新潮文庫の検索結果

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  • 蒼き狼
    4.1
    1巻935円 (税込)
    風の如く蹂躙せよ。嵐の如く略奪せよ。世界史上未曾有の英雄、成吉思汗即位八百年! 遊牧民の一部族の首長の子として生れた鉄木真=成吉思汗(テムジン=チンギスカン)は、他民族と激しい闘争をくり返しながら、やがて全蒙古を統一し、ヨーロッパにまで及ぶ遠征を企てる。六十五歳で没するまで、ひたすら敵を求め、侵略と掠奪を続けた彼のあくなき征服欲はどこから来るのか?――アジアの生んだ一代の英雄が史上空前の大帝国を築き上げるまでの波瀾に満ちた生涯を描く雄編。
  • 香華
    4.2
    女としてのたしなみや慎みを持たず、自分の色情のままに男性遍歴を重ね、淫女とも言えるような奔放な生き方をする母の郁代。そんな母親に悩まされ、憎みさえしながらも、彼女を許し、心の支えとして絶えずかばい続ける娘の朋子。――古風な花柳界の中に生きた母娘の肉親としての愛憎の絆と女体の哀しさを、明治末から第二次大戦後までの四十年の歳月のうちに描く。
  • 孔子
    3.8
    二千五百年前、春秋末期の乱世に生きた孔子の人間像を描く歴史小説。『論語』に収められた孔子の詞はどのような背景を持って生れてきたのか。十四年にも亘る亡命・遊説の旅は、何を目的としていたのか。孔子と弟子たちが戦乱の中原を放浪する姿を、架空の弟子・えん薑が語る形で、独自の解釈を与えてゆく。現代にも通ずる「乱世を生きる知恵」を提示した最後の長編。野間文芸賞受賞作。
  • 悪女について
    4.4
    《自殺か、他殺か、虚飾の女王、謎の死》――醜聞(スキャンダル)にまみれて謎の死を遂げた美貌の女実業家富小路公子。彼女に関わった二十七人の男女へのインタビューで浮び上がってきたのは、騙された男たちにもそれと気付かれぬ、恐ろしくも奇想天外な女の悪の愉しみ方だった。男社会を逆手にとり、しかも女の魅力を完璧に発揮して男たちを翻弄しながら、豪奢に悪を愉しんだ女の一生を綴る長編小説。
  • 額田女王
    3.8
    大化改新後の激動する時代、万葉随一の才媛で“紫草のにほへる妹”とうたわれた額田女王をめぐる大ロマン。朝鮮半島への出兵、蝦夷征伐、壬申の乱……と古代国家形成のエネルギーがくろぐろと渦巻く中で、天智・天武両天皇から愛され、恋と動乱の渦中に生きた美しき宮廷歌人の劇的で華やかな生涯を、著者独自の史眼で綴り、古代人の心を探った詩情ゆたかな歴史小説。
  • ニシノユキヒコの恋と冒険
    3.9
    ニシノくん、幸彦、西野君、ユキヒコ……。姿よしセックスよし。女には一も二もなく優しく、懲りることを知らない。だけど最後には必ず去られてしまう。とめどないこの世に真実の愛を探してさまよった、男一匹ニシノユキヒコの恋とかなしみの道行きを、交情あった十人の女が思い語る。はてしなくしょうもないニシノの生きようが、切なく胸にせまる、傑作連作集。
  • おれに関する噂
    3.0
    テレビのニュース・アナが、だしぬけにおれのことを喋りはじめた――「森下ツトムさんは今日、タイピストをお茶に誘いましたが、ことわられてしまいました」。続いて、新聞が、週刊誌が、おれの噂を書きたてる。なぜ、平凡なサラリーマンであるおれのことを、マスコミはさわぎたてるのか? 黒い笑いと恐怖にみちた表題作、ほか『怪奇たたみ男』など、あなたを狂気の世界に誘う11編。
  • やつあたり文化論
    -
    客を馬鹿にすることで笑いを強制する落語家や漫才師を怒り、国民的ムードにばかり気をつかう政治家の続出を怒って大日本悪人党を待望する。教育ママの精神構造や悪宰相の必要性を説き、家元さわぎや私道さわぎから、現代SFの特質とは何かを論じる。筒井康隆一流のユニークな視点から、現代文明のさまざまな事象を痛快なユーモアと爽快なエスプリで論じたエッセイ集。
  • 将軍が目醒めた時
    4.0
    将軍として精神病院に君臨してきた蘆原老人が長い狂気の眠りから目醒めた時、世界が崩壊した――正気と狂気の渾然とした現実世界のナンセンスを突く表題作。一枚の切符を発端に、懐かしい故郷の駅に降り立った男を次々に襲う悪夢をシュールなタッチで描く『乗越駅の刑罰』。他に『万延元年のラグビー』『ヤマザキ』など、奇想天外なアイディアとブラックユーモアに満ちた全10編。
  • 島倉千代子という人生
    -
    日本の戦後を代表する歌手、「島倉千代子」。だが、婉然とした笑顔の陰には、人知れぬ波瀾万丈の人生が荒々しくも滾っていた。七歳の時の大怪我、十六歳でのデビュー、結婚と離婚、巨額の借金、そして乳癌宣告…。「この世の花」「からたち日記」「人生いろいろ」など、数々のヒット曲に乗せ、辣腕政治ジャーナリストがその愛と悲しみを描ききる。
  • せんせい。
    4.1
    1巻539円 (税込)
    先生、あのときは、すみませんでした──。授業そっちのけで夢を追いかけた先生。一人の生徒を好きになれなかった先生。厳しくすることでしか教え子に向き合えなかった先生。そして、そんな彼らに反発した生徒たち。けれど、オトナになればきっとわかる、あのとき、先生が教えてくれたこと。ほろ苦さとともに深く胸に染みいる、教師と生徒をめぐる六つの物語。『気をつけ、礼。』改題。
  • 見張り塔から ずっと
    3.7
    1巻539円 (税込)
    発展の望みを絶たれ、憂鬱なムードの漂うニュータウンに暮らす一家がいる。1歳の息子を突然失い、空虚を抱える夫婦がいる。18歳で結婚したが、夫にも義母にもまともに扱ってもらえない若妻がいる……。3組の家族、ひとりひとりの理想が、現実に侵食される。だが、どんなにそれが重くとも、目をそらさずに生きる、僕たちの物語――。「カラス」「扉を開けて」「陽だまりの猫」。
  • きよしこ
    4.3
    1巻594円 (税込)
    少年は、ひとりぼっちだった。名前はきよし。どこにでもいる少年。転校生。言いたいことがいつも言えずに、悔しかった。思ったことを何でも話せる友だちが欲しかった。そんな友だちは夢の中の世界にしかいないことを知っていたけど。ある年の聖夜に出会ったふしぎな「きよしこ」は少年に言った。伝わるよ、きっと──。大切なことを言えなかったすべての人に捧げたい珠玉の少年小説。
  • あの歌がきこえる
    3.9
    1巻605円 (税込)
    意地っ張りだけどマジメなシュウ、お調子者で優しいヤスオ、クールで苦労人のコウジは、中学からの友だち同士。コウジの母親が家出したときも、シュウがカノジョに振られたときも、互いの道を歩き始めた卒業の日にも、三人の胸にはいつも、同じメロディーが響いていた。サザン、RC、かぐや姫、ジョン・レノン……色あせない名曲たちに託し、カッコ悪くも懐かしい日々を描く青春小説。
  • 舞姫通信
    3.5
    1巻649円 (税込)
    ラストシーンは、もう始まっているのかもしれない。人は、誰でも、気づかないうちに人生のラストシーンを始めている。17歳で死んだ〈自殺 志願〉のタレント城真吾にとっては、16歳は晩年だった。城真吾は教えてくれた。人は死ねる。いつ。いつか。いつでも――。でも、僕は思う。僕の教え子の君たちの「いつか」が、ずっとずっと、遠い日でありますように。教師と、生徒と、生と死の物語。
  • 卒業
    4.3
    1巻737円 (税込)
    「わたしの父親ってどんなひとだったんですか」ある日突然、十四年前に自ら命を絶った親友の娘が僕を訪ねてきた。中学生の彼女もまた、生と死を巡る深刻な悩みを抱えていた。僕は彼女を死から引き離そうと、亡き親友との青春時代の思い出を語り始めたのだが――。悲しみを乗り越え、新たな旅立ちを迎えるために、それぞれの「卒業」を経験する家族を描いた四編。著者の新たなる原点。
  • ナイフ
    3.8
    1巻737円 (税込)
    「悪いんだけど、死んでくれない?」ある日突然、クラスメイト全員が敵になる。僕たちの世界は、かくも脆いものなのか! ミキはワニがいるはずの池を、ぼんやりと眺めた。ダイスケは辛さのあまり、教室で吐いた。子供を守れない不甲斐なさに、父はナイフをぎゅっと握りしめた。失われた小さな幸福はきっと取り戻せる。その闘いは、決して甘くはないけれど。
  • 黒田如水
    3.9
    うしろ見は武門にない。当ってくだけろ。道は一すじ。「天下を獲れる男」と豊臣秀吉に評された天才軍師・黒田官兵衛(如水)。播州御着城城主・小寺政職の家老・黒田官兵衛は、織田信長と盟を結ぶため、岐阜へ赴き、秀吉の知遇を得る。織田家の重臣・荒木村重が、反織田の旗頭・毛利氏に呼応して叛旗を翻した。伊丹城に籠城する村重を翻意させるため、官兵衛は、単身、敵地に向かうが……。天下無双の軍師・黒田官兵衛の半生を描く歴史小説。
  • 野火
    4.0
    敗北が決定的となったフィリッピン戦線で結核に冒され、わずか数本の芋を渡されて本隊を追放された田村一等兵。野火の燃えひろがる原野を彷徨う田村は、極度の飢えに襲われ、自分の血を吸った蛭まで食べたあげく、友軍の屍体に目を向ける……。平凡な一人の中年男の異常な戦争体験をもとにして、彼がなぜ人肉嗜食に踏み切れなかったかをたどる戦争文学の代表的名作である。
  • 敵(新潮文庫)
    -
    渡辺儀助、75歳。大学教授の職を辞し10年。愛妻にも先立たれ、余生を勘定しつつ、ひとり悠々自適の生活を営んでいる。料理にこだわり、晩酌を楽しみ、ときには酒場にも足を運ぶ。ある日、パソコン通信の画面にメッセージが流れる。「敵です。皆が逃げはじめています―」。「敵」とは何者か。いつ、どのようにしてやってくるのか…。意識の深層を残酷なまでに描写する傑作長編小説。(解説・川本三郎)
  • 不信のとき(上)
    3.9
    1~2巻671~715円 (税込)
    大手商社の宣伝部に勤める浅井義雄は結婚して15年。だが、妻・道子との間に子供はなかった。過去二度も、浅井に浮気された経験を持つ道子は、夫の愛情をつなぎとめようと必死だった。そんな折、取引業者の小柳と銀座で飲み歩くうち、浅井はマチ子というホステスに誘われるまま一夜を共にした。それが自滅へ至る第一歩だとも知らずに――。男の浮気に対する女の非情な復讐を描いた問題作。
  • 異端の大義(上)
    3.8
    1~2巻814~858円 (税込)
    シリコンバレーからの帰還──。世界有数の大手電機メーカー・東洋電器産業の高見龍平は、米国の半導体開発部門撤退という大任を果たして帰国した。長い海外勤務から戻った彼の目を驚かせたのは、創業者一族とその取り巻きによる恣意と保身の横行。入社同期で一族に連なる人事本部長へ直言するが、それが仇となる。高見は、工場閉鎖という過酷なリストラ業務を命じられてしまった。
  • 技巧的生活
    -
    恋に酔う少女であった葉子は、酒場に勤めてゆみ子と名を変えた時から変貌しはじめた。男を商品として、あたかも無機物であるかのごとく見ようとする酒場の女たちの、言わば技巧的な生き方。――自分もそれに徹しようとするのだが、どうしてもロマンティックな感情を捨てきれない、ゆみ子の眼を通して、酒場の女たちのさまざまな生態、微妙な心理、孤独な姿を見事に活写した長編。
  • 黙阿彌オペラ
    4.0
    江戸も末の師走。狂言作者の河竹新七は、我が身を嘆き入水を試みるが果たせず、柳橋のそば屋で不遇を託つ仲間たちと偶然出会う。意気投合した五人は、捨て子のおせんを育てるため、株仲間を始める――。やがて御一新。文明開化に五人の命運が変転する。株仲間は国立銀行に、おせんはオペラ歌手に、新七は新作狂言で一世を風靡する……。時代に翻弄される黙阿彌と仲間たちを描く評伝劇。
  • 自家製 文章読本
    4.1
    喋り慣れた日本語も、書くとなると話が違う。文章を上手に書くことができたら……。だが、「話すように書け」と人は説くけれど、「話すように書け」ばいい文章が書けるのか。いや、そんな単純なものじゃない。文章術の極意は奈辺にありや。文学史にのこる名作から現代の広告文までを縦横無尽に駆使して、従来の文章読本の常識を覆す井上ひさし式文章作法。
  • イーハトーボの劇列車
    5.0
    父との深刻な対立、妹への運命的な愛、信仰と農民運動、エスペラントと詩、そして科学と童話……。短い生涯を懸命に生きた岩手花巻の天才・宮沢賢治の半生。近代日本の夢と苦悩、愛と絶望を乗せ夜汽車は理想郷目指してひた走る――。長年にわたる熱い思いをこめ、爆笑と感動の中に新たな賢治像を描き出した、戯曲文学の傑作。架空インタヴュー「賢治と啄木に聞く」を併せて収録する。
  • 浅草鳥越あずま床
    -
    下町浅草鳥越に、生れ育って六十年、幼なじみの六人の、いずれ劣らぬ老悪童、寄ればたちまち持ち上がる、思いもかけぬ珍事件。色と欲には目もくらみ、甘い話に乗せられて、いつも騙されコケにされ、それでも懲りないくじけない。恥も喜びも分ちあい、清く正しく生きて……いるかどうかは知らないが、情あふれるこの男たち、笑ってやって下さい、しめて八編連作滑稽譚。
  • 道元の冒険
    -
    お互いの夢の中の存在である禁欲の仏教者道元と現代の色情狂患者。夢の二重構造をみごとに劇化しつつ、日本の精神風土を痛烈に笑いとばした表題作。人間に頼るよりも自由気ままに生きようと放浪する野良猫たちが、自分たちの楽園を築くまでとその行きつくさきを描く『十一ぴきのネコ』――ことばのもつ生命力を十二分に駆使して、日本語に新しい響きを甦らせた抱腹絶倒の喜劇2編。
  • 贋食物誌
    -
    鮨屋でトロをたくさん食べるのはなぜその店に気の毒であるのか、別府温泉の城下がれいがいかに美味であるか、落花生と南京豆とピーナッツは同じものか異なるものか、等々。たべものを話の枕に、男女の問題、少年期の回想、交友、お酒、セックス、ギャンブルその他、豊富な人生経験を自在に語る洒脱なエッセイ。
  • しみじみ日本・乃木大将
    -
    連隊旗を奪われた若き日の事件から、明治天皇のあとを追って殉死するまで、英雄伝説はいかにして作られたか……。乃木大将の愛馬たちの脚から眺めた滑稽なる近代日本とは? 辛辣なパロディの礫で迫る軍神一代記「しみじみ日本・乃木大将」(読売文学賞受賞)に、若旦那とたいこもちが、流離の悲運のなかで繰りひろげられる爆笑みちのく道中記「たいこどんどん」を併録する傑作戯曲集。
  • 表裏源内蛙合戦
    -
    迸る才知と野心を、時代の制約の中で徒らに空転させる江戸の一大奇人平賀源内の夢と挫折の生涯を、色と欲の渦巻く風俗の中に浮び上らせる表題作。ストリッパーの半生記に仕立てた吃音治療劇に仮託して、現代日本の社会と精神を徹頭徹尾、洒落のめした『日本人のへそ』。洒落に地口に語呂合せ、言葉遊びの爆撃で、笑いのうちに時代と人間の核心を衝く井上戯曲の原点を示す二大喜劇集。
  • 美少女
    -
    星と月の刺青をもつという混血の美少女・三津子が突然失踪した。彼女の行方を追う放送作家の城田祐一は、手掛りを求めて近づいた女たちの太腿に、何故かみな、同じ女王蜂の刺青があるのを見た。彼はこの不可解な刺青の謎を探りはじめるが……。都会的センスで洗練された軽妙洒脱な文体と、ミステリアスな手法で、複雑にもつれあう人間関係と、屈折した愛の心理を解きあかす長編。
  • 私家版 日本語文法
    4.2
    文部省も国語の先生も真っ青!あの退屈だった文法がこんなに興味津々たるものだったとは。もはや教科書ではつかみきれない日本語の多様なる現実がここにある。一家に一冊話題は無限。古今の文学作品は言うに及ばず、法律文書、恋文、歌謡曲、新聞広告、野球場の野次まで、豊富かつ意表を突く実例から爆笑と驚愕のうちに日本語の豊かな魅力を知らされる空前絶後の言葉の教室。
  • 偽原始人
    4.5
    塾も家庭教師もクソ喰らえ。教育ママの横暴には、もう我慢できない! 大好きな容子先生が、鬼婆どもに追いつめられて自殺をはかったと知るや、小学生三人組は遂に反乱を起した。暗殺計画、家出、誘拐、トム・ソーヤーも顔まけの奇想天外な造反あの手この手。だが、その行末や如何に……? 現代社会の虚飾を剥ぎとり、鈍感な大人たちを慄えあがらせるスリリングな長編冒険小説。
  • 雨

    -
    「行方不明の旦那様」にうり二つと、羽前国平畠藩の紅花問屋の当主にまつり上げられた金物拾いの浮浪者徳。莫大な財産と美貌の新妻を目のあたりにして、本物の当主になりおおすべく、色と欲との二股かけた必死のお芝居の始まり。東北弁もマスターし、邪魔者は消して、大願成就と思いきや……。根なし草の主人公を襲うどんでん返しの運命。
  • 吉里吉里人(上)
    3.8
    ある六月上旬の早朝、上野発青森行急行「十和田3号」を一ノ関近くの赤壁で緊急停車させた男たちがいた。「あんだ旅券ば持って居だが」。実にこの日午前六時、東北の一寒村吉里吉里国は突如日本からの分離独立を宣言したのだった。政治に、経済に、農業に医学に言語に……大国日本のかかえる問題を鮮やかに撃つおかしくも感動的な新国家。日本SF大賞、読売文学賞受賞作。
  • 赤穂浪士(上)
    -
    画期的な解釈と設定で、忠臣蔵小説の最高峰と讃えられ続ける名作。上巻では、元禄太平の時勢に勃発した浅野内匠頭の刃傷事件から、仇討ちに怯える上杉・吉良側の困惑、茶屋遊びにふける内蔵助の境地が、人情の機微に踏み込む文体で、時代相のひろやかな展望のもとに描き上げられる。虚無的な浪人堀田隼人、怪盗蜘蛛の陣十郎、謎の女お仙らの暗躍がからみ、物語は佳境へと突き進む。
  • つねならぬ話
    3.6
    海の下の、奥の奥で眠っている神の夢。大地をうごめき、すべてを食い尽くす不快なブガン。アステカの怪しげな薬草に酔って義経がみる昔日の幻。満月の夜にとらえた人魚を食べてしまった男たちのゆくえ――。天地の創造、人類の誕生などを語りつがれてきた物語が、いま奇抜な着想で生れかわる。あなたを空想の小宇宙へ誘う、幻想的で奇妙な味わいの52編のワンダーランド。
  • これからの出来事
    3.5
    悪夢だと思いたい、信じられないような出来事。特殊な能力をもった青年の巧妙なビジネス。絶体絶命の危機から目覚めさせてくれる救いの声。満開の桜の季節に出会った秘密好きの美しい女――想像もつかないことが現実となってしまう未来社会を、あなたものぞいてみませんか? 技術と文明がもたらす21世紀社会のゆがみを見通して、痛烈な風刺で描きだしたショートショート21編。
  • どんぐり民話館
    3.5
    引き抜かれたカカシのあとに生えた草の葉っぱ、雲母(うんも)のようにキラキラする竜のウロコ、字の書かれた小さな石ころ――そんな奇妙なものばかりがあるというどんぐり民話館。そのどんぐり民話館を探しに、都会から一人の青年がやってきたが……。いつまでも語りつがれる民話のような味わいで、さまざまな人生の喜怒哀楽を描いた31編。ショートショート1001編を達成した記念の作品集。
  • 禁猟区
    3.5
    ホストにいれあげている中年女・若山直子の資金源は、ホストクラブで借金がかさみ、身動きのとれなくなった少女たちだった。経営者を脅して得た顧客情報から、未成年者の親に当たり、「解決してやる」とカネを要求する。直子の職業は、警察官だった──。犯罪に手を染めた警察官を捜査する組織、警視庁警務部人事一課調査二係。女性監察官沼尻いくみの活躍を描く傑作警察小説四編。
  • オー!ファーザー
    4.0
    父親が四人いる!? 高校生の由紀夫を守る四銃士は、ギャンブル好きに女好き、博学卓識、スポーツ万能。個性溢れる父×4に囲まれ、息子が遭遇するは、事件、事件、事件──。知事選挙、不登校の野球部員、盗まれた鞄と心中の遺体。多声的な会話、思想、行動が一つの像を結ぶとき、思いもよらぬ物語が、あなたの眼前に姿を現す。伊坂ワールド第一期を締め括る、面白さ400%の長篇小説。
  • 巣立ち―お鳥見女房―
    4.6
    嫡男久太郎の婚姻の日が近づいていた。相手は、珠世の夫伴之助に苛酷な陰働きを命じた前老中水野忠邦に連なる家の娘、鷹姫さま。祝言の日までの心労、婚礼の場での思わぬ騒動、そして次男久之助も人生の岐路を迎えて──。家族が増えた矢島家では、喜びも増え、苦労も増える。姑となった珠世に安寧の日々は訪れるのだろうか。人情と機智にホロリとさせられる、好評シリーズ第五弾。
  • 狐狸の恋―お鳥見女房―
    4.0
    夫伴之助が任務を終えて家に帰り、矢島家には平穏が戻りかけていた。お鳥見役に任命された長男久太郎には縁談が持ち上がり、次男の久之助にも想い人が……その成長は頼もしいが、久太郎の相手は一家の敵・老中水野忠邦に連なる家の娘、久之助の見初めた娘にも家がらみの事情があった――子らそれぞれの幸せを願って温かい珠世の笑顔が、家族の絆を支える好評シリーズ、第4弾。
  • ブンとフン
    3.7
    「ブンとは何者か。ブンとは時間をこえ、空間をこえ、神出鬼没、やること奇抜、なすこと抜群、なにひとつ不可能はなく……」フン先生が書いた小説の主人公、四次元の大泥棒ブンが小説から飛び出した! たちまち全世界に、奇怪なしかしどこかユーモラスな事件が……。あらゆる権威や常識に挑戦する奔放な空想奇想が生む痛烈な諷刺と哄笑の渦。現代戯作の旗手、井上ひさしの処女作。
  • 泣き虫なまいき石川啄木
    -
    東京・本郷の床屋の二階に間借りをし、貧窮と病気に苦悶する石川啄木。唯一の慰みに創作を続ける啄木を、「実人生の白兵戦の真っ只中」へと追いやる生きる苦しみの数々――。妻と母の確執、禅僧気取りの父、妻の家出と浮気の疑い、親友金田一との訣別……。人生の修羅場で呻吟する啄木の凄絶な晩年を、笑いと感動溢れる戯曲に昇華した表題作の他、「日の浦姫物語」を収録した戯曲集。
  • 父と暮せば
    4.4
    「うちはしあわせになってはいけんのじゃ」愛する者たちを原爆で失った美津江は、一人だけ生き残った負い目から、恋のときめきからも身を引こうとする。そんな娘を思いやるあまり「恋の応援団長」をかってでて励ます父・竹造は、実はもはやこの世の人ではない――。「わしの分まで生きてちょんだいよォー」父の願いが、ついに底なしの絶望から娘をよみがえらせる、魂の再生の物語。
  • 日本亭主図鑑
    -
    亭主図鑑といいながら、女性のことしか書いてないのは、詐術か奇略か謎々か……? 機知縦横の井上ひさしが、男が一生連れ添わねばならぬ女という不気味な同志へ贈る痛快痛恨のメッセージ。女性の生態について怒り心頭に発し、ありとあらゆる口舌筆法を使って、亭主の置かれている悲劇的状況を明らかにする。大笑いして読むか、神妙に自己反省するかは、読み手のあなた次第!
  • 四捨五入殺人事件
    -
    講演会をひきうけたのはよかったが、つれていかれたのはテレビもない山の中の温泉旅館、しかも折からの大雨で村に一つしかない橋が流された。陸の孤島で身動きできない二人の作家の前に突然起こる殺人事件。殺された旅館の女主人は、昔苛斂誅求(かれんちゅうきゅう)をほしいままにした領主の末裔だった。事件の背後には、何世代にもわたる怨念が……。推理小説嫌いも必読の「文庫封切り版ミステリー」
  • 井上ひさしの日本語相談
    3.6
    日頃何気なく使っていても意外に知らないことばかり。日本語にまつわる珍問・奇問・難問に言葉の達人がお答えします。ニホンとニッポン、どちらが正しい? 形容動詞はなぜ冷遇されるの? 当て字の歴史は? 日本製の漢字(国字)の数は? 日本語の音はいくつ? あらゆる文献を渉猟し国語学者も顔負けの博覧強記ぶりを発揮、著者一流のユーモアも駆使した日本語読本の決定版登場。
  • 藪原検校
    5.0
    東北の片田舎に生まれた盲人が、根深い差別の中で晴眼者に伍して生きて行こうとした時、彼にとっての武器は何だったか。殺人、脅し、強盗、強姦、数々の悪事を重ねて盲人にとっての最高の権力の座、検校位に登りながら、ついに三段斬りの極刑に処せられた杉の市=二代目藪原検校の非道の生涯を深い慈しみを込めて描く傑作戯曲。ほかに新作文楽「金壺親父恋達引」を収録。
  • 珍訳聖書
    -
    花の浅草ドッグ座の犬芝居、人気ストリッパーのマリアの発作は何と狂犬病。弟の刑事犬も、医学博士犬も真っ青で感染経路の大捜査が始まった。ところが実はこの芝居、南方帰還兵が仕組んだ恐怖の復讐劇だったのでありました。と思ったら、またまた逆転、実は……。エロと笑いと風刺満載の逆転につぐ大逆転劇。この世の真実はどこにある。浅草の救世主はどこにいる。
  • どうしてもコメの話
    -
    日本のコメが危ない。押し寄せる関税化・自由化の波に、現実になった大凶作、緊急輸入――。いまこそ日本のコメや農村の重要性を認識し、地球に優しい水田を守っていくときである。一粒のコメをつぶさに見つめ、児孫のために美田を残す道を探る。コメをめぐるあらゆる迷信を覆し、日本の進むべき新たな指針を示す。
  • 太鼓たたいて笛ふいて
    4.4
    戦前、中国や南方の戦線に従軍し、「兵隊さんが好きです」と記して戦意高揚に尽した林芙美子は、敗色濃厚になると「キレイに敗けるしかない」と公言し、たちまち非国民扱いされてしまう。国家が求める「物語」に躍らされた芙美子は、戦後、戦争の実相を知り、戦争に打ちのめされた普通の日本人の悲しみを、ただひたすら書きつづけた――。『放浪記』で知られる作家の後半生をたどる評伝戯曲。
  • 月なきみそらの天坊一座
    -
    終戦直後の荒廃した時代に生きる田舎廻りの奇術師旭日斎天坊と内妻のお浜、摩訶不思議な世界に魅せられて弟子になった孤児浩志。格は三流でも芸は一流、食っていくためには人を騙しもするが、人のためとあれば自慢の術を惜し気もなく役立てる。その日暮しの根なし草でも、そこは商売、機知とトリックで途を拓いていく三人の、心温まる人情とユーモアと笑いと涙の物語。
  • コメの話
    -
    いま、日本のコメが危ない。水田が危ない。コメづくりは工業じゃない。コメの関税化・自由化に道を開くと、われわれの生活は根本から崩れて、日本の国土も危うくなる。ひと粒のコメを通して、日本と地球を丹念に考察し、世の多数意見がどこでどう間違っているかを懇切に指摘。ではどうすれば良いか、将来への福音を説く。
  • 新釈遠野物語
    4.2
    東京の或る交響楽団の主席トランペット奏者だったという犬伏太吉老人は、現在、岩手県は遠野山中の岩屋に住まっており、入学したばかりの大学を休学して、遠野近在の国立療養所でアルバイトをしている“ぼく”に、腹の皮がよじれるほど奇天烈な話を語ってきかせた……。“遠野”に限りない愛着を寄せる鬼才が、柳田国男の名著『遠野物語』の世界に挑戦する、現代の怪異譚9話。
  • 腹鼓記
    -
    天保八年、阿波徳島の奉行・浜島庄兵衛が染物屋大和屋の娘お美代を見染め、妾にしたいと無理難題を言ってきた。大和屋に命を助けられた狸の一家が恩返しに窮地を救うが、意外や意外、事態はエスカレートして狐族まで巻き込む化かし合いが勃発する。人と狸の恋、狸と狐の毛球試合、狸大学の化け学講義、狸対狐の屋島壇ノ浦の合戦など、珍談綺譚で展開する奇想天外大爆笑痛快長編。
  • 國語元年
    -
    明治七年、文部省官吏南郷清之輔は「全国統一話し言葉」の制定を命じられた。織田信長や太閤秀吉の天下統一にも比すべき大事業! しかし彼の家では家族、奉公人など十の方言が入り乱れて大混乱……。戯曲版・井上ひさし日本語連続講座。
  • 一週間
    4.2
    スパイMの奸計により逮捕され共産党から転向した小松修吉は、Mを追って満洲に渡り、終戦後、捕虜となる。昭和21年早春。ハバロフスクの日本新聞社に移送された修吉は、脱走に失敗した軍医の手記を書くよう命じられた。面談した軍医は、レーニンの裏切と革命の堕落を明かす手紙を彼に託した。修吉はこれを切り札にしてたった一人の反乱を始める……。著者の集大成。遺作にして最高傑作。
  • ドン松五郎の生活
    -
    “おれたち犬が仕合せになるには、まず人間が仕合せにならなくてはならぬ”。生れも育ちも葛飾江戸川べり、小説家松沢先生の飼犬ドン松五郎は、仲間と語らって、世直しに立ち上がった。彼らがまき起す珍妙無類な事件の数々……。革命家も神様も手こずった人間の強欲をとことんやっつけ、機知と諷刺で人間社会を翻弄する――漱石先生も脱帽の快作、井上ひさし版「吾輩は犬である」。
  • ありふれた手法
    3.8
    気が弱く、口べたで、ぱっとしない中年の男。ひとりバーで飲んでいた、この男に声をかけてきたのは、アワン開発サービスというよろず相談所の青年だった。この青年が男に提案した、かくされた能力を引き出すための計画。それはよくある、ありふれた手法のものだったが……。ユニークな発想が縦横無尽にかけめぐる、さわやかにして強烈なパンチのショートショート30編を収録。
  • 凶夢など 30
    3.7
    都会からはなれた小さな入江で出会った老人と新婚の夫婦。その夜、老人が見たのは、新婚の二人が殺しあう夢だった。一年後、老人はまた同じ夢を見た。不思議な夢を気にした老人は、名産品を二人に送って様子をみる。礼状が届き、何事もなかったかと、安心する老人。この繰り返しが、何年も続いたのだが……。夢想と幻想の交錯する不思議な世界にあなたを誘う夢のプリズム30編。
  • 生きものたちの部屋
    4.0
    締切の夜、書斎は険しく暗い。しかし一人ではない。開け放った窓に響くトラックのエンジン音や、本棚におさめたドイツ製のクレヨン……。何気ない物事がいのちを帯びて、わたしのペンを鼓舞し、触発する。わたしは今夜も、彼らに囲まれてペンを走らせる。――その書斎は、後に阪神大震災によって壊滅した。追憶の思い新たに、震災時の日記を併録する。
  • 道頓堀川
    4.0
    1巻484円 (税込)
    両親を亡くした大学生の邦彦は、生活の糧を求めて道頓堀の喫茶店に住み込んだ。邦彦に優しい目を向ける店主の武内は、かつて玉突きに命をかけ、妻に去られた無頼の過去をもっていた。――夜は華やかなネオンの光に染まり、昼は街の汚濁を川面に浮かべて流れる道頓堀川。その歓楽の街に生きる男と女たちの人情の機微、秘めた情熱と屈折した思いを、青年の真率な視線でとらえた秀作。
  • 螢川・泥の河
    4.2
    1巻506円 (税込)
    土佐堀川に浮かんだ船に母、姉と暮らす不思議な少年喜一と小二の信雄の短い交流を描いて感動を呼んだ太宰治賞受賞の傑作「泥の河」。北陸富山の春から夏への季節の移ろいの中に中三の竜夫の、父の死と淡い初恋を螢の大群の美しい輝きの中に描いた芥川賞受賞の名編「螢川」。
  • 五千回の生死
    4.2
    1巻539円 (税込)
    「一日に五千回ぐらい、死にとうなったり、生きとうなったりする」男との束の間の奇妙な友情(表題作)。トマトを欲しながら死んでいった労務者から預った、一通の手紙の行末(「トマトの話」)。癌と知りながら、毎夜寝る前に眉墨を塗る母親の矜持(「眉墨」)。他に「力」「紫頭巾」「バケツの底」等々、日々の現実の背後から、記憶の深みから、生命(いのち)の糸を紡ぎだす、名手宮本輝の犀利な「九つの物語(ナイン・ストーリーズ)」。
  • 夢見通りの人々
    3.7
    1巻539円 (税込)
    その名前とはうらはらに、夢見通りの住人たちは、ひと癖もふた癖もある。ホモと噂されているカメラ屋の若い主人。美男のバーテンしか雇わないスナックのママ。性欲を持て余している肉屋の兄弟……。そんな彼らに詩人志望の春太と彼が思いを寄せる美容師の光子を配し、めいめいの秘められた情熱と、彼らがふと垣間見せる愛と孤独の表情を描いて忘れがたい印象を残すオムニバス長編。
  • 幻の光
    3.9
    1巻605円 (税込)
    人は精がのうなると、死にとうなるもんじゃけ――祖母が、そして次に前夫が何故か突然、生への執着を捨てて闇の国へと去っていった悲しい記憶を胸奥に秘めたゆみ子。奥能登の板前の後妻として平穏な日々を過す成熟した女の情念の妖しさと、幸せと不幸せの狭間を生きてゆかねばならぬ人間の危うさとを描いた表題作のほか3編を収録。芥川賞受賞作「螢川」の著者会心の作品集。
  • 血の騒ぎを聴け
    3.8
    これだけは書いておきたかった、人の情、魂を照らす光景――。芥川賞受賞直後に患った結核。震災に遭った、生れ故郷神戸への思い。中国、東欧への旅。井上靖、中上健次ら同時代の作家たちのこと。そして芥川賞受賞作『螢川』から『地の星』までの創作秘話。デビュー間もない頃から二十年間書き継がれた、宮本文学の過去、現在、未来を一気に俯瞰する、ファン必読の傑作エッセー集。
  • 私たちが好きだったこと
    3.8
    1巻671円 (税込)
    工業デザイナーを目ざす私、昆虫に魅入られた写真家のロバ、不安神経症を乗り越え、医者を志す愛子、美容師として活躍する曜子。偶然一つのマンションで暮らすことになった四人は、共に夢を語り、励ましあい、二組の愛が生まれる。しかし、互いの幸せを願う優しい心根が苦しさの種をまき、エゴを捨てて得た究極の愛が貌を変えていく……。無償の青春を描く長編小説。
  • 優駿(上)
    4.3
    1~2巻693~737円 (税込)
    生れる仔馬が牡馬でありますように。風の申し子のように速く、嵐みたいに烈しく、名馬の天命をたずさえて生れますように……。若者の祈りに応(こた)えて、北海道の小さな牧場に、一頭のサラブレッドが誕生した。オラシオン(祈り)と名づけられた仔馬は、緑と光の原野のなかで育ち、順調に競走馬への道を歩みはじめるが、それと共に、登場人物ひとりひとりの宿命的な劇(ドラマ)が、幕を開けた――。
  • 錦繍
    4.4
    1巻693円 (税込)
    「前略 蔵王のダリア園から、ドッコ沼へ登るゴンドラ・リフトの中で、まさかあなたと再会するなんて、本当に想像すら出来ないことでした」運命的な事件ゆえ愛しながらも離婚した二人が、紅葉に染まる蔵王で十年の歳月を隔て再会した。そして、女は男に宛てて一通の手紙を書き綴る――。往復書簡が、それぞれの孤独を生きてきた男女の過去を埋め織りなす、愛と再生のロマン。
  • ビタミンF
    3.9
    1巻781円 (税込)
    38歳、いつの間にか「昔」や「若い頃」といった言葉に抵抗感がなくなった。40歳、中学一年生の息子としっくりいかない。妻の入院中、どう過ごせばいいのやら。36歳、「離婚してもいいけど」、妻が最近そう呟いた……。一時の輝きを失い、人生の“中途半端”な時期に差し掛かった人たちに贈るエール。「また、がんばってみるか――」、心の内で、こっそり呟きたくなる短編七編。直木賞受賞作。
  • 青い鳥
    4.5
    1巻825円 (税込)
    村内先生は、中学の非常勤講師。国語の先生なのに、言葉がつっかえてうまく話せない。でも先生には、授業よりももっと、大事な仕事があるんだ。いじめの加害者になってしまった生徒、父親の自殺に苦しむ生徒、気持ちを伝えられずに抱え込む生徒、家庭を知らずに育った生徒──後悔、責任、そして希望。ひとりぼっちの心にそっと寄り添い、本当にたいせつなことは何かを教えてくれる物語。
  • 月光の東
    3.6
    1巻825円 (税込)
    「月光の東まで追いかけて」。出張先のカラチで自殺を遂げた友人の妻の来訪を機に、男の脳裏に、謎の言葉を残して消えた初恋の女性の記憶が甦る。その名前は塔屋米花。彼女の足跡を辿り始めた男が見たのは、凛冽な一人の女性の半生と、彼女を愛した幾人もの男たちの姿だった。美貌を武器に、極貧と疎外からの脱出を図った女を通し、人間の哀しさ、そして強さを描く傑作長編小説。
  • きみの友だち
    4.3
    1巻880円 (税込)
    わたしは「みんな」を信じない、だからあんたと一緒にいる――。足の不自由な恵美ちゃんと病気がちな由香ちゃんは、ある事件がきっかけでクラスのだれとも付き合わなくなった。学校の人気者、ブンちゃんは、デキる転校生、モトくんのことが何となく面白くない……。優等生にひねた奴。弱虫に八方美人。それぞれの物語がちりばめられた、「友だち」のほんとうの意味をさがす連作長編。
  • ドナウの旅人(上)
    3.8
    1~2巻935円 (税込)
    夫を捨てて、突如出奔した母・絹子。「ドナウ河に沿って旅をしたい」という母からの手紙を受け取った麻沙子は、かつて五年の歳月を過ごした西ドイツへと飛ぶ。その思い出の地で、彼女は母が若い男と一緒であることを知った。再会したドイツの青年・シギィと共に、麻沙子は二人を追うのだが……。東西ヨーロッパを横切るドナウの流れに沿って、母と娘それぞれの愛と再生の旅が始まる。
  • はい、泳げません
    3.8
    超がつく水嫌い。小学生の時にプールで溺れて救急車を呼ばれた。大人になっても、海・湖・川などたくさんの水を見るだけで足がすくむ。なのに、なぜか水泳教室に通う羽目に。悩みながら、愚痴りながら、「泳げる」と「泳げない」の間を漂った2年間。混乱に次ぐ混乱、抱腹絶倒の記録。史上初、〈泳げない人〉が書いた水泳読本。泳げるようになって、人生変りましたか、ヒデミネさん?
  • 安全のカード
    3.8
    1巻693円 (税込)
    休日に青年の部屋におとずれたセールスマン。その男がカバンからとりだしたのは、名刺くらいの大きさの金属製のカードだった。なんとこのカード、絶対的な安全を保障するという不思議なカードだった……。平凡に過ぎてゆく日々。何となくつまらない毎日。そんな時、ショートショートの扉を開いてみませんか。表題作をはじめ、悪夢とロマンの交錯する奇妙な味の16の物語を収録。
  • ご依頼の件
    3.9
    1巻825円 (税込)
    若いころの事件をたねに、金をゆすられているあなた! 殺してもあきたらないほど、憎らしい人がいるきみ! おもいきって、“殺し”はいかがですか? ご依頼の件は必ずやりとげ、絶対安全。あなたには決してご迷惑をおかけいたしません。常識的で、ありふれた世界に安住している人々の意識を痛撃し、人間の心の奥にひそむ願望をユーモアと諷刺で描いたショートショート40編。
  • 善人長屋
    3.9
    善い人ばかりが住むと評判の長屋に、ひょんなことから錠前職人の加助が住み始めた。実は長屋の住人は、裏稼業を持つ“悪党”たち。差配の儀右衛門は盗品を捌く窩主買(けいずか)い。髪結い床の半造は情報屋(ねたもと)。唐吉、文吉兄弟は美人局(つつもたせ)。根っからの善人で人助けが生き甲斐の加助が面倒を持ち込むたびに、悪党たちは裏稼業の凄腕を活かし、しぶしぶ事の解決に手を貸すが……。人情時代小説の傑作!
  • 月と10セント―マンボウ赤毛布米国旅行記―
    -
    1巻429円 (税込)
    アポロ11号打上げの取材に渡米することになったどくとるマンボウは、《月乞食》と称し、1枚1ドルで自筆の短冊を売ることを思いついた。さて、ニューヨークに着いたマンボウ、打上げ基地での本番の前にリハーサルをと、和服に白足袋のいでたちで繁華街のどまん中に陣取ったのだが……。月の狂気に憑かれたマンボウが二度の米国遊行の体験をもとに描く〈赤毛布(ゲット)アメリカ漫遊記〉。
  • マンボウおもちゃ箱
    -
    人の顔を片っ端から忘れてしまう性癖が引き起す悲喜劇『ひと忘れ』、賭博場での猛烈奮戦記『ギャンブルのこと』、処女出版の思い出『初めての本』、体力も気力も十分の老母に圧倒された海外旅行同行記『母の味』など――爽やかなエスプリのあふれるエッセー51編と、『陸魚』『買物』の二つの物語。どくとるマンボウが、ある時はユーモラスに、ある時はしみじみと語りかける愉しい本。
  • 南太平洋ひるね旅
    -
    1巻429円 (税込)
    南海――この言葉の中にある懐かしい響きといささかの幻想を追って、著者はふらりとジェット機に乗り込んで夜の東京を脱出した。ハワイを振り出しに、タヒチ、フィジー、ニューカレドニア、東西サモアと、風を吸い光を浴びて、訪ね歩く小さな島々。子供らと遊び、素朴なおとなと語らう、アオレレ(飛ぶ雲)のように爽やかで、ひっそりとしたどくとるマンボウの気ままな旅行記。
  • マンボウぼうえんきょう
    -
    多彩な旅行記やノイローゼ・ルポなどからなる「おりごんメガネの巻」、虫やスポーツ、趣味、おしゃれ、受験、男の生き方など深い思い出をこめて心に訴えかける「えうけえメガネの巻」、そして、自ら“唯一のエロ小説”と称する『柳の下』などの小説をおさめた「もりやメガネの巻」――遠き物もひたぶるに直視し、近き物もじろりと斜視する〈間諜〉北杜夫のとっておきのエッセー43編に短編4編。
  • 母の影
    3.5
    1巻484円 (税込)
    青山にある大病院の娘に生れ、斎藤茂吉と結婚した輝子。お嬢様として育ち気丈で破天荒な性格の彼女と、癇癪もちでワンマンな茂吉が、夫婦として折り合うはずもない。家にはいつも嵐が吹き荒れ、四人の子らは右往左往。そんな斎藤家の次男である著者が幼少時代の記憶を辿り、文学にめざめた頃を反芻しつつ、母への愛惜、父への尊敬、そして二人の死を綴る。追慕溢れる自伝的小説。
  • 天井裏の子供たち
    -
    1巻484円 (税込)
    忍者に憧れる少年たちが、服部半蔵と名乗る首領以下、おんぼろアパートの天井裏につくりあげた夢の空間と、その消滅を描く表題作。他に、精神病院内での患者たちの珍妙な映画制作の物語『もぐら』、静かな無為の時間に包まれているようにみえる老女の、心の奥に息づく過去の幻影をあざやかに描き出した『静謐』など、重い現実と飛翔する夢のあわいに生れた作品全5編を収める。
  • へそのない本
    -
    〈へそのない本〉の身体各部は次のとおりです。――1 野の花にふれて幼い頃の思い出や終戦直後のひもじかった青春の日々を語る花物語。 2 オホーツクの氷海をゆく航海日記などの紀行文。 3 女性の愛らしさと意地悪さを皮肉とユーモアで綴るエッセイ。 4 「宵」「童女」「うつろの中」「意地悪爺さん」等の空想の愉しさあるれる短い10の物語。――以上、郷愁と幻想にみちた一巻。
  • あくびノオト
    -
    1巻506円 (税込)
    夢想の世界に遊ぶ主人公の、現実とのくいちがいに生ずる悲哀をユーモラスに描いて苦い笑いを誘う『第三惑星ホラ株式会社』『少年と狼』『活動写真』等の物語。他に、なまけものやホラ吹きへの共感、沖縄紀行、医学生時代の思い出や精神科医としての体験、子供マンガへの愛着と無理解な大人への抗議、等々、あわただしい現代社会への批評の眼を、爽やかな笑いに包んだエッセイを収める。
  • 怪盗ジバコの復活
    -
    1巻517円 (税込)
    あの心優しい大怪盗ジバコが帰ってきた。謎多き男、年齢不詳、国籍不明etc. その正体を誰も知らない。南海のヤシの実10個から大国の金の延棒、宝石の数々を難なく頂戴する。だがジバコの変装をいとも簡単に見破るひとがいる。その名はジバコの愛しい恋人ルネ嬢。今や巨大組織を解散したジバコが彼女のために世界の名探偵=コロンボ、ポアロ、ホームズらを相手に奇抜な挑戦をする。
  • 輝ける碧き空の下で 第一部(上)
    -
    1~4巻517~572円 (税込)
    明治四十一年、第一回ブラジル移民七百九十一名を乗せ笠戸丸がサントスに入港した。夢と希望に満ちた彼らを待ち受けていたのは、苛酷な自然と厳しい労働だった――。大農場で農奴にひとしい生活を送る井原・山口家の人々。色々な職業を転々とする香山六郎。農場主に支配されない日本人入植地を夢みる平野運平。紺碧の空の下、苦闘する初期移民の姿を描いた構想十余年の大作第一部。
  • 白きたおやかな峰
    -
    1巻517円 (税込)
    想像を絶する巨大な山塊、猛々しくも優雅にそそり立つ大伽藍――白雪におおわれた未踏の高峰ディラン。長い準備の末に憧れのヒマラヤにやって来た10人の日本人たちは、病気や悪天候などさまざまな障害を克服しながら、冷酷に人間を拒否しつづける頂上に挑む……。ドクターとして遠征隊に参加した著者が、大自然の魅惑と愛すべき山男たちの素顔を描く書き下ろし長編。
  • 奇病連盟
    -
    1巻517円 (税込)
    歩き始めると4歩目ごとに、ピョコリピョコリとのびあがる奇癖の主・ピョコリ氏こと山高武平。37歳にもなって独身、うるさく古風な母親と二人暮しのさえないサラリーマンの彼が「奇病連盟」にスカウトされた。次々と彼を襲う奇妙きてれつな体験と遅すぎるロマンスを、著者独特のユーモアいっぱいに描く。読者はモタモタした武平を笑う、と同時に、なぜか共感と愛着をも禁じえない。
  • 高みの見物
    -
    海外放浪癖があり、“高級”ゴキブリを自称するわたしは、南洋漁業調査船に潜伏しているうち、なまけ者の船医、目玉医者の奇妙な言動に興味をそそられ、帰国する彼についてゆくことにした。彼の友人でヘチマのような顔をしたケチの食いしん坊、SF四文作家氏の家庭にも触手を伸ばしたわたしは、両家を往復しつつ、複雑怪奇な人間世界の“高みの見物”と洒落れこんだ……。
  • マンボウ周遊券
    -
    大海原をたゆたうマンボウのように、時には喧噪の街を離れて、のんびりと旅に出よう――。飛行機に乗れば荷物は消え、汽車に乗れば閉じこめられ、車で走ればエンコする。ヨーロッパ講演旅行(狐狸庵・遠藤周作らと)、ソ連作家同盟の招待旅行(奇態な宇宙人・星新一らと)、マダガスカル旅行(乗物狂・阿川弘之と)など、マンボウとそのおかしな仲間たちの珍談奇談あふれる愉快な旅。
  • 黄いろい船
    -
    1巻539円 (税込)
    長年つとめた会社を解雇された男の沈鬱な心情は、ゆったりと童話じみて大空を浮游する黄いろい飛行船に幼時の夢の幻影をうつし出した――中年の男の心の中に生きる《少年》への愛惜と訣別を描く表題作。ほかに『霧の中の乾いた髪』『こども』など、幼い遊びや反抗期と問題児、初恋と性の目覚めなどを弾力のある観察でとらえ、少年期の微妙な心を鮮やかに描く中短編全5編を収録。
  • 遙かな国 遠い国
    -
    1巻539円 (税込)
    頭は弱いがとびきり素直で力持ちの正太少年が、オンボロ漁船に雇われて、船員たちにからかわれながらも、飯焚き雑役に大奮闘。あげくに船は沈没、凍える海に放り出され、ソ連に抑留されて……北国の空の下、おおらかな恋人たちに眼を見張る。純朴な少年の眼を通して、遠い魂の故郷への憧憬を物語る表題作ほか、初期の珠玉作『三人の小市民』『埃と燈明』『為助叔父』『友情』を収録する。
  • 星のない街路
    -
    1巻550円 (税込)
    湿潤な冷気に覆われ灰色に閉ざされたベルリンを舞台に、東独から脱出したドイツ娘との交情を、詩情ゆたかに描く表題作。濃霧で立ち往生する船の中で主人公の現実と夢が交錯する『河口にて』。他にSF的設定の『人工の星』『不倫』など、全7編。人間とそれを包む世界とに共通する一種異様な不安定性を、さまざまな方法とみずみずしい完成で描出し、その多彩な才能を示す初期短編集。
  • 幽霊―或る幼年と青春の物語―
    4.1
    1巻561円 (税込)
    「人はなぜ追憶を語るのだろうか。どの民族にも心の神話があるように、どの個人にも心の神話があるものだ」昆虫採集に興ずる少年の心をふとよぎる幼い日に去った母親のイメージ、美しい少女に寄せる思慕……過去の希望と不安が、敗戦直後の高校生の胸に甦る。過去を見つめ、隠された幼児期の記憶を求めて深層意識の中に溯っていく。これは「心の神話」であり、魂のフィクションである。

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