あらすじ
現実に絶望し、道閉ざされたとき、人はどこを目指すのだろうか。すべてを捨てて行き着く果てに、救いはあるのだろうか。富士の樹海で出会った男の導き、命懸けで結ばれた相手へしたためた遺言、前世の縁を信じる女が囚われた黒い夢、一家心中で生き残った男の決意──。出口のない日々に閉じ込められた想いが、生と死の狭間で溶け出していく。すべての心に希望が灯る傑作短編集。(解説・角田光代)
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Posted by ブクログ
「心中」がテーマのお話。
命について考えさせられた…。
死んでしまったらもう、その人がどんなことを考えていたかなんてわからない。
だからこの本はどの話も、謎は完全には解けない。読者としては「え、この謎は??気になる!」という気持ちでモヤッと感は残る。
けれどそれこそが残された者の立場。死者とは話せないので、記憶で推し量ることしかできない。
物語だから解決した方が読者的にいいだろう、とするのではなくリアルに謎のままにするのが好きだったな。
他の方の口コミを見ていたら、結構重たい内容だったり、モヤっとした終わり方な部分に賛否両論あるみたい。メンタルが落ち気味な時に読むとちょっとつらいかもしれないので、万全なメンタルで読むのがオススメかも。
展開が早くてサクサクと読みやすいし、物語としておもしろかった。(テーマがテーマなので、おもしろいとは言いにくいけれど…)
私はこの本好きでした!
Posted by ブクログ
死を扱う物語だけど救いがあって、希望を感じられる結末なのがとてもいい。仄暗く、重い話だからこそラストは安堵感で涙が滲む。三浦しをんさんの言葉選びが綺麗なので、サラリと読み進められます。
一部、救いのない物語もあり、「うわぁ…」となりましたが…
「森の奥」「初盆の客」「SINK」がお気に入りです。
Posted by ブクログ
後ろの作品になればなるほど面白かった!お話として、いろんな関係性の人たちが傷つけて、傷つけられて、救い、救われて、救われなくて、でも彼らにとっては生きることの意味で、、、。全ては解説の角田光代先生の言葉を読んで、グッとわかった感じがしてる。悔しいけど解説読んでこそです。
Posted by ブクログ
心中という暗いテーマの短編でありながら、描かれるのは恋愛や家族愛など、切なく美しい。悲しいお話もありますが、心癒されるのでおすすめできる本だと思いました。
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「生」の究極的な対比である「死」から描いた、わたしたちが生きる世界のうつくしさ。「明日も生きてみようかな」とおもうような、一縷の光が射した作品です。
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心中をテーマにした短編集。
生と死の境があやふやになり、対極にあると思っていたものが何より近しく感じられた。その選択は彼らだけのもの。苦しみの中で手を伸ばした先に救いがありますように、ただそれだけを祈る。寂しさよりもほのかに希望を感じるお話でした。
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ドリーミングな表紙絵と天国という響きのイメージとは遠い、心中をテーマにした短編集。
テーマへの迫り方や読後感は話ごとに異なり、一話ごとに頭の中の世界がぐるんと上書きされる。
「死への悲しみ」や「生への執着」などと分かりやすくラベリングできない、複雑な状況に置かれた登場人物たちの心境がすんなり心に迫る。
物語の背景は決して想像し易い環境ではないのに、さらっと納得できるように描かれている。
『遺言』の主人公が見た「輝く矢」が、この本全体の希望のように輝いて感じた。
Posted by ブクログ
天国旅行というタイトルに惹かれて開きました。
想像していた作品とは真逆で、重たい描写にかなり体力を吸われました。
心中をテーマにした短編集だと読み終わってから知りました。一見、死にフォーカスした作品思えますが、どの話でも生がありありと描かれていて印象的でした。
三浦しをん先生の文章が好きです。
Posted by ブクログ
死(心中が主)について考えさせられる一冊
7つの短編小説からなる。
中でも「初盆の客」は奇妙かつ心温まる物語であり、最後の故人に導かれた新たな出会いにも感動した。
Posted by ブクログ
心中がテーマの短編集。「死」か…と思って読み始めたが、読んでみると「好き」の方に心が寄っていった。すべてが恋愛ものだったわけではないし、恋愛ものであっても、幸せな恋愛だったのかどうか不明なのもあるが、それでも、こんなに好きっていう気持ち、いいなとか、わかるなとか、そちらに心惹かれた。
角田光代の解説を読んで、そういえばみんな死が絡むんだったと思いだした。角田さんは、小説における死とは…といったことにも言及していたり、この作品は生も死も賛美していないだとか、美化してないだとか、そちらを中心に解説されていて、ああそうかと思って少し考え直してみたけど、やっぱり私の受け取り方は、ある「好き」の物語の中の「死」、というものだった。
「星くずドライブ」の男の子のことが、特に切なく感じた。自分のことを好きだという気持ちだけを残して事故死してしまい、死んでもなお近くにいてくれる彼女のことが愛しくてたまらないけれど、やっぱり彼女は遠いし、一緒に老いていくこともできないし、彼女から逃げてしまいたいとすら思ってしまう。けれど、いつか彼女の霊もいなくなってしまうかもしれないと考えるとそれもつらい。そう考えると、「自分は生きながらにして無理やり心中させられてしまったようなものだ」と感じる主人公。
この短編は、本全体の中でも好きという気持ちがいちばん素直だし、気性の激しさや現実の辛さ、報われなかった恋などそういう重さからから生まれる「心中」ではない。いちばん単純で幸せな恋愛小説っぽいのに、それなのにこんなに切ない…というところが、好きだった。ずっとそばにいたい、という願いが叶えば叶うほど、“生者としての孤独”が濃くなるという皮肉。「君は夜」「炎」の報われなさとはまた違う、報われなさが印象的だった。
Posted by ブクログ
目次
・森の奥
・遺言
・初盆の客
・君は夜
・炎
・星くずドライブ
・SINK
作者が、この本は「心中」をテーマにした作品集である、と書いている以上、そういう意図をもってこれらの作品は書かれたのだな、と思うべきなのだろうが、非常にわかりにくい、はっきりとは見えていない「心中」をも含むので、思わずこの言葉の意味を改めて調べてしまった。
最初の『森の奥』は自ら死を求める男が主人公で、最後の『SINK』は一家心中の生き残りの男が主人公という、この並びも計算されたものなのだろう。
前者は生かされた思いが前向きな人生をもたらしそうな気がするが、後者はどうだろう。
今までの自分の考え方を反転してみて、生き方を変えることはできるのか。
答えは読者に委ねられている。
「死」とは、その人の人生の終了であり、死んでしまうとその先の人生というものはあり得ない。
しかし、体の方はこの世界で朽ちていく者であり、死んだ人間は生きている人々の記憶の中にまだその痕跡を残すものである。
それが甚だしいのが『炎』であり『星くずドライブ』、緩やかに愛する人の死を自分に溶け込ませるのが『初盆の客』だとすると、死んだ人の痕跡を消化するのは時間ということなのだ。
ことに『星くずドライブ』は、ポップな作風のなかに、死に囚われてしまったということの恐ろしさが、じわじわと効いてきて、背中が寒くなる。
純愛と死病がセットになっている作品がやたらと出回っているが、「死」縛りでこれだけのバリエーションの作品を書けるのが、本来作家というものなのではないかな。
Posted by ブクログ
どの短編集もホラー味あり結構ゾクゾクした。
特に印象的だったのは、前世の夢に囚われた理沙のエピソード。執着心が怖かったし、最後どういった末路を迎えるのか怖くなった。
Posted by ブクログ
三浦しをんにしては珍しく暗い作品。「心中」がテーマの短編集。
どれもユーモアを削ぎ落とした淡々とした文体で、ラストもどうなったのか、どうなるのかわからないモヤモヤさを残したものが多い。その結末を希望を思って思い描くか不吉なものを感じるかは読む人によるだろうなと思う。私は希望的観測をしたい方だけど、これは…というものもいくつか。
個人的にけっこう怖いと感じる作品もあって、三浦作品って明るくて笑えるばかりじゃないんだ!と当たり前のことに気づいた。普段読んでるエッセイではおバカ丸出し(いい意味で)だからなあ、しをんくん。
明るい話を期待して読み始めちゃったけれど、これはこれとして、表現や話の持って行き方、人物造形など嫌いじゃないです。というか好きです。
Posted by ブクログ
死を題材にした短編集で、読んでいてどきどきした。
身近な人の死を経て希望を持つ人も居れば、諦めて死を選ぶ人も居て、1テーマでこれだけ色んな人生を描ける三浦しをんが恐ろしい。本当に尊敬してます。
比喩表現はもちろん文章がとても綺麗で読んでいて溜息が出る。
どの話も好きだけど好きな人物、描写は「森の奥」のふらっと出てきてさらっと人を救って消えていく青木くん、「炎」の初音とありさの一瞬の青春、「星くずドライブ」の生きている世界と死の世界の狭間で揺れる主人公の葛藤。
星くずドライブは非常に印象的で、死んでしまった人を想うことと生きていて会えるかどうか分からない人間を想うことの違いはあるのか、の問いに自分自身もまだぐるぐる考えてる。
Posted by ブクログ
心中をモチーフにしていたと、最後に知った…
心中、もしくは、自ら選び取る死。
最初の「森の奥」から結構ディープで……
最後の「SINK」はぐさりと泣いてしまった。
樹海で首を吊ろうと試みる男と樹海で出会った男。子供の頃夢でみたもうひとつの人生と、自分の人生。焼身自殺を図った高校の先輩。車にて一家心中をした生き残り。たち。
全部が全部気持ちよいおわりかたではなかったけど、いつかは人は死ぬ、ただ自ら死を選ぶことで救われる人もいる。傷つく人もいる。
重い話なのに三浦しをんさんの綺麗な言葉選びで、なんだか重いのに綺麗な物語たちでした。どの話が好きかは選べない、、、
Posted by ブクログ
怖い話を読んだ後に上書きしようと思って三浦しをんさんを適当に選んだらテーマが心中で泣きました。面白かったので結果オーライです。
森の奥:不思議な話
遺言:いちばん好きな話。書簡式、ののはな通信は重かったけどこの量なら読める。最後のページには愛を感じた。
初盆の客:不思議で心温まる話。
君は夜:ある意味ホラー。結構すきです。
炎:途中まで面白く読んでいたけど結末がもやっとした。
星くずドライブ:これもよくよく考えればホラー。2人に幸あれ
SINK:最後の最後に重いのがきた。救いはあったかな。
Posted by ブクログ
心中をテーマとした作品。
基本的には死を「救済」として見てる内容が多く、独特。
でも死を目前として考える人の思想はたしかにどんなものだろうと思い起こしてくれる。
心情描写が細かく適度に重くさせてくる。それもまた良し。
Posted by ブクログ
死が救いに感じて来る現実の厳しさ、喪失、虚無。
短編ではあるものの、死を扱っているだけに一つ一つが重い。
良かった順に
遺言. 炎. SINK. 星屑ドライブ. 夜の君. 森の奥. 盆の客
Posted by ブクログ
本を買う時は、あまり内容を知りたくないので中をぱらっとみて、表紙の絵がキレイだと思って書いましたら、出だしから、富士の樹海で自殺したい…??
ギョッとする描写もありましたが、結果、意外と爽やかな結末。
中にはちょっとモヤモヤするような重苦しい話もありましたが、短編で読みやすかった。
Posted by ブクログ
心中を共通のテーマとして書かれた短編集。
「死」を感動のためのスパイスとして扱う作品が多く、かくいう私もそれを好んで摂取してきた一人ではあるけれど、
本来「死」とは、どうしようもなく理不尽で、そんな綺麗に締め括られないことの方が多いのだろう…という当たり前のような感想が浮かんだ。
特に、「死」をめぐる人間同士の生臭いやりとりが描かれていて、「死」ではなく「心中」をテーマとして書かれたことの意味を想像したけど、うまく言葉にならない。
三浦しをんさんの美しい文章には惚れ惚れする。
「森の奥」が個人的にお気に入り。やっぱり、わかりやすく救いがあれば、ホッとするなぁ。
Posted by ブクログ
「森の奥」と「君は夜」が個人的には良かったかな。「森の奥」は見知らぬ相手に対する気持ちが、ぐるぐると移り変わるのが面白かったです。「君は夜」は、まぁベタっちゃベタなんでしょうけれど、これしかないというオチに綺麗にやられた感があります。
一日一遍ずつのんびり読んでいましたが、楽しい時間を過ごせました。「君はポラリス」に比べると、もう一歩納得感の少ない作品が多かったように思えましたが、同じようなテーマの中にも目先を変えてきて、飽きずに読むことができました。
三浦しをんさんをもう少し追ってみたいと思います。
Posted by ブクログ
職業小説作家っていう表現で紹介されるしおんさんとは角度を違える心理描写が巧に伺えた。
心中をテーマにした短編集。
「死に向かう」旅程では、日常概念がどんどん削られて行くのだろうな・・と考えたりはするが、具体的に想像すらしたことがない。
誰しも・・の体験があるもんじゃないだけに、種々の作品で語られ、、登場する場面に心が揺さぶられる。
決してやわなものではないだけに、自分の心情を鑑みて読む方がおすすめ。
長編ばかり読んできたしおんさんの作品、短編としてテーマを料理し味わうものいいなと思える。
あとがきでの角田さんの文がピリッと締めている。
Posted by ブクログ
心中がテーマの短編集
死は本当に救済なんだろうか、なんだかんだ生きている方が良いのではないか…
人が死んでしまうお話が苦手で避けることが多いので、読み終わった今少し落ち込んでいます
でも先生の言葉は美しくてやっぱり大好きだ
Posted by ブクログ
心中をテーマにした、死を選び損ねた人たちの短編集。どの話も綺麗に切りよく終わらせず、例えば「星くずドライブ」ならば幽霊になった彼女とどう付き合って行くのか、結局結論が出ないまま終わる。それがまた謎めいていて、リアルでいいと思った。でも君はポラリスが綺麗すぎて、こちらの印象が少し薄くなる気がした。
Posted by ブクログ
死にまつわる短編集。「森の奥」首吊りをし損なった明男が助けられた青木くんは樹海の精だったのか。「遺言」死から踏みとどまった老夫婦。確信を持って言える。きみが大切だ。いい話だった。「初盆の客」ウメおばあさんの夢の中で妊娠した話が子孫に伝わって最後は繋がった話もおもしろかった。「君は夜」江戸時代から恋人同士だったという前世の記憶が片方だけあるのは辛い。「炎」先輩が抗議の焼身自殺をした。これ以外の選択肢はなかったのか。「星くずドライブ」霊が見えるのは大変だ。「SINK」一家心中の生き残りも辛い。ずんと重かった。
Posted by ブクログ
心中をテーマに描いた作品集。
小説における死の扱いを考えさせられる。
文庫版だと解説がつくのが良い。角田さんの解説がわかりやすい。
『泣けることと感動することが混同されてから安易な死が増えた』『この小説の死の壮絶さは そういう傾向への作者の覚悟のように思える』
Posted by ブクログ
心中をテーマにしてるけど重すぎない短編集。面白いのもあったけど、展開適当じゃないか、ってとことかありがちな設定も多くて、そこまで引き込まれはしなかった
Posted by ブクログ
久しぶりに本棚登録…
それなりに本は読んでいましたが、なかなか登録まで行き着けず本当に久しぶりになっちゃった。
三浦しをんさんの作品は何年か前に読んだ「きみはポラリス」ぶり。今回も短編集なんですが、なんと全ての短編が"心中"をテーマにしていて他の短編集とは一線を画している感じ。
ところが、"心中"とはいうものの、そのテーマに気づいたのは角田さんの巻末の解説を読んだ時で、自分の読んでいる所感としては「どの短編でも人が死ぬなぁ…」ぐらい。つまり、それくらいどの短編でも死が重すぎず、淡々と描かれていました。
特に印象に残っている短編は「炎」。主人公が好意を持っている憧れの先輩が、ある日学校の校庭で焼身自殺をしてしまう。
主人公は先輩の彼女だった同級生と、なぜ彼が自殺という選択をしたのか、なぜあの死に方だったのかという謎を解明しようとする…
というあらすじなんですが、ラストがかなり衝撃的。
人が自ら死を選んだ時、その真意は誰にもわからない(もしかしたら本人すらもよくわからないかもしれない)、決めつけられない、ということをこの作品に突きつけられた気がします。
角田さんが巻末で書いているように、この短編が死を賛美しているわけでもなく、かと言って死を否定しているでもなく、「ただそこにあるもの」として描いているのがすごく新鮮で面白かった。死ということがわからなくなった時に読んだら、助けになるかもしれない本です。