ユーザーレビュー 英米文学者と読む「約束のネバーランド」 戸田慧 / 出水ぽすか / 白井カイウ 約束のネバーランドが好きで、タイトル買いした本書。 英米文学者である著者も約ネバのファンなのだと強く感じられる考察で、改めて約ネバの良さを言語化してくれる作品です。 P64の、心理戦を駆使したサスペンスである脱獄編、本筋の謎に触れつつ戦略を駆使したアクションの猟場編、そして歴史ファンタジーの様を呈...続きを読むする最終章と、約ネバは3つの異なる面白さを感じられる作品だと改めてわかります。 それぞれの章でモチーフにしているテーマや歴史・宗教の投影など、各所に専門家の見識で解説があり、漫画という娯楽としてのメディアから社会学や宗教学、文学の入口になり得る良書だなと感じます。 約ネバを娯楽だけでなく文学として考察する著者に興味を持ちました。 Posted by ブクログ 英米文学者と読む「約束のネバーランド」 戸田慧 / 出水ぽすか / 白井カイウ ー このように、貴族鬼達の倒錯した欲望の対象となる食用児達の状況は、まるで「母親」によって管」理され、不自由だが安全に守られた家庭で暮らしていた無垢な子供が、やがて大人へと成長するため「外」の世界へと飛び出し、その結果、「男」達による暴力や欲望の対象となり、翻弄されるという、子供から大人への成長の過...続きを読む程を象徴するかのようです。 伝統的なジェンダーに沿った物語であれば、眠り姫は性との接触によって一時的な昏睡状態に陥り、やがて彼女をその眠りから覚ます王子と結婚し、女性 =母親という古典的な価値観に順応することで、大人へと成長します。 もしも『約ネバ』が旧来のジェンダー観にもとづいて描かれていたならば、レウウィスによって傷つけられ意識を失ったエマは、男性キャラクターによって救われ、その男性と結ばれる、というお決まりの流れに落ち着いたかもしれません。 しかし、エマは自らの力で意識を取り戻し、レウウィスを倒す決定打となる閃光弾を撃ちます。「女性=母親、弱者、守られるべき者」といった古典的なジェンダーをはねのけ、自らの力で男性の脅威に立ち向かい、仲間と共に打ち倒すエマの「強さ」は、その後の物語において、大きな意味を持ち始めます。 ー 『約束のネバーランド』の真面目な考察本。 ファンガイドではなく新書で出てるので購入。 イギリス文学、宗教、ジェンダーの切り口で、まったく予想外の考察は無かったけれど、十分に必要な情報を与えてくれるので良かった。 自分たちの閉ざされた“世界”の外にも『世界』があり、この『世界』は閉ざされた“世界”の価値観を否定する。外の世界にも、その世界なりの価値観があり、宗教があり、歴史がある。『鬼』という敵と『人間』という敵を前にして、テーマは必然的に差別と憎しみと争いになり、それは究極的にはホロコーストの問題に辿り着く。最後はどこに終着するのか、というのが究極的なテーマとなる。 食用児は生まれた最初から”供物”となることが運命付けられており、彼らのその“犠牲”の上に“約束”が成り立っている。この“約束”を破る”代償”には新たな“犠牲”が必要となり、それは当然、敵側の”絶滅”に辿り着く。そうではない方法があるのか、またそうだとしたらその“代償”は何か。この辺の考え方で本作の評価が分かれるかと思われる。“甘い”と捉えるか、受け入れられるか…。また、鬼が人間の写し鏡のような存在、だとするならば、物語後の鬼側の世界が非常に心配だ…。 恐怖から守られた壁の内と外の世界、鬼と巨人、歴史、本当の敵は人間、どちらかの世界が滅びるしかないという世界観、その先の希望と絶望、という点で、『進撃の巨人』と通ずるものがある。 ”世界”を変えるためには、『世界』は犠牲を強いる。その犠牲の量的な多さと、質的な深さにおいて、両作は全く異なるが、最終的な希望と絶望においては、まったく同じものを描いているような気がする。 この“犠牲”を考える時、“歴史”と“記憶”の重要性が鍵になる。あとは、“許し”と“癒し”なのだが、この最後の“歴史”、“記憶”、“許し”、“癒し”の解決策は、『約束のネバーランド』にも『進撃の巨人』にも記されてはいない気がする…。 Posted by ブクログ 英米文学者と読む「約束のネバーランド」 戸田慧 / 出水ぽすか / 白井カイウ 【約ネバ好きな高校生、大学生くらいにオススメ】 英米文学と日本の漫画を比較分析するっていう視点がおもしろい。こういう視点から物事を捉えられる力って、今も昔もすごく貴重であることは間違いない。 学生時代に、こういう視点に触れておくことはいい経験になるだろう。 Posted by ブクログ 英米文学者と読む「約束のネバーランド」 戸田慧 / 出水ぽすか / 白井カイウ めちゃくちゃ面白い「約束のネバーランド」という漫画を、英米文学者の視点から見ると、更に深く読めるよという本。 ・イギリス児童文学の「ピーターパン」や「不思議の国のアリス」との類似点 ・ユダヤ教やキリスト教との共通点 ・ジェンダーの考え方 等々、次「約束のネバーランド」を読む時に向けて、面白く読める...続きを読む視点を手に入れれた感覚。 また、違う文脈になるけど、カズオ・イシグロさんの「わたしを離さないで」が「約束のネバーランド」のインスピレーションになっているかもとのこと。 積読状態なのでタイミングを見て読んでみたい。 Posted by ブクログ 英米文学者と読む「約束のネバーランド」 戸田慧 / 出水ぽすか / 白井カイウ 一読しただけでは気づかないような視点が多くて、非常に面白かったです。 深く読み解いていくとこんなにも興味深い世界が広がっているのですね。 原作をもう一度1巻から読み直したくなりました。 Posted by ブクログ 戸田慧のレビューをもっと見る