ロクサーヌ・ゲイの名前を気にするようになったのは、数年前から。ときどきニューヨークタイムズでキラリと鋭いコラムを目にすると、それが彼女の筆になるものが多いことに気づき、いつの間にか楽しみにするようになった。
そのゲイの本邦初?翻訳書は、ドラマや小説、映画を縦横無尽に論じたエッセイ集。TV番組ほとんど
...続きを読むは知らない作品ばかりだけど、映画はそうそう!てうなずくところがたくさん。特に、『ヘルプ』に対して激しく怒ってる評、自分以外には読んだことなかったので溜飲が降りました!
くだらないポップ・カルチャーへのこよなき愛と鋭いツッコミを楽しみながらも、ゲイは、この社会にあまりにもあたりまえにあふれている女性に対する暴力と黒人に対する暴力を忘れはしない。それは身体に刻まれてきたものだから。わたしたちの愛するポップ・カルチャーは、同時に、女性であったり黒人であったりセクシュアルマイノリティであったりするわたしを疎外し、傷つけもする。だからインターセクショナルなフェミニスト文化批評が必要なのだ。
とはいえ、本書のタイトル「バッド・フェミニスト」にはどうも納得できなかった。だいたい、「私はバッド・フェミニストです」なんて、まるで「善い/正しいフェミニスト」なるものが実在するみたいではないですか。フェミニストに「男嫌いで、セックス嫌いで、怒りと被害者意識でいっぱいのイタい人たち」とレッテルが貼られるのは、わたしたちが自分をとりまく文化の暴力から目を背けないから。であれば、わざわざ「私はバッドなフェミニストです」と名乗って、自分を一般的なフェミニストのイメージから差別化する必要なんかあるだろうかと思うのだけど。
とはいえ鋭い書き手なので、これからも要注目ですよ。