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白い鶴よ、翼を貸しておくれ チベットの愛と戦いの物語
亡命チベット人医師が遺したチベット愛と苦難の長編歴史小説 1925年、若きアメリカ人宣教師スティーブンス夫妻は幾多の困難を乗り越え、チベット、ニャロン入りを果たした。現実は厳しく布教は一向に進まなかったが、夫妻は献身的な医療活動を通じて人びとに受け入れられていく。やがて生まれた息子ポールと領主の息子テンガは深い友情で結ばれる。だが、穏やかな日々も長くは続かない。悲劇が引き起こす怨恨。怨恨が引き起こす復讐劇。1950年、新たな支配者の侵攻により、人びとは分断され、緊迫した日々が始まる。ポールもテンガもその荒波の中、人間の尊厳を賭けた戦いに身を投じてゆく。 【目次】 この本について 第1部 第2部 第3部 第4部 第5部 訳者解説 【著者】 ツェワン・イシェ・ペンバ チベットのギャンツェ生まれ。医師であり作家。1941年にインドのイギリス式学校に入学して英語を身につけ、1949年にロンドン大学に留学。医学を学び卒業後はブータン、インドなどで外科医として活躍。1957年にチベットで過ごした日々をエッセイに綴った『少年時代のチベット』をロンドンで出版。1966年にはチベット人として初めての長編小説『道中の菩薩たち』を出版。その後創作活動から離れていたが、晩年ようやく実現したチベット旅行をきっかけに『白い鶴よ、翼を貸しておくれ』を執筆後病没。享年79歳。 星泉 1967年千葉県生まれ。東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所・教授。チベット語研究のかたわら、チベットの文学や映画の紹介活動を行っている。訳書にラシャムジャ『雪を待つ』、共訳書にトンドゥプジャ『ここにも躍動する生きた心臓がある』、ペマ・ツェテン『ティメー・クンデンを探して』、タクブンジャ『ハバ犬を育てる話』、ツェラン・トンドゥプ『黒狐の谷』などがある。『チベット文学と映画制作の現在 SERNYA』編集長。 -
ファミリア・グランデ
加害者告発に加え、否認した母と傍観者だった自分も性虐待に加担していたという自責から書かれた本は他に類を見ない。まさに震撼の書である。――信田さよ子 ■本書の内容 30年前、わたしの双子の弟を性虐待したのは、誰もが敬うエリート学者の「継父」だった。そして、現実から目を背け、わたしたち姉弟を糾弾したのは、誰よりも自由と解放を重んじたはずのフェミニストの闘士、母だった――。 1980~90年代、自由礼賛の名の下に、左派インテリの両親はわが子の人生を支配した。「継父」による加害が発覚したあとも、周囲の大人たちは(ひとりを除き)目をつぶり、告発しないことを選んだ。その共謀の過程で、子どもたちは名ばかりの同意と沈黙を強いられてきたのである。 著者は、傍観者としての、小さな加担者としての罪悪感を見つめ直し、苦悩の記憶を掘り起こしながら、文学的努力を払い、その経験を言語化する。 実父は「国境なき医師団」創設者のひとり、叔母はトリュフォー監督も認めた有名女優、母も継父も著名な言論人ということもあり、2021年1月の原書出版時にはフランス中に激震が走った。本が出版された1週間後には、「#MeTooInceste」というハッシュタグで8万件ものツイートが流れ、マクロン大統領が「子どもに対する性犯罪」の対応に関して声明を発するまでに至ったという。 本書は、被害がなかったことにされる構造と、沈黙にともなう罪悪感をありありと表現した一冊だ。フランスで32万部突破、海外版権15か国の話題作、ついに邦訳。 -
ハックルベリー・フィンの冒けん
★柴田元幸がいちばん訳したかったあの名作、ついに翻訳刊行。 ★オリジナル・イラスト174点収録。 ★訳者 柴田元幸の「作品解題」付き。 「トム・ソーヤーの冒けん」てゆう本をよんでない人はおれのこと知らないわけだけど、それはべつにかまわない。あれはマーク・トウェインさんてゆう人がつくった本で、まあだいたいはホントのことが書いてある。ところどころこちょうしたとこもあるけど、だいたいはホントのことが書いてある。べつにそれくらいなんでもない。だれだってどこかで、一どや二どはウソつくものだから。まあポリーおばさんとか未ぼう人とか、それとメアリなんかはべつかもしれないけど。ポリーおばさん、つまりトムのポリーおばさん、あとメアリやダグラス未ぼう人のことも、みんなその本に書いてある。で、その本は、だいたいはホントのことが書いてあるんだ、さっき言ったとおり、ところどころこちょうもあるんだけど。 それで、その本はどんなふうにおわるかってゆうと、こうだ。トムとおれとで、盗ぞくたちが洞くつにかくしたカネを見つけて、おれたちはカネもちになった。それぞれ六千ドルずつ、ぜんぶ金(きん)かで。つみあげたらすごいながめだった。で、サッチャー判じがそいつをあずかって、利しがつくようにしてくれて、おれもトムも、一年じゅう毎日(まいんち)一ドルずつもらえることになった。そんな大金、どうしたらいいかわかんないよな。それで、ダグラス未ぼう人が、おれをむすことしてひきとって、きちんとしつけてやるとか言いだした。だけど、いつもいつも家のなかにいるってのは、しんどいのなんのって、なにしろ未ぼう人ときたら、なにをやるにも、すごくきちんとして上ひんなんだ。それでおれはもうガマンできなくなって、逃げだした。またまえのボロ着を着てサトウだるにもどって、のんびり気ままにくつろいでた。ところが、トム・ソーヤーがおれをさがしにきて、盗ぞく団をはじめるんだ、未ぼう人のところへかえってちゃんとくらしたらおまえも入れてやるぞって言われた。で、おれはかえったわけで。 ——マーク・トウェイン著/柴田元幸訳『ハックルベリー・フィンの冒けん』より ■タイトルの表記について(本文「解説」より) ハックはまったくの無学ではないし、学校に行けばそれなりに学びとるところもあるようだから(まあ六七(ろくしち)=三十五と思っているみたいですが)、もし漢字文化圏の学校に通ったとしたら、字もある程度書けるようになって、たとえば「冒険」の「険」は無理でも、「冒」は(横棒が一本足りないくらいのことはありそうだが)書けそうな気がするのである。 -
幸いなるハリー
老い、病、性のきらめき、言えなかった秘密、後戻りのできない人生の選択。 「世界最高の短篇作家」による珠玉の10作品。 人生には完璧な絶望も、澄みきった希望もない。 パールマンの短篇集にちりばめられた無言の種は、あなたのなかで芽吹いて、やがてぞっとするほど優雅な花を咲かせるだろう。 ――松家仁之(作家) 愛おしさ、愚かしさ、優しさ、酷たらしさ、善意と悪意、救済と断罪etc. 人間のすべてを知り尽くした作家、それがイーディス・パールマンだ。 ――豊崎由美(書評家) なにかを諦める。苦く、みじめで哀しい一瞬――それらひとつひとつを柔らかい布で磨きあげ、息を呑むほど美しい宝石に変えてしまう。人生の粋を極めた短篇集。 ――倉本さおり(書評家) 本書は、原書Honeydewのうち『蜜のように甘く』(亜紀書房、2020年刊行)に未収録の10篇を訳出した日本オリジナル版です。 【目次】 ■ 介護生活 ■ 救済 ■ フィッシュウォーター ■ 金の白鳥 ■ 行き止まり ■ 斧が忘れても木は忘れない ■ 静観 ■ 花束 ■ 坊や ■ 幸いなるハリー -
赤毛のアン
詩人の渾身の訳と画家の叙情豊かな絵で贈る世界名作文学。 全世界で5,000万部突破の感動の名作文学から、詩人であり童話作家であった岸田衿子氏の訳と 安野光雅氏の絵による、新しい翻訳絵本が誕生しました。 ◎颯爽と明るく、ちゃめっけたっぷりのアンが、風光明媚な島の自然から、多くのものを受け取り、心優しい人びとと の魂の触れ合いを通し、目覚め、成長していく、こころ温まるお話がいっぱい詰まっています。 ◎想像することの素晴しさを忘れないためにも必読の書です! ◎総ルビになっていますので、小学1年生から読むことができます 著者について 作:ルーシイ=モード=モンゴメリ (Lucy Maud Montgomery) 1874年、カナダ、プリンス・エドワード島に生まれる。幼い時に母と死別、祖父母に育てられ教師になる。『赤毛のアン』シリーズのほか、小説、短篇集を残し、世界中で多くの読者の心を捉えた。 訳:岸田衿子(きしだ えりこ) 1929年、東京に生まれる。詩人・童話作家。岸田國士を父に持ち、妹は女優の岸田今日子。東京芸術大学油絵科を卒業。詩集に『忘れた秋』『あかるい日の歌』『いそがなくてもいいんだよ』。絵本、童話に『かばくん』『帰ってきたきつね』『プッポコとペッポコ』シリーズ。童詩集に『木いちごつみ』『かぞえうたの本』『へんなかくれんぼ』『森のはるなつあきふゆ』。エッセイ集に『風にいろつけたひとだれ』『草色の切符を買って』。翻訳にアーノルド・ローベル『どろんここぶた』などがある。 絵:安野光雅 (あんの みつまさ) 1926年、島根県津和野町に生まれる。BIB金のリンゴ賞(チェコスロバキア)、国際アンデルセン賞などを受賞。1988年紫綬褒章、2008年菊池寛賞、他を受賞。2012年、文化功労者に選ばれる。 主な著作に『ふしぎなえ』「『旅の絵本』シリーズ(全8巻)」(福音館書店)、『本を読む』(山川出版社)、『小さな家のローラ』(小社刊)などがある。 2001年、津和野町に「安野光雅美術館」、2017年、京丹後市の和久傳の森に「森の中の家 安野光雅館」が開館。 -
レモンケーキの独特なさびしさ
「種明かしをするわけにはいかないので、ここではただ、この本を書いているあいだ、感じやすい(sensitiveである)とはどういうことかについてたくさん考えていた、とだけいっておきましょう」――エイミー・ベンダー 9歳の誕生日、母がはりきって作ってくれたレモンケーキを一切れ食べた瞬間、ローズは説明のつかない奇妙な味を感じた。不在、飢え、渦、空しさ。それは認めたくない母の感情、母の内側にあるもの。 以来、食べるとそれを作った人の感情がたちまち分かる能力を得たローズ。魔法のような、けれど恐ろしくもあるその才能を誰にも言うことなく――中学生の兄ジョゼフとそのただ一人の友人、ジョージを除いて――ローズは成長してゆく。母の秘密に気づき、父の無関心さを知り、兄が世界から遠ざかってゆくような危うさを感じながら。 やがて兄の失踪をきっかけに、ローズは自分の忌々しい才能の秘密を知ることになる。家族を結び付ける、予想外の、世界が揺らいでしまうような秘密を。 生のひりつくような痛みと美しさを描く、愛と喪失と希望の物語。 -
細菌ハックの冒険
生物実験で本当は鳥になるはずだったのに、コレラ菌になってしまった主人公は人間の体内に入る。そこには騒然とした細菌国家があった……。当時、世界的に注目を浴びていたダーウィンの『進化論』への痛烈な批判を込めて描く。 本邦初訳。 -
心は二十歳さ――戦時の記録3
「ここでは憎しみに浸かりきりというわけではないが、やはりちょっぴり人間的悲惨を感じている。ともに語り合う人間がだれもいない。……なんという精神的孤独だろう。撃墜されたとしても絶対になに一つ後悔しないつもりだ。未来の蟻塚の世界はわたしを恐怖させる。……」『戦時の記録』三分冊の最終巻をなす本書は、1943年11月から1944年7月までを収める。北アフリカ、アルジェでの無為の日々から戦列に復帰したサン=テグジュペリは、1944年7月31日、コルシカのボルゴ基地からフランス南部上空の偵察飛行へと飛び立ったまま、未帰還となった。彼が愛してきた、目に見えない絆で結ばれた整いとしての文明の崩壊、その瓦礫と廃墟、蟻塚、人間の砂漠…未来の世界への深い危惧を抱きつつも、「ひとはかならず自分の力の限界までいく義務があるのだ」と、戦闘員としての自分の持ち場に、義務を果たしに戻っていったサン=テグジュペリの最晩年の日々を、多くの証言と資料によって辿る。 -
ある人質への手紙――戦時の記録2
『戦時の記録』3分冊の第2冊目にあたる本書は、1942年から1943年までのサン=テグジュペリをめぐる資料、証言を収める。苦渋の選択の結果であった合衆国亡命の日々に、連合軍の北アフリカ上陸の報に接し、歓びのうちに発表された「まずフランスなのだ」。サン=テグジュペリは、この公開状でおこなった呼びかけに忠実に、フランスの解放のため、一兵士としてみずからの生命をかけるべく戦列に復帰した。政治抗争の罠にとらえられながら、『戦う操縦士』、『ある人質への手紙』、そして『星の王子さま』のなかに、人間が生きるよすがとなる磁力線の存在を、言葉、階級、党派を超えて人間を結び合わせるものの存在を鮮やかに示して――。近年になってはじめて完全に公表された「アンドレ・ブルトンへの手紙」を新たに加え、〈戦時の記録〉全3冊は、ミュンヘン協定(1938)の直後にはじまり、第二次大戦勃発後のサン=テグジュペリの最後の日々をたどる。 -
平和か戦争か――戦時の記録1
〈戦時の記録〉全3冊は、ミュンヘン協定(1938)の直後にはじまり、第二次大戦勃発後のサン=テグジュペリの最後の日々をたどる。その第1巻である本書は、33-2飛行大隊の一員として任務に赴いたのち、パリ占拠とヴィシー政府の樹立、独仏休戦を経て、動員解除を受けてアメリカへ渡り、かの地で合衆国参戦を迎えるまでを収める。ニューヨークのフランス人社会のなかで、ドゴール派とヴィシー派の抗争に巻き込まれながら、サン=テグジュペリはつねに、政治や党派を超えて「尖塔をそびえ立たせた大聖堂の一つ一つの石材となるべき」人間と、その人間の肉体と精神をはぐくむ母胎としての文明の運命に思いを寄せた。のこされた覚え書や手紙、また、レオン・ヴェルトやアン・モロウ・リンドバーグをはじめ、彼をめぐる人々による証言が、当時のサン=テグジュペリの面影を生彩豊かに伝える。 -
傷つきやすいものたち
ストレーガ賞W受賞の傑作ヒューマンドラマ。 遠くへ去った親友。傷を抱えた娘。あのときなぜ私は…。 語り手の後悔とレジリエンスの物語に心揺さぶられた。 ――中島京子さん(作家) 奪われた尊厳を、私たちの手に取り戻す。 襲いかかる不条理に対し、女性たちが自分らしく息ができる場所を探していく、静かで峻烈な抵抗の物語。 ――辻愛沙子さん(株式会社arca CEO | Creative Director) こんな物語に出くわすから読書はやめられないのだ。 この一作から世界文学の広さと大きさを思い知り、胸が震えた。 ――間室道子さん(書評家、代官山 蔦屋書店 文学コンシェルジュ) イタリア文学賞の最高峰ストレーガ賞+同賞ヤング部門賞W受賞! ルチアは故郷の山間の町に暮らしている。夫は単身赴任で家を出たままで、老父が暮らす近所の実家を時々訪れる日々。都市封鎖でミラノの大学から戻ってきた娘は部屋に引き籠もったままだ。ある日、ルチアは父親から土地を継げと持ちかけられる。その土地はかつて、今も町に影を落とす忌まわしい事件が起きた場所だった。ルチアは封印していた記憶と向き合うことに――。 すべての人間の弱さを力強く描いた、感動の人生賛歌。 -
「フランス文学」はいかに創られたか:敗北から国民文学の形成へ
敗戦の先に見えた文学のかたち 世界文学が話題になる今日、国民文学や文学史の誕生を問いかける試みは時代錯誤に思われるかもしれない。 他方、近年のナショナリズムの高まりや排外主義の台頭は見逃すことができない広がりを見せている。 こうした状況は、国民国家=国民文学という図式に再考をうながす。情報のグローバル化と文化のナショナリズムは矛盾しない。そもそも文学にはそれなりの自立性が備わっており、国民国家に容易に回収されるものではないのだ。 本書はこうした問題意識から「フランス文学」の誕生とその形成を解明してゆく。 まず確認できるのは、フランス革命下、「文芸」が「文学」に変貌し、文学が社会の表現であるという共通了解が醸成されてくることだ。 さらに特筆すべきは、普仏戦争の敗北を受けた第三共和政のもとで「フランス文学史」が、修辞学や批評、歴史学と競合しながら彫琢されていったという事実である。 そこには国民の立ち上げという文脈に解消できない、ゆたかな地平が広がっていた。〈戦後民主主義〉としてのフランス文学史の発見! 【目次】 序章 近代文学、国民国家、文学史 加藤周一『日本文学史序説』の意義/文学の終焉?——柄谷行人/ 国民文学から文学史へ/本書の構成 第一章 日本の「世界文学全集」とフランス文学 世界文学の多様化/国文学の誕生/世界文学全集の時代/ 河出書房版『世界文学全集』/中央公論社版『世界の文学』/ 集英社のシリーズ/池澤夏樹編『世界文学全集』の新しさ/ 審問に付される正典 第二章 世界文学からフランス文学へ ゲーテと知的共同体のユートピア/現代の世界文学論/ ダムロッシュ『世界文学とは何か?』/フランコ・モレッティ『遠読』/ パスカル・カザノヴァ『世界文学空間』/世界文学論と日本——批評と教育 第三章 「国民文学」の誕生 文学 littérature が意味するもの/『フィクション試論』と小説の擁護/ 文人から作家へ/スタール夫人『文学論』の基本構図/ フランス文学の特質/文学のジェンダー性、すでにして/ 文学と改善可能性/『文学論』の価値とその後/ 文学は社会の表現である——ボナルド/ドイツ・ロマン派の文学観 第四章 文学史の成立とその争点 外国文学へのまなざし/歴史的な思考の台頭/ アンペールの「国民文学」宣言/文学と国民史/ 文学史以前の文学講義——ラ・アルプ、ヴィルマン、ニザール/ 忘れられた文学史家タイヤンディエ 第五章 中等教育における文学史と歴史学 第三共和政下の教育改革/ラテン語vsフランス語/ 中等教育におけるフランス文学史/ ルベーグ『フランス文学選集』の射程/ヴィクトル・ユゴーの特権性/ 十九世紀文学の飛躍/歴史学と中等教育/『二人の子どものフランス巡歴』 第六章 フランス第三共和政下の人文学の再編 第三共和政とは何か/普仏戦争の衝撃——ルナンとテーヌ/ エミール・ゾラの歴史認識/総合大学 Université の再生に向けて/ モデルとしてのドイツ/改革の具体策/大学改革と人文学の再構築/ 知的プロレタリアートの不満 第七章 ギュスターヴ・ランソンの試み 歴史学を前にした文学史/ランソン『フランス文学史』とその意図/ ランソンに何が欠落しているか/ランソンの原理/文学史の政治性/ 他の学問分野へのまなざし——歴史学と社会学/ランソンの先見性 終章 現代のフランス文学史 フランスで刊行された文学史/日本のフランス文学史/ 作家の地位の変遷/諸外国で刊行されたフランス文学史/ 文学史の未来に向けて あとがき -
別れを告げない
ノーベル文学賞受賞作家の最新長篇! 作家のキョンハは、虐殺に関する小説を執筆中に、何かを暗示するような悪夢を見るようになる。ドキュメンタリー映画作家だった友人のインソンに相談し、短編映画の制作を約束した。 済州島出身のインソンは10代の頃、毎晩悪夢にうなされる母の姿に憎しみを募らせたが、済州島4・3事件を生き延びた事実を母から聞き、憎しみは消えていった。後にインソンは島を出て働くが、認知症が進む母の介護のため島に戻り、看病の末に看取った。キョンハと映画制作の約束をしたのは葬儀の時だ。それから4年が過ぎても制作は進まず、私生活では家族や職を失い、遺書も書いていたキョンハのもとへ、インソンから「すぐ来て」とメールが届く。病院で激痛に耐えて治療を受けていたインソンはキョンハに、済州島の家に行って鳥を助けてと頼む。大雪の中、辿りついた家に幻のように現れたインソン。キョンハは彼女が4年間ここで何をしていたかを知る。インソンの母が命ある限り追い求めた真実への情熱も…… いま生きる力を取り戻そうとする女性同士が、歴史に埋もれた人々の激烈な記憶と痛みを受け止め、未来へつなぐ再生の物語。フランスのメディシス賞、エミール・ギメ アジア文学賞受賞作。 -
イスタンブル、イスタンブル
美しき街への痛切な愛を謳う傑作トルコ文学。 イスタンブルの地下牢獄の一室に、学生のデミルタイ、温厚なドクター、気難しい床屋のカモが閉じ込められていた。苛烈な拷問を待つあいだ、彼らは互いに物語をして時を過ごす。そこに激しい拷問を受けたばかりの老人キュヘイランが加わる。彼は幼い頃から父が影絵で物語ってくれたイスタンブルに憧れていた。彼らはまるで疫病を避けて家に閉じこもり物語をし合った『デカメロン』のように物語り合い、空想の世界でお茶を飲み、煙草を味わう。やがて彼らの過去が少しずつ明らかになり、と同時にそれぞれがまた拷問へと連れだされていく…。 2018年EBRD(欧州復興開発銀行)文学賞受賞。東西が溶け合う美しい街と、その地下で彼らを襲う残酷な現実――クルド系トルコ人の作家がイスタンブルへの痛切な愛を謳う傑作トルコ文学。 (底本 2023年9月発売作品) -
作家たちのフランス革命
想像の源泉か? 歴史観の表明か? フランス革命は「自由・平等・友愛」を標語にする共和国の出発点であり、革命をどう記述するかはフランスのナショナル・アイデンティティ構築の鍵を握る。フランスの作家たちは大革命をどのように眼差し、どう描いてきたのだろうか。本書では、18世紀から20世紀を専門とする7名の仏文学者たちが、7人の作家の作品を通し、この問いに鮮やかに答える。 取り上げるのは、革命を経験したナポレオンとほぼ同世代のスタール夫人(村田)とシャトーブリアン(小野)、「ブリュメール18日」のクーデタの直後に生まれナポレオン帝政期と復古王政期に人となったバルザック(柏木)とユゴー(西永)、そしてドレフュス事件と第一次大戦のあいだの1912年に「恐怖政治」を扱った小説を出版したアナトール・フランス(三浦)、その一回り下の世代で、ドレフュス事件から両大戦間の人民戦線期にかけて「フランス革命劇」連作8篇を書いたロマン・ロラン(アヴォカ)、最後に我々と同時代人で、マリー=アントワネットを主人公にヴェルサイユ最後の3日間を描いたシャンタル・トマ(関谷)。 約200年に渡って強烈な個性と才能が考え抜いてきた「革命像」が、いまここに広がる。 -
グリム ドイツ伝説集
民族と歴史の襞に分け入る試行 完全新訳による585篇と関連地図を収録 200年の時を超えて甦る—グリム兄弟の壮大なる企て! 民族と歴史の襞に分け入る試行 完全新訳による585篇と関連地図を収録 グリム兄弟によって企図されたこの試みには、大きく分けて土地と結びついた伝説を集めた【上巻】と歴史と結びついた伝説を集めた【下巻】の中に585篇に及ぶ膨大な伝説が集められている。個別には、小人、巨人、山の精、家の精、水妖、魔女、妖精、王子、夢魔、竜、人狼、滅んだ城等にまつわる多種多彩な伝説が全篇にちりばめられている 【目次】 上巻では伝説1〜363までを収録する 【著者】 グリム兄弟 19世紀にドイツで活躍したヤーコプとヴィルヘルム兄弟。言語学者・文献学者・民話収集家・文学者。日本では、『グリム童話集』の編集者として知られる。 鍛治哲郎 鍛治哲郎(かじ。てつろう) 1950年大阪府生れ。 神戸大学教養部、東京大学教養学部・総合文化研究科、 鎌倉女子大学教育学部に勤務。東京大学名誉教授。 専門はドイツ近代文学。著訳書に『ツェラーン 言葉の身ぶりと記憶』、『グリム ドイツ伝説集(上)(下)』など。 桜沢正勝 桜沢正勝(さくらざわ・まさかつ) 1941年大阪府生れ。2017年7月没。 神戸大学教養部勤務後退職。専門はドイツ文学。 訳書にE・シュタイガー『ゲーテ』(共訳)、『グリム ドイツ伝説集(上)(下)』 -
ラフカディオ・ハーンの耳、語る女たち 声のざわめき
ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)、聲[こえ]の旅人、その作品と生涯へ読者を招待する。渾身のハーン論を一挙集成し、大幅に加筆&集成した「大増補&改訂新版」。たくさんの絵図・写真も掲載する。 ギリシャ、アイルランド、米国、マルチニークをめぐり歩き、1890年に、40歳を前にしてラフカディオ・ハーンは来日した。 盲目の女性芸能民の三味線、行商人の下駄のひびき、大黒舞[だいこくまい]の踊りと歌、道ゆく笛の音……。富国強兵に突き進む近代化のなかで「雑音」として切り捨てられた口承文芸の調べ、民衆の暮らしの音が、ざわめきとなってハーンの耳を圧倒する。 シンシナーティやマルチニークでの濃厚な声もまた、潮騒のようにハーンに押し寄せる。「海の声は…たくさんの声がかもしだすざわめき」なのである。 このざわめきを聴き取るために、ハーンが小泉セツに怪談を語らせるさい、彼女にこう求めた――「ただあなたの話、あなたの言葉、あなたの考でなければ、いけません」。セツのそばで耳の孔をおしひろげながら、彼は「小泉八雲」となった。 凍てつく息を男の顔にふきかける「雪おんな」。耳をひきちぎられる琵琶弾きの盲僧「芳一[ほういち]」。変わり果てた故郷の姿に絶望する「浦島[うらしま]」。 小泉セツ、女たち、病者、獣、死者がざわめく声に、ハーンは耳の奥で、何かを聞いたのだ。 【目次】 【Ⅰ】ハーンの耳 序 文字の王国/大黒舞/ざわめく本妙寺/門づけ体験/ハーメルンの笛吹き/耳なし芳一 考 【Ⅱ】ハーンと女たち 語る女の系譜 「女の記憶」という名の図書館 【Ⅲ】ハーンと文字 文字所有者の優位から文字の優位ヘ:カフカ・ハーン・アルトー 盲者と文芸:ハーンからアルトーへ 【Ⅳ】宿命の女 「おしどり」とマゾヒズム 怪談 浦島太郎 【Ⅴ】ハーンと世紀末 ラフカディオ・ハーンの世紀末:黄禍論を越えて ハーンを交えて議論してみたいこと 【著者】 西成彦 西成彦 1955年生。立命館大学名誉教授。専攻はポーランド文学、比較文学。他の著書として、『森のゲリラ 宮澤賢治』(平凡社ライブラリー版 2004)、『ターミナルライフ 終末期の風景』(作品社 2011)、『胸さわぎの鴎外』(人文書院 2013)、『外地巡礼――「越境的」日本語文学論』(みすず書房 2018)、『多言語的なアメリカ 移動文学論 Ⅲ』(作品社 2024)ほか。また訳書として、ショレム・アレイヘム『牛乳屋テヴィエ』(岩波文庫 2012)ほか。 -
ジェーンの物語 伝説のフェミニスト中絶サービス地下組織
妊娠して困ってない? <ジェーン>に電話して! 中絶が違法だった半世紀前の米国シカゴ。女たちが女たちを助けようと立ち上がった違法の地下組織「ジェーン」。安全な中絶手術を求め駆け込んだ女性たちの数は推定1万1000人。激動の歴史を赤裸々に描いた衝撃的なノンフィクション。 「願っていたのは、この歴史を読むすべての人が私たちの中に自分自身を見いだし、「私もこうしていたかもしれない」と思ってくれること」(本文より) 【目次】 日本の読者のみなさんへ はじめに ヴィンテージ・ブックス版(二〇二二) プロローグ 第1章 第2章 第3章 第4章 第5章 第6章 第7章 第8章 第9章 第10章 第11章 第12章 第13章 第14章 第15章 第16章 第17章 第18章 第19章 第20章 第21章 第22章 第23章 第24章 第25章 第26章 第27章 エピローグ 謝辞 訳者あとがき 参考文献 【著者】 ローラ・カプラン 米シカゴの伝説のフェミニスト中絶サービス地下組織「ジェーン」のメンバーで、シカゴのエマ・ゴールドマン女性健康センターの創設メンバー。ナショナル・ウィメンズ・ヘルス・ネットワークの理事を務めていたこともあり、様々なコミュニティー・プロジェクトに携わっている。 塚原久美 中絶問題研究家、公認心理師、臨床心理士、中絶ケアカウンセラー。著書『日本の中絶』、『中絶技術とリプロダクティヴ・ライツ』(勁草書房:山川菊栄賞、ジェンダー法学会西尾学術賞)、訳書『中絶がわかる本』など。日本人のリプロの環境を改善することがライフワーク。 -
怪盗ギャンビット
ロザリンは、伝説的な怪盗一家のひとり娘で、類まれな盗みの才能をもつ少女。だが彼女は、稼業から足を洗い「ふつうの人生」を送ることを夢見て、ひそかに家出する計画を立てていた。そんなある日、ロザリンのミスで母親が捕まり、10億ドルの身代金を要求されてしまう。途方にくれるロザリンのもとに、〈怪盗ギャンビット〉への招待状が届く。それは、世界中から選ばれた新進気鋭の泥棒たちが盗みの技を競い合う、違法で危険なコンテストだった。ロザリンは母を救うために、命がけの闘いに身を投じる決意をする――!! ライバルには、9歳からの宿敵ノエリア、ハンサムで謎めいたイギリス人の男子、決して隙を見せない日本人など錚々たる顔ぶれ。そして全員が暗い事情を抱えているのだった。彼らの運命を賭けた非情なゲームの幕が開く! はたして勝利するのはだれか!? -
台湾漫遊鉄道のふたり
炒米粉、魯肉飯、冬瓜茶……あなたとなら何十杯でも――。 結婚から逃げる日本人作家・千鶴子と、お仕着せの許婚をもつ台湾人通訳・千鶴。 ふたりは底知れぬ食欲と“秘めた傷”をお供に、昭和十三年、台湾縦貫鉄道の旅に出る。 「私はこの作品を過去の物語ではなく、現在こそ必要な物語として読んだ。 そして、ラストの仕掛けの巧妙さ。ああ、うまい。ただ甘いだけではない、苦みと切なさを伴う、極上の味わいだ。」 古内一絵さん大満足 1938年、五月の台湾。 作家・青山千鶴子は講演旅行に招かれ、台湾人通訳・王千鶴と出会う。 現地の食文化や歴史に通じるのみならず、料理の腕まで天才的な千鶴とともに、 台湾縦貫鉄道に乗りこみ、つぎつぎ台湾の味に魅了されていく。 しかし、いつまでも心の奥を見せない千鶴に、千鶴子は焦燥感を募らせる。 国家の争い、女性への抑圧、植民地をめぐる立場の差――― あらゆる壁に阻まれ、傷つきながら、ふたりの旅はどこへ行く。 -
トム・ソーヤーの冒険
冒険小説の古典として文学史にのこる名作は意外に知られていない? 自由奔放な少年トムとハックを中心に描く本書は、少年少女小説の形式をとりながらも、当時の閉塞したアメリカ社会への批判を根底に秘めた大人のメルヘンであった。 -
ミステリアス・ストレンジャー44号
時代は中世。舞台はオーストリアの古城。超能力を持つ正体不明のストレンジャー44号に「分身」と「本体」に分裂した人間像を与え、その自由奔放な行動を通じて、「無意識」という名の人間の深層心理を浮き彫りにした先駆的作品。 -
中国の古代文学(一・二) 一 神話から楚辞へ/二 史記から陶淵明へ
(一)神話から楚辞へ 中国文学の原点である『詩経』と『楚辞』の成立、発想、表現を、『記紀万葉』と対比し考察する。古代共同体的な生活が破壊され封建制が根付いたとき、人々はそれぞれの運命におそれを抱き、そこに古代歌謡が生まれた。斬新で美しい論の展開、すべてを網羅した知識、知的興奮が味わえる白川静の世界。 (二)史記から陶淵明へ 古い国家の羈絆から解き放たれ、自らの運命に生きはじめた孤独な生活者たち。彼ら「士人」は体制への埋没を拒否し、自然の情感に沿って天の道に合しようとした。「天道是なるか非なるか」と厳しく問うことによる文学精神の成立から、現実を避けて桃源郷を求める創作詩にまでいたる、文化の道筋を探る。 (全二巻) -
死について! 上下合本版 あらゆる年齢・職業の人たち63人が堰を切ったように語った。
“普通の人々”から泉のようによどみなく溢れ出す、強烈な言葉たち――「口述の歴史(オーラル・ヒストリー)」の名手による伝説的インタビュー集、待望の復刊! 救急救命士・元死刑冤罪者・原爆被爆者・退役軍人・物理学者・歌手・HIV感染者・医師・葬儀屋・女優・画家……驚くほど多様な人々が「死」そして「生」について生々しく、切なく、いとおしく語る。 本国2014年刊の新版に寄せられた序文を追加し訳文・注釈を見直した全面改訂版。 「どこまでも読み手の心に突き刺さってくる言葉、言葉、言葉! 人の発する言葉というのは、これほどまでに強烈で、痛烈で、鮮烈で、感動的で、切ないものだったのか」――金原瑞人氏による訳者解説を更新して収録。 ※本電子書籍は、「死について! 上・下」の合本版です。 -
いろいろな幽霊
失恋した瞬間を永遠に繰り返す幽霊、方向音痴の幽霊、雨となって降り注ぐ幽霊、転送装置が生み出す幽霊……イタロ・カルヴィーノ短編賞受賞作家が贈る、時に切なく、時におかしく、そして時にはちょっぴり怖い幽霊たちの物語を100編収めた、ふしぎな短編集。/【目次】[幽霊と記憶]一 注目すべき社交行事/二 進路指導カウンセラー/三 手斧(ておの)、数本の燭台(しょくだい)、針刺し、シルクハット/四 マイロ・クレイン/五 記憶喪失/六 きのうの長い連なり/[幽霊と運命]七 ヒッチハイカー/八 願い事/九 遊び方/十 運命の天秤(てんびん)/十一 どんなにささやかな一瞬であれ/十二 集まり/十三 ミラ・アムスラー/[幽霊と自然]十四 ゾウたち/十五 白馬/十六 さらなる諸動物/十七 ミツバチ/十八 風景を損なうもの/十九 木々の納骨堂/二十 空から降ってくるもの/二十一 作中で太鼓が鳴る物語/二十二 お砂場計画/二十三 再生可能資源/[幽霊と時間]二十四 十三回の出現/二十五 来世と死の事務処理機関/二十六 死亡記事/二十七 中間地点/二十八 時の巡り/二十九 ヒメハヤ/三十 前後に揺れる物語/三十一 小さなロマンスとハッピーエンドを含むタイムトラベルの物語/[幽霊と思弁]三十二 ファンタズム対スタチュー/三十三 足跡/三十四 乗客たち/三十五 新たな生、新たな文明/三十六 暗黒は震えつつ通り過ぎた/三十七 プリズム/三十八 彼の女性性/三十九 人々がいて、彼らはかつて生きていた/四十 第一一五連隊の兵士たち/[幽霊と視覚]四十一 アクション!/四十二 円(まる)い堀が魚の安らぎとなるように/四十三 スペクトル/四十四 あらゆる家の鍵、あらゆる消火栓、あらゆるコンセント/四十五 壁/四十六 遊びの時間/四十七 生涯にわたって/四十八 いっしょに連れていく/四十九 霧の向こうにちらちら見える物語/[幽霊とその他の感覚]五十 一生分の接触/五十一 二番手/五十二 かくもたくさんの歌/五十三 音響の問題/五十四 香り(ブーケ)/五十五 野原で解けていく雪の泥くさいにおい/五十六 道具学/五十七 陽射しがほとんど消えて部屋が静かなとき/五十八 男のようなもの/五十九 ささやかな感情/[幽霊と信仰]六十 現実の小さな崩壊/六十一 異常派と尋常派/六十二 不動産/六十三 どちらが結晶、どちらが溶液/六十四 無数の奇妙な結合と分離/六十五 携挙(けいきょ)/六十六 666/[幽霊と愛と友情]六十七 失われて見出(みいだ)され/六十八 鏡の中のもう一人の男/六十九 アポストロフィ/七十 鏡の中の男/七十一 回転式改札口/七十二 実話/七十三 弾丸とそれを避けるために必要なもの/七十四 膝/七十五 彼女が忘れようとしている男/七十六 永遠/七十七 遅すぎた/七十八 居残り/七十九 あなたの靴が好き/[幽霊と家族]八十 幽霊の仮の姿/八十一 困惑の元/八十二 見えない、さわれない/八十三 幽霊兄弟/八十四 第二の実話/八十五 人生/八十六 非凡な才能/八十七 遺伝性疾患/八十八 空港のターミナルからの祈り/八十九 孵化(ふか)/九十 左右対称/[幽霊と言葉と数]九十一 インコ/九十二 婉曲(えんきょく)表現/九十三 およそ八十グラム/九十四 幽霊文字/九十五 言語学の問題/九十六 夕暮れとほかの物語/九十七 電話/九十八 数/九十九 人口調査/百 かつて書かれた中でもっとも恐ろしい幽霊譚(たん)/主題の不完全な索引/謝辞/解説=勝山海百合 -
小説家のための編集教室
どこを直せばよいかわかる。書き直すたび、うまくなる。 ベテラン小説編集者と学ぶ、自分の手で作品を完成させる〈編集〉のレッスン。 そう、本当に求めていたのは書き方でも稼ぎ方でもない。「磨き方」なのだ。 ——青崎有吾(小説家・『地雷グリコ』) 小説の書き方を教える本はたくさんあります。 でも、書き上げた原稿を「どう直すか」を教える本は、ほとんどありません。 本書は、多くの新人作家をデビューへ導いてきたベテラン小説編集者が、作家が自分の作品を改善し、物語の魅力を引き出すための「セルフ・エディティング」の技法を惜しみなく明かした一冊です。刊行以来30年以上にわたって愛読されてきた、小説家の必携書です。 人物造形、場面描写、会話、モノローグ、動詞の選び方、改行の位置──。 小説編集者が原稿のどこに目をとめ、どう直すのか。誰もが知る名作から新人作家の習作まで、幅広い小説作品を題材に、修正のポイントと添削前後の文章を豊富に紹介します。 また、各章末には「編集のためのチェックリスト」「練習問題」を収録。自分の書いた原稿のどこを見直せばよいか、実践を通じて推敲の技術を身につけることができます。 本書を読み進めるうちに、あなたは自分の原稿を編集者の目で読めるようになるでしょう。 削り、直し、みがき上げる。本当に書きたかった物語の芯をつかみ、自分だけの文体=ボイスを見つけるために。 小説を書く人はもちろん、ライター、編集者、文章を仕事にするすべての人に役立つ一冊です。 -
ドストエフスキー全短篇(Ⅰ・Ⅱ合本)
数々の長篇で有名なドストエフスキーは、短篇の名手でもあった。 デビュー直後の「プロハルチン氏」から晩年の『作家の日記』掲載作まで、19篇を集成。 【収録作品】 プロハルチン氏(1846) 九通の手紙に盛られた小説(1847) 人妻と寝台の下の夫(1848) 弱い心(1848) ポルズンコフ(1848) 正直な泥棒(1848) クリスマスツリーと結婚式(1848) 白夜(1848) 初恋(1849) いやな話(1862) 鰐(1865) ボボーク(1873) キリストのヨルカに召されし少年(1876) 百姓マレイ(1876) 百歳の老婆(1876) 宣告(1876) おとなしい女(1876) おかしな人間の夢(1877) 現代小説から取った暴露小説のプラン(1877) 〈訳者解説〉米川正夫 〈解説〉江川卓 -
半分の半分の半分
韓国日報文学賞受賞! 何歳になっても、泣いて笑って怒って愛して。人生はきっとなんとか大丈夫! あたたかくて生々しい傑作短編集。 ●収録作品 「私たちは私たちの味方となって」――旧友の娘に惹かれインタビューする小説家。 「父親になっておやり」――50年連れ添った父と「偽装離婚」した母の意外な言葉。 「半分の半分の半分」――チョゴリを脱いで水遊びする祖母。人生が輝く瞬間の記憶を描く。 「雲丹」――「おばあさん、すいませんが、この子をちょっと見てくれますか?」花見旅行は思わぬ展開に。 「ミョンジャさんに似て」――アメリカで父に守られてきた母。父を喪った後の人生の旅。 「私のやさしい乳首」――世を去ろうとしているキ・ギルヒョンさんの病室を訪れる女たち。 「春の夜」――老女二人の家に、ある日、赤ん坊を抱いた少女がついてきた。 「他の顔」――異国で暮らして30年、初めて盗難事件に遭って……。 「禁煙キャンプ」――年代も性格も生き方もさまざまな8人は、果たしてタバコをやめられるのか? ※この商品は紙の書籍のページを画像にした電子書籍です。文字だけを拡大することはできませんので、タブレットサイズの端末での閲読を推奨します。また、文字列のハイライトや検索、辞書の参照、引用などの機能も使用できません。 -
クラクフ・ゲットーの薬局
ゲットーで何が起き誰がどう生きたかを記録 1941年3月から43年12月まで設置されたクラクフ・ゲットー。その地で薬局を営むポーランド人の著者は、退去命令に従わず居座り、ユダヤ人への支援者、ナチの暴虐の記録者として2年半を過ごす。本書はその克明な回想録である。 ※本書は、大月書店刊『クラクフ・ゲットーの薬局』の電子書籍版です。 【目次】 初版まえがき 第二版まえがき 第一章 ゲットーの設置と編成―新しい生活―新しい知人たち 第二章 比較的平穏だった日々―最初の移送行動―ドイツの秘密諜報機関員―九四二年六月二日から四日にかけての移送行動 第三章 陸軍中尉ブスコ―一九四二年六月八日の移送行動―ゲットーの縮小―困難な生活環境―一九四二年十月二十八日の移送行動―迫害された人々の様子 第四章 プワシュフ収容所―ゲットー域の再縮小―プワシュフでの刑執行―移送者の確かな消息―ゲットーAとB―クラクフ以外から入ったゲットー住民―薬局閉店の試み―規則の厳罰化―児童施設の設置 第五章 プワシュフ収容所への移送―一九四三年三月十三日および十四日のゲットー撤収行動―心理的謎―病人および子どもたちの殺害―悪夢の光景 第六章 死者の町―ゲットーの「清掃」―ゲットーの死刑執行人―ユダヤ人警官の運命―一九四三年十二月 第三版あとがき チェスワフ・ブジョザ 訳者あとがき 登場人物一覧 【著者】 タデウシュ・パンキェヴィチ(Tadeusz Pankiewicz) タデウシュ・パンキェヴィチ 1908年サンボル(現・ウクライナ領)生まれ。ポーランドの薬剤師一家の出身。クラクフのヤギェウォ大学薬学部を卒業し薬学修士の学位を取得後、1933年父から “鷲”薬局を引き継ぎ店主となる。1947年本書の第1版刊行(1995年第3版)。1993年死去。 田村和子 たむら・かずこ ポーランド児童文学翻訳家。1944年生まれ。著書に『ワルシャワの日本人形』(岩波ジュニア新書)、訳書に『強制収容所のバイオリニスト』(新日本出版社)など。 -
レッケ&バルガスシリーズ
ストックホルムで起きた、サッカー審判員撲殺事件。地域警官のミカエラは捜査に参加、尋問のスペシャリストで心理学者のハンス・レッケと出会う。彼は鎮痛剤の依存症だった。独特の心理分析で捜査陣をかく乱するレッケだったが、ある日ミカエラが地下鉄に飛びこもうとした彼を救ったことをきっかけに、二人は被害者の裏の顔と、事件の奥に潜む外交機密に突き当たる。元ピアニストの経歴を持つレッケは、アフガニスタン移民である被害者の中に音楽の痕跡を見つけるが、そこには凄惨な過去が待ち構えていた。上流階級のレッケと移民のミカエラ。奇妙なコンビは時と国境を越え、真実に迫る――。 -
中国文学の歴史 元明清の白話文学
娯楽の読書はここから始まった エリートではなかった庶民が楽しみのために本を読み、彼らの言葉や暮らしが文字として現れるようになった時代はいつ始まり、どのように続いてきたのか。戯曲・小説の創作が大いに盛んとなった元・明期を中心に、話し言葉で書かれる文学が生まれた金の時代から近代文学の誕生につながる清代までの文学を通観する。「全相平話」「四大奇書」「三言二拍」など、当時の作品から多数のエピソードを紹介し、そこから見える社会や時代背景を一つ一つ丁寧に読み解く。今日の「読書」体験の起源を辿る、中国文学への恰好の入門書。 【目次】 第一部 金・元の文学 一 白話文学前史 二 金の文学 白話文学の誕生 三 元の文学(一) 曲の世界 四 元の文学(二) 白話小説の誕生――「全相平話」 第二部 明の文学 一 明という時代 二 明代前期の状況 出版退潮期 三 明代後期の展開 出版の爆発的発展と「四大奇書」の登場 四 明滅亡まで 多様な刊行物の出現と「三言二拍」、金聖歎と「小説」の自立 第三部 清の文学――近代へ 【著者】 小松謙 1959年、兵庫県に生まれる。京都大学大学院文学研究科博士後期課程中退。富山大学教養部助教授を経て、京都府立大学教授。博士(文学)。 主要著書に『中国歴史小説研究』『中国古典演劇研究』『「現実」の浮上――「せりふ」と「描写」の中国文学史』『「四大奇書」の研究』『中国白話文学研究――演劇と小説の関わりから』『水滸伝と金瓶梅の研究』『詳注全訳水滸伝(第五巻まで刊行)』(いずれも汲古書院)、『ビギナーズ・クラシックス 水滸伝』(角川ソフィア文庫)などがある。 -
モンティチェロ 終末の町で
鳴り響くアメリカ国歌、銃声。逃げ惑う住民が辿りついたのは元大統領邸宅(モンティチェロ)だった……。近未来アメリカを舞台に、トマス・ジェファーソンと奴隷の間に生まれた女性を先祖に持つ女子学生が、暴徒化した白人至上主義者から逃れ、因縁の場所で運命と対峙する表題作をはじめ、全6編を収録したデビュー作品集。 バージニア州シャーロッツビル周辺を主な舞台に、人種差別や経済格差の問題等、さまざまなテーマを内包する中編(表題作)1本と短編5本を収録。 本書は、全米批評家協会賞ジョン・レナード賞最終候補、ニューヨーク・タイムズ紙2021年ベストフィクション10冊に挙げられた。2022年リリアン・スミス図書賞受賞。 (原題 My Monticello) -
敬愛の心
◎1999年に韓国・仁川(インチョン)で実際に起きた火災事件を題材にした著者初の長編小説、待望の邦訳刊行 ミシン会社で働くサンスと敬愛(キョンエ)。お荷物社員の二人がチームを組むことになった。すれ違い、空回りしながら距離を探り合う日々。やがて互いの過去が少しずつ関係を変えていく。そんな中、チームはベトナムへの派遣が決まり、それぞれの思いを胸に新しい地を訪れるが――。理不尽な火災事件で親しい人を失い、亡霊のように生きていた男女の転機と再生を描く。 [目次] 空白はやっかいだ E あなたと私のお別れ 空っぽの心 殺人は恋愛のように、恋愛は殺人のように 冷えきった夏 あなたには妹がいますか? 痛みにも気づかずに笑っていた 雨粒が頭上に降り注いでくる オンニには罪がない -
バルザック
『ゴリオ爺さん』『谷間の百合』ほか全九一篇、登場人物二〇〇〇人による壮大な「人間喜劇」を構想したバルザック(一七九九―一八五〇)。富と名声を求めて旺盛な創作活動に邁進し、天才と俗物の間を生きた。その彼を終生敬してやまなかった伝記作家が、五一年の生涯を情熱的に描いた遺作にして最高傑作。〈解説〉宮下志朗 目次 第一篇 青春と初舞台 第一章 少年期の悲劇 第二章 運命への早まった問いかけ 第三章 オラース・ド・サン・トーバン小説工場 第四章 ベルニー夫人 第五章 商業的幕間狂言 第六章 バルザックとナポレオン 第二篇 仕事部屋のバルザック 第七章 三十男 第八章 書斎のうちとそと 第九章 カストリー侯爵夫人 第十章 バルザック自己の秘密を発見す 第三篇 小説を地で行く 第十一章 未知の女 第十二章 ジュネーヴ 第十三章 ウィーンの別れ 第四篇 小説家バルザックの栄光と悲惨 第十四章 破局の年一八三六年 第十五章 イタリア旅行 第十六章 転機の年 第十七章 サルデーニャの銀山 第十八章 芝居の投機 第五篇 『人間喜劇』の作者 第十九章 ハンスカ夫人征服の戦い 第二十章 『人間喜劇』 第二十一章 最初の挫折 第二十二章 蒐集家バルザック 第六篇 事の成就と終り 第二十三章 最後の傑作 第二十四章 ウクライナのバルザック 第二十五章 結婚と帰国 第二十六章 おわり -
ノクチョンハクソニマミレテ
映画のように書き、小説のように撮る…… のちに世界有数の映像作家となった 映画監督イ・チャンドンによる傑作小説集 待望の日本語訳刊行! 映画監督として世界中にファンを持つ韓国の作家イ・チャンドンが、かつて小説家として発表し、「映像の世界への転換点となった」と自ら振り返る小説集、『鹿川は糞に塗れて』(原題『??? ??? ???? ?? ??』)(1992)の邦訳。 収録される5作品はそれぞれ、朝鮮半島の南北分断、そこに生まれた独裁政治下の暴力、その後の経済発展がもたらした産業化や都市化に伴う諸問題などを背景にしている。すべての登場人物は、分断や社会矛盾の犠牲になって生きる「ごく普通の人びと」。膨大な量のゴミで埋め立てられた地盤と労働者たちの排泄物の上に輝く経済発展、そしてそこに生まれた中間層の生活の構造を、作家イ・チャンドンは「糞に塗れている」と看破し、そこに生きる市民たちの悲喜交々の生を問う極上の物語を紡ぎ出す。 -
エタンプの預言者
65歳、元大学教師。リベラルで、しがらみのないインテリのつもりだった。まちがえた選択をし続けて65年。どうやら私は、社会から取り残されたらしい。 フロール賞受賞のほか、ゴンクール賞、フェミナ賞、ルノードー賞、アカデミー・フランセーズ小説賞、ジャン・ジオノ賞の6賞候補! 現代社会への痛烈な批判を込めた超弩級の注目作! かつてタレント歴史学者を夢見たロスコフは、落ち目だった。95年に「冷戦下米国のソ連スパイ事件」を巡る書籍を刊行したが、翌日CIAが機密解除、本は一夜にして紙くずに。妻とは離婚し大学を退職、酒浸りだったロスコフは、同性愛者の娘のフェミニストの恋人に刺激され、研究を再開、サルトルやボリス・ヴィアンと親交があったアメリカの詩人・ウィローについての書籍を刊行する。客わずか5人の出版記念トークショーの席上、ロスコフはウィローが黒人であることを記述しなかった理由を問われる。翌朝掲載された匿名のブログ記事が炎上し、ロスコフはレイシストだという非難にさらされる。さらに自分を擁護するツイートに返信したロスコフは、炎上を煽ってしまう。ツイートした知人は、極右政党に入党していたのだ――。 -
漢文法基礎 本当にわかる漢文入門
※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 漢文」とはなにか 受験参考書をはるかに超え出たZ会伝説の名著、待望の新版! 訓読のコツとは。助字の「語感」をどう読み取り、文章の「骨格」をいかに発見するか――。漢文読解の基礎力を養い、真の「国語力」を身につけるために、1970年代より形を変え版を重ねながら受験生を支え続けてきた名著を修補改訂。大学入試攻略などは当たり前、第一人者が気骨ある受験生、中国古典を最高の友人としたい人へ贈る本格派入門書。 基礎とはなにか。二畳庵先生が考える基礎ということばは、基礎医学とか、基礎物理研究所といったことばで使われているような意味なんだ。(中略)基礎というのは、初歩的知識に対して、いったいそれはいかなる意味をもっているのか、ということ。つまりその本質を反省することなのである。初歩的知識を確認したり、初歩的知識を覚える、といったことではなく、その初歩的知識を材料にして、それのもっている本質を根本的に反省するということなのだ。――<本書より> ※本書は1984年10月に増進会出版社より刊行された『漢文法基礎』(新版)を大幅に改訂したものです。 -
レジナルド
第一短篇集、待望の本邦初訳!皮肉屋で少しばかり傲慢。批判精神あふれる痛快キャラクター、われらがレジナルド!“サキ・コレクション”第一弾! (※本書は2015/4/15に発売し、2022/2/28に電子化をいたしました)
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