あらすじ
現実に絶望し、道閉ざされたとき、人はどこを目指すのだろうか。すべてを捨てて行き着く果てに、救いはあるのだろうか。富士の樹海で出会った男の導き、命懸けで結ばれた相手へしたためた遺言、前世の縁を信じる女が囚われた黒い夢、一家心中で生き残った男の決意──。出口のない日々に閉じ込められた想いが、生と死の狭間で溶け出していく。すべての心に希望が灯る傑作短編集。(解説・角田光代)
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Posted by ブクログ
目次
・森の奥
・遺言
・初盆の客
・君は夜
・炎
・星くずドライブ
・SINK
作者が、この本は「心中」をテーマにした作品集である、と書いている以上、そういう意図をもってこれらの作品は書かれたのだな、と思うべきなのだろうが、非常にわかりにくい、はっきりとは見えていない「心中」をも含むので、思わずこの言葉の意味を改めて調べてしまった。
最初の『森の奥』は自ら死を求める男が主人公で、最後の『SINK』は一家心中の生き残りの男が主人公という、この並びも計算されたものなのだろう。
前者は生かされた思いが前向きな人生をもたらしそうな気がするが、後者はどうだろう。
今までの自分の考え方を反転してみて、生き方を変えることはできるのか。
答えは読者に委ねられている。
「死」とは、その人の人生の終了であり、死んでしまうとその先の人生というものはあり得ない。
しかし、体の方はこの世界で朽ちていく者であり、死んだ人間は生きている人々の記憶の中にまだその痕跡を残すものである。
それが甚だしいのが『炎』であり『星くずドライブ』、緩やかに愛する人の死を自分に溶け込ませるのが『初盆の客』だとすると、死んだ人の痕跡を消化するのは時間ということなのだ。
ことに『星くずドライブ』は、ポップな作風のなかに、死に囚われてしまったということの恐ろしさが、じわじわと効いてきて、背中が寒くなる。
純愛と死病がセットになっている作品がやたらと出回っているが、「死」縛りでこれだけのバリエーションの作品を書けるのが、本来作家というものなのではないかな。
Posted by ブクログ
怖い話を読んだ後に上書きしようと思って三浦しをんさんを適当に選んだらテーマが心中で泣きました。面白かったので結果オーライです。
森の奥:不思議な話
遺言:いちばん好きな話。書簡式、ののはな通信は重かったけどこの量なら読める。最後のページには愛を感じた。
初盆の客:不思議で心温まる話。
君は夜:ある意味ホラー。結構すきです。
炎:途中まで面白く読んでいたけど結末がもやっとした。
星くずドライブ:これもよくよく考えればホラー。2人に幸あれ
SINK:最後の最後に重いのがきた。救いはあったかな。
Posted by ブクログ
死にまつわる短編集。「森の奥」首吊りをし損なった明男が助けられた青木くんは樹海の精だったのか。「遺言」死から踏みとどまった老夫婦。確信を持って言える。きみが大切だ。いい話だった。「初盆の客」ウメおばあさんの夢の中で妊娠した話が子孫に伝わって最後は繋がった話もおもしろかった。「君は夜」江戸時代から恋人同士だったという前世の記憶が片方だけあるのは辛い。「炎」先輩が抗議の焼身自殺をした。これ以外の選択肢はなかったのか。「星くずドライブ」霊が見えるのは大変だ。「SINK」一家心中の生き残りも辛い。ずんと重かった。
Posted by ブクログ
心中をテーマに描いた作品集。
小説における死の扱いを考えさせられる。
文庫版だと解説がつくのが良い。角田さんの解説がわかりやすい。
『泣けることと感動することが混同されてから安易な死が増えた』『この小説の死の壮絶さは そういう傾向への作者の覚悟のように思える』