ビジネス・実用の高評価レビュー
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プラトン対話篇の中でまず最初に読んだら良いのは迷わず『ソクラテスの弁明』である。しかし、「プラトンとの対話」を、あるいは「プラトンの対話」を味わいたい読者に勧めたいのはメノン、それも渡辺邦夫訳のメノンである。本書は他書には見られない、プラトンに初めて出会う読者にとってあらゆる障壁を取り除く工夫がなされ、生き生きとした対話の様子を再現していることから、まず勧めたいと思う本なのである。
メノンは奴隷の少年が幾何学を習っていないにもかかわらず平方根を用いて問題を解くに至る様子を克明に記録した対話篇である。これは対話を通して少年が自らの内に宿している真理を見出していく様子を描き、真理が一人ひとりの -
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本書は印象的な引用についての言及から始まる。引用のない哲学史は「まるで、詩そのものを一行も引用していない、詩の歴史のようなものではないでしょうか」、と。本書はまさしく、手に取ってパラパラとめくるだけでも、全体の五分の一ほどが引用に充てられていることがわかる。それでも本書は、本文250ページに対して各章17ページほどの15章で構成されており、紀元前6世紀から西暦1500年という2000年にわたる期間の思想史をその根本的な特徴を捉えながらも全く窮屈さを感じさせることなく、核となる哲学的思考を生き生きと再現する哲学史である。
思考の原初に立ち返るかのように引用された文章を読み解く著者の筆致は、地 -
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二十世紀の激動のさなかを生きたアーレント。本書はそのアーレントの生涯を丹念に追いつつ、その思想を理解する手掛かりを与えてくれる本である。アーレントの思考自体が「手摺のない思考」と呼ばれるように、彼女の生涯もまた手摺のない生涯であった。未曽有の体験を経て紡がれた彼女の言葉を受け留めることの意味を考えさせられる一冊である。
アーレント研究は日に日に増して膨大な量に上り、アーレントに興味を持つ人は途方に暮れてしまうかもしれない。本書はそのような読者のための本である。本書はすべてのアーレント研究の礎となるアーレントの生涯の出来事を彼女の言葉を手掛かりに追っていく。本書で繰り返し言及される決定版とも -
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去年、観賞用の柱サボテンを買った。ダグトリオみたいなやつ。無骨な見た目だけど、それぞれ寄り添って仲良くぬくぬくしているようで可愛い。
そんなサボテン事情もあり、うちのダグトリオを知るためにも本書を手に取った。
本書では著者の波瀾万丈なフィールドワーク、サボテンへの愛情、思い立ったら即行動のジャーナリズム精神、そして最新のサボテン研究が綴られている。
世界を飛び回る著者を想像しつつどうやったらこんな行動的になれるのかなぁ、と不思議に読み進めたら最後の最後に著者のバックグラウンドが記されていた。そこでなるほどと合点がいくとともに、ミステリ小説『謎の香りはパン屋から』をふと思い出した。
サボ -
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プラトンの『ソクラテスの弁明』にはいくつもの翻訳がある。評者が最初に読んだのは中公クラシックス版の田中美知太郎訳であったが、クリトンとゴルギアスとともに強烈な印象を残したのを覚えている。ただ、いま読み返してみると手放しに誰にでも勧めることができるわけではないなと思う部分が多少ある。すでに他の著作で哲学に対する関心が呼び起こされた読者にとってはどうしても読みたくなる本であろうから、その心配は杞憂であるかもしれない。しかし、光文社古典新訳文庫の納富信留訳の『ソクラテスの弁明』は哲学入門として誰にでも勧めたくなる一冊である。
哲学の始まりは『ソクラテスの弁明』にあるといわれる。哲学という営みを決 -
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田中美知太郎は昭和を代表する西洋古典研究の碩学である。『古代哲学史』は多くの人によって書かれており、加藤信朗や納富信留の『ギリシア哲学史』はそれぞれに、その思想家たちのエッセンスと思想史の全体像とを示してくれるものである。しかし田中美知太郎による『古代哲学史』は著者の他の著作がそうであるように異彩を放っている。國分功一郎の解説も話題を呼んだ本書は一冊の本として、入門でありかつ到達点たるべき深層を読者に提示するものである。
本書は一見、様々な媒体に書かれた文章を一つにまとめただけのものに思われてしまうかもしれない。それに、本書の大半を成す「古代哲学 二」は著者が執筆したある時点までの文献案内 -
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本書は熟読を勧めたい最初に読むべきカントの著作である。カントといえば三批判、特に翻訳も多い『純粋理性批判』に手を伸ばす人も多いであろう。しかしどの翻訳が良いのかは読者の置かれた状況に応じて変わってくる。その良し悪しを見極めるにはカントその人の文章に慣れる必要がある。三批判に取り組む前に読むものとしてぜひとも勧めたいのが本書なのである。
カントは感性界(現象界)と叡智界(知性界)とを峻別した。わたしたちがどのような世界(感性界)に生きていて、どのようにその世界を捉えるべきかを明らかにするのが『純粋理性批判』であり、そしてその世界の内でわたしたちにはどのような自由が与えられているのか(叡智界) -
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本書は数あるプラトン入門の中でも異色の本である。まず特筆すべきはその文体にあろう。著者は私たち読者とプラトンとの間に立って、私たちに、あるいはプラトンに語りかける。この本を手に取ってその語り口にある種の抵抗を感じる人もいるかもしれない。しかしこの語り口こそが本書を異色のプラトン入門にしているのである。
本書はプラトンの主要な対話篇の場面と取り組まれる問いを読者に提示することを通して、プラトン対話篇の世界へと読者を招く。語り口の柔らかさとは裏腹に学術的なプラトン入門にふさわしい内容が詳しく紹介され、本書を通読することでプラトン対話篇の全体像をつかめるようになっている。このことはR.S.ブラッ -
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本書は神学という営みがどういうものであるかを問いかける書。哲学と神学との関わりはあまり日常的に意識されることはない。しかし哲学の中に神学的な問いかけがあり、神学の内に哲学的な洞察が含まれることを、本書は明示してくれる稀有な本である。著者の二人の対話の中で持ち寄られる本がちょうどその時を掬い取るようにして、言葉が下りてくるような体験を読者もまた経験できるであろう。
教皇フランシスコの「無関心のパンデミック」への応答としての、祈り。一見近寄りがたく思われるグァルディーニ枢機卿の祈りについての洞察が特に印象的であった。代表する神学者と評されながらもあまり触れることのできない方であるが、陰に陽にその -
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「親和性による認識」cognitio per connaturalitatemという神学的言葉がある。日常の言葉で言えば「好きこそものの上手なれ」という言葉に表されるような事態を掬い取る言葉である。本書はトマスの徹底的に理性的な思考がいかにして神学的思考と接続されるのかを明らかにする本である。キリスト教はわかりにくいと思われることがあるかもしれないが、本書はキリスト教の基本的な発想を明晰な言葉で表しつつも、西欧の言語で語られるところの神学的問題へと読者を丁寧に導く神学入門となっている。
本書はその章立てから見て取れるように、トマスの神学の方法論と徳論と愛徳論を扱ったものである。まずはトマス -
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本書は多数のトマス・アクィナスについての著書を出されている著者による新たなトマス論である。とはいえ著者の著書はそれぞれの叙述が相補うようにして記されており、本書もその例に漏れず今までの著作を補う一冊と言える。あとがきに記されているように、一般向けに著者が著した『トマス・アクィナス 理性と神秘』(岩波新書)と『トマス・アクィナス 肯定の哲学』(慶應義塾大学出版会)の二冊を難しいと感じる読者に向けて書かれている。
本書の特徴は「哲学者」と「学生」の対話を通して『神学大全』の様々なテクストが具体的に引用されていることにある。主題に応じて選ばれるテクストを読むことを通して読者に『神学大全』の豊かさ -
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これは読んでよかった!!
社会人として大事なことが詰まってる
インプットープロセスーアウトプットに分けて考える
全体像から捉える
仮説を作ること
情報は今の時代いくらでもあるので相手軸を意識して仮説を作る
大きな課題は分解して考える
優れたものつまらないものにたくさん触れるつまらなかったらどうしてつまらないのかを考える
作業にいきなり取り掛かる前にまず立ち止まる(道筋を考える)
目的から逆算すると検討ポイントが見える
不安に耐える力をつける(ネガティヴケイパビリティを鍛える)
他人に勝とうとせず自分に勝とうとする(空回りして負けを引き寄せる)
自分は上手くやれているかからチームはうまくやれて -
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本書はキリスト教に興味を持った人に真っ先に薦めたいキリスト教入門である。「学びのきほん」シリーズの一冊である本書は、帯に二時間で読めると書かれている通り、短い紙幅にエッセンスをギュッと凝縮したキリスト教入門である。とはいえ必要な部分だけを解説するというスタイルではなく、アブラハムの宗教と言われるユダヤ教とキリスト教とイスラム教の関わりから説き起こし、何が共通していて何が違うのか、そして聖書には具体的に何が書かれているのかという全体像を示しつつ、そこからキリスト教のエッセンスを旧約聖書、新約聖書、アウグスティヌス、教皇フランシスコ、ヘンリ・ナウエンのテクストそれぞれから析出していくというスタイ
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本書は類書のないキリスト教思想入門である。多くの入門書や概説書はある決まった枠組みを読者に提示することが多いのだが、本書はむしろどうしてそういう発想に至るのかという、その一歩手前の部分から説き起こす。その理由は本書が同名のラジオ番組をもとに書き下ろされたものだからであろう。噛んで含めるような語り口によってその惟一回の好機を掬い取ろうとする本書は、ともすれば難しく感じてしまうテクスト群を、実際に読み解くことを通して生き生きと読者に提示してくれる。
本書は著者の『キリスト教の核心をよむ』がそうであるように、キリスト教に興味を抱くすべての人に勧めたい一冊である。入門書であると基本的な事柄に終始す -
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著者の考えに触れ、自分がどんなに浅い世界で、限られた物だけを見て生きているのかを考えさせられた。
著者がお勧めしているような本は難しそうだし、簡単に夢中に読み進めることができなさそうで、恥ずかしながら人生で殆ど読んだことが無いけど、読んでみたいと思った。
旅行などで壮大な景色を見た人が「自分の悩みはなんてちっぽけだったんだ」というような感想を言うことがあるけど、読書もそれに似たところがある気がする。決して自分が経験できない他人の人生、気の遠くなるような年月の中で生まれた数々の発見や名作、自分には到底理解できないことが宇宙のように広がっているけど、だからこそ小さなことで悩む必要なんて無いのかもと
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