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世界最初の全身麻酔による乳癌手術に成功し、漢方から蘭医学への過渡期に新時代を開いた紀州の外科医華岡青洲。その不朽の業績の陰には、麻酔剤「通仙散」を完成させるために進んで自らを人体実験に捧げた妻と母とがあった――美談の裏にくりひろげられる、青洲の愛を争う二人の女の激越な葛藤を、封建社会における「家」と女とのつながりの中で浮彫りにした女流文学賞受賞の力作。
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Posted by ブクログ
恐らく中学時代…先輩が書いた読書感想文で本書を知った。 1804年(文化元年)世界初の全身麻酔による乳ガン手術に成功した華岡青洲。その成功の裏には自ら実験台になることを願い出て失明した妻 加恵の内助の功があった。感想文にあったそんなあらすじを読んで、すぐさま「自己犠牲がテーマか…」と気が進まなくなっ...続きを読むた。 理由は単純で、エゴ極まりない10代の頃は誰かのために尽くしたり何かを差し出したりすることに対して、激しい嫌悪感を抱いていたから。何がそのような行動を取らせるのか、まだ理解できていなかったのもある。 そうして自分のエゴを優先していくあまり、本書の存在は記憶に埋もれていったのだった。 そして1年ほど前、知人から本書をレコメンドされてようやく今辿り着いた。 加恵の行動は自己犠牲を表していることに変わりはないが、それ以上のテーマが中で逆巻いていたことに気づいてゆく。 いわゆる「嫁姑問題」。しかも「彼女ら」の場合はページを追うごとに特殊な域に達していき、しまいには「加恵の置かれていた立場を考えると、あの自己犠牲も当然の成り行きだったのかな」とまで思わせる結果となった。 これは感想文を書いた先輩にだって想像してもしきれるものではなかったはず…。 物語の主人公 加恵は元々紀州地侍 妹背家の出だった。 士の娘が何故医家の華岡家に嫁ぐことになったのか。それは必然的なもので、加恵を請いに華岡家当主の妻 於継(おつぎ)が妹背家を訪れた時から全ては動き出していた。 夫(華岡雲平、のちの青洲)が遊学中の際も寂しくならずに済んだのは、小姑たちと協力して家を切り盛りしていたこと、そして何より於継の存在が大きかった。憧れだった於継に迎え入れられたことが加恵の心の支えになっていたのだ。 それがある出来事を境に二人の関係性は暗転してしまう…。この時の加恵の心情を代弁するなら「可愛さ余って憎さ百倍」が妥当だろう。 ありがたいことに今の自分は嫁姑問題で悩むことは一切ないが、加恵が家の一員になろうと試行錯誤する様子は中学時代とは比べ物にならない程よくわかる。 青洲に自分や自分の子供を認識してもらおうと必死になるところだってそう。そのためには於継との腹の探り合いやある種の化かし合いにエネルギーをつぎ込まねばならないが、彼女はいくらでも厭わなかった。 人々の間で加恵と於継は青洲を支える良き妻と母として語り草になっている。冒頭の読書感想文の他に読んだ歴史漫画にも、加恵の献身は美談として描かれていた。でもそれが全てだろうか? 映画『タイタニック』の「女の心は海のように秘密がいっぱいなの」というセリフを思い出す。美談で輝く水面下で本当は何があったのか、それは二人にしか分からないこと。 でもラストのくだりを読んでみると、実は青洲には全てお見通しだったんじゃないか。分かった上で、地球のように海ごと包み込んでいたんじゃないか。そう思えて仕方がないのだ。
高校生のとき以来で読み直したら、とてつもなく面白かった! 世界初、全身麻酔による乳癌手術を成功させた医師とその家族の物語…ときくと何やら高尚で敷居が高そうだが、「バッチバチな嫁姑もの」という普遍的でエンタメ性高いエッセンスをまぶして描くセンスの凄さ! 有吉佐和子さんは「悪女について」も読み返したい!
女という生き物の肚の底にある黒いものを、鏡に映し出すように、ありのまま書き出している。華岡家という特殊な家庭が舞台でありながら、その中で展開される嫁姑関係は、女性なら誰でも共感できる普遍性を持っている。 男をめぐる嫉妬、決して自分から仕掛けていかない消極的な攻撃性、対外的な建前、本音全てをさらけ出せ...続きを読むないもどかしさとそこから生まれる誤解…女であれば、必ず経験したことのあるどろりとした感情が満載。 青洲の前で、加恵と於継が自分を実験台にしろと迫る場面は圧巻。 また、物語中盤まで沈黙を守ってきた青洲の妹が、鋭い指摘をするシーンは、自分もぎくりとしてしまう。 物語最後の一文は、華岡家においてこれだけの存在感を示していた加恵と於継ーすなわち「女」が、結局「家」という制度の影に埋もれてしまうという皮肉を表していると感じた。
物語そのものよりも、史実からこの物語を描き出す有吉佐和子の洞察力と、その本質である「家」と女ってとこに踏み込む明晰さにビビる 頭良すぎるのに圧倒される作品だけど、作品としては、一の糸のほうが良い
華岡青洲(はなおか・せいしゅう)を語るには、まず麻酔の歴史を語らねばならない。欧米ではじめて全身麻酔がおこなわれたのは1840年代。アメリカの歯科医モートンがエーテル麻酔による公開手術を成功させ、それまでは泣きさけぶ患者を押さえつけておこなわれていた外科手術に大きな革命をもたらした。以降、麻酔法は欧...続きを読む米を中心に急速な発展を遂げてきた。 しかしそれに先んじること数十年、独自の手法で全身麻酔を成功させていた日本人外科医がいた。それが華岡青洲である。彼は生薬由来の麻酔薬「通仙散(つうせんさん)」を独力で開発し、全身麻酔下で乳がんの手術を行なった。1804年のことである。あまり知られていない事実だが、記録に残るものとしては、これが世界初の全身麻酔による手術であった。 薬の開発には、人体実験が不可欠である。青洲が通仙散を完成させるにあたって、自ら望んで被験者となった者たちがいた。青洲の母・於継(おつぎ)と妻・加恵である。彼女らの命がけの協力のおかげで、青洲は通仙散を完成することができた。ことに、薬の副作用で失明してまでも青洲に尽くした加恵の献身ぶりは、医者の妻の鑑(かがみ)として後世に語り継がれるほどであった。 …史実はここまでである。しかし有吉佐和子は、この感動的な逸話を、まったく異なる視点から再構築してみせた。なんと、於継と加恵が進んで麻酔の実験台になったのは嫁姑のいがみあいの結果であり、いわば封建的な家制度の犠牲になったというのだ。 青洲をめぐって対立する於継と加恵。水面下で繰り広げられる熾烈なバトルの行きついた先は「青洲のために、どちらがより多くの自己犠牲を払えるか」だ。女の意地の張り合いが麻酔薬の飲み比べに発展してゆくさまは、狂気以外の何ものでもない。その対立を結果的には利用して、青洲は妻に薬を飲ませ、自分の目的を達成する。 女性の奉仕を当たり前のように搾取して成り立つ「男」という存在、「家」という制度。女たちの苦悩も悲哀も結局は、それらに呑みこまれて忘れられてしまう、この不条理。実母と兄嫁のいさかいを間近に見てきた小姑が、死のまぎわに言いのこす言葉が重い。 〈私はそういう世の中に二度と女には生れ変わりとう思いませんのよし。私の一生では嫁に行かなんだのが何に代えがたい仕合せやったのやしてよし。嫁にも姑にもならいですんだのやもの〉 フィクションのはずだが、つくり話と笑いとばすことのできないリアリティがこの作品にはある。この国で女性として生きるということ――。作者の告発は今もなお、私の心をとらえて離さない。
物凄い一冊。どの時代においても先駆者と呼ばれる人は苦労と努力を繰り返してきたんだなぁ。結婚に対しても考えさせられた。もっと評価され、取り上げられるべき一冊だと思う。
日本の小説では一番好きな作品かも。 旦那を立てるという、本来控えめな妻の立場なのに、全然違う。主人公のあの芯と意志の強さに、つくづく感嘆。 女って、大変だよなぁ…。
切れ味、迫力あり。芝居にもなり有名な作品であるからこそ、だいたいのストーリーもわかっていて読んだ気になっていたが、それはもったいないことだ。きちんとこの文章を読むべきだ。これぞ小説だ。
世界で初めて全身麻酔下での手術を成功さてた華岡青洲の妻加恵と青洲の母御継の物語。青洲じゃなくてこの二人にスポットライトを当てているのが面白い。封建社会であった江戸時代において嫁姑問題は今よりも激しかったのか。嫁いだ加恵は華岡家に馴染んだかのように思っていたが青洲が留学から帰ってきてから御継の態度が変...続きを読むわりあくまでも加恵は他所の人という態度を取られる。そこから二人は見えないところでバチバチの関係になるも青洲の妹の小陸以外それに気づかない。青洲が麻酔薬の通仙散を開発し研究するに至り二人は自身を実験台として差し出す。ここでもどちらが先に実験するか、どちらがより貢献できたかで張り合っていて女って怖いなと思う一方でそれに気づかない青洲と周りの鈍感さに驚く。1回目の実験で視力を失っているにも関わらず夫への気遣い及び姑への勝ち誇る気持ちで加恵はそれを隠していたのはすごいなと思った。 実際のところ二人の関係はわからないがそういう歴史の見方もあるんだなと。
とても日本らしい嫁姑関係が主題の作品。 話の舞台は江戸時代後期、でもこの小説が書かれたのは1960年代くらいだから、2世代・3世代くらい前まではどの家庭でも似たような感じだったんだろうか(今もか)。 日本が近代化して150年くらい経つけど、家庭レベルではまだまだ日本は封建的だってことだ。
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