養老孟司のレビュー一覧
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2018年5月から2021年10月にかけて8回行われた対談集。
半分は虫の話。そこから人間の話になる。
ヤマザキマリさん、虫に詳しいから養老孟司さんと話がかみ合う。
お二人とも虫が好きなんですね。
このご両人は、頻繁に本も出している。
書かれている内容は重複していることも多い。
同じようなことを感じている人はおそらくたくさんいて、そんな人たちが読んでいるのでしょう。
言語化された思いを自分の脳に焼き付けるのに役立っている。
みんな心当たりがあって、当たり前のことだと思っていることを言っているだけだから、読者から文句や批判を受けにくい。
読者は、思っていることを上手く言葉で表してくれると「そうそう」「それが言いたかった」となる。
言語化する能力がなく、発言することができないから、自分の代わりに言ってくれる人を書籍やメディアの中で探している。
思い込み思い続けてきたことを、肯定して貰わないと気が済まない人が多い。
人間は見たいものしか見たがらない。
そもそも共感できない発言は、聞き流しがちで心に刺さらないから、「そうだ」と感じる言葉しか残らない。
普段考えたことがないことをサラッと文章化されて、好奇心のスイッチを押される言葉も随分あった。
「宇宙人は地球に来ていて人を操っている。実は猫は宇宙人なのだ。」
「死ぬってことを考えないと、人生が浅くなっちゃう。」
「死刑制度と安楽死は似ている。どちらも人の死に手を貸すことになるから当事者にはなりたくない。」
対談期間中に起きたコロナの話題も出てきた。
以下のような発言が頭に残った。
コロナ感染症の流行は、気候変動や資本主義と絡み合っているように感じる。資本主義の限界と気候変動のリスクを痛感した。(マリ)
日本は経済成長の鈍化で結果的に温暖化のブレーキをかけている。
斎藤幸平さんの『人新世の「資本論」』は、答えとしていいんじゃないかな。(養老)
実現するためには、物欲に囚われない精神を当たり前のものにしなければならない。(マリ)
mRNAワクチンは遺伝子をいじる初めてのワクチンで、世界的に極めて大人数にやっている。
短期的には副反応以外の被害は無いが、長期的にはサリドマイドみたいに絶対なにかあるはず。(養老) -
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遺言。
著:養老 孟司
新潮新書 740
帯には、80になったので、言い残したことを、遺言として書いておこうとある
エッセイとして、書き綴ったものであるので、一貫性を求めるのは酷かもしれないが、
科学の匂いがしているのは、ちょっとうれしいかもしれない
2024年現在、86となっている、この知の巨人は、「当面死ぬ予定はない」なのである
あと、題に、「。」がついているのもなんだかなあ、説明はない
気になったことは、以下です
・ヒトとはなにか、生きるとはどういうことか、根本はそれが主題である
・それが正しいとか、正しくないとか、そんなことは考えていない
考えというのは、そういうものである
・コンピュータにより良く学習をさせるためには、きれいなデータだけではなく、入力に白色雑音を加えてやる
そのほうが学習効果は高くなる
・鳥は中脳動物だ
大脳は嗅覚、中脳は視覚、後脳は、平衡感覚と聴覚に関連して発達したといわれる
・意味のあるものだけに取り囲まれていると、いつの間にか、意味のないものの存在が許せなくなってくる
・中島敦の「古潭」のなかに、「文字禍」という短編がある
アシュル・バニ・アパル大王の御世、老博士ナブ・アヘ・エリバは、大王の命によって、文字の霊の追求を命じられる
…… 老博士は、躊躇なく文字の霊の存在を認めた
これはおそらく、中島敦自身の経験に依拠している
・アイコンを徹底して嫌う文化がある、それはイスラム文化である
イスラム社会は先に定義した意味での偶像=アイコンを排除するのである
・意識という「照明」はついたり、消えたりする
眠ると消えてしまい、起きると点滅する
死んだら、意識はもはや戻らない
・金縛りという現象がある
この場合、意識は戻っているが、運動系のはたらきが完全に戻っていない
・クオリア:感覚的な意識や経験のこと
・日本では、方丈記や、平家物語に流れている諸行無常、西洋では、ギリシア時代に発見している
ヘラクレイトス学派の万物流転である
目次
1章 動物は言葉をどう聞くか
2章 意味のないものにはどういう意味があるか
3章 ヒトはなぜイコールを理解したのか
4章 乱暴なものいいはなぜ増えるのか
5章 「同じ」はどこから来たか
6章 意識はそんなに偉いのか
7章 ヒトはなぜアートを求めるのか
8章 社会はなぜデジタル化するのか
9章 変わるものと変わらないものをどう考えるか
終章 デジタルは死なない
ISBN:9784106107405
出版社:新潮社
判型:新書
ページ数:192ページ
定価:760円(本体)
2017年11月20日発行 -
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【情報偏重社会と自然】
先日『風を見た少年』を読み、もう少し読んでみたくなりました。今回は養老先生との対談。
黒姫でアファンの森を運営していたニコルさん。
今の日本の状況を否定するのではなく、可能性を信じているからこその愛のある言葉と行動の数々。
2015年に出版された本。当時はSDGsの前のMDGs時代。
今では主流メディアでも話される持続可能な発展、この対話は本質をついているように思った。#海の豊かさ #SDG14 #陸の豊かさ #SDG15 も、全てつながっていることが強調されていると思いました。
例えば、
システムに組み込むこと。
竹を伐採するという行為について、その切った木をどうするかという考え
を明確にせずに行っても持続的ではない、と。
流域で考える。ー「海は7つもありません。1つです。」エチオピアに27歳で行って国立公園の設立に取り組んだニコルさん。ナイル川の水資源の取り合いに触れる。
子どもと教育についても。
公園にはコンセントがないから遊べない、という子ども。
「子どもから自然を取り上げると世界が半分になる」と。
感覚と意識。秩序と変化。
感覚は違いを識別するもの。意識は同じにする能力。
視覚・聴覚を共に理解するため、目と耳が折り合う、ために、意識が作り出した時間と空間という概念。
意識は変化しないものしか扱わない。今の時代の人は、変化していくものを扱うことが下手、という。身体感覚がおろそかにされている生き方なのだろうと思う。
人間は状況の産物。
成功体験が邪魔になる。
同じ自分にこだわらない。
対談を読んでいると抽象的なこともとても自然に入ってきて、とても興味深く勉強になりました。 -
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この辺りの『知』に触れると、過去に学んだ日本史や日常見るニュースは、いかに表層だけしか見ていないかがわかる。
明治維新と第二次世界大戦で、2度価値観を変えねばならなかった日本。
うまく新陳代謝したわけでは無く、それもまたやむなしと受け入れたものの歪みの上に構築さ、矛盾に満ち成熟せずに時間だけがたって、国力がどんどん落ちている。
果たして未来はあるのか⁉️
【怖い話】
ここ30年で世界の昆虫が8割減ったらしい。人口減と原因は同じ。
南海トラフ地震、首都圏直下型地震が起きて日本の経済が壊滅的にダメージを受けたら、巨額の資金わ中国に頼らざるを得なくて、属国になるしかない。 -
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この本の題名は『日本の歪み』ですが、もう少し丁寧に言うと「戦後日本の歪み」です。東さんが戦後論を提示して、養老先生に意見を聞くという内容になっています。茂木さんはときどきTwitterと同じ人とは思えないくらい、養老先生の話に上手に補助線を引いています。
この「戦後日本の歪み」を簡潔に表現するなら、日本の文化の上にアメリカ主義を継木してしまったことです。そこに無理があった。しかし、経済発展によりそれが「上手く行った」と見なされ、後戻りできなくなった。そのディレンマが歪みの正体だというわけです。
もちろん、こうしたディレンマは初めてじゃない。明治維新がそうだったし、古くは中国との関係がそうでした。むしろ、それが日本という国の形を作ってきたと言ってもいい。では、どうやってそのディレンマが解消されたかというと、「天災だ」というのが養老先生の考えです。
歴史は「政治が世の中を動かしてきた」という物語を語ります。しかし、それはどこまで本当か。大正デモクラシーから軍国主義への傾倒の間には、関東大震災がありました。江戸時代の倒幕運動の前には、安政の大地震がありました。『方丈記』にも京都の大地震が描かれ、その後に武家社会が到来します。これらの歴史への影響は分析されていません。
2038年までに、70〜80%の確率で南海トラフ地震が来ると言われています。そこでこれまでのシステムが「ご破算」になることで日本は大きく変わるといいます。それが「良いか悪いか」ではなく、そうならざるを得ないだろうと。
「大事なのは平和ではなく日常」という言葉が印象的でした。右だの左だのというイデオロギーは、食べるものに困れば意味をなしません。「どうやって生き延びるか」という地に足の付いた考え方が、これからは必要なのかもしれません。 -
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6人の作家さん毎に色が異なる厚手の紙の本。
写真はもちろんカラー。
角田光代さん
「トト」は2冊フォトエッセイを読んだので知ってる。
「トトが来る前は自分中心で、辛いことがあると全身で向かい合っていたのでしんどかった。」が、
「トトが来てからは、とりあえずトトにご飯をあげなきゃ、といった気持ちの逃し方ができた。」そうだ。
角田さんは犬が好きで、「トト」は犬の要素を持っていると言っていたのを思い出した。
他の猫よりも人懐っこいのかな。
村山由佳さん
猫が大好きなんですね。
「もみじ」に対する想いは尋常ではなく、エッセイを何冊も出しているみたい。
「もみじ」の生まれる瞬間にも立ち会ってるし、亡くなる時まで17年も一緒にいたら、そりゃ愛情だらけになりますね。
「犬は子供で猫は対等な大人。」と言ってたが、子供は従順で大人は自分勝手ということか?
逆に犬は大人で猫は子供とも言えそうだな。
柚月裕子さん
「呼んでも来ないし、抱きしめても、するりと腕から抜け出す。」
「でも気がつくとそばにいて、いつも同じ瞳でみつめてくれる。」
猫との接し方は、養老孟司さんと似てるかな。
養老孟司さん
子供の時からずっと家に猫がいるようだ。
あまりかまわないで好きなようにさせている。
寄って来るのは餌が欲しくなった時。
人に手間をかけさせるのがペットの仕事。
猫は生きることのモノサシ。必要な物を手に入れたら、あとは寝ている。
毎日お互いに生きてますな、と顔を合わせてお終い。それでいい。
皆さん、猫に見られている感があって、自分以外で自分のことをよく知っている存在と捉えている。
猫はいつでも自分のことを気にしてくれているありがたい存在なんですね。 -
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昭和12年生まれの著者が、コロナ渦、そして、入院とか、外に出る機会が少ない中、書くネタが少ない中、長い人生の間に培った智恵・知識をバックボーンに自然体で書き綴ったのがこの本のようである。
まえがき
1人生は不要不急か
2新しい宗教が生まれる
3ヒトはAIに似てきている
4人生とはそんなもの
5自殺するヒトとどう接するか
6なせばなる日本
7コロナ下の日常
8ヒト、猫を飼う
あとがき
哲学者でも、経済学者でも、社会学者でもない、宗教家でもない、一風変わった解剖学者で昆虫と猫が好きな著者の感性になんとなく接するのもいいのではないでしょうか(笑)。 -
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社会の在り方や問題点について、「死」を視点に述べられていて、面白かった。「死」はどこから「死」なのか、なぜ死んだら名前(戒名)が変わるのか、死体は「モノではなくヒト」、日本では死んだらメンバーズクラブ(共同体)から脱会させられる、など、死の概念的な思索、死と社会の関係性について、漠然とだけど、理解出来た。
他にも現代社会は「死体」が身近では無くなった、人間が情報化(不変の存在と思われるようになった)してしまった、都市化やエリートの消滅により安楽死の問題において、医者側の負担や責任を考えなくなったり、その他の人々もエリートにそういう仕事を押し付けているという、後ろめたさが無くなった、という考えが印象に残った。
あと「死」という概念的なものを、「一人称の死」、「二人称の死」、「三人称の死」、と文字化して、「死」を細分化していた所が凄いなと思った。
自分は「死」について深く考えたことがなかったし、「死」を視点に物事や社会を見ていなかったから、これを機に考えていけたらなと思った。 -
Posted by ブクログ
世界から見た日本、日本人の変わったところを客観視して具体的に伝えてくれる。
しかも包み隠さず率直に。
とても考えさせる問いでした。
2038年に大震災が来るとなん度も紹介されていましたが、来ることがわかっているのに備えないのはおかしい。まさにその通り。
東日本大震災を間近で経験したわたしは、あのような経験は2度としたくないと思いますが災害大国日本に住んでいる限りは対策しないといけないと感じます。
もう一つ感じたのは日本人の同調主義です。
皆と同じでなければダメとか、あいつは考え方が皆と違うからおかしいとか、そんなくだらない考えは排除したいと感じた。
子どもを育てる環境から改善していきたいと思いました。
皆で考えようは考えているうちに入らない。
考えるのは1人でいい。
議論は皆でするもの。
自分の考えがいかに日本人的だったかを思い知らされる本でした。