あらすじ
三カ月後に隕石がぶつかって地球が滅亡し、抽選で選ばれた人だけが脱出ロケットに乗れると決まったとき、人はヤケになって暴行や殺人に走るだろうか。それともモモちゃんのように「死ぬことは、生まれたときから決まってたじゃないか」と諦観できるだろうか。今「昔話」が生まれるとしたら、をテーマに直木賞作家が描く衝撃の本格小説集!!
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Posted by ブクログ
連作の7篇。それぞれ、世界が滅亡に向かいつつある時に、世界のどっかで起こった小さなドラマを語る。各作品の冒頭には、よく知られた日本昔話の梗概。最初はなんで?と思うが、これがのちのちボディブローのように効いてくる。
7篇の間には、登場人物の名前が似ていたり、状況が酷似していたりと、通底する部分がある。でも、完全につながるわけではない。そのすれ違いが、もどかしさとも懐かしさとも愛おしさともつかない不思議な余韻を醸し出している。
たとえば最後の章はいかにもSFらしいタイトル、「懐かしき川べりの町の物語せよ」。なぜ主人公は神保百助、助っ人は、僕、有馬、鳥子の3人なのか。ストーリーテラー、三浦しをんの力量を見せつけられる。
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昔話をオマージュしてる面白い構成。SFチックなのがストライク。
世界が終わる時にどんな行動を取るか、に焦点が当てられた話も多くて興味深かった。
特に「懐かしき町のかわべりの物語をせよ」は、なぜ主人公がその選択を取ったのかを綺麗に回収していって一番好きだったかも。ラブレスも結構好きで、最後の話と繋がってるのも綺麗に作られてるなと。
比喩表現も綺麗で大好きな一冊。
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予備知識なしで読み進めてたので、想像もしなかった内容でした。短編でありながら、微妙に様々なことがリンクしていて、もっともっと集中して読んでたら伏線に感動しただろうな。
昔話のオマージュだけど、絶妙に自分では思いつかないような捻った設定だし、いろんな他の小説にはない要素が盛り込まれていました。
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やっぱ三浦しをんさんの作品好きだなぁ。
昔話を題材にして今風にオマージュされた作品だった。
読解力の乏しいわたしには理解しきれないのもあったけど、最後の地球滅亡のやつとかは中篇になってて面白かった。
自分だったらどうするかなぁとか、自分の価値観を超えて想像もできない展開を楽しんで読めた。
もっかい読んだら理解出来るところもあるんかな。
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桃太郎やかぐや姫などの昔話をそこはかとなくベースにした短編集。ホストの男性、普通の高校生、好きでもない人と結婚した女性などが主人公。生きることや生きることを選択することなど、深いテーマが根底にありながらライトに描写している。
実は連作でもあり、各話で伏線が回収されている。最初はイマイチ内容のない話だなと思っていたが、後半に入るにつれ、伏線が回収されなかなか壮大なテーマであることがわかるとぐんと面白くなる。
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隕石が地球に衝突する発表後、脱出して生き残った生存者が「昔話」として残す地球のものがたり。7編の短編が少しずつ絡み合って、長編になっている。
「人は二種類に分かれるようだ。これまでどおりの日常を堅持しようとする人と、思い切り好きなことをやって火花のように散ろうとする人」と、語る。きっと、死を宣告された病人や戦争時の兵士も同じかもしれない。ただ、「決定的な終末が三カ月後に迫ってみると、案外どうしていいのかわからない」と、語るように、普段通りに過ごす人が多そうな気がする。花火のように散っても…。ただ、その前に、死を選ぶ人も多いかも。
三カ月後に必ず死ぬとわかっていても、それまでは生活を続けていかなきゃならない。そして、きっと、生き続けることは、死ぬことよりも辛いかもしれない。常に三カ月後を想像してしまうから。
「隕石がぶつかるってわかってから、どうせ死ぬなら…って考えても仕方がない。死ぬことは、生まれたときから決まっていた」それを諦めと呼ぶのか、達観と呼ぶのか。ただ、「これまでどおりの日常を堅持しようとする人」のみが物語を残していくのは事実だ。それが、”むかしのはなし”になっていく。
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「現代にむかしばなしを作るなら」をテーマに著された短編作品群。それぞれ、まくらとして実在の昔話(浦島太郎など)のあらすじが描かれ、本編が始まる、という形。昔話を現代風にリファインした、というより、そもそも昔話はなぜ現代にまで受け継がれてきたのか、というところに着目して物語が描かれている。なので昔話そのものとの関連性は薄い。大本となる設定があるんだけど、それを意識して読むと物語はより深く意味を持ちはじめる。
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むかしむかし〜のお話が今で言うなら、、もしくは昔からのお話で伝えたい事はずっと今でも変わらない。という事なのかな。
私は一度読んだだけじゃちょっと理解できなかったけど、もう一回読みたいと思えるようなお話でした。
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しをんさんは関係性を語る魔術師であると、この短編集を読んで確信。
「僕」なり「私」なりが、彼ないしは彼女に対してどう感じているか、どういうことがあってこうなったか。疑いもなくスラスラ頭の中に入ってきて納得させられる力があります。
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短編集かと思ったら実は各話が少しずつリンクしている。日本の昔話に着想を得たSFチックなストーリーで、伏線やオマージュの部分を探しながら読むのが面白い。
大人の「おとぎ話」
大人の話と言えば、エロティックなもの。加えて乱暴な、暴力的な諍いものが大概だろう。いわゆるえげつない話しである。そうした先入観があるから、読んでいても大して面白いとは思われない。突飛な作り話でバカバカしいと思う。でも、大人が集まればたぶん似たような話しをするだろうから…
この小説に出てくる人物も、ヤクザの女に手をつけて殺されかけているホスト、空き巣の話し、父の弟と関係を持ち、精神科で強制的に治療受けている自殺願望がある女性(高校生)、過疎地の若い漁師の話し、美容整形治療中の女を乗せたタクシー運転手の話し、新種の花の開発に携わる研究員と付き合っているが無気力に生きる女性の話し、などが収められている。
8つの話を読んで話しの終わり方が変わっていると感じる。つまり、物語を水の流れに例えると、その水が突然、瞬間蒸発して跡形もなく消えてしまうよ
うな終わり方だと感じる。上手いと感じる。おとぎ話のようなものだからという訳でも無い…。
「隕石が地球に衝突する」という大きな命題があるのだ。
非常に長い地球の歴史を考える時、人間を含めて生物の世界では、今ここに生存している生物の確率は非常に低い、という話しを聞いたことがある。生きてここに生存しているということは真に奇跡に近いというのだ。
ふだんはこうしたことを考えることはない。しかし、考え始めると取り留めのないようなものであり、考えが及ばない。
最後の物語で、物語の終わりに、主人公の「僕」が「私」に変化していることに、作者がこの命題を誠実に考えていたんだと感じる。
全体を読んで、少しややこしい話しだけれども読んでみる価値はあるかもしれない。
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よかった。
話の設定から(隕石が……ってところで)、伊坂幸太郎さんの「終末のフール」を思い出しました。
昔話を元に…ということだけど、話によってはほとんど原型をとどめていないのもあった。
だけど、それが逆に「すごい!」と思った。
例えば「かぐや姫」、例えば「桃太郎」という話で、あそこまで想像(この人の場合、妄想?)を膨らますことができるとは!私がもし同じことをしたら、きっと元の話に忠実に、だけどちょっと現代風にアレンジした話しか書けないだろう。
あとがきを読んで、納得。
昔の話をしたくなるときは、確かにこんなときかもなぁ。
むかしのはなし
今、入院中です。私の場合たぶん手のほどこしようがない。延命処置をしている。痛み止めしかくれないし、その量が増していくだけ。あとは、覚悟するだけ。自分が生きれ、生かされた時代に感謝。
Posted by ブクログ
昔話の概略や教訓を、現代の話にパロディー風に盛り込んでいて読み応えがあった。繋がっていないようで繋がっていて、隕石が衝突するということが分かってからよりこの本全体の深みが増して、昔の話として物語る人たちの背景に苦しくなった。個人的にたどりつくまでが特に良かった。
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三浦氏の小説は久しぶりです。『まほろ駅前多田便利軒』を読んで以来。あれは子どもが生まれる前後だったか。ざっと20年ぶりであります。
・・・
本作は昔話にちなんだ短編集。
「ラブレス」「ロケットの思い出」「ディスタンス」「入江は緑」「たどりつくまで」「花」「懐かしき川べりの街の物語せよ」の計7篇。最後の一篇が101頁の中篇で後は短篇。
そのうち「入江は緑」以降の4篇は連作となっています。ただ言葉の端々から他もモチーフが関連しているようにも見えます。
・・・
内容ですが、いやあ、どれも面白かった!
で、ふと思ったのは伊坂幸太郎氏の作品に似ている?ということ。これは、「入江は緑」以降特に、地球滅亡(隕石が数か月後に衝突する)という筋が通底しており、それを受けての人間ドラマが各篇で独立して描かれており、伊坂氏の『終末のフール』を彷彿とさせるところがあったことが大きいかと思います。
また、泥棒の半生を独白形式で描く「ロケットの思い出」のシュールな設定(犬との思い出、変態同級生の部屋に泥棒で入ってしまった事等)や軽妙な語りもまた、伊坂氏の『ラッシュライフ』を思わせるところもありました。
・・・
他方、ノワールなものも才能ありますね。ただキレイに仕上げる方です。
冒頭作の「ラブレス」はホストが知らずにヤクザの女に手を出し、殺される間際にケータイからダイイングメッセージを打っている話ですし、「ディスタンス」は叔父に恋をしてしまった女子高生が、離れてしまった叔父の心に気づかず、熱く思いを語るもの。
こうしてみると中村文則氏の作品にも似てるかもって思い始めますが、「最近読んだものにメッチャ引っ張られてるだけじゃん」と気づきました。ブルブルブル。
改めて彼女の特徴を考えると、三浦氏の本作を読んでいて感じるのは、「癖のなさ」「平明さ」のようなもの。
どれもさっぱりとスラスラと読めるのです。ホストの話「ラブレス」はノワールというよりどこかコミカルさを感じますし、近親相姦を描く「ディスタンス」もグロくなく、さっぱりと描くのです。
これは彼女ならでは、と感じた次第です。
・・・
ということで、ほぼ初めましてというくらい久しぶりな三浦氏の作品でした。
他の作品も徐々に渉猟してまいりたいと思います。
Posted by ブクログ
隕石衝突で地球が滅亡した後に"昔話"となるように語られたストーリーを集めた短編集。
各編の冒頭にいわゆる"昔話"(かぐや姫、花咲か爺など)が載っているが、必ずしもそれがベースになってるとは思えない話もある。
地球滅亡が前提だからか、少し変わった死生感、価値観を持った人を描いた話が多く、なんともいえない不思議な印象だけが残った。
Posted by ブクログ
たまにはミステリ以外も読みたくなるねと選んだけどこれ何年前かに読んだことあったね。忘れてたけどラブレスでん〜既視感〜?と思いロケットの思い出でおお〜?となりディスタンスで完全に再読だこれ〜と確信したね…でもほぼ記憶なくてまた面白く読めた。隕石でぐっとSF感が出るのが好き。
Posted by ブクログ
先祖が27に死ぬから自分も死ぬかもと思ってるホストとか叔父さんと姪のラブストーリーとか職業空き巣の男が同級生と空き巣中に家で偶然会う話とか
あとは地球に隕石が落ちて他の星に逃げるためのチケットのはなしとか
最後のモモちゃんの話が一番私的に微妙だった
桃太郎とかの昔話が各短編の前に載ってる
なんとなく短編同士繋がりのある感じある
昔話の枠を使って
話し上手の三浦しをんさんが昔話の枠を使って少し不気味な夜話をする といった雰囲気の本。
昔話の使われ方は本当に枠だけで内容は作者に完全に入れ替えられている。
生死を扱う重い話が多い割には、しん とした雰囲気が漂っているのは作者の狙い通りなのか?
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隕石衝突辺りから、連作短編の様相を呈してきた。
が、実は最初の話から流ればできていた。ももちゃんはホスト男の息子だったか…。
むかしのはなしいうものの、さられと流れる記憶に残らぬものばかり。
Posted by ブクログ
三浦しをんが書いた「日本の昔話」をモチーフに現代社会に投影した作品集。
個人的にはモチーフと本質的に似ている所があって上手い!と思う作品もあれば、ちょっと無理やりではと思うものもあり、作品ごとに差が激しいと感じました。
作品は全てどことなく暗さや後ろめたさが付き纏っていて、ちょっと暗い気持ちになるかもしれません。
前半戦の作品は面白いものが多かったように思います。
Posted by ブクログ
ちょっと私には理解しにくい世界観だったかな。
昔話って結構残酷な話しが多いよなぁ〜ってずっと思ってたけど、3ヶ月後に隕石が落ちて地球が滅亡するとしたら…
現代の私たちも未来の人たちに残酷な歴史を残すのかな…
Posted by ブクログ
ちょっとオイラには難しかった。帯に〝かぐやひめ、花咲か爺、天女の羽衣、浦島太郎、鉢かづき、猿婿入り、桃太郎……。日本昔話は、昔の話なんかじゃない。今、ここで起こりつつある物語なのだ〟って書いてあるから〝現代版 かぐや姫〟とかになっていると思っていた。もちろん、そういう風になっているんだろうけど、オイラは元の話の記憶も怪しいものだからなんだかまったく別の物語を読んでいるみたいだった。いちばん読みやすかったのは「懐かしき川べりの町の物語せよ」。桃太郎のことは考えないで読めたから。
Posted by ブクログ
この中で語られている記録も、遥か未来の人達からしたら私達が語り継がれてきたよくある昔話みたいなむかしのはなしになるって事かしら。
少しずつリンクしている連作短編集。途中までは気づかなかったけど、さりげなく差し込まれてる感じ。
Posted by ブクログ
しをんさんの作品は、自分がどこにいるのかわからなくなる感覚が好きだ。
むかしのはなしを参考にせずに読んでしまった。
んーもったいなかったかも。
Posted by ブクログ
元々存在する昔話を現代風に……というわけではなく、モチーフ?といった感じでそれぞれの話が進んでいく形式で、初めに粗筋が書いてあるので全て読み終わったあとになるほどこういう形でお話を取り入れてるのか。と納得できるのが面白かった。
改めてしをん先生の物語の構成力に脱帽でした。
Posted by ブクログ
むかし話をモチーフにした短編集です。とはいえ、そこまでむかし話に引っ張られている所は無く、読み終わる度に何モチーフだったかなあ?と見返す位の感じです。
隕石が3か月後に地球に落ちて滅亡すると分かっている世界で、1000万人だけが抽選で宇宙に旅立つ。その時人々はどうするんだろうかという事が、短編が進んでいく毎に盛り込まれていきます。
どれもふわっと終わってしまいますが、その後もこの人はこの世界で暮らしているんだなあと思わせる上手さがあります。
三浦しをんさんは割と軽妙で、現代的な言葉を使う事が多いような気がするのですが、この本は文学的表現にこだわったような気がします。
Posted by ブクログ
宮下奈都さんのエッセイ「緑の庭で寝ころんで」で宮下さんがオススメしていました。性的描写と暴力シーンがわりと生々しく、今の自分の好みではありませんでしたが、構成やストーリー展開が面白く、一気読みしました。
Posted by ブクログ
昔話をモチーフに現代に置き換えたお話で始まったと思ったら、隕石が3か月後に地球に衝突するという事件が語られ、7つのお話が結びついていく。昔話がモチーフ、が主題ではなくて、未来から見た現代が「むかしのはなし」だった。
Posted by ブクログ
読んでいるうちに
だんだん世界に入り込んでしまう本だった。
各話で昔話が題材となっている短編集と思いきや
それだけではない。
はじめのお話はなんとなく読み進めてしまったが
途中からもしかして繋がりがある?
と思う要素があり始めてからは読み進める手が進んだ。
とはいえ、一度読んだだけでは
理解できていないものがたくさんありそう。
読むごとに深みを増す一冊なのかも。
終末のフールっぽさもあった。
前からお気に入りの一冊だったのに、どこにいったかな…。