【感想・ネタバレ】ニッポンの移民 ――増え続ける外国人とどう向き合うかのレビュー

あらすじ

少子高齢化による労働力不足や、流動的な世界情勢を受け、近年日本に多くの外国人がやってくるようになった。2070年には、人口の約10%に達するとも言われる。それに対し、治安や社会保障に関する不安の声は多く、排外主義も台頭している。移民は日本にとって救世主なのかリスクなのか? 日本は欧米のように分断されるのか? 移民なしではこの国はもたないのか? 第一人者が、エビデンスを基に、移民政策の歴史と未来について考察。移民をめぐる議論に一石を投じる。

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Posted by ブクログ

基本的には中立的な立場から「移民」について書かれていた。本書からは学ぶべきことが多いため、一度読んだだけでは不十分であったため、時間を置いてまた読み返したい。
今回読み通して特に印象に残ったのは、人はなぜ国境を越えて移動するのかという移民理論の紹介であった。私のこれまでのイメージでは、相対的に貧しい国から豊かな国へ「出稼ぎ」に行くためと思っていたが、これはプッシュ・プルモデルと呼ばれ、直観的にも理解しやすく、古くからある考えであるようである。しかし、この考え方では、近年、日本とアジア諸国の経済格差が縮小しているにも関わらず、ますます多くの外国人が日本にやってきている状況を説明できていない。結論を述べると、意欲ー潜在能力モデルという考え方が現在の主流であるらしく、確かに上記のような私の疑問にも納得のいくように答えるものであった。詳細については本書を読んでいただきたい。
また、移民理論で興味深かったのは、歴史構造的理論である。「世界経済を中心となる資本主義国が周縁にある途上国を支配するシステムとして描き、移民をそこにおける被害者として捉える」考え方だ。マルクス主義も一枚噛んでいるらしく、左派が技能実習制度を「現代の奴隷制度」と非難して止まないのも理解することができた。情報社会において、技能実習生が騙されて来日する「情弱」の集団とは私には到底考えられなかったので、そのような非難に対して常々不満を抱いていたが、かといってどのような理由で技能実習生が来日するのかを分かりやすく端的に理解・説明することができなかった。しかし、先ほど挙げた意欲ー潜在能力モデルのおかげで、技能実習生が来日するメカニズムも理解でき、決して技能実習生らが「被害者」などという考え方は現実に即していないということが納得できた。
ただ、本書で一点気になることは、排外主義という言葉である。著者はこの言葉をはっきり定義付けているわけではないが、少子高齢化が進む中で外国人が急増して不安を抱く国民の気持ちを排外主義と一蹴することは賛同できない。

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2025年10月17日

Posted by ブクログ

「日本は国力や人口がどんどん減少しており外国人から魅力的な国とは思われていないのではないか?」「極右的な思想が台頭している中で移住先として各国の現在地はどうなっているのか?」などなど、素朴な疑問に対して多くのエビデンスをもとに解説してくれている。

因みに移民の流入はこの先も増えていくことが予測されており、将来的な日本の外国人人口の規模は1000万人前後になると考えられている。

日本中で移民との共存が当たり前になるのは時間の問題なのだろう。

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2025年11月17日

Posted by ブクログ

人生初新書✨移民について深く知っている訳ではなく、「新書=難しい」というイメージがあったので少し緊張して読み始めたが、実際は驚くほどわかりやすく読みやすい内容だった。専門的な知識を前提とせず、初学者にも理解できるよう丁寧に説明されており、初めての新書としてとても良い一冊だったと思う。

内容として印象的だったのは、移民問題を悲観的に捉える一般的なイメージに対し、最新の事実をもとに冷静な視点を提示している点。昔話題になった『ファクトフルネス』ぽさがあった。「多くの人が誤解していることを、データと実例で正す」というスタイルで驚かされることが多く、読んでいて楽しかった。

またこれまで「日本は移民に冷たい国」「制度が整っていない」といった印象を持っていたが、実際には意外と整備が進んでおり、他の国と比べても受け入れ人数が多いという点に驚かされた。ニュースなどで移民問題が取り上げられるたびに漠然と不安を感じているけれど、それでも日本に移民の労働力は必要ということもとても納得したので、移民を増やしたほうがいいのかという議論ではなく、増えることを前提にどうやって共存していくかを考える必要があると思った。

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2025年11月02日

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