あらすじ
少子高齢化による労働力不足や、流動的な世界情勢を受け、近年日本に多くの外国人がやってくるようになった。2070年には、人口の約10%に達するとも言われる。それに対し、治安や社会保障に関する不安の声は多く、排外主義も台頭している。移民は日本にとって救世主なのかリスクなのか? 日本は欧米のように分断されるのか? 移民なしではこの国はもたないのか? 第一人者が、エビデンスを基に、移民政策の歴史と未来について考察。移民をめぐる議論に一石を投じる。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
日本における移民や外国人労働者の現実について、データを元に分析する本。
本書の大きな特徴は、国際的な水準との比較を重視していることだ。
「かわいそうだよね」「良くないよね」といった感情的な議論に流されず、一貫して客観的な視点を貫こうとする姿勢が印象に残った。
正直な所、自分は移民や外国人労働者に対する基礎知識が欠けていたため、読み進めるのには苦労した。
(調べつつ、AIに質問しつつ、何とか読み通せました……)
しかし、苦労して読んだ甲斐はあったと思う。
自分がいかに無知だったのかを痛感させられた。
本書では、ネットやメディアの多くの言説を、データを元に否定している。
外国人に保険にタダ乗りされている、日本の受け入れ基準は閉鎖的すぎる、移民を受け入れると問題を引き起こす、などだ。
それに対する反論は実際に読んでもらうとして、その説明は納得感のあるものだったと思う。
特に、以下の指摘は非常に重要だと感じた。
・日本は公式には移民政策を認めていないが、実質的には移民を受け入れている。
この建前と現実のギャップが、管理や排除といった強硬的な姿勢を生む要因になっている。
・移民が「新たな」貧困や格差を生み出すことはほぼ無い。
しかし排外主義は「今すでにある」移民の生活を破壊する。
・欧米の「失敗談」を鵜呑みにして、日本にそのまま当てはめようとしてはいけない。
日本と欧米では、文化も歴史もまるで違う。
自分には知見がないので、これらの指摘が本当に正しいのかは分からない。
しかし今後移民問題を考えていくうえで、新たな視座を与えてくれたことは間違いない。
Posted by ブクログ
日本の移民政策は国際的に見てもユニークで、人口減少が続くこれからの日本社会に適合的なものになりうる。その基盤の一つを図らずも用意したのは、在日の権利保障をめぐる在留資格についての工夫であった。入管行政の問題点に関する指摘が控えめに過ぎる気もするが、正規で在留する外国人をいかに日本社会の活力につなげていくか、という視点でもって、この課題について明るい展望を持たせてくれる。
Posted by ブクログ
ここ最近読んだ本の中で一番面白かった。国立社会保障・人口問題研究所の中にいる著者による、冷静な日本・世界における移民の分析は「なるほど!」と目から鱗の情報がたくさんあった。
先の参議院選挙から、急速にいわゆる「外国人」政策が全面に出てきた。以前から火の粉は燻っていたが、多くの政党・政治家が自身の票のために煽ったことで燃え盛ってしまった形だ。
著者があとがきの追記で述べているように、かつてのように外国人の「管理と排除」を全面に押し出した移民政策不在の体制に回帰することなく、冷静に議論しなければならない。
とはいえ、多くのSNSや偽情報分析の研究が示しているように、感情は理性よりも先んじるため、これだけ世論で煽られた「外国人」政策をもはや冷静に議論することは不可能に思える。
Posted by ブクログ
基本的には中立的な立場から「移民」について書かれていた。本書からは学ぶべきことが多いため、一度読んだだけでは不十分であったため、時間を置いてまた読み返したい。
今回読み通して特に印象に残ったのは、人はなぜ国境を越えて移動するのかという移民理論の紹介であった。私のこれまでのイメージでは、相対的に貧しい国から豊かな国へ「出稼ぎ」に行くためと思っていたが、これはプッシュ・プルモデルと呼ばれ、直観的にも理解しやすく、古くからある考えであるようである。しかし、この考え方では、近年、日本とアジア諸国の経済格差が縮小しているにも関わらず、ますます多くの外国人が日本にやってきている状況を説明できていない。結論を述べると、意欲ー潜在能力モデルという考え方が現在の主流であるらしく、確かに上記のような私の疑問にも納得のいくように答えるものであった。詳細については本書を読んでいただきたい。
また、移民理論で興味深かったのは、歴史構造的理論である。「世界経済を中心となる資本主義国が周縁にある途上国を支配するシステムとして描き、移民をそこにおける被害者として捉える」考え方だ。マルクス主義も一枚噛んでいるらしく、左派が技能実習制度を「現代の奴隷制度」と非難して止まないのも理解することができた。情報社会において、技能実習生が騙されて来日する「情弱」の集団とは私には到底考えられなかったので、そのような非難に対して常々不満を抱いていたが、かといってどのような理由で技能実習生が来日するのかを分かりやすく端的に理解・説明することができなかった。しかし、先ほど挙げた意欲ー潜在能力モデルのおかげで、技能実習生が来日するメカニズムも理解でき、決して技能実習生らが「被害者」などという考え方は現実に即していないということが納得できた。
ただ、本書で一点気になることは、排外主義という言葉である。著者はこの言葉をはっきり定義付けているわけではないが、少子高齢化が進む中で外国人が急増して不安を抱く国民の気持ちを排外主義と一蹴することは賛同できない。
Posted by ブクログ
友人と入った本屋で友人がカゴに入れてて私もカゴに入れた(=ノリで買った)
無知すぎる私にちょうどよかったかも!
「日本にやってくる移民の大半は、学校に行けないような教育環境の悪い若者が家族を養うために出稼ぎに来ている」くらいはイメージとして持ってたけど、他にもいろいろ世間で言われているらしい偏見や課題が語られていて初めて知ることが多くあった。労働移民は主に高卒、大卒の人が日本にやってきており、人気が高いということは全くイメージを覆された。給料も職業にもよるんだろうが全体的に見てそんな安月給なわけでもなさそう。良い学びになりました。
「移民が増えると、文化の違いから日本の環境が悪くなるのではないか」というのも最近よく見聞きする議題だけれど、これについてはあまり触れられていなかったような。だいたいはきちんと教育を受けている外国人がくるからモラルはあるという前提なのかな?日本が大好きってまでは行かなくてもいいけれど、最低限日本の文化・マナーにリスペクトを持って守れる人が来てくれたらいいなと思う。
そしてこの本を読んでると、自分たちももっと海外移住を視野に入れた生活をしてみても良いのかもしれないと思った。たまたま私たちは日本に産まれただけであって、だからといってここに住み続けなくても良い。自分の性に合う国を学歴・収入関係なく自由に選択して住めるようになれば良いと思う。ハードルがなんとなく高いのよね。
Posted by ブクログ
移民政策をめぐる従来の議論に一石を投じる刺激的な著書。世の中の定説を疑い、善悪や感情論でなく、客観的なデータや国際比較の視点から自分の頭で考える、ということが大切。
・移民政策の不在という言説は間違った解釈であり、日本はリベラルで開放的な労働移民政策をとっている
・欧米の移民は旧植民地由来が多い一方、日本は人口減に対応した労働需要が近年の外国人流入の背景にあるため、職の奪い合いなどの議論に直結しにくい
・日本がもはや選ばれない国と言う見解は印象論で、アジア諸国の経済成長によって移民流入は拡大する
Posted by ブクログ
移民について抱いているイメージ、日本の移民政策はしっかりしたものがない、
経済が停滞し、円安の日本に来たいと思う移民はいない、、
これをどちらも打ち消す内容になっている。
移民政策はそれなりにあると、説明。
さらに、人気がない、ということに対しては、移民したいという要素は、
経済的なものだけではなく、環境的要素もあり、日本は東南アジアから人気がある、
と教えてくれている。
ぴんと来ないが、確かにこの円安でも働く外人はたくさんいるのは事実。
排外主義は移民じゃなくて観光客に対していうべきなんだよな。
若い人が集まる東京ではピンとこないが、地方は外国人なしには
成り立たないという。
観光客も落としてくれるお金を考えたらなくてはならないのだろうけど、
まあでもこれは、銀座をスーツケースとスマホもってうろうろする外人を見れば、
ちょっと何とかしてくれよと思うのは確か。京都はなおさら。
移民は大事にせねばだ。
はじめに
序章 増え続ける外国人
1 増え続ける外国人
2070年には10人に1人が外国人に/日本はまだ移民を受け入れられるのか?/隠された「人口ボーナス」としての外国人
2 日本における「移民政策の不在」
根強い「移民政策の不在」論/ 「日本に移民政策はない」は本当か?/グローバルな視野が欠けた移民政策論/本書の構成/想定される読者
第1章 「日本に移民政策はない」は本当か?――現代日本の移民政策
1 「日本に移民政策はない」と言われるのはなぜなのか?
2つのアプローチ/移民政策不在論のパラドクス
2 移民政策が抱えるジレンマ
「移民」とは誰か?/移民政策の基本構造/国際的なガバナンス体制の欠如/持続可能な開発目標/安全で秩序ある正規の移住のために/国家が抱えるジレンマ
3 世界の移民政策
中心的な地位を占める「永住型移民」 /増えつつある「一時滞在型移民」
4 現代日本の移民政策
実は多くを占める永住型移民/日本は一時滞在型移民受け入れ世界第6位/リベラルで開放的な移民政策を取る日本/日本のアドバンテージ/国際的な枠組みにおける評価/日本は「移民国家」である/さらなるリベラル化の可能性/移民政策の謎を解くため、歴史の深層へ
第2章 少子高齢化と移民を考えるために――移民政策の歴史
1 グローバルな移民政策の動向
現代国際移住システム前史/戦後に増加した旧植民地からの移民/グローバル化した冷戦後の移民/戦後アジアの移住システム/グローバル化と「移民の女性化」/国際移住のさらなる拡大/「リベラル・モデル」から「マーケット・モデル」へ/日本の移民政策は閉鎖的なのか?
2 移民送り出し国としての戦前日本
移民送り出しの3つの潮流/ハワイ、アメリカ移住と受け入れの停止/ブラジルや旧植民地への移住
3 入管行政はなぜブラックボックス化したのか?
4つの時期区分とそれぞれの特徴/ 「管理と排除」の時代/入管行政ブラックボックス化の原因
4 戦後日本移民政策の展開
難民条約をきっかけに人権が拡充された/在日コリアンの定住化と権利獲得/ 「埋め込まれたリベラリズム」の成立/アジアの国際労働市場の勃興/ハイスキル人材の受け入れ/ 「技能実習制度」の創設/ 「技術実習制度」の沿革/ 「サイドドア」としての技能実習制度/帰還する日系人の受け入れ/意図せざる「サイドドア」
5 少子高齢化と移民政策
ハイスキル人材受け入れの国策化/中間的職種の「発見」 /介護分野での移民受け入れ/特区制度とオリンピック対応/下からの拡大/ 「ダムの決壊」としての特定技能制度/永住資格へとつながる技能実習制度/ 「育成就労制度」の創設/入管行政の政策化/外国人人口増加の内実/人口減少と移民受け入れ意識の向上/日本の移民政策の歴史的起源
第3章 人はなぜ国境を越えて移動するのか?――移民理論の現在地
1 移民の原因は経済格差なのか?
経済格差で人は移動する――機能主義的理論/資本主義が人の移動を決める――歴史構造的理論/移民は底辺層になる――二重労働市場理論/家計が人の移動を決める――新家計経済学アプローチ/経済発展が人の移動を決める――移動転換理論/人は「よく生きる」ために移動する――意欲㿌潜在能力モデル
2 人は世界をどのように移動しているのか?
グローバルな国際移住/アジアから産油国と日本に向かう
3 移民はなぜ日本を目指すのか?
移住意欲から見た日本/日本はもう「選ばれない国」なのか?/日本への移民は今後ますます増加する/日本経済が衰退しても移民は増える
第4章 技能実習制度は「現代の奴隷制度」なのか?――成長するアジアと日本
1 移民はどうやって日本に来るのか?
国際労働市場とは何か?/国際移住の3つのステップ/投資プロジェクトとしての移住/ 「中国移民の日本侵略」?
2 安全で公正な国際移住とは?
移住仲介機能とはそもそも何なのか?/移住に必要なスキルをめぐる難題/現実的でない「政府対政府」の移住ルート/移住仲介者を排除することは可能か?/安全で公正な「国際労働移住コリドー」の形成/どうしたら移民は増えるのか?/アジアの国際労働市場と日本
終章 吹き荒れる排外主義の中で――移民政策の未来
1 高くなる地域間の壁と拡大する域内移動
高まる欧米の排外主義/空前のペースで増加する国際移住/排外主義が民主主義を破壊する/日本が進むべき道
2 移民政策を展開する
アジアの成長をどう受け止めるか/マクロ経済の視点/年金制度の持続可能性/健康保険「タダ乗り」の懸念は間違い/移民の実態を明らかにすることが必要
3 地域、企業単位で見た移民政策の可能性
受け入れの現場は職場や地域/地方圏で高まる外国人受け入れへの意欲/アジアの自由移動圏構想
4 移民政策の未来
欧米の経験をどう捉えるか/日本の経験のどこを大切にすべきか/移民をどこまで包摂すべきか/吹き荒れる排外主義の中で/日本の移民政策の未来
あとがき
参考文献
Posted by ブクログ
「日本は国力や人口がどんどん減少しており外国人から魅力的な国とは思われていないのではないか?」「極右的な思想が台頭している中で移住先として各国の現在地はどうなっているのか?」などなど、素朴な疑問に対して多くのエビデンスをもとに解説してくれている。
因みに移民の流入はこの先も増えていくことが予測されており、将来的な日本の外国人人口の規模は1000万人前後になると考えられている。
日本中で移民との共存が当たり前になるのは時間の問題なのだろう。
Posted by ブクログ
人生初新書✨移民について深く知っている訳ではなく、「新書=難しい」というイメージがあったので少し緊張して読み始めたが、実際は驚くほどわかりやすく読みやすい内容だった。専門的な知識を前提とせず、初学者にも理解できるよう丁寧に説明されており、初めての新書としてとても良い一冊だったと思う。
内容として印象的だったのは、移民問題を悲観的に捉える一般的なイメージに対し、最新の事実をもとに冷静な視点を提示している点。昔話題になった『ファクトフルネス』ぽさがあった。「多くの人が誤解していることを、データと実例で正す」というスタイルで驚かされることが多く、読んでいて楽しかった。
またこれまで「日本は移民に冷たい国」「制度が整っていない」といった印象を持っていたが、実際には意外と整備が進んでおり、他の国と比べても受け入れ人数が多いという点に驚かされた。ニュースなどで移民問題が取り上げられるたびに漠然と不安を感じているけれど、それでも日本に移民の労働力は必要ということもとても納得したので、移民を増やしたほうがいいのかという議論ではなく、増えることを前提にどうやって共存していくかを考える必要があると思った。