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死体処理室の水槽に浮沈する死骸群に託した屈折ある抒情「死者の奢り」、療養所の厚い壁に閉じこめられた脊椎カリエスの少年たちの哀歌「他人の足」、黒人兵と寒村の子供たちとの無残な悲劇「飼育」、傍観者への嫌悪と侮蔑をこめた「人間の羊」など6編を収める。“閉ざされた壁のなかに生きている状態”を論理的な骨格と動的なうねりをもつ文体で描いた、芥川賞受賞当時の輝ける作品集。
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Posted by ブクログ
ノーベル文学賞受賞作家の初期の短編し6作品を収録した一冊です。6作品の中からタイトルとなっている「死者の奢り」と「飼育」を紹介します。 まず「死者の奢り」。 主な登場人物は、「僕」「女子大生」「管理人」で名前は無し。従って、登場人物のパーソナリティや物語性ではなく、彼ら彼女らの言葉や行動に描かれ...続きを読むる心象描写に、著者「大江健三郎」さんの主張が込められているのだと思いました。 「僕」は文学部の学生で、「僕は希望を持っていない。毎日の生活に希望はいらない。子どものとき以外は希望を持って生きたことが無いし、その必要もなかった。」と、はっきり言いきるほど虚無的な思想を持った学生で、目的は分かりませんが、大学医学部の事務室でアルバイトに応募します。地下にある死体処理室の、アルコールで満たされた水槽に保存されている解剖用死体を新しい水槽に移し替える仕事でした。そのアルバイトには「女子学生」も応募していて、彼女は妊娠していて胎児を堕ろす手術費用を稼ぐために応募していたのでした。2人は、この死体処理室に30年間勤めている「管理人」の指示に従って、アルコールと遺体の異臭にまみれながら、アルバイトに従事します。 「僕」はアルコール水槽の中に浮かんでいるたくさんの死体たちを見て、初めは、存在はしていても意識のない「物」あるいは単なる「物体」として考えていましたが、通常死体は火葬によって、「物」としても存在しなくなってしまうのに対して、アルコールの中に浮かぶ死体たちは、死んでも依然として、むしろ死を終わりではなく始まりとして、沈黙したままその存在感を残していることを強く感じ、生きていながらも希望もなく虚無的に毎日を過ごしている自分と、なんら変わらない存在であるように思われ、少しずつ気持ちを変化させているように感じられます。 一方、「女子学生」は、自分のなかの胎児を葬ってしまうための手術費を稼ぐために、死体を処理するという作業の中で、足を滑らせて転倒し自身の身体の異常とともに流産の危機に瀕します。アルコールの水槽に浮かぶ死者たちの憤りとまではいいませんが、新たな命を葬るために死体の処理をするという行動への死者たちからの仕打ちかと、思わず考えてしまいました。 「管理人」は30年間の実務経験で培われた技術を発揮しながら、何の感情もなく惰性的に淡々と作業を進めます。死体を「物」として扱い、何の意思も感情もなく存在しているという点では、死者と同じなのかもしれません。 ところが、医学部教授会での正式な決定により、古い死体は全部火葬し、両方の水槽は清掃することになってしまい、「僕」たちの仕事は徒労に終わってしまうのでした。 「僕」や「女子学生」が、その存在感によって気持ちを動かされた多くの死体が、火葬によりその存在すらも無に帰してしまうことになったわけですが、アルコールの水槽の中で存在し続けてきた死体たちが、無気力に惰性的に生きている自分たちと何も変わらないことに気づき、このままではいけないと考えあらためるところが、この作品のテーマであり、著者大江健三郎の当時の無気力な人間たちに対する訴えだったのだろうか、と思いました。 そして「飼育」。 戦時中のある夏、山奥の村に敵国アメリカ軍の爆撃機が墜落し、生き残った黒人兵が村人に捕らえられます。 捕えられた黒人兵の扱いについて、村では町役場に問い合わせた結果、県の指示が来るまで、この物語の語り手である少年の家の地下倉で「飼う」ことになります。少年の父親の言葉をそのまま表現すると、「あいつらは獣同然だ」、だから「黒人兵を獣のように飼育する」ということになるのですが、現代社会では考えられない、当時の山奥の村に住む人々の感情が露骨に描かれていて、この考え方には不快感しか感じられませんでした。 「飼育」という言葉の通り、村人は黒人兵を非人間的な扱いをしますが、村の子供たちとは次第に人間的な触れ合いを持つようになります。 しかし、黒人兵の移送が決まると、身の危険を感じた黒人兵は、少年を人質にして地下倉に立て篭もります。少年を助けるため村人たちが黒人兵に襲いかかると、少年の父親は、黒人兵の頭上に鉈を振り下ろします。 黒人兵は死に、少年は左手に深い傷を負いますが、この夏の出来事を通じて、少年は、仲が良くなったと思っていた黒人兵に裏切られたことに衝撃を受け、また危うく黒人兵とともに自分も殺されそうになった大人たちの対応に、もはや大人も信用でなくなります。「僕はもう子供ではない」という思いが強くなります。 こんな山奥の村へはやって来ないと思っていた戦争が、突然この村にもやって来て、自分の左手に深い傷を負わせ、唐突な人の死に対しても慣れてしまったと、しみじみ少年が思うというこの小説の最後の描写は、前述の、敵国の黒人兵を「あいつらは獣同然だから、獣のように飼育する」とした村人の考え方と同じく、閉鎖的な山奥の小さな村をも容赦なく巻き込んでいく戦争の理不尽さを描いた作品であると思いました。
『飼育』大江健三郎の短編小説。芥川賞を取った作品です。この小説は文章、構成、筆致と流石の巧みぶり。 23歳の天才。初期作品はみずみずしい。 難点はセンテンスが長い。だが、このことで視点や焦点がぼやけないのが素晴らしい。他の作品にも挑戦してみたい。
閉塞感むきだしで、そのなかにある生身の人間関係。今日明日の生存に無駄なものを削ぎとったギリギリの状態の人間性。反戦のメッセージと偽善者に対する嫌悪感が私達を締め付ける。
初めて大江健三郎を読んだが、三島由紀夫の金閣寺を読んだときの感覚に近いものを感じた。 「人間の羊」と「不意の啞」が特に良かった。両作品とも進駐軍をテーマにしたものだが、どうやってプロットを練ったのだろうか。まさか実体験ではないだろうし... また一人、作品を渉猟したい作家が増えた。
やっぱり大江健三郎はすごかった。 かつて大江氏は、自分にわからない世界について、そのギャップを埋めてまで小説を書こうとは思わないし、自分があえて書く必要性も感じないというようなことを言っていた。 本作に出てくる短編は、児童期が戦時中であった彼だからこそ書けた話であり、学生らしさを失っていない時代だ...続きを読むからこその初々しさに溢れている。 それにしても天才にしか考えつかないようなシチュエーションが設定されている話ばかりである。 こんな設定、どうやって思いついたんだと舌を巻くような作品ばかりである。 一方でアメリカ兵を否定的に描写している場面も多く、アメリカ人は大江氏の作品をどのように読むのだろうとかなり気になったりもした。 大江氏の才能を感じることができる贅沢な一冊であった。
どれも読んでいると、生々しい感覚と気持ち悪い感覚が襲ってくる。 何か凄いことを伝えようとしているのが分かる。 だけど正直、抽象的すぎて政治的なメッセージや思想はあまり伝わってこなかった。 個人的には人間の羊が分かりやすくて好き 被害者にしか分からない葛藤や、被害者を取り巻く人々の気持ちが伝わって...続きを読むきて面白かった
ある日突然貸してくれた本。初めて一緒に働いた日に、私が伊丹十三の話をすると彼は大江健三郎を私に教えてくれた。マニュアルの端に急いでメモをとり、マニュアルに書くのはあんまよくないかってそのあと自分のメモ帳に書き写した。今もそれを使ってる。少し朽ちている。 当時芥川賞を受賞したときの年齢が23歳。それぐ...続きを読むらいの年齢の子たちと今暮らしてる。朝椅子に座って、夜ソファに転がって、同じ空気を吸いながら読んでた。海で読んだら気持ちいいだろうなって港へも連れて行った。読みたがっている女の子がいたけれど、彼女は借りずに帰った。 彼に読んだことを伝えると急に人が死ぬでしょって笑ってた。本を貸してくれたことをどれだけの人に自慢しちゃったかな。初めて読んだ彼の本。
義父の本棚にあったので何気なく手に取ってみた 人間が複数存在する状況において否応なく発生する緊張感や暗黙の了解についての、解像度や描写力がバケモンすぎる…
1950年代後半から1960年代にかけて、戦後の鬱屈とした社会が生々しく描かれている。 実存主義から構造主義に移行していくような、社会規範のあり方が大きく変わろうとしていた時代。 どの短編にも共通するのは、変わりゆく時代に敏感な(何かを期待されている)若者たちが主人公ということだ。 社会正義を押し付...続きを読むけられ、何者かにならなければならないような空気感に抑圧されている学生や、残酷で不寛容な社会で成長せざるを得ない子どもたち。 当時の人たちが外国人をどのように客観していたのか、令和に生きる私は、私たちの主観で、大江健三郎の文体によって、それを生々しく、悲しく体感させられた。
初めて大江健三郎を読んだ。 彼の文章からは、グロテスクとも言えるほどの迫力と緻密な論理表現が共存している感じを受ける。人間の中のドロドロとした感覚をここまで明確に表現できるのかと、鳥肌が立つ。 そして、大江が抱えている問題意識や鬱積がまざまざと伝わってくるストーリー。価値観の転回やコンプレックスを社...続きを読む会に引き起こした戦後に青年期を過ごした大江の描く物語は、平穏な時代をのうのうと過ごす私にとって、得体の知れない獣のように迫ってくるものがあった。
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死者の奢り・飼育
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大江健三郎
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