柚木麻子のレビュー一覧
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20代後半の私がまさに直面していた悩みに効く作品だった。1番居心地がよくて、それぞれを尊敬できる仲良し4人組でいるけど、そろそろライフステージが変わってきて疎遠になりそうで怖かった。疎遠にならない為に私も同じペースでライフステージを進めようと頑張ったこともあったけど上手くいかず、それどころか同じペースで進めたところで、所得格差等でどうせ疎遠になると知り、落ち込んでいた。この作品を読んで、「4人で1つではない。1人でもやれるから、4人でもやれる。」のだと思えた。女性の友情はどうしても疎遠になる時期もある。それでも、いつか落ち着いた時、ごく自然にまた集まれるものだと思った。それまで、私もパワーアップレベルアップしていこうと前向きになれた。
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ネタバレ2025.06.作家を目指している中島加代子は,自腹で文豪が多く滞在した山の上ホテルに宿泊していると,大学のサークルの先輩で大手出版社分鋭社の編集者として活躍している遠藤先輩がやってきて,「上の階に有名作家の東十条宗典が宿泊し執筆している.明日が原稿の締め切りで間に合わなければ,以前に加代子が書いた原稿が小説ばるすに掲載される可能性がある.」という.そこで,加代子は東十条の部屋にメイド姿で侵入し原稿執筆の邪魔をし,その結果原稿が間に合わなくなる.加代子は相田大樹という名前でぷーアール社の新人賞を取るが,この賞は出来レースでタレントの島田かれんと相田大樹のダブル大賞受賞となるが,島田ばかりにスポットが当たり相田大樹は単行本も出してもらえない.そこで,加代子は遠藤先輩と相談し,有森樹季という名前でデビューし分鋭社の新人賞を受賞する.東十条は,有森樹季の邪魔をしようと色々と画策する.有森樹季の作品が権威ある鮫島賞の候補になるものの,その選考委員が東十条宗典だった.加代子は東十条の妻や娘と友達になり画策し,ついに鮫島賞を受賞する.加代子と遠藤先輩のコンビが痛快だったし,敵役の東十条宗典の対応もよく,とっても面白かった.
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ネタバレ◾️record memo
彼女は気付いてないのだろう。
長津田があきらめた指輪をプレゼントしたことで、彼のプライドを傷つけたかもしれないことに----。ミートボールスパゲティで満足してやれば、それで良かったのに。長津田の冷たい態度の原因はそんなところにあるのかもしれない。
力を蓄えて、もう一度彼を追いかけるのか----。自分にそんな覇気は果たしてあるのだろうか。やっぱり自分が可愛い。恥をかくのはとっても怖い。傷ついていることを認めたくない。香夏子のように、強くなれる日は来るのだろうか。
「麻衣子ちゃんさ最近おかしいよ。大学に入ってから、自分じゃないものになろうとしてる。誰かに何か言われたの?」
「あ……、えーと、元気?」
ソバカスの目立つ色白の頬にくしゃっと皺が寄る。洗いっぱなしの髪を一つにまとめ、安物の服を無造作に身に着けているだけなのに、ピンと張ったアロエのような強さと凛々しさが眩しい。くやしいけれど、こんな個性を持つ女の子を彼女以外に知らない。
「その子……、知り合いですか?」
便器に死んだようにもたれている女の子を恐る恐る覗き込む。
「ううん、全然。皆のいるお座敷を目指してたら、トイレ前にこの子が倒れてるのを発見したんだよね」
「え、知らない人なんですか?」
驚いて問うと、香夏子はこともなげに頷いた。
「うん。全部吐いたから楽になったみたいだよ」
ようやく麻衣子は目が覚めた。景色が今までとは違って見えるほどに。
目の前の美奈子は、得意のあまり鼻の穴が膨らんでいる。どうしてこんな意地悪な女の子に長いこと好かれようとしてきたのだろう。
「慶應の女の子達は、美奈子みたいな女の子のこと、どう思ってるのかな」
思ったより冷静な声が出た。美奈子が不快そうに顔をしかめ、「あ?」というように下品に口を歪ませた。
「美奈子は自分に何もないから、男の人にすごくたくさんのことを求めるんだよね。私もそうだったからわかる。でも、それ物欲しげだし、みっともないよ。それに、ルックス審査に合格した子は世界中であなた一人ってわけじゃないんでしょ」
「上手くいかないのは、麻衣子ちゃんが自分の良さに気付いていないからだよ」
「日本女子大の校風や教育方針が私は好きなの。穏やかで堅実で、一人一人の中にある財産を大切にしてくれる。うちの大学の就職率がダントツにいいのって、コンサバ感が使いやすいっていうのもあるけど、落ち着いてて聡明な女の子が多いからじゃないのかな。手に入らないものに向かってがむしゃらに突き進むのって一見努力家に見えるけど、私はもったいないなって思う。それより今自分の中にある良いところをゆっくりゆっくり育てるのが好き。ハーブや果実酒みたいにね」
麻衣子は目を見張る。自分の中の財産なんて考えたこともなかった。この半年、違う人間になろうと背伸びばかりしてきたのだ。
「誰かを持ち上げるために、誰かを落とす。そういうのって私、好きじゃないの」
「そもそも私、褒められるのとか無理。かゆい!吉沢さんって悪い人じゃないけど、かゆい発言多過ぎて、時々いたたまれなくなるんだよね。それにさー、なんか話すことも超普通だし、意外性がないっていうか。一言で言うとつまんねーんだもん。別に私、守ってくれるとか大事にしてくれるとか、そういうの必要ない人だし」
なごやかな笑いがテーブルを包み、習子の楽しい空想は吹き飛んだ。カップルは祝福すべきもの、当然イベントは一緒に過ごすもの。そう決めてかかっている。この場の空気がうっとうしくて仕方がない。姉の言葉を借りるならまさに「かゆい」。
つながりなどないに等しいくらい緩い輪なのに、協調性を求められると辟易してしまう。
一人で池を眺めていると、心がどんどん静まっていく。辺りに人はいない。ふいに、わーっと力いっぱい叫びたくなるが、やっぱりやめた。
彼氏がいて、友達もいる。サークルに入って、好きな授業も受けている。それなのに、どうしてもここが自分の居場所とは思えないのだ。
「面白い大学に行けば、自分も面白くなれるはずだと思っていたけれど、そうでもなかったんだ。どこに行っても自分は自分だよ」
シャンデリアの光は、母のお下がりであるゴールドのネックレスを薄闇に浮かび上がらせる。ディオールのミニドレスからすらりと伸びた脚とヘッドドレスで剥き出しにしたぴかぴかの額、よく手入れされた波打つロングヘアがとびきりの輝きを放つから、アクセサリーは別にクラシックでも構わないのだ。多少高くても、お手入れを怠らずにいいものを長く使うのがモットー。いつか娘が生まれたら、二年目のボーナスで買ったこのディオールを受け継がせたい。母や祖母が自分にそうしてくれたように。
じっくりと香夏子の蔵書を目で追っていく。大量のちくま文庫。『地球の歩き方』にマスコミ読本。教育学部国語国文学科らしく教育心理学の教科書、翻訳小説、古典、推理小説に、純文学、エンターテインメント。その合間にアイドルの写真集や漫画、映像論も交じっているのが彼女らしい。いずれもよく読み込んであり、カバーや帯がないものが目立つ。
「豊かで循環している、いい棚ね。あなたがどういう子なのか、すごくよくわかる。私の愛読書なんて、ビジネス本や恋愛ハウツー本ばっかり。羨ましい。洋一と趣味が合うわけだ」
私は私らしくやるほかない。香夏子の本棚を見つめるうちに、そう思った。
別に香夏子を困らせたいわけではない。ただ、昔から疑問はすぐに解消したいタイプなのだ。基本的に天真爛漫でおっとりしたみなみが時折見せる、追求の厳しさや引かない姿勢に驚く人は多い。
「だって、さっき言ってたじゃない。自分の中に二人の自分がいる気がするって……。両者が混じり合わなくて苦しいから、どっちの男も選べないんだって……」
メキシコと何の関係があるのかは今一つよくわからないまま、怪訝な顔で頷いた。でも、確かにそうだ。自分の中には二人の女の子がいる。どんくさくて心優しい青島みなみと、世慣れていてスマートで冷たいところもある青島みなみ。素朴なみなみは篤志を手放せないし、お洒落なみなみは小井出さんに惹かれている。どっちも本当だから、自分で自分がよくわからない。
「昨日の夜、みなみに言われたこと、けっこう、こたえた。でも、あの分析は事実だと思う。長津田のことはたぶんずっと好きだと思う。でもね、もう、闘う前にあきらめちゃうところから卒業したいんだ。私は自分を引き受けることに決めた。面倒でイタくて、傷つけられたことを忘れられない自分を引き受けることに決めた。もう、自由になりたいんだ。だって、自由が好きなんだもの」
「あの、香夏子さんって、もしかして男性恐怖症ですか?」
いきなり切り返され、香夏子は言葉を失った。立ち飲みバーの青いネオンにぼんやり照らされた菜穂子は、すべてを見透かすような怜悧な目をしている。一台のタクシーがゆっくりと彼女に吸い寄せられていく。
「見てると、男嫌いっていうより、男の目が怖いっていう風に見えますよ。男の目でジャッジされるのが怖いっていう風に。評価される前に、自分で自分にレッテル貼って、声高に商品名を叫んでいるっていう感じ。その早稲女のコスプレ、時々鎧に見えますよ」
なんと答えても傷ついていることがバレる気がし、香夏子は仕方なくへらへら笑う。
誰もが香夏子になら何を言っても傷つかないと思っている。どうしてこんなに敬意を払われないのだろう。誰にも頼まれていないのに、道化役や世話役を引き受けてしまうのも何故だろう。菜穂子の指摘するように、レッテルを貼られる前に自分で自分を決めつけてしまう性分のせいか。ああ、少しも自由になっていない----。
心を込めて作った書籍を世に送り出すことで収入を得、自分だけの城と時間も手に入れた。思い描いていた人生の真ん中に今、自分は確かに立っている。それでも、香夏子には相変わらず、自信のかけらもない。ささやかな成功体験はすべて、どこか彼方に存在するブラックホールに転送され、吸い込まれていくようだ。いつも何かに縛られている。その正体さえ、よくわからない。
男性恐怖症か----。少女時代がぼんやりと蘇る。トラウマなどと呼べるほどではないが、心当たりがないわけではない。父親が亡くなってから、香夏子は一家の男役を務めていた。幼い妹のことも心配だったが、まだ若く美しかった母親に向けられる、大人の男達の値踏みするような視線がいたたまれなかった。町中、授業参観、保護者面談、親戚の集まり。母が男のぶしつけな目にさらされる度に、自分が辱められた以上の羞恥を感じた。なんとかして母を守ろうといつもやきもきし、ことあるごとに大声をあげ、おてんばに振る舞っていた気がする。いつの間にか、異性の前では必要以上にがらっぱちを演じるようになっていた。
どうして誰も彼もすぐに相手を見付けられるのか、不思議で仕方ない。広い世界でただ一人の男を見つけ出し、相思相愛となり、一緒に生きていくなんて、ほとんど不可能に思える。大海原に一人でボートでこぎ出すような、気の遠くなるような無謀な冒険だと思う。
私は今楽しんでいる、これは楽しい時間、と切れ間なく言い聞かせる。そうでもしないと、ぽろっと泣き出してしまいそうだった。苦しいのに、無性に懐かしい感情だった。大学時代、サークルで盛り上がっている最中、こんな風に唐突に世界から取り残されたような気分に襲われたっけ。周りが賑やかであればあるほど、どこにも居場所がない気がして、焦りがつのった。だから、ことさらに陽気に振る舞い、周囲にぺらぺらと話しかけることで、必死に自分を保っていたから。
けっきょく「女らしさ」や「女子力」は趣味の一種なので、どうつきあうかは自分の適性や好みで決めればいいし、それによって女同士でコンプレックスを持ち合う必要もないと思っている(男にこびる女だって、それは一つの生存戦略だし)。 -
Posted by ブクログ
朝井リョウのエッセイが好きでよく読むんだけど、ちょいちょい柚木さんの名前が出てきて仲良いんだなー意外と面白い人なのかなって気になりはじめて手に取ったエッセイ。
BUTTERを書いた人だとは思えないくらい楽しくて人間味のある方でした。
コロナ禍の只中、気力が湧かない日々に活力を見出したアイデアの数々にポジティブさと明るさ楽しさが溢れる生活エッセイ。
何かしようものならとことん楽しんで追求する完璧主義な性格なようで、コロナと子育てのダブルパンチにそりゃこたえるよなぁって心配になる。
そして食に関してのこだわりや表現が明確で描写がどれも美味しそうなこと!
ランチのアッコちゃんを読んだ時も感じたけど、美味しいものをより魅力的に伝えてくれる書き方が秀逸で、食事を心から愛してるんだなって感じました。
ご飯が炊けてる。お湯が沸いているだけで、もう勝ったも同然である。