歴史・時代 - PHP研究所作品一覧
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4.0斎藤道三、松永久秀と並び戦国の梟雄と称される宇喜多直家。子の秀家は、後に秀吉に寵され西国を代表する大名に成長する。その礎を築いたのが直家であった。本書は、信長の中国攻めの先鋒であった秀吉も恐れたという希代の謀将の、数奇な生涯を綴る長編小説である。備前国の守護代・浦上氏の重臣であった祖父・能家は、主家をよく守り立てる篤志家であったが、同僚の突然の裏切りによって、一家は離散の憂き目に遭う。死を前にした祖父に、不甲斐ない父に代わってお家再興を託された直家。追及の手を逃れるため、彼は備前福岡の地で不遇の少年時代を強いられるが、やがて、生母の執り成しで再び浦上家に仕えることになった。初陣で功を成し、念願のお家再興を果たした直家は、以後、権謀術数を弄して備前・美作の諸将を倒し、主家をも追放して山陽の要衝の地を制するのである。不遇の身から一代で大名に伸し上がった男の本懐を、人間味溢れる筆致で描く力作。
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4.0戦国最強を誇った「赤備え」の騎馬軍団を率いて、常に武田信玄の先陣を任された山県昌景――。若年より晴信(のちの信玄)の近習として仕え、20歳の時には晴信直属の旗本隊創設に加わり、いきなり足軽150人の隊長に大抜擢された。その後も武勲を重ね「源四郎(昌景)の赴くところ敵なし」とまで謳われる。信玄の子・義信の謀反未遂に、父のような存在だった兄・虎昌が連座し切腹させられると、昌景は涙ながらに兄が率いた「赤備え」の部隊を引き継ぐこととなる。その後の昌景は、「風林火山」の旗印とともに武田の先鋒隊長として戦場を疾駆。“赤い大津波”の如き騎馬軍団の破壊力は、三方ヶ原の戦いで徳川軍を呑み込み、「さても恐ろしきは山県」と家康を畏怖させた。しかし信玄に重用された反面、息子の勝頼には疎んじられ不遇な晩年を迎える。長篠・設楽原合戦では己の誇りをかけて挑み、壮烈な最期を遂げた猛将の生涯を描く。
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-吉田松陰の遺志を継ぎ、新しい日本のために命を懸けた男がいた――。その男の名は、久坂玄瑞。高杉晋作とともに、“松下村塾の双璧”と謳われた俊英である。長州藩の医者の家系に生まれながらも、「おれは、天下を医するのだ」と日本全体を見据えた、大きな志を抱く玄瑞。やがて生涯の師・吉田松陰と出会うと、その才能は開花し、妹・文の婿に迎えられることに……。しかし、松陰が安政の大獄で死を遂げると、その運命は大きく変転。師の遺志を継いだ玄瑞は、高杉晋作らとともに王攘夷活動に奔走していく――。幕末の動乱をひたむきに、そしてまっすぐに生き、維新の先駆けとなった若き傑物を活写した長編。
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-時は、幕末から明治へ――日本を揺るがす大戦乱の後には、熱い男たちの足跡だけが残った・・・・・・。幕末維新期には佐幕・勤王・開国・攘夷などのそれぞれの立場で、数多くの傑物が登場し歴史にその名を刻んだ。阿部正弘、井伊直弼にはじまり、徳川慶喜、近藤勇、沖田総司、土方歳三、坂本竜馬、西郷隆盛、大久保利通、榎本武揚、大隈重信、岩倉具視など、枚挙に暇がない。しかし、この混迷きわめる時代背景は大変複雑でわかりにくいもの。また登場する人物が多数であるため、それぞれの人間関係も入り組んでいる。本書は、太平の眠りを覚ました黒船来航から、幕末維新の終焉といえる西南戦争にいたるまでの間、乱世に光芒を放った英傑100人を分かりやすく解説する。幕府方要人、勤皇の志士、思想家、医者など、多様な人物エピソードから動乱の時代の様相が見えてくる。かんたんに読めて歴史の流れも理解しやすい、手軽な「幕末維新」ポケット事典。
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3.0戦国の日本を統一へと導いた稀代の英雄・織田信長。その天下統一事業は信長の手だけでなされたわけではない!まず、信長の父である織田信秀。尾張国守護代に仕える三奉行の一人だった信秀は、下剋上の流れに乗って尾張の支配者にのしあがる。この父の遺産と遺志を引き継いで「戦国大名・織田信長」が誕生した。そして、尾張の統一のみならず、近隣の強敵・今川義元を討ち取り、美濃の斎藤家を滅ぼして、天下布武への道を邁進し始めたのである。さらに、信長の嫡男・織田信忠。本国の尾張・美濃を相続し、偉大な父の後姿を見詰めながら天下人の後継者になるべく己を磨いた傑物であり、「新しい日本」の建設に力を振るうことが期待された。しかし、本能寺の変に遭遇したとき、不利を承知で明智光秀に立ち向かい、父に殉じた。ここに信長の天下布武は幕を下ろしたのである。戦国乱世に身を置き、全力で戦い続けた織田家三代の男たちを描き出した力作長編小説。
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3.9「あそこには、人を喰らう鬼がいるんです」江戸深川界隈で立て続けに起きた夜鷹殺しに怯える女の、悲痛な叫びがこだまする。そんななか、この世に思いを残した人の姿が見えるおいちの前に、血の臭いをまとった男が現れる。商家の若旦那だというこの男は、亡き姉の影に怯えていた。おいちに助けを求めてきた男は、事件に関係しているのか、それとも――。腹を裂くという猟奇的な手口に衝撃を受けたおいちは、岡っ引の仙五朗と力をあわせ、ある行動に出るのだが……。父・松庵のような医者になりたいという思いを胸に秘め、18歳になったおいちは、事件の糸口を見つけ、解決することができるのか。生き方に悩みながらも、強く生きたいと願う女性を描いて人気の青春「時代」ミステリーシリーズ第三弾!
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3.7戦国の上杉家を支える二大巨頭の重臣のひとつ、直江家には一粒種の娘“お船”がいた。後継者となる嫡子のいなかった直江家では、男子の様に活発な少女として育てられ、のちに鎌倉時代の女傑・北条政子にも比肩される器量をもった、聡明な女性となる――。謙信が死去すると、その養子同士の景勝と景虎の間で、越後を二分する熾烈な跡目争い「御館の乱」が勃発する。直江家は景勝を支えて勝利するも、お船は愛する夫を暗殺されてしまう。悲嘆にくれるお船の再婚相手として、三歳年下の幼馴染みである“兼続”が婿に選ばれたことから、戦国を代表する名軍師・直江兼続が生まれ、二人の運命は大きく動き始める。幾多の困難を乗り越えて結ばれたお船と兼続の戦国夫婦ぶりは、「前田利家と松」「山内一豊と千代」に勝るとも劣らない。秀吉・家康の天下人を相手に、内紛で弱体化した上杉家の危機を救った男と女の物語を鮮やかに描いた力作小説!
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4.0今一番楽しみなのは村木嵐だ――と葉室麟に言わしめた作家による骨太な歴史小説。江戸に幕府が開かれて五十年余り。後に越後高田藩筆頭家老になる小栗美作は、大地震の後処理で手腕を発揮し、藩主・松平光長の信頼を勝ち取る。しかし光長の嫡子が亡くなると藩内は真っ二つに割れ、御家騒動へと発展。美作は否応なく、その渦に巻き込まれていく。そんな高田藩を取り潰そうと幕府は虎視眈々と機会を窺っていた。逃げず、媚びず、諦めず――藩を守るため、次々に襲いかかる難題と懸命に戦った男の生涯を感動的に描く歴史長篇。伊達騒動を描いた『樅ノ木は残った』を彷彿とさせる力作。
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3.5北近江の勇将、浅井長政。その実力を認めた織田信長は、絶世の美女といわれた妹・お市を嫁がせ、長政と同盟関係を結ぶ。その後、長政とお市は「茶々・初・江」という三人の娘をもうけ、浅井家の行く末は安泰にみえた。しかし、天下統一を目論む信長は非道な振る舞いを繰り返し、長政を苛立たせる。そしてついには、浅井家と長年同盟関係にあった朝倉家を、長政に無断で攻撃。「織田が朝倉に兵を向けるときは必ず報せる」との約束を見事に破られた長政は、ついに離反を決意する。兄・信長をとるべきか、夫・長政をとるべきか……。苦渋の選択を迫られたお市はいかに行動したのか? はたまた、三人の娘の運命は!? のちに徳川二代将軍・秀忠の正室となる三女・江を通じて、徳川の治世にまで受け継がれた「浅井と織田」の気概を、膨大な史料をもとに描いた渾身の大作。文庫書き下ろし
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3.0時は戦国。出羽に生まれた民治丸に課せられたのは、闇討ちにあった父の仇討ちを果たすという使命。しかし民治丸は身体も小さく、通常の手段では、仇に勝つほど剣術で強くなることは難しい。いかにすれば、力弱き者が強き者に勝てるのか。過酷な修行のなかで、民治丸は神託を得て「居合い」という全く新しい剣術を編み出していく。そして民治丸は、林崎甚助と名乗り、仇・坂上主膳を追って旅に出る。やがて青年剣士は、京の都へ。しかし坂上主膳は、梟雄として名高い戦国武将・松永久秀の家臣となっていた……。奸智に長けた松永久秀をも相手に、甚助の仇討ちは成就するのか。スピード感溢れる文体で、居合いの始祖・林崎甚助の若き日の活躍を描いた、痛快剣豪エンタテインメント小説。
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4.4秋山好古・真之兄弟、正岡子規ら志ある若者たちが「明日の日本」に思いを馳せた明治時代。その青春群像の中で、ひときわ高い人気を誇るのが海軍中佐・広瀬武夫だ。日露対立という戦局の波に翻弄されたペテルブルクの恋、日本で初めて「軍神」として神格化されることになった日露戦争・旅順口閉塞作戦での壮絶な最期……。人々を魅了してやまない「海のサムライ」の鮮烈な生涯を活写した力作評伝小説!
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3.5「おいちちゃん、怖いよ。助けて……」。――胸騒ぎを覚えたおいちは、友のもとに駆け付けるのだが。本書は、この世に思いを残して死んだ人の姿を見ることができる娘・おいちが、その能力を生かし、岡っ引の仙五朗とともに、複雑に絡んだ因縁の糸を解きほぐしていく好評「おいち不思議がたり」シリーズ待望の新作。江戸深川の菖蒲長屋で、医者である父・松庵の仕事を手伝うおいちは17歳。父のような医者になりたいと夢を膨らませているのだが、そんなおいちの身にふりかかるのは、友の死、身内の病、そして自分の出生の秘密にかかわる事件等々。おいちは、様々な困難を乗り越え、亡き友の無念を晴らすことができるのか。悩みながらも強く生きたいと願う主人公を書いてきた作家・あさのあつこの青春「時代」ミステリー第二弾! 解説は、作家の小松エメル氏。
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3.7かつて武勇一辺倒だった生粋の猛将が、のちに儒学者に優るとも劣らない学問を身につけ、恐るべき知将へと転じた――。その名は呂蒙。光和元年(178年)生まれの呂蒙は、寒門の出身でありながら、主君の孫権による「学問せよ」の一言から書物に親しむようになり、故国の運命を背負う武将へと大成長を遂げる。その劇的な変貌ぶりから、魯粛は「呉下の阿蒙に非ず」(呉にいたころの蒙ちゃんではない)と表現し、それに対して呂蒙は「士別れて三日なれば、刮目して相待すべし」(日々鍛錬している者は、三日も会わなければ見違えるほど変わっている)との名言を残した。かの有名な赤壁の戦いや江陵の戦いで、大きな功績を挙げた呂蒙は、魯粛が死去したあと、荊州方面の責任者となり、巧みな計略を用いて関羽を捕らえることに成功。荊州全域を呉の支配下に置くようになる。知勇兼備の波乱に満ちた男の生涯を描く、長編歴史小説。
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3.5筑後柳河十三万石の領主立花宗茂を描く長編小説。秀吉をして「鎮西一の忠勇、天下無双の勇士なり」といわしめた宗茂の生涯は、戦っては義戦多く、常に寡兵をもって大軍を破り、その生きざまは信義一筋、まことに誠実・清廉なものであった。これは実父高橋紹運、養父立花道雪という両父の高潔な生き方を範としており、ゆえに本編は、この三人の父子像が中心のテーマとなっている。ともに大友家の加判衆であった両父は、当主宗麟を守り立てる立場にある。たとえ非道な仕打ちにあったとしても、決して当主を見放さず、己の運命として受けとめ、恥じることのない生涯を終えるのである。この愚直なまでの廉潔な生き方を、著者は現今の知的ノウハウ重視の風潮に対するアンチテーゼとして提示、また自立する女性として描かれる妻ぎん千代と宗茂との葛藤も、今日的なテーマとして見事に描出している。現代人の心を癒し、人間の温もりをほのぼのとつたえる力作である。
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3.6「退け! 逃げよ。彼奴は人でなし。鬼じゃ!」――大将自ら、真っ先に敵陣の中へと踊り込み、瞬時に7人を斬り捨てる。漆黒の甲冑が一転して朱に染まるが、それにも飽き足らず、太刀が届く相手を次々と血祭りに上げていく。「鬼佐竹」「坂東太郎」と諸国から怖れられ、伊達・北条と互角に渡り合った常陸の戦国大名、佐竹義重。その鬼神のような戦場での働きは、下妻の追撃戦で北条軍2万を潰走させ、人取橋の戦いでは奥州の伊達政宗さえも討ち取る寸前にまで追い込んだ。最盛期には義重が戦場に姿を現すだけで、敵軍は戦わずして退いていくこともしばしばであったという。清和源氏の流れを組む関東屈指の名家でありながら、常陸の半分にしか勢力が及ばない「半国守護」として、長年屈辱を味わってきた佐竹氏。だが、義重の登場によって悲願の常陸統一を果たし、絶頂期を迎える! 守護職の誇りをかけて、乱世を戦い抜いた男の生涯を描く。
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3.7負けたら、即、廃部よ、廃部!私立ヒミコ女学園では、日本文化を研究する“和風文化研究会(和風研)”と“スタディ・オブ・ジャパン(SOJ)”の二つの部が鎬(しのぎ)を削っていた。「学園に同じ活動内容の部は、二つもいらぬ」と、部の存続がかかった、学園内の伝統ある歴史討論にSOJは「刺客」を送りこみ、和風研を潰しにかかる。そこに歴史知識ゼロの新入生、北浦つばさが和風研に現われ――。利休切腹の真相、芭蕉の旅の目的、歌舞伎の創始者の正体……日本史の謎はで解ける!? 女子高生たちの熱きバトルから飛び出す歴史の“真説”とは?『邪馬台国はどこですか?』の著者による学園歴史ミステリー。
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3.0「それがしはもと信州上田の城主真田左衛門佐幸村と申す者。ここにあってお首を頂戴いたそうと待っており申した」家康は顔色を変えた。もっとも恐れていた幸村が出たのだ。無言のまま、馬に鞭をくれて逃げ出した。(本文より抜粋)いかなる劣勢にあろうと、神算鬼謀を尽くして数万もの軍勢を翻弄した真田家の智将たち。武田家の興亡から天下分け目の関ヶ原合戦、そして運命の大坂の陣へと続く「昌幸・幸村・大助」三代の活躍は、天下に覇を唱えた信長をはじめ、最終的に江戸幕府を開いた家康など、時の権力者に立ち向かう“国民的英雄”を望んだ民衆により、“華々しい伝説”へと昇華していく。江戸の元禄期以降に書かれ、猿飛佐助・霧隠才蔵・三好青海入道らの奇想天外な活躍で明治から大正期にかけて爆発的な人気を呼んだ「立川文庫」真田編の“種本”となる『真田三代記』が、土橋治重の名訳で現代に甦る! 2016年大河ドラマの世界を愉しむ一冊。
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3.5江戸時代において「まことの武将」と評されるとともに、その家訓が武士の心得として読み継がれるなど、後世の武士に大きな影響を与えた仁徳の武将、武田信繁。父・信虎に廉直な気質を愛され、次代の後継者とも目されていた信繁だったが、家臣・領民のために兄・信玄に従って父を追放。兄弟、親族同士が争う戦国時代にあって信玄を献身的に支えた。家臣の統制と領国経営に力を発揮するとともに、権力の大きさゆえに道をはずれそうになる信玄を、自身を犠牲にしてでも正す役目を負う。そして川中島の合戦では、信玄を守るために壮烈な戦死を遂げた。信玄は遺骸を抱いて号泣し、武田家臣団からは「惜しみても尚惜しむべし」といわれるだけでなく、敵である上杉謙信さえもその死を悼んだという。武田二十四将、随一の副将の生涯を爽やかに描く長編小説。
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3.0大坂の陣から四〇〇年――誰も見たことのない幸村と又兵衛が、ここにいる!五十男にして側近から若殿と呼ばれる真田幸村。京の都で遊女屋の用心棒ぐらしをする後藤又兵衛。慶長十九年(一六一四)、不遇をかこつ軍略家二人が、大坂城に入った。しかし決戦を前に、大坂城内は謎ばかり。又兵衛が警戒する真田家の不審な家臣・味岡、幸村の脳裏に蘇る長篠合戦の記憶、突如姿を現わした亡父・真田昌幸と瓜二つの老人、そして決戦前夜の、幸村と又兵衛二人の秘策……。戦国最後の戦いの行方はいかに?謎が謎を呼ぶ巧みな仕掛けでかつてない大坂の陣を展開させつつ、時代の巨大な奔流に抗った男たちの熱き魂を描いた、著者渾身の歴史長編。
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3.0日本海軍航空部隊のエース、坂井三郎の自伝の翻訳版は百万部を超えている。彼の大和魂は、国境や時代を越えて人を感動させるのだ。三〇機前後の撃墜数もさることながら、列機を全て守り切った技術、航法距離計を自分で作った創意工夫、戦場で部下を鍛える余裕、瀕死の状態でも巡洋艦に助けを求めなかった犠牲精神、徹底的な自己管理……。そして零戦は、一時期世界のトップの性能を誇った名機である。アメリカ、イギリスで編纂された辞書にも「ZERO」は登場する。しかし零戦の最大の長所である長大な航続力が、逆に戦力の弱体化を招くなど、悲しい運命に彩られた戦闘機でもあった。本書は坂井三郎の戦歴、凄さ、「怒りと怨念」と、零戦の戦歴、開発者の横顔などを、ベストセラー『日本軍の小失敗の研究』の著者が語る。あの戦争を考える上で必読の一冊。
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3.5昭和の日本海軍で、山口多聞と並び称される闘将・角田覚治。その「見敵必戦」の信念が遺憾なく発揮されたのは、ミッドウェーの敗北から四カ月後に起こった南太平洋海戦である。機動部隊がぶつかり合う決戦の最中、第二航空戦隊司令官の角田は一時的に指揮権を譲られると、果敢に反復攻撃を試みて勝利をつかみとった。責務を誠実に担い、部下思いでも知られた提督の生涯を描いた力作。文庫書き下ろし。
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-戦国の雄・武田信玄が甲斐から信濃への版図拡大に踏み出したとき、真っ先に攻略対象とした諏訪頼重には美貌の姫があった。諏訪氏滅亡後に信玄の側室となり、一子・勝頼をもうけるものの、若くして世を去った「諏訪御寮人」……。謎に包まれたこの女性は、果たして父の敵を愛し得たのか? 本書は、信玄と諏訪姫、そして信玄の謀臣である山本勘助三者の数奇な関係を軸に、自由な想像力で乱世に生きた男と女の情念の機微、運命の綾をあざやかに描いた長編小説である。一目で諏訪姫を愛してしまった信玄と、なかなか心を開けない諏訪姫。そんな姫に密かな恋心を抱く山本勘助や、信玄を鉄砲で付け狙う諏訪氏の遺臣・茅野紳四郎といった男たちに見守られながら、諏訪姫はついに信玄の愛を受け入れることなく逝く。乱世ゆえの男と女の悲劇のかたちが、みごとに物語化されている。2007年NHK大河ドラマ「風林火山」の人間模様が活写された力作。
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-柳生新陰流の祖として、「剣聖伝説」に彩られている柳生石舟斎宗厳。しかしその生涯は、まさに厳しい苦難の道のりであった。大和国に割拠する列強の一人・筒井順昭に攻められ、小柳生城が落ちたのは宗厳16歳のとき。その後は15年の人質生活を送り、柳生庄に戻るのは31歳、松永久秀に属してからである。しかし35歳のとき、奈良宝蔵院で上泉伊勢守信綱と出会ったことで、ついに柳生新陰流創始への糸口をつかむ。剣名を高めていく宗厳だったが、小領主としての艱難は続く。松永久秀に味方した合戦で長男厳勝が重傷を負い、将軍義昭の没落を機に45歳で柳生庄に逼塞する宗厳。66歳のときには太閤検地に際して「隠田」を密告され、所領没収の憂き目をみる。柳生家の繁栄は、5男宗矩が徳川家康の下で活躍する「関ヶ原」以後、宗厳70歳過ぎのことであった。剣の道を一筋に歩みながら、戦国の激動のなかで自らの宿命と戦い続けた男の生涯。
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3.0今を乱世と呼ぶ人がいる。国民不在の政局、沈み続ける日本経済、ほんの数年先の未来がまったく読めない時代に、自分の居場所すら惑う人も多い。それは今までのセオリーが通用しなくなったからだ。しかし、そんな先行き不透明な時代だからこそ、「歴史に学ぶ」という視点が必要になる――。本書は、今の日本に強烈な影響を与えた“すごい”先人たち20人を中世・戦国・幕末から厳選し、その考え方・戦い方を解説。「上杉謙信――自分の強さと弱さに向き合い続ける」「伊達政宗――組織のなかで自分を成長させた教養の人」「藤堂高虎――人間を見抜く者が時代の先を見通せる」「竹中半兵衛――私心を捨て去ることで物事の本質が見えてくる」「源頼朝――生きることへの執着」「西郷隆盛――人を愛し、愛されたリーダー」など、混迷の時代を生き抜く指針を今に伝える。きっとあなたの理想となり、武器となる“すごい人”が見つかる一冊だ。
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3.5天正18年(1590)、豊臣秀吉は戦国乱世の時代に終止符を打ち、天下統一を成し遂げた。この偉業を支えた二人の名軍師が、竹中半兵衛重治と黒田官兵衛孝高である。わずかな手勢でやすやすと美濃・稲葉山城を盗り、そのあとで城を主に返して隠棲した無欲の天才・竹中半兵衛。秀吉が織田家臣団の中で台頭する時期、戦場における半兵衛の貢献は計り知れないほど大きかった。一方、播磨の国人に仕える一家老でありながら、天下への志を抱いた智謀と誠実の人・黒田官兵衛。本能寺の変に際して中国大返しを実現させ、官兵衛は秀吉に天下人への道を開いた。「二兵衛」と並び称された半兵衛と官兵衛は、置かれた環境は異なり、性格も正反対だった。にもかかわらず、互いの才を認め合い、相手を信頼し合って、秀吉の天下取りを補佐した。二人が抱き続けた志と友情は、今日の我々の胸を打つ「熱さ」を帯びている。不世出の軍師二人の人生を描いた力作長編小説。
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3.9元禄三(一六九〇)年七月、深川冬木町の裏店に住む女衒の新三郎は、仕事の不始末から莫大な借金を背負うことになった。その返済のため、重い足取りで向かった江の島の賭場で、運命的な出逢いを果たす新三郎と壺振りおりゅう。その偶然が、新三郎の人生を大きく変えることになる。二人で新たに人生をやり直すべく、おりゅうが考え出したのは、江島神社の裸弁天を江戸へ持ってきて公開する「出開帳」だった。成功すれば何千両もの拝観料が手に入り、堅気に戻れるのだが……。次から次へと押し寄せる難問、問われる新三郎の器量とおりゅうの知恵。乾坤一擲の大勝負の首尾やいかに。おりゅうに美質を磨かれ、度重なる試練にも鍛えられ、一歩一歩登っていく新三郎。手に汗を握るハプニングの連続に一喜一憂しながら、気がつくと二人と一緒に人生の峠越えをしている気分になる。様子のいい登場人物たちの温かい真心と共に、爽やかな余韻が胸に残る傑作時代小説。
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3.0凡将と名将を分けるもの――それは常に最前線に身を置き、状況の変化に即応できるかどうかだ。本書は、百戦錬磨の傭兵経験を持つ著者が、“ローマ史上最大の敵”と恐れられたハンニバル、激情と共に大戦車軍団を率いた異色の猛将パットンなど、世界を変えた最強の戦闘指揮官30人を厳選、その勝利の秘訣を解説していく。逆境と困難の時代に、戦場のリーダーシップを学ぶ一冊。
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3.0時は天保年間の江戸・神田白壁町。おでん屋を営む主人公のこはるは、気になることがあると、首をつっこまずにはいられない性分である。ひょんなことから近所に住む夫婦喧嘩の仲裁をしていたところ、奇妙な事件に巻き込まれてしまうこはる。不思議なことに、借金を返したのは、すでに死んでいた女だというのである。そんなことがあり得るのか? 断片的な材料から、こはるが導き出した謎の答えとは――。表題作のほか、できすぎた女の失踪に隠された真実をあぶりだす「神隠し」、放火未遂に対する証言の違いの謎を解く「嘘吐き弥次郎」など四編を収録。定町廻り同心もお手上げの怪事件の数々に、こはるが挑む“人情&ミステリー”時代小説。
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3.0平成18年度(2006)のNHK大河ドラマ「功名が辻」。一代で土佐二十四万石の大大名に出世した山内一豊と妻千代の物語だ。戦国時代の夫婦二人三脚による成功物語といえば、秀吉とおね、利家とまつなど数例があるばかり。とりわけ一豊と千代に関しては、武辺者の一豊よりも才知ある千代が高く評されてきた。嫁入りの持参金をはたいて夫に駿馬を購入させた逸話などが、広く世に知られるためだろう。しかし本書は、そうした固定的な見方に疑問を投げかけ、「生身の夫婦像」を紡ぎ出すことに挑戦している。ともに合戦による一族離散という悲劇を経て出会った二人は、夫の槍一筋の功名を妻が支え、四百石取りから長浜二万石の城主へ、さらに掛川城六万石へと着実な歩みを続けていく。しかし長く仕えた秀吉が没し、関ケ原の合戦が起こるや、思わぬ幸運と試練が二人を見舞うのだった……。女流作家ならではの視点がさえる会心の長編歴史小説。
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3.5桓武天皇の子孫にして、陸奥鎮守府将軍・平良持の子、将門。右大臣藤原忠平卿に仕えることになった将門は、父の命で従兄弟で幼なじみの平貞盛とともに京にのぼることになる。都では市中を荒らしまわる群盗を退治したり、先の左大臣藤原時平の娘で、忠平の姪の褒子に恋をしたりと多忙な日々を送る将門。しかし父良持の死がきっかけとなり、運命は一変する。なんと故郷の地で将門を待っていたのは、一族相手の血で血を洗う抗争だった。父の遺領をめぐって戦いを仕掛けてくる伯父達を相手に必死で戦い、打ち破ることに成功する将門。紛争を解決するうちに、坂東一円の豪族達から支持を集めるようになった将門は、「新皇」として朝廷からの独立を宣言する。しかしその野望を打ち砕かんと一人の男が都から帰ってきた。圧政に苦しむ領民たちを助けるべく、あえて逆賊の汚名を被る覚悟で、朝廷に叛旗を翻した男の壮絶な生涯を描く歴史人物小説。
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3.0
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4.3慶長五(1600)年九月十五日、日本国内における史上最大の戦闘、関ヶ原合戦が行われた。動員された兵士数は実に15万人超、全国各地の大名が真っ二つに分かれ、まさに天下分け目の決戦となったこの戦いだが、豊臣政権崩壊の原因から戦後処理に至るまで、合戦の前後も含めて考えると多くの謎が残されたままである。なぜ家康は朝鮮に渡海しないですんだのか、なぜ家康暗殺計画は未遂におわったのか、なぜ上杉・直江は西に向かう家康の背後を突かなかったのか、なぜ秀吉の縁戚である小早川秀秋は裏切ったのか、なぜ敵中突破を図った島津家が本領を安堵されたのか……。本書は通説では語られていない関ヶ原合戦の謎あれこれを新進気鋭の歴史作家が徹底分析。本戦前の家康の虚虚実実の駆け引きの真相から、本戦前後の局地戦にまつわる謎、さらには戦後処理の真相まで新史料をもとに謎を大胆に解き明かす。「関ヶ原合戦」の常識を覆す一冊。
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-「帳合屋」は、大店などの依頼主に新規取引の道筋をつけて斡旋料を受け取る商売。今でいうブローカーだ。彼らに持ち込まれるのは、成功すれば大儲けになる「うまい話」や、犯罪のにおいがするような「ウラの話」も数多い。音羽の音次郎は、元能役者の色男で、腕も立つし、機転もきく。帳合屋宿の津国屋に属し、相棒の笛彦兵衛や手下の松坊主、壺ふりの女・弁天の小万らとともに、津国屋に持ち込まれるさまざまな案件に対処していくのだ。津国屋に大量の大福帳が持ち込まれた。商家の売買の金額が記された大福帳はその店の命綱。高く売れることは間違いないが、なぜこれほどの数が流出したのか!?――表題作「大福帳の狩人」をはじめ、「呂宋の壺」「危ない読売」「落とし文」の4篇を収録。「江戸時代を舞台にビジネス小説を書く」というコンセプトのもと、新境地に挑んだ著者の会心作。
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3.0世は梟雄・松永弾正(久秀)が台頭し、戦国の乱れが深まる時代――忍者の里として知られる伊賀では、人間離れした手練れの忍術を遣い、「闇の仕事」を請け負って乱世をしたたかに生き抜いた男たちがいた。伊賀者・遠山太兵衛は、遙か遠くを見通す「天眼通」、人の心を読む「他心通」など、厳しい修練で会得した特殊能力によって、一人の主君を求めずに己の力だけを頼りに生きる。他の忍者集団との激しい死闘、戦国大名を罠に嵌める見事な手口など、自由と背中合わせの危険のなかで闘い続ける太兵衛らの生き様は、手に汗握る波乱の展開に息つく間もない。歴史小説・剣豪小説の大家である著者が、「史実」に近い伊賀忍者の実像を踏まえつつ、極上のエンターテインメントに仕上げた長編小説。既存の忍者像を一変させ、緊迫の展開に胸躍る傑作に仕上がっている。
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3.0甲斐の武田信玄をして「わが両眼の如し」と言わしめ、次代の勝頼に側近として仕えた真田昌幸――。少年時代を人質として過ごした昌幸は、「真田一族は誰からも自由でなければならぬ」と強く願うようになる。主家滅亡後は、旧武田領を狙う「上杉・北条・徳川」三つ巴の強国を手玉にとって、独立独歩の道を歩んでいく。そして上田の土地を死守し、小豪族から念願の大名へと飛躍を遂げるのだった。そんな昌幸の「小が大を打ち負かす」痛快ぶりは、天下人の秀吉から「表裏比興の者」(不埒者)、家康から「稀代の横着者」と非難されたが、それは真田一族の生き残りをかけて、昌幸が大々名の身勝手さに対抗したものである。家康の天下取りとなる関ヶ原合戦では、決戦場へと向かう秀忠軍3万8千を相手に引けを取らず、信州上田の地に翻弄して、その武名を天下に轟かせた。「神算鬼謀」「機略縦横」をもって生涯、強敵に挑み続けた戦国屈指の智将を描いた力作!
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4.0滝沢馬琴の名作『南総里見八犬伝』で知られる房総の戦国大名・里見家。しかしその実像はこれまで、史実とフィクションの入り混じった八犬伝によって、かえって陰に隠れてしまっていた。本書は、里見家中興の祖・義堯の波瀾万丈の人生を描いた長編小説。甥・義豊との骨肉の争いを制して里見家の当主となった義堯は、安房一国を統一、関東制覇を目論む日の出の勢いの北条氏に敢然と立ち向かう。敵味方入り乱れての戦いが続く関東の地で、一時は房総半島全域に勢力を拡大するも、北条氏に二度までも大敗。絶体絶命の窮地に陥るが、そのたびに義堯は家臣一丸となり、不屈の闘志で存亡の危機を乗り越えていった……。弱肉強食の覇道が横行する戦国にあって、宿敵・北条氏からも「仁者必ず勇あり」と、その人柄と戦いぶりの見事さを称えられていた里見義堯。北条の野望を阻むとともに、ひたすら領民の安穏と繁栄を願い、戦いに明け暮れた勇将の真実の姿に迫る力作。
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3.7仇討ちに挑む四人の女。それぞれの愛憎の行方は……。藍染めを手がける紺屋の女将・紫屋環は、三ヶ月前に亭主が殺された事件の真相を知るべく、大店の東雲屋を探っていた。東雲屋の亭主・三左衛門が事件に関わっていると環は確信するが、確証が得られない。そこで環は、同じく東雲屋ゆかりの者に恨みを持つ女たちと出会い、四人で協力して東雲屋に挑むことに。しかし、四人それぞれの愛憎や思惑、環に惚れる同心、藍の産地である阿波藩のお家事情なども絡み、事件は意外な展開を見せていく……。「一切の始末は、やはり私の手でつけるのが筋でございましょう」と最後に覚悟を固める環。果たして環の仇討ちは成就するのか。そして明かされる驚きの真相とは。『金春屋ゴメス』『善人長屋』などで話題の、気鋭の著者が描く、楽しくも切ない時代エンタテインメント小説。
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-上皇や摂関家などに仕える番犬のような存在でしかなかった武士層が、保元・平治の乱を経て、武力によって朝廷を左右する存在へと変貌した。なかでも源氏と並ぶ平家の総帥平清盛は、もともと皇位に就くなど考えられておらず、あくまで一時のつなぎ役でしかなかった今様狂いの後白河天皇と組んで、後白河の兄・崇徳上皇、摂関家ならびに源氏の勢力をつぎつぎに失脚させ、位人臣を極めるまでになる。だが、武力と財力を独占し、皇位継承にまでかかわりを見せ始めた清盛の存在に警戒心を抱いた後白河は、それまでの二人三脚の関係をかなぐり捨て、一転して旧勢力である上級貴族や寺社勢力とひそかに結び、平家の追い落としを企てようとしていた……。家族・一門の安泰のため、かつての藤原摂関家のような最高権力を掌中にしようとする清盛と、王権ならびに旧秩序回復のためこれを阻止しようとする後白河の、謀略を駆使した激しい確執、二人の権力者の心の葛藤を描く。
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4.021世紀を迎えた今日、戦争やテロの恐怖はますます増大している。人類発生以来、絶えることのなかった「争い」の歴史。数多の経験則を積み上げながら、人間はなぜ「戦争」を放棄する英知を持ち得ないのか。本書は、古今東西の歴史に“臨床例”を求め、戦争の根源的要因に解明のメスをふるった文明評論。ローマ帝国、スパルタ、カルタゴから始皇帝、モンゴル、インカ帝国まで、20の具体例をもとに戦争発生のメカニズムを読み解いていく。とりわけ本書の特徴は、各項ごとの論旨を明確に掲げたことにある。スパルタの巻では<教育>、十字軍の巻は<文化衝突>、ヒトラーの巻は<宣伝>……のように、戦争という“怪物”の様々な性格や要素が見事に因数分解されて提示されるのである。長年にわたり世界各地を旅し、実際に古戦場や帝国の遺跡にたたずみ、「戦争と人間」の問題を考察し続けてきた著者ならではの力作。著者撮影の貴重な写真も満載した好著である。
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3.0第二次世界大戦中、アメリカは何を考えて大量殺戮兵器である原爆を製造したのか?なぜ軍事的に壊滅状態だった敗戦間際の日本に原爆を投下したのか?史上空前の“無慈悲な仕打ち”はどのようにして日本に加えられたのか?「日米双方の犠牲者を少なくし、戦争を早く終わらせるため――」という原爆投下の理由は本当だったのか?本書は、40年以上にわたって日米関係を取材してきた“ワシントン情報”の専門家である著者が、原爆の開発・製造と日本への投下に関する非公式記録の発掘ならびに、関係者の新証言をまとめた一冊だ。「真珠湾攻撃前からアメリカは日本への原爆投下を考えていた」「皇居・京都への原爆投下も話し合われた」「なぜ広島と長崎が実験の場所に選ばれたか」「日系人の強制収容は原爆投下への第一歩だった」「日本は抑止力を持っていなかった」など、既存の通説を覆すと同時に、日本人が今まで目を背けてきた“真実”を明らかにする。
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4.0「あれは内応しておるのではないか」裏切りと内通の噂が飛び交い、大坂方か徳川方か、どちらが勝つか最後までわからなかった関ヶ原合戦。天下分け目のこの戦いは、人生の分かれ目。栄達か、しからずんば死か……。でも実際は、誰もがとまどい、迷っていた。敵中突破しての大坂行き。でも同行者がヘンだ!(「大根を売る武者」)。両軍にいい顔をわが城が東西の境目に(「日本一幸運な城の話」)。手勢わずか六百。なのに勝敗の鍵を握らされた(「草の靡き」)。毛利家の野望と、安国寺恵瓊の野望は相性が悪い?(「百尺竿頭に立つ」)舞台裏で勝敗の帰趨を左右した武将から、脇役を演じた小身の武士まで、野心と謀略が渦巻く関ヶ原合戦に振り回された男たちを温かく(?)描く傑作小説。
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-池田屋に踏み込む近藤勇以下四名の新選組隊士。そこには三十名を超える志士が潜んでいた。志士と隊士、入り乱れての大乱闘。怒号と悲鳴の轟くなか、突如、総司の意識は徐々に遠ざかってゆく――各種メディアで、新選組が話題となるなか、近藤勇、土方歳三とならび、最も人気のある人物の一人、沖田総司にも注目が集まっている。しかし、隊士きっての剣豪でありながら、出生からその死まで、多くの謎に包まれている。土方や近藤のように本人だと断定できる写真も残っておらず、肖像画と伝えられるものも血縁者をモデルにして書かれたものだといわれ、わずかに自筆の書簡七通が残されている程度である。伝説的な逸話も多く、現代からは「沖田の実像」というものはなかなか見えてこない。本書は、これまでに書かれた文献を踏まえつつ、断片的な資料のすきまを紡ぎ、幕末の動乱を駆け抜けた男の雄々しくも儚い生涯を力強く描く、著者会心の長編小説である。
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4.0「秀忠さまは、当年おいくつですか」お江は淀殿の顔色をうかがうように訊いた。我ながら(もう負けている)と感じ、みじめな気分になっていた。「十七歳におなりです」(六歳も年下のお相手。ましてこちらは三度目の結婚ときている。なんとまあ……)お江は打ちひしがれて、黙り込んだ──。信長の妹・お市の方の三女・お江は、幼くして父母を殺されるという悲運を味わう。そして23歳のとき、三度目の結婚で家康の三男・秀忠に嫁ぐ。このとき、秀忠が将来二代将軍になるとは、だれもが夢想だにしていなかった。関ヶ原の戦いでの大失態、大御所家康の院政、春日局との確執……数々の苦難を乗り越え、江戸幕府の土台を築いた夫婦の波瀾の生涯を描く力作長篇小説!
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3.5下剋上の世、武将なら誰でもが、彼我の動静をかんがみながら、隙あらば天下をねらっていた時代……そんな中に一人、「人間としての信義」を自らの心の軸に据えて生きようとしている男がいた。本書の主人公、丹羽長秀である。織田信長の四天王の一人として、羽柴秀吉、柴田勝家、佐久間信盛らとともに、多くの武勲を立てながらも、天下への野望などは、寸刻も抱かず、淡々と臣下として、“頼れる男”であり続け、かえってそのことによって人望が高かった。やがて信長は、本能寺に消え、秀吉の天下となれば、秀吉に忠誠を尽くしながらも、織田家の子孫たちのために、努力する。秀吉が次第におごり高ぶり、織田家への恩を忘れたようにふるまえば、長秀は、自らの死をもって、その誤りを訴えるという風に、信義一徹を貫き通した人生であった。上司にとっては最も部下にしてみたい男の生涯をたどりながら、自らの利を超越した生き方の美しさを訴える、長編歴史小説。
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3.5織田信長にその剛毅な質を認められ、「鬼武蔵」の異名をとった猛将・森長可。初陣以来の功、さらには天正十年(1582)の武田攻めの活躍により、長可は信濃四郡を与えられて川中島に入り、上杉勢への備えの任を負った。しかし、本能寺の変が起こったことで、前途洋々だった人生に転機が訪れる。信長の死を知った敵対勢力が勢いを増し、窮地に陥った長可は、弟の森蘭丸らの死を悼む暇もなく、手勢三千を率いて川中島を発つと、一揆勢の包囲を突破して信濃を縦断、旧領の美濃金山への帰還を果たした。その後、織田家支配が崩れはじめた東美濃を、金山城に拠って瞬く間に平定した長可だったが、このことが天下人をめざす羽柴秀吉に与することにつながり、さらには徳川家康と秀吉との決戦――運命の小牧・長久手の戦い――へと引きずり込まれてゆく……。歴史の表舞台に立った期間はわずかながらも、鮮烈な光芒を放った若き武辺者の人生を力強く描いた長編小説。
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-実収年貢の7年間分という膨大な負債を抱え、財政破綻の危機にあった播州姫路藩を、27年をかけて再建した河合道臣(寸翁)。本書はこの経世済民の名家老の生き方を感動的に描く長編小説である。元禄バブルのツケにより負債がかさむ一方の姫路藩では、経済の疲弊とともに人心も傷ついていた。代々の勝手向き(財政担当)家老が対策を講じるも効果なく、万策も尽きたと思われたとき、藩主は突然、「本のムシ」のような文人派家老の河合に勝手向きを命じるのである。いきなり修羅場に投げ込まれた河合は、だが周囲の危ぶむ声をよそに、文人派ゆえの懐深い人間味と冷静な頭脳によって、従来の倹約やリストラといった定番政策は避け、民間主導型の特産品の開発やユニークな金融システムを設けるなど、藩と領民が一体となった改革を推進していくのである。さらに負債完済後の次世代の育成も怠らなかった。まさに今日に呼び戻したい人物だったのである。
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4.0「地黄八幡」の旗印の下、数々の合戦でその名を轟かした北条綱成。彼の存在なくして、北条氏の関東制覇はありえなかった――。駿河今川氏の猛将・福島正成の嫡男として誕生した北条綱成は、天文五年に起きた今川家の内紛「花倉の乱」を機に、関東北条氏二代目の氏綱の信頼を受けて北条一門に迎えられる。綱成は闘将の資質を遺憾なく発揮し、「北条の楔」として関東の要衝を押さえ、甲斐武田、越後上杉など数多の強敵と激戦を繰り広げる。日本三大夜戦の一つとして知られる「河越夜戦」では、八万にもおよぶ上杉憲政・上杉朝定・足利晴氏連合軍を寡勢で迎え撃ち、北条方の大逆転勝利に大きな役割を果たした。また、晩年には三代目・氏康の名代として外交手腕を発揮。綱成がもう少し長生きをしていたならば、豊臣秀吉による小田原征伐の行方も違っていたのではないか……。北条軍の先鋒として無類の強さを誇った「地黄八幡の闘将」の生涯を描く力作歴史小説。
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4.2信州・上田城に拠り、わずかな軍勢で徳川の大軍を散々に打ち破ること二度。大坂の陣においても家康の本陣に肉薄し、あと一歩のところまで追い詰めた「真田」。徳川家にとってまさに“天敵”ともいえるこの真田家が、信州の一大名として明治維新まで生き残ることができたのは、あまり知られていない。その最大の功労者が、真田信之である。織田・徳川・豊臣・上杉・北条といった大勢力の狭間にあって、父・昌幸とともに戦国の動乱を巧みに乗り切り、関ケ原の折には、決死の覚悟を見せることで西軍に味方した昌幸と弟・幸村の助命に成功、家康からは譜代大名と変わらない厚き信頼を勝ち取った信之。のちに、“天下を飾る者”としてその器量を称えられた彼こそが、真田の家を長久ならしめた「名将」にして「名君」だったのだ。戦国史上、燦然と輝きを放つ昌幸と幸村の武名に隠れて、これまでほとんど語られることのなかった真田信之の生涯を描いた力作長編小説。
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4.0源氏の貴種に生まれながら、わずか2歳で父を討たれ、母に抱えられて木曽の地に逃れてきた駒王丸。土地の実力者・中原兼遠の屋敷にかくまわれ、その子どもたちと兄弟同然に育った駒王丸だったが、自らの五体を流れる源氏の血を知り、平家全盛の世に何をなすべきかに目覚めていく。やがて義仲と名乗り、凛々しい青年武将となった彼のもとに、平家追討の令旨が下る。二十七歳の旗挙げである。その勇と武略で、横田河原の戦い、倶利伽羅峠の戦いを経て、わずか三年で平家を京から追い落とした義仲。だが上洛からわずか半年後、悲劇の運命が彼を待ち受けていた――。時代に風穴を開け、颯爽たる勇姿を歴史に刻んで散った稀代の英傑を活写する力作小説。樋口兼光、今井兼平、巴御前といった脇役たちの活躍も印象的な、魅力ある物語に仕上がっている。
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-今からちょうど四百年前の九月十五日、日本史上もっともドラマチックな合戦があった。全国の名だたる大名が豊臣方・徳川方の東西に分かれて激突、一日で天下の帰趨を決した関ヶ原の合戦である。戦端が開かれた当初、徳川家康率いる東軍を押しまくった西軍は、小早川秀秋の寝返りによって壊滅のやむなきに至った。だが、この寝返り劇、はたして戦場で突然起こったものだろうか。むしろ何者かによって事前に仕組まれていたのではないか。本書は、限られた歴史的事実をたくみにつなぎ合わせながら、東軍を勝利に導いた「闇の仕掛け人」の素顔とその活躍をいきいきと描き出している。合戦そのものは一日で終わったが、天下をめぐる徳川家康と石田三成の謀略戦は、戦場で対峙する以前から延々と続いていた。そこで力を発揮した男たちこそ、この物語の主人公である。秘められた人間ドラマを掘り起こし、新たな視点から「関ヶ原」を描いた注目の長編時代ミステリー。
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4.0幼くして母・常盤御前と別れて鞍馬に入った遮那王(義経)は、やがて平家打倒を志して鞍馬を脱出、奥州平泉の藤原秀衡のもとへ身を寄せる。幾年を経て凛々しい若武者となった義経は、挙兵した兄・源頼朝と黄瀬川で対面。その後は先に上洛した木曽義仲勢を宇治川に破り、一ノ谷の合戦では鵯越えの奇襲で平家を屋島に追い落とした。颯爽たる英雄となった義経が絶世の舞姫・静御前と出会ったのは、一ノ谷の後、京の警備を任されていたときである。静の舞に母の面影を見た義経は、急速に彼女に魅かれていった。だが、兄・頼朝との関係が悪化するなかで、屋島・壇ノ浦と戦勝を重ねながら勘気を蒙り、義経は静を伴っての逃避行を余儀なくされるのだった……。歌舞伎や講談などで広く日本人に知られ、伝説化されてきた二人の悲劇の物語を、生身の男女のドラマとして血肉を通わせて描ききった力作小説。2005年のNHK大河ドラマ「義経」の世界が楽しくわかる本。
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-徳川家康の六男でありながら、わずか25歳で流人の身となった松平忠輝。92歳で没するまで、67年という歳月を許されることなく配所生活を送った彼は、家康の息子のなかで最も不遇な生涯を強いられた人物だったといえる。生まれついての異相ゆえ、「この赤児を、直ぐに捨てよ!」と家康から遠ざけられた忠輝は、8歳まで自分の本当の父を知らずに育つ。11歳で父への目通りを許された彼だったが、もはや家康の存在を素直に受け入れることはなかった。4万石、14万石、60万石と加増転封が繰り返されて19歳で大大名になった忠輝は、それでも家康や兄の二代将軍・徳川秀忠への反発が募り、大坂夏の陣では意図的な遅参という大事件を起こしてしまう。本書は、宿命的な生い立ちによって徳川宗家を相手に「孤独な戦い」を続けた松平忠輝の生涯を、大久保長安、花井三九郎ら個性的な側近たちの生きざまとともに描ききった長編歴史小説である。
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-大口の新規取引にわたりをつけ、斡旋料を受け取る帳合屋。現代でいうブローカーだが、ただの商いではすまされない危険とも背中合わせだ。元能役者で端整な容貌、剣の腕も立ち、目端の利く音次郎は、帳合屋きっての切れ者。相棒の笛彦兵衛、壷振りの小万姐さんらとともに、江戸の大口商いの裏で暗躍する音次郎らを描く連作時代小説である。大御所・徳川家斉が、「我が葬儀には、我が棺と寛永寺を桜草で染めよ」と遺言して逝った。この情報をつかんだ音次郎たちは、通常は売り物にするほど栽培されない桜草を大量入荷して、大儲けを目論む。そのためにはまず、寛永寺出入りの切り花屋の一角に食い込まなければならないが……(表題作「将軍の切り花」)。その他、「大直しの酒」「砂糖の色」の計3篇を収録。いずれも江戸後期の具体的な産物・物品の歴史的な取引状況を踏まえ、読み手を引き込む物語世界が展開する。気鋭の作家による意欲作。文庫書き下ろし。
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4.5悠久なる中国の歴史は王朝交替の物語であり、そこには実に多くの皇帝たちが登場する。それら名君、暴君、天才、凡才たちの中から、歴史に大きな足跡を残し、存在感の際だっている12人の皇帝について書かれたのが本書である。あの広大な中国の国土を一つにまとめるには並々でない手腕がいる。だが時として、そのような人物が現われて国をまとめ、新しい王朝を興した。しかし、せっかく創業には成功しても二代か三代ですぐに滅びた王朝も多く、もちろん何百年と続いた王朝もある。その違いはいったい、どこにあるのだろうか? その答えは、本書に登場する12人の皇帝たちの事績の中にある。彼らは果たして、どういう考えのもとに政治を行ない、どのような生涯を歩み、どのような歴史を創ったのか。広大な舞台で繰り広げられた12の波瀾万丈の人間ドラマを活き活きと描くと同時に、人が生きていくうえで何が大切かということも教えてくれる一書である。
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3.5江戸期のもっとも優れた改革者・上杉鷹山の仕法と生き方を描いた、書き下ろし長編小説である。江戸開幕から百数十年、米沢藩十五万石は、幕府への領地返上も考えざるを得ないほど、財政窮乏の極みにあった。そんな状況のもとで、日向高鍋藩から養子に入った治憲(鷹山)は、十七歳で上杉家の家督を継ぎ、さっそく藩政改革に着手する。名門であるがゆえに家臣の抵抗は強く、まず自らが襟を正すとともに、思い切った人材の登用で、藩士の意識改革に努める。その上で、倹約の奨励、漆・桑・楮の植立てや縮布製造など殖産興業を推進し、財政基盤を整えていくのである。本書では、改革に取り組む治憲を、剣の奥義を極めることを目指す若き武芸者の生きざまと対比しながら描くことにより、治憲のこころの内を見事に引き出していく。作家と会社社長の二足のわらじをはく著者だけに、ひと味違った新鮮な味付けがなされた鷹山像が描かれている。
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3.0『三国志』といえば、吉川英治氏の小説や横山光輝氏の漫画などによって、日本人にあまねく普及している。しかし、そこに登場する英雄像は、いずれも小説『三国志演義』をもとにしており、歴史書としての『三国志』にかなりの創作が加えられている。では、歴史学者が史書『三国志』をもとに、当時の時代状況を踏まえながら人物伝を書いた場合どうなるか。本書は、曹操と並んで三国志最大の英雄と称えられる諸葛孔明を、歴史上の人物として評価し直し、その真実の生涯に迫った力作評伝である。劉備から「三顧の礼」を受けて「天下三分の計」を説き、その戦略構想に沿って蜀漢建国を成し遂げる孔明。しかし劉備に先立たれ、幼主劉禅を補佐して一国の命運を担うようになると、悲劇の最期に向けて運命が急展開していく。小説とはまた違う味わいで、稀代の名補佐役の真摯で高潔な人生が浮き彫りになっている。昭和41年から読み継がれた孔明伝の決定版として文庫化されたものを電子化!
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3.3戦国の梟雄と称される松永久秀。織田信長上洛前の京の実質上の支配者であった彼は、主家・三好家を乗っ取り、第十三代将軍・足利義輝を弑逆、さらには東大寺放火と、その非道な行動から悪人のレッテルを貼られてきた人物である。だが、かつて同じく梟雄と称された斎藤道三や信長が、一方で優れた先見力を持ち、時代の先駆者として近年再評価著しいように、久秀もまた、少なからずその面を持ち合わせている。本書は、彼の評価を人間的な史観から問い直す力作である。京の東寺を縄張りとする浮浪の少年であった久秀は、ひょんな経緯から三好家と縁の深い隆法院の寺男となり、さらに離宮八幡の荏胡麻買いの人夫に。この時期に培った視野の広さ、兵学、そして処世の術をもって、後に三好長慶に仕え、次第に能力を発揮していくのである。何の後ろ盾もなく、自らの力のみを信じて乱世を疾駆した男の心情と、下剋上そのものの波瀾の生涯を見事に描出する長編小説。
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-法神流は江戸後期、上州(群馬県)赤城山で楳本法神(うめもとほうしん)が創始した実戦的剣法。門下3千人といわれ隆盛を誇ったが、その剣名を江戸にまで轟かせたのは、2代目・須田房之助である。房之助は少年時代から、近在では太刀打ちできる相手がいないほどの暴れん坊だったが、楳本法神が放浪から戻ってくると、完膚なきまで打ちのめされる。降参し、教えを乞う房之助だったが、その修行たるや言語に絶する激しいものだった。やがて「赤城の天狗」と異名をとるほどの無敵の剣士となった房之助は、前橋に道場を構え、つづいて江戸へ進出する。しかし最強を誇り、道場が急速に門弟を増やし始めると、他流から執拗かつ卑劣な陰謀を仕掛けられる。剣で勝ち目のない彼らは、鉄砲で暗殺してまで房之助を亡きものにしようとするのだが……。百年後の昭和4年の天覧試合で流派出身の剣士が優勝。現代にまでその名を響かせた法神流の、最強剣士の生涯を描く。
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-剣一筋に生きた凄まじき男達がいた! 本書は、剣豪小説の第一人者が、戦国期から江戸初期にかけて活躍した高名な剣客たちの逸話を鮮やかに描いた短篇小説集である。飯綱の妖術を遣う敵を一瞬にして倒した塚原卜伝。薪一本で剣客を手玉に取った富田勢源。思いのままに敵を御し、戦わずして勝つ伊藤一刀斎。武田晴信・長尾景虎らがその武勇を讃えた法体の名人・佐野祐願寺、島津藩のお家流示現流を天下無敵の剣法に育てた東郷重位。将軍家兵法師範を務め、天下に敵なしと言われた小野次郎右衛門、「直立ったる身の位」によって剣術を変革した柳生兵庫助。燕返しの大技を遣う佐々木小次郎を、枇杷の木刀で一撃で倒した宮本武蔵。杖ひとつで骨まで打ち砕き、相手を“速死”させる柳生十兵衛。高田馬場の血闘で獅子奮迅の働きをし、赤穂藩士としての吉良邸討ち入りで勇名を馳せる堀部安兵衛。迫真の描写で、10人の剣客の強さの真髄を切れ味よく浮き上がらせた一冊。
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3.0上杉謙信と聞いてまず思い浮かぶのは、どのようなイメージだろうか。あの信長軍団を破った戦国最強の武将、毘沙門天を崇拝する敬虔なる仏教徒、生涯女人を近づけなかった変わり者、大酒飲み、武田信玄の永遠のライバル……。これらの事からわかるのは、まず戦国時代には類を見ない異色の人物だということである。事実、謙信の場合、領土欲から合戦を仕かけるということはなかった。すべての戦いが正義という大義名分のもとになされたのである。著者は取材を重ね、史料に当たるうち、謙信の重大な欠点に気づいたという。それは実に短慮な性格であったということ。気に入らない部下を大勢の前で叱責する、思い通りにならない部下に嫌気がさし責任を途中放棄してしまうなど、明らかにリーダーとしては不適格な一面がある。著者はそこに謙信の武将としての限界を見た。信長と最も異なるのがその点だという。これまでの天才・謙信像を覆し、その内面を赤裸々に描く。
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4.0鈴なりの勲章を左胸にかかげ、胸を張ったちょび髭の陸軍軍人の写真。その表情はむしろ柔和で、<カミソリ>の異名を取った男とは思えない雰囲気を漂わせている。東条英機――太平洋戦争開戦時の首相であり、戦後はA級戦犯として絞首刑になった彼の生涯を描いた本書では、そんな写真を装丁に使った。「冷酷・悪辣な侵略者」のように見られがちな東条だが、それは実際の人間像とは程遠いものだ。日本陸軍の一軍人として、何より天皇の忠実な臣下として自らを任じていた東条は、むしろ40代までは軍部でも地味な存在であった。それが54歳にして陸軍次官に就任するや、まるで何かに憑かれたように権力の中枢を占め、対外強硬策を支持し始める。やがて緊迫する国際情勢のなか、首相として国家の命運を担った彼は、日本を最悪の事態へと導くだけの役割を演じてしまう。戦時日本のリーダーという運命を背負った男の「光と闇」を、克明に描き出した力作小説。
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4.0戦前の日本軍のイメージとして、「精神主義」「白兵思想」がよく挙げられるが、果たして本当だろうか?技術力を軽視し、「明治に制定された38式歩兵銃をいつまでも使い続けた」という批判は今でも根強いものがある。しかしそれは当時、世界的に見ればごく普通のことで決して日本軍だけの珍しい例ではなく全くの誤解である。本書は、「第二次世界大戦での日本の軍事技術力はいかなるレベルにあったのか?」「戦争の敗因は一体どこにあったのか?」を、“技術戦”という新たな視点で説き明かした白熱の対談だ。戦車・飛行機・大砲・小銃・自動車など陸戦兵器を中心に、その性能や戦略、開発の背景を、主な対戦国である“米英中ソ”の4ヵ国と徹底比較していく。「誤解された38式歩兵銃」「手榴弾を愛した敵軍」「日本製戦車のセンス」「インパール作戦は『悪い見本』か?」など、激戦の意外な真実が見えてくる!『技術戦としての第二次大戦』を改題。
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4.2「三国志」の魅力は、幾多の武将の活躍と、軍師たちの戦術にある。本書は、その中から軍師のみ34人を選び出し、彼らの生き方と果たした役割を、人物ごとにまとめたものである。世は戦乱の時代、大きな変革の時代である。日々激しく動く状況下に身を置きながら、軍師たちは、時代の趨勢をいかに読み、いかなるグランドデザインを描き、いかなる戦術を立て、いかに行動したのか?「天下三分の計」を描いた諸葛孔明。軍師として勲功第一の働きをしながら曹操から死に追いやられた荀いく。赤壁の戦いで曹操軍を撃退するものの早すぎる死を迎えてしまった呉の周瑜。非凡な才能を持ち劉備から信頼されるものの、母への孝を貫くためにやむなく曹操に仕えた徐庶、などなど。三国志学会事務局長である著者は、物語の中ではなく、歴史としての三国時代に活躍した軍師たちの実際の人物像と行なった事績を紹介しているので、この時代に対する興味が一層深まる書である。
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-鎌倉幕府を開いた源頼朝、浮気がばれて妻の北条政子から“ひどい目”に!? 天下の豪傑・加藤清正、便所で高ゲタをはくそのワケは? 名奉行・大岡越前守が、「銭をくれ」バアさんにお手上げ!? 明治維新の功労者・勝海舟、急所を犬に咬まれて悶絶!?――日本史に名を残した有名人たちも、一皮むけばタダの人。本書は、颯爽たる活躍で知られる面々の「面白い話・珍しい話・ドジな話」を一堂に集めた決定版である。戦国武将の意外な一面から、江戸時代の諸大名・文化人たちの笑える話、幕末動乱期の男たちの変わった苦労談、歴史に残るドジな男女の色恋沙汰までと、「歴史って、こんなに面白かったのか!」と目からウロコが落ちる面白エピソードが満載。とにかく楽しめる蔵出しネタのオンパレード!!
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4.5宋建国の英雄・楊業の死から2年。息子たちに再起の秋が訪れる。宋国と、北に位置する遼国は、燕雲十六州の支配をめぐって対立。かの地を手中に収めたい宋の帝は、楊業の息子で楊家の長・六郎に楊家軍再興を命ずる。かつて味方の裏切りに遭い、命を落とした父への思いを胸に秘め、立ち上がる楊家の男たち。六郎は、父が魂を込めて打った「吹毛剣」を佩き、戦場へ向かう。対するのは強権の女王・蕭太后率いる遼国の名将・石幻果。天稟の才を持つこの男は蕭太后の娘婿で、「吸葉剣」という名剣を佩いていた。その石幻果が父とも慕うのが、「白き狼」と怖れられる遼国一の猛将・耶律休哥。楊業を斃した男である。戦場で見えた六郎と石幻果。剣を交えた瞬間、天を呪いたくなるような悲劇が幕を開ける。軍閥・楊一族を描いて第38回吉川英治文学賞に輝いた『楊家将』の続編でありながら新展開。『水滸伝』『楊令伝』に登場する宝刀「吹毛剣」の前史がここにある。
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4.2八世紀中頃の黄金発見に端を発する奥州動乱と、中央政界の血腥い権力抗争を描く大河ロマン。本篇は全三部構成の第一部であり、奈良朝を震撼させた「橘奈良麻呂の乱」を中心に描く。蝦夷の若者・丸子嶋足は、黄金を土産に帰京する陸奥守・百済敬福の従者となり、平城京に上る。朝廷の野心から陸奥国を守るための上京であり、敬福の後押しもあって兵衛府に仕えることになった。やがて、八年の歳月が過ぎ、番長に出世していた嶋足のもとに、同じ蝦夷の若者・物部天鈴が現れる。天鈴は嶋足を衛士府の少尉・坂上苅田麻呂(田村麻呂の父)と引き合わせ、苅田麻呂に採り立てられるよう仕向けた。一方、中央政界は、橘諸兄の死後、その子・奈良麻呂と藤原仲麻呂との対立が激化。奈良麻呂派による仲麻呂打倒の策謀が進行する中、嶋足はそれを未然に防ぐべく、渦中に身を投じていくのであった……。奥州動乱前夜の若き蝦夷たちの躍動と葛藤を、壮大なスケールで描く。