作品一覧

  • 闇の牢獄

    レッケ&バルガスシリーズ

    小説・文芸

    3.0
    1~2巻2,640~2,860円 (税込)
    ストックホルムで起きた、サッカー審判員撲殺事件。地域警官のミカエラは捜査に参加、尋問のスペシャリストで心理学者のハンス・レッケと出会う。彼は鎮痛剤の依存症だった。独特の心理分析で捜査陣をかく乱するレッケだったが、ある日ミカエラが地下鉄に飛びこもうとした彼を救ったことをきっかけに、二人は被害者の裏の顔と、事件の奥に潜む外交機密に突き当たる。元ピアニストの経歴を持つレッケは、アフガニスタン移民である被害者の中に音楽の痕跡を見つけるが、そこには凄惨な過去が待ち構えていた。上流階級のレッケと移民のミカエラ。奇妙なコンビは時と国境を越え、真実に迫る――。
  • 偽りの空白

    偽りの空白

    小説・文芸

    4.8
    1巻3,080円 (税込)
    高校生の弟の不審な死を知らされ、数年ぶりに実家に帰った女性キー。ベトナム系の一家のなかでも、オーストラリアに馴染んだ優等生である弟。だが、それは本当の顔だったのか。謎を追ううち、キーは、自らを取り巻く社会と、弟の命を奪ったものの正体を知る。
  • 追憶の東京 異国の時を旅する

    追憶の東京 異国の時を旅する

    小説・文芸

    4.5
    1巻2,420円 (税込)
    江戸時代から戦後にかけての東京の歴史をめぐり、作家は東京の各所を訪ね歩く。史跡を訪ね、人物に聞き取りをし、古い文献を紐解きながら、現代日本人も知らない東京の姿を〈再発見〉していく。イギリス在住の作家による、都市の記録と記憶をめぐるエッセイ。
  • THE LAST GIRL ―イスラム国に囚われ、闘い続ける女性の物語―

    THE LAST GIRL

    小説・文芸

    4.3
    1巻1,980円 (税込)
    イラク北部にあるコーチョという小さな村。少数派の宗教、ヤズィディ教徒たちが貧しいながらも日々を平和に暮らしていた。 しかし、忍び寄る紛争の影が、平和を少しずつむしばんでいく。 そしてついにあの日、イスラム国の一群による襲撃が行われた。そして待っていたのは、 自分のすべてを踏みにじられる、性奴隷としての地獄の日々だった―― 戦争犯罪の被害者として、「武器としての性暴力」の実態の告発と根絶を訴え続けた著者が、筆舌に尽くしがたい自らの体験を、圧倒的な臨場感で語る。 イスラム国による他教徒への虐殺や性暴力・暴力の実態とは。 彼女が決死の覚悟で逃れ、イスラム国支配地域の現状を世界に向けて発信するまでに、彼女を支えた人々とは。 今、世界でもっとも注目されるノーベル賞平和賞受賞者の自伝、ついに翻訳刊行。

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  • こじれた仲の処方箋

    こじれた仲の処方箋

    ビジネス・実用

    4.2
    1巻1,760円 (税込)
    母娘、夫婦、姉妹、友人…… ・いつかのことをあの人に謝りたい。 ・私を傷つけたあの人に謝ってほしい。 ・『ごめんなさい』とは言われたが、謝られた気がしない(むしろ余計イラっとした)。 こんな気持ちを抱えたままで苦しんでいませんか? 「ごめんなさい、でも……」 「不快にさせてしまったのなら、ごめんなさい」 「怒らせてしまって、ごめんなさい」 そんな謝っているようで謝っていない謝罪が、どこの世界にもあふれています。 人間関係の悩みは、「謝罪と許し」という視点から解決の糸口が見つかります。 "本物の謝罪には強い癒しの力がある" "ネガティブな感情の苦しみから自分を解放するために、自分を傷つけた相手を許す必要はない" by ハリエット・レーナー 【本書のケーススタディ例】 ・長く気まずい関係にある妹にメールで謝罪を切り出してもいいか。 ・妹の態度を注意したら、自分が悪者になってしまった。どうしたらいい? ・夫の不倫相手からの謝罪電話に出るべきか。 ・「ごめんなさい」を連発する友達にイラっとしてしまう。 ・母が私(娘)に対して後悔の言葉を口にしつづけるのがつらい。 ・私(母)を批判しつづける娘と、どうしたら普通に話せるようになるのか。 ・妻の叱責が激しすぎて、夫の謝る気が削がれてしまい、夫婦がますます険悪な雰囲気に。 ・やってもらって当然という態度の友人に、一言もの申したい。 ・裏切った同僚からの謝罪にどう対応するのがスマートか。 ・自分の主張を曲げない夫婦の歩み寄り方。 etc.

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  • インビジブル・インフルエンス 決断させる力 あらゆる行動を方向づける影響力の科学

    インビジブル・インフルエンス 決断させる力

    ビジネス・実用

    3.8
    1巻1,870円 (税込)
    お昼のレストラン選びから選挙の投票まで、人生とは小さな選択の連続だ。だがその選択のほとんどが、実は周囲からの社会的影響力によるとしたら? 実はあなた自身も気づかぬまま影響(インビジブル・インフルエンス) を受けているのだとしたら? 意識しないうちに、人と人とのかかわりは、私たちの人となりと行動をたえず方向づけている。 本書は、この社会的影響力という行動を方向づける隠れた要因をあきらかにする。いわば決断のメカニズムに精通するための内容である。よい人間関係づくり、部下のモチベーション向上、マーケティング戦略など、あらゆる問題解決に生かせるアイディアが詰まっている。 「『インビジブル・インフルエンス』は、ビジネス・心理学・社会科学の研究と考え方を統合することで、個人の選択の背景にある「見えない影響力」に焦点を当てている。社会的影響力がどのように作用するかを理解すれば、状況に応じてそれを避けたり、逆に利用できるようにもなる」――『ニューヨーク・タイムズ』 「J.K.ローリングの新刊の売れ行きからウェイターの注文の取り方まで、意思決定を左右する見えない力を論じている」――『ファイナンシャル・タイムズ』 「集団の心理を複雑に辿っていくその手腕は、見事の一言に尽きる」――『ワシントン・ポスト』 「『インビジブル・インフルエンス』は、豊富な情報量であり、かつ気楽に読める、ビジネス書としてたぐいまれな一冊と言える」――『フォーチュン』 「本書が魅力的であるのは、人の決断にかかわるミステリアスな仕組みを、具体的に見せてくれる点にある」――『パブリッシャーズ・ウィークリー』 「前著同様、ジョーナは魅力的な結論とともに、私達を物事の深層まで我々を誘います。『インビジブル・インフルエンス』は、我々がこの世の中で、人々や周囲の環境をどのように見ているか、その考え方を根本から変える力を持った本です」――アリアナ・ハフィントン(『ハフィントン・ポスト』 創始者) 「周囲に影響を与えたい、スマートな決断をしたい、あるいは単に人間の行動の謎に迫りたい……本書は、その要求に応えてくれる。素晴らしく、洞察に満ちた内容だ」――トニー・シェイ(ザッポス CEO) 「ジョーナは見えない影響力の覆いを取り除き、人の行動にまつわる謎を解き明かしている」――ロバート・チャルディーニ(『影響力の武器』シリーズ 著者) 「あなたの行動がどのように影響力に左右されているか知りたければ、ジョーナの最新刊『インビジブル・インフルエンス』がうってつけです。思考を刺激する研究結果、印象的なエピソード、そして優れた洞察。素晴らしい読書体験です」――ウィリアム・ユーリー(『ハーバード式交渉術』著者) 「バーガーが今度書き上げたのは、世の中をどのように見ていくか、そのアイディアやツールに満ちた、実に魅力的な本だ」――チャールズ・デュヒッグ『習慣の力 The Power of habit』著者) 「本書を読み始めるとすぐに、自分自身や周囲への見方が変わる事でしょう。啓発的で、実に魅力的です」――エイミー・カディ(『パワーポーズが最高の自分をつくる』著者) 「ジョーナは最もイノベーティブな心理学者として、精力的に出版を続けている。その主張は、我々の直感と異なる刺激的なものであるだけでなく、プラクティカルかつプラグマティックに言い表されている。彼の書いたものなら何でも読みたいし、それを活用したいと思っている」――ライアン・ホリデイ(『グロースハッカー』著者)

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  • 生と死にまつわるいくつかの現実

    生と死にまつわるいくつかの現実

    小説・文芸

    3.5
    1巻1,067円 (税込)
    少女が見た真実とは?衝撃のサイコスリラー。  イングランド南西部の海岸沿いで、一人歩きの女性を狙った連続暴行殺人事件が起きた。被害者はいずれも目出し帽の男に服を脱がされ、犯行現場から母親に電話するよう強要されていた。現場近くの小さな町に住む10歳の少女ルビーは、民警団を立ち上げて犯人を追跡する父親を助けようとするが……。  ゴールド・ダガー賞受賞作家ベリンダ・バウアーが、西部劇『勇気ある追跡』をモチーフに、崩壊寸前の家族や学校でのいじめに心を痛める少女と、彼女を取り巻く人々の心模様を描く衝撃のサイコ・スリラー!
  • 大脱走 英雄〈ビッグX〉の生涯

    大脱走 英雄〈ビッグX〉の生涯

    小説・文芸

    -
    1巻1,012円 (税込)
    あの大脱走を指揮した男の、知られざる生涯。 スティーブ・マックイーン主演の名作映画『大脱走』(63年)のモデルとなった、第二次世界大戦中最大、200人の大脱走計画。この計画を指揮した実在の人物、〈ビッグX〉ことロジャー・ブッシェル少佐の34年の生涯を描いた伝記が本邦初訳されます。  映画ではリチャード・アッテンボローが演じた、空前絶後の集団脱走を指揮したロジャーとはどんな人物だったのか。著者は、本人の手紙や母の日記、公文書などの記録、生存者の証言からその人物像に迫ります。法廷弁護士資格を持ち、スキー選手としても活躍、9カ国語を操ったというロジャー。南アフリカで育った幼少期から、ケンブリッジ大学で過ごした青春期、3人の女性との恋愛、英国予備空軍「第601飛行中隊」入隊、そして捕虜になるまでの生い立ちとともに、映画では描ききれなかった全3回にわたる大脱走計画の全貌が、今初めて明かされます。  映画『大脱走』のファンはもちろん、映画を知らない若い世代も必読の英国発傑作ノンフィクション。

ユーザーレビュー

  • 偽りの空白

    Posted by ブクログ

    ベトナムから難民としてオーストラリアへ移住し育った女性キー。舞台は1996年、アジア系移民が多く暮らす街。弟が殺された謎を探る。

    優等生だった弟がなぜ殺されたのか。関係者から話を聞き謎を追う中で、ベトナムから移住せざるを得なかった当時の事情、偏見と差別、様々な苦労、世代間のギャップ、ドラッグや暴力など多くの問題について知ることができた。
    英語が不自由なため労働条件が悪い仕事に就くしかない親世代から、次第にベトナム語を話せなくなっていく子世代へ。戦争、難民生活、移住のストレスはより弱い立場の女性や子供たちへ吐き出され、負の連鎖へと繋がっていく。

    海外の初めて知る世界の話だけど、読んでいる間ずっと本の存在が近くに感じられたのは人物の描写が素晴らしく、一人一人の思考と行動がよく理解できたから。親への反発、友達との行き違い、学校の先生や子供たち、加害者たちの苦悩。感情の言語化が巧みで、読みながら自分の言動を思い起こして、あれはこういうことだったんだなと腑に落ちることも度々あった。

    社会派ミステリーであり、人間を描く文学としても優れた本。出会えてよかった。

    0
    2025年05月21日
  • 偽りの空白

    Posted by ブクログ

    読み応えありすぎて、読み終えるのにひどく時間かかりました。事件が根底にあるものの、ベトナム移民の心の動きがメイン。オーストラリアがベトナム移民受け入れている事実、そして移民になり移民として生きることの過酷さに衝撃を受けました。日常的にミステリ読んでる脳細胞に強烈なパンチ食らった印象です。移民のリアルな生活をこれほどまでにあぶり出し、彼らの心の叫びを文章から受け取ったのは初めてかも。長い道のりでしたが、読んで良かった。未知の世界に連れて行ってくれる読書の素晴らしさを、しみじみ感じることができました。

    0
    2024年11月12日
  • 偽りの空白

    Posted by ブクログ

    メルボルンでジャーナリストとして働くキーは、5歳下の弟が亡くなったことを知り、実家に帰省する。
    幼い頃にベトナムから両親とともに難民として渡ってきたキーと違って、成績優秀で大人しく"いい子"の弟が、何者かに殴り殺されたということが信じられず、警察の説明も同級生も教師も大勢いたのに目撃証言がひとつもないと言うことに愕然とする。
    弟は、いったい誰に、何故、殺されなければならなかったのか?
    キーが、独自に動きだすと…。

    情景が目に浮かぶようで鮮烈で刺激的だった。
    キーとミニーとのやりとりがとても上手くて、心の声が手にとるかのように響いてくる。
    ヒリヒリとするような冷たいやりとりのなかにどうしようもない叫びが聞こえてきそうで、もう終わらせてと思いたくなるほどなのに気になる。

    オーストリアの移民社会の孤独描く文芸ミステリと帯にあったがその通りだった。




    以下、訳者あとがき〜一部抜粋

    物語は、1996年のオーストリア、シドニー南西部の街カブラマッタ。
    この国最大のベトナム人街があることで知られ、とくにアジアからの移民が多く暮らす地域である。
    主人公キーの視点から描かれるいくつかの章と、事件の目撃者やキーの家族といった身近な人物の視点から語られる章を追っていくうちに、薬物がらみの問題を多く抱え、アジア系ギャングによる暴力事件が絶えず起こっている街の不穏さとおなじ街で懸命に生きる人々の活気が入り混じる。
    複雑な移民の街が見えてくると同時に、複雑な街の様子を背景に、思春期のころの友達どうし、とくに女の子どうしの関係や、親世代との価値観の違いや衝突、そして親しい人のあいだに生じる嫉妬心や執着や気持ちのずれや絡まりあいといった登場人物たちの心理が、息がつまるほどの切迫感をもって描かれている。



    0
    2024年10月01日
  • THE LAST GIRL ―イスラム国に囚われ、闘い続ける女性の物語―

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    第一部の幸せな日々、
    しかし常に脅威に晒されるイラクという国家、
    不穏な事件、暗転、
    第二部は辛すぎて部分的にしか読めず、
    逃亡に成功し、
    第三部で脱出叶い、母と似た人を見た瞬間で
    読み溜めてきた感情が、私もナディアと一緒に放出されるかのようだった。
    脱出を助けてくれたナーシル、その家族の善行。
    そしてエピローグ。テロリスト達に対する絶え間ない戦いを続ける、勇気あるナディア。

    本当にこんな残酷なことができる人間がいるんだ、
    宗教って利より害の方が人類にとって大きかったのではなかっただろうか。

    日本人には、どれだけ語られても本質的な意味でどの宗教のことも理解できないと思う。
    人種、民俗、住んでいる国家や周辺国家の征服者によって
    人間たちの都合のいいように作られてきたもののように思えてしまう。

    性善説、性悪説はどちらも信じない。
    やはり人間、生まれ持った中身と環境の問題だ。

    0
    2023年10月31日
  • 追憶の東京 異国の時を旅する

    Posted by ブクログ

    『その小さな珈琲店は二階にあり、おなじビルの一階はラーメン屋だった。それから、ラーメン屋がなくなってコインロッカーになった。ラーメン屋がはいるまえは、その場所はブティックだった。三階には日本刀を売る店があった。その上の最上階には、根付を売る店があったと思う。それらの店が、ひとつ、またひとつと閉店し、やがてビルのほかの階はすべて空き家になって大坊珈琲店だけがのこった。大坊さんがその場所を離れることはなかった。例外は毎年八月の三日間で、そのときは店を閉め、生まれ故郷である岩手県の北上山地へ帰っていた』―『時の鐘』

    W・G・ゼーバルトの「土星の環」か、なるほど。翻訳者によるあとがきによれば作家アンナ・シャーマンが本書を書くに当たって最も影響を受けた本の一冊とのこと。確かに、ゼーバルトの特徴、無数の文章の断片が時も場所も越えて漂う感じに似た雰囲気が本書の中にもある。ただしゼーバルトの断片群がともすれば一葉一葉霧散しそうになる印象を残すの対して、シャーマンの綴る断片らは「時」という言葉の糸によってしっかりと縫い合わされたコラージュとなっているという違いはある。江戸の町に時を知らせた「時の鐘」を訪ね歩きながら、その場所に漂う「過去」の残照、「現在」の儚さの印象を丹念に描写し、多岐にわたる文献や文章の中にその印象の出所を探ろうとする行為を綴った本書は、初めての異国を訪れた人の旅日記風でもあり、歴史愛好家の備忘録のようでもあり、異文化研究家の成果報告書のようでもありながら、我知らず「時間」に魅せられてしまう人の徒然の随筆である。

    街歩きをしながら写真を撮っていると気付くのだが、海外で街歩きをしている時の方が思わず引き寄せられて写真を撮ってしまう機会は多い。それはきっと自分自身の中に滲み込んでいる「日常」との「違い」を意識する機会が多いからだと思うのだが、それと同じことを逆の立場でしている人の写真を観て改めて気付かされる身近にあるものの魅力というのもあり、そんな写真を発信する人をフォローしていたりもする。面白いことに、違いを意識するからと言って異国情緒に溢れたものに必ずしも惹かれている訳でもないことは、自分の撮った写真を眺めていても後から気付くこと。結局、見知らぬ国の不案内な道でも、毎日のように歩く見慣れた道でも、写真を撮りたくなる場所というのには案外共通点があって、気付けば日本に居ようが海外に滞在していようが、同じような写真ばかり撮っているということになりがちなのだ。我田引水的な読みではあるけれど、著者が本書でやっている行為も決して異国情緒に惹かれてのことではなくて、思わず引き寄せられてしまうものの背後にあるものをぐっと深く掘り下げて見たという結果なのだろうと思う。もちろん原題(The Bells of Old Tokyo)が示すように「時の鐘」という調査対象、あるいは符牒はあるのだが、綴られる文章は、時に散漫とも思えるほど印象過多になるかと思えば、歴史的事実を積み重ねようとする真摯なものともなる。そして驚くほど率直にその過程で出会った人々のスケッチが挿し込まれる。特に「大坊珈琲店」における遣り取りでは本書を書き上げるまでの時間の経過が並行して描かれているのだが、それも単なる歳時記的な文章に留まらず、その場所に流れている時間を写し撮る営みとなっていて、実はそれこそが「時の鐘」を巡りながら著者のしたかったことなのだということが解る仕組みになっている。

    つまりそれは、人が時を生み出しているという考え方。それが著者の中にあることは間違いない。そのことは最終章である「日比谷」において交わされる宮島達雄との会話によって強く確信される。宮島といば東京都現代美術館に常設されている「Keep Changing, Connect with Everything, Continue Forever」を思い起こす人も多いと思うけれど、宮島もまたデジタル・カウンターに「時の流れ」や「生命の発生消滅」を重ね合わせる作風で知られている。その作品の一つに魅せられて日本にやって来たと告白する著者に宮島は逆に質問をする。

    『「それで、あなたは?」宮島さんがわたしに訊いた。「あなたにとって最初の時間のご記憶は?」』

    著者は一瞬虚を突かれたようになり、そこで初めて何故自分がこんなことをしているのかの意味を理解したように訥々と答える。

    『わたしにとって最初の時間の記憶……さあ、よくわかりません。子どものころ、うちにはうごいている時計が一つもありませんでしたから』

    その宮島との遣り取りには、「時」という概念の周りを巡る著者の郷愁、寂寥、好奇心が綯い交ぜとなった心情が吐露されていると思う。と同時に、何故本書が単純に読者に捉えられることを拒むのかがよく表れているとも思う。そして、その魅力が翻訳を通しても伝わって来る理由もまたそこにある。

    因みに、本書には数多い注釈があるが、読書の流れを中断してでも丹念にそれらを参照して読み進めることをお薦めする。その多くは参考文献への参照ではあるが、歴史的事実を探る文献の多くが海外の日本文化研究者たちによるものであることに改めて目を啓かされる思いがする。真摯な、そしてしばしば中立的な、それらの文献による記述によって初めて知る自国の歴史もあることを素直に認められれば、アンナ・シャーマンのこの随筆に対する受け入れもまた変わるだろうと思うから。そして、この翻訳を単なる翻訳以上の、まるでシャーマンが日本語で語っているかのような本に仕上げた翻訳家吉井智津の仕事もまた素晴らしいと言っておきたい。

    0
    2022年12月14日

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