養老孟司のレビュー一覧
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”現代とは、要するに脳の時代である。情報化社会とはすなわち、社会がほとんど脳そのものになったことを意味している。脳は、典型的な情報器官だからである”(本書p007より)
この一文で始まる本書は、脳科学がここまで人口に膾炙する前、1989年に発表され、これからは”脳の時代である”ということを喝破した一冊である。『現代思想』に月1で連載された論考がベースになっており、脳を巡り様々なテーマが綴られていくが、その人文社会学までも射程圏内にある著者の知性の幅広さと、解剖学者としての長年の経験に基づくその知性の深さという、2つの力が見事に結実した知的論考と言える。
私が本書を手に取ったのは、敬愛する菊 -
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養老孟司氏を中心につながったがん患者と医師の3名が、それぞれの立場からがんについて各々論じ、彼らの鼎談も含めて編集された1冊。
患者である柏木博氏からは、がんに診断されたときのかかりつけ医とのコミュニケーション不全が自身の不安が助長された、という点を自らの闘病記の中で語っている。かかりつけ医とのコミュニケーション不全を経て不安に思った柏木氏が旧知の養老孟司に相談したことから、氏の教え子にあたる東大病院の中川恵一氏と出会い、治療がスタートしていくが、同氏も医師として、チーム医療のような体制を整備して患者とのコミュニケーションの総量を増やすことの利点を主張する。
そのほか、中川氏からは日本人の -
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養老孟司の書き下ろしの本である。
著者自身が述べているように、これまで出版された本の「まとめ」のような内容であるから、私は概ね理解できたが、本書に対する低評価のレビューを見て驚いた。養老孟司の本はいつも発見がある。私はそう思うが、低評価が付くのはなぜだろう。読み解けていないのは低評価を付けたその人なのか、それとも自分なのか。そんなことを考えながら読んだ。
本書で改めて著者が強調しているのは「意識と感覚の問題」である。「意識は同じ」と主張するが、「感覚は違う」と主張する。
そして、養老氏があることを言うとき、やはり「同じ」と「違う」が話題になる。例えば、絶対音感について。動物には絶対音感があり、 -
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解剖学者だからとか、芸人だからではない。二人の「世間との付き合い方」のズレが生み出すトークに熱中します。
昨年発売日に購入して、久しぶりに再読した本です。
バカの壁でベストセラー作家になった養老孟司さんと、毎週深夜ラジオでお世話になっている伊集院光さんの対談集。
視点が絶妙な人と、話が面白い人が対話したら、、、とても面白いのではないか?と期待していましたが、思ったとおりでした。熱中できる楽しさです。
この本になぜ熱中できたか。楽しさの理由は、作中の言葉を借りれば「世間の内と外」両方を意識した言い回しをしているからです。
どういうことか。例えば、養老さんが解剖学について終始話していたら -
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極地での経験と自然に向き合ってきたニコルさんと、
戦争前後の日本人とその環境の変化を肌で感じるの養老さんが、
戦後日本の自然環境を経験ととも懐古しつつ、現代人への提言を述べる本。
1+1=2が納得できない人へ。
身体を回復するというのは、違いを感じ取る感覚を取り戻すところから。
ヒト同士、都会の中のルール。存在と言葉を同じものと捉え、概念的に組み合わせ処理していく。
身体的、あるいは精神的にも本来の動物として感覚は、ずっと変わらない脳と身体に依然残っている。
養老孟司さんの、人の特徴的な力の一つは、同じにする力を持っているというのは非常に頷ける。
在るものは、全ては違うのに、同じだと考