り方をしてくれるからだ。今すぐ東京の父の家だけ床上浸水すればいいのに、と真剣に思った。というように。 -
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上巻ののどかでほのぼのとした感じから一変、下巻は少し不穏な雰囲気。
研究室で持ち上がるいくつかの問題に向き合うメンバーたち、そこに大きく関わるのが、のほほーんと入ってくる藤丸の存在。
門外漢の何気ない言動に気付かされるってあるあるですが、藤丸のこのキャラクターが効いてきます。
誰のことも一旦受け入れて咀嚼してみる、だから慮れる。もう藤丸は愛じゃん、と思ったり。
あとは松田先生ね、上巻から気になってましたがまさかそんな。松田先生いいよなぁ。
世紀の大発見も日々の地味な作業の積み重ねの結果で、これはいろんな研究室で今も進行中なんだよなぁ。
料理の世界だってなんだって、真摯に誠実に向き合うってのはそりゃもう愛よ、どこもかしこも愛しかないではないかー。
巻末を見たら、三浦さんは塚谷裕一先生の研究室で取材されたとのこと。
塚谷先生かぁ!なんだかより解像度が上がった気がしました。