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美しい夏
一人の少女が大人へと成長していく青春のひとこまを、鮮やかに描く。ジーニアは兄と二人暮らし、洋裁店で働いている。もうすぐ17歳になる夏、三つほど年上のアメーリアと出会う。アメーリアは画家のモデルをしているという。成熟した雰囲気を漂わせるアメーリアに、ジーニアは反発しつつも憧れを抱く。昼間は働き、夜はカフェやダンスホールで遊び、日曜は散歩に出かけたり湖でボートに乗ったり映画をみたり、あるときアメーリアは、モデルの仕事をしている画家のもとへジーニアを連れていく。ジーニアはその画家に恋するが……燦めくような夏はあっという間に過ぎ去る。パヴェーゼに惚れ込んだ訳者による名訳。 -
殺人免除
アーチー顔見知りの理髪店のクローク係と女のマニキュア師が訪ねてくる。二人は夫婦で、その朝警官が店を訪れ、二人の身元や昨晩の行動を聞かれたとき、不法入国を問われる危険を察知して、すぐさま逃げ出してアーチーを頼ったのだった。アーチーが店を訪ねると、なんとそのときの警官がマニキュア室で背中に鋏を突き立てられて死んでいた!(「警官殺し」)。新任の某国大使の希望で、石油王の山荘にコックとして雇われたウルフ。みんなで釣った名物の鱒の調理を頼まれたのだ。釣師5人はそれぞれが割り当てられた釣り場で腕を競ったが、国務長官補佐リースンの帰りが遅い。遅れて釣りに出たアーチーはリースンの死体を発見した(「殺人免除」)。…ネロ・ウルフ中編傑作2編。 -
吉野葛・蘆刈
吉野の紀行文と思わせる出だしから、同級生の男の早くに失った母親の生家探しが語られ、母の面影を思うあまり、生家の姪を許婚(いいなずけ)にするという展開が一気に語られる「吉野葛」。『蘆刈』も、紀行文から夢ともうつつともつかない物語に変容し、出会った男から語られる父のせつない恋愛話がテーマである。未亡人に恋し、その妹をめとり、姉思いの妹との関係が語られてゆく。その息子であるこの男はいったいだれの子供なのか、未亡人はもうすでに高齢になっているのではないかという疑問をのこしながら、男は消えてゆく。大阪移住以来、谷崎潤一郎の作風がだんだん純日本的なものに移行していった時期の代表作。 -
アラビアンナイトの殺人
ある夏の夜、ロンドンのウェイド博物館を巡回中の警官が、怪人物を見かけたが、その人物は忽然と消えてしまった。しかも博物館の中には殺人事件が発生していた。それはとんでもない大事件の発端であったが、未解決のままだった。奇書アラビアンナイトの構成にならって、この事件を体験したロンドン警視庁のお歴々三人は、三者三様の観察力と捜査法を駆使して事件を物語る。そして、その話の聞き手はギデオン・フェル博士である。ユーモアと怪奇を一体にしたカーの独特な持ち味が、アラベスク模様のようにけんらんと展開する代表的巨編。フェル博士がみごとな安楽椅子探偵ぶりを発揮する異色作。 -
人形佐七捕物帳
「半七」「銭形平次」と並んで三大捕物帳といわれる「人形佐七捕物帳」。その最大の特色は横溝正史ならではの情痴・妖艶・欲望・怪奇・諧謔のからむ物語の面白さと、脇役の活躍の妙にある。主人公はむろん、神田お玉が池の佐七(人形とつくのは人形のように端正な美男であることから)。これに恋女房のお粂《くめ》、「雷ぎらいの」きんちゃくの辰と、「蛇ぎらいの」うらなりの豆六がからむ。とくにひょうきんな豆六は関西弁を駆使する、なくてはならぬ脇役だ。 この巻は、佐七一家の成り立ちを知る絶好の入門編。佐七が初めて名を売ったてがら話「羽子板娘」、辰五郎が船宿の船頭から足を洗って佐七の子分になったいきさつを描く「開《あ》かずの間」、やきもち焼きの姉さん女房お粂と一緒になるきっかけの事件「嘆きの遊女」、上方出の御用聞き志願で佐七に弟子入りし、へっぴり腰で《御用や、御用や》とかしましく立ち回る豆六の登場をえがく「螢屋敷」など6編を収録。 -
火の昔
柳田国男が語るユニークな「火の文化史」。暗闇は昔からおそろしいものだった。夜は闇の世界であり、魔のものの跳梁跋扈する世界だった。人々はそのため、昔から夜を明るくするさまざまな工夫をこらしてきた。燭台やちょうちん、あんどん、蝋燭やいろいろな油、火の作り方、手に入れ方、もたせ方など。……火にまつわる行事や風習を、あらためて問い直した楽しい本。 -
古代への情熱
ホメロスの「イリアス」に魅せられた少年の心は、終生かわることはなかった。事業で成功した彼は、私財をなげうって後半生を幻の「トロイア」の発掘に邁進した。今では乱暴と一蹴されてしまうような方法で、彼は大規模な発掘を敢行、数多くの遺跡を発見して、考古学や美術史に多大な貢献をすることになった。本書は、そうした彼の生涯と事業の概要を知るための好著であり、最も劇的な発見物語でもある。 -
魔都
昭和9年の大晦日、東京に滞在していた安南国の皇帝が失踪した。ほぼ同時刻、松谷鶴子というその愛人らしき妙齢の女性が赤坂山王台の高級アパート「有明荘」のベランダから墜死した。そこにはいったいどんな関係があったのか。当時の銀座には、マダム村雲笑子(えみこ)の「巴里」というバーがあった。そこでは、巴里帰りでタキシードを着込んだ高利貸しのせがれ、朝鮮捕鯨会社という国策会社の重役で羽振りのいい子爵家の当主、名うての遊蕩児で酔えばマラルメを口にするディレッタント、銀色の靴を穿いて人造ダイヤを指に光らせる米国帰りのダンサーなど、奇態な連中が乱痴気騒ぎの真っ最中。ところが、あとでわかったのだが、その連中の何人かが「有明荘」の住人でもあった。いったいこの暗合は何なのか。鬼才十蘭ならではの絢爛たるミステリー。 -
日本の伝説
伝説は、どのようにしてこの日本の国土に芽ばえ、そして育ってきたか。豊富な実例によって、著者は、やさしく、ていねいに説く。「咳(せき)のおば様」「驚き清水」「大師講の由来」「片目の魚」「機織り御前」「お箸成長」「行逢阪(ゆきあいざか)」「袂石(たもといし)」「山の背くらべ」など、きわめて色あざやかな伝説の多くが、整然と網羅されている。「日本の昔話」の姉妹篇。 -
野草雑記・野鳥雑記
タンポポ、ツクシ、ヒバリ、カラス、スズメ…昭和初年、東京郊外の砧(きぬた)村に移り住んだ柳田国男は、武蔵野に生きる小さな野の草や野鳥に慈愛深いまなざしをそそぎつづけた。身近な友である野の草花・鳥たちを見つめ、呼び名・数々の昔話に人との長いかかわりを明らかにする。 -
日本の昔話
著者が多年にわたって集めてきた全国各地の「昔ばなし」…本書に収録されたのは、「猿と蟇(ひき)との餅競争」「猿聟入り」「金の斧銀の斧」「黄金(こがね)小臼(こうす)」「はなたれ小僧様」「蛇の息子」「水蜘蛛(みずぐも)」「飯食わぬ女房」「牛方と山姥(やまうば)」「人影花」「山梨の実」「三枚のお札」「にわか入道」「小僧と狐」「片目の爺」「たのきゅう」など…全部で106話! 立ち読みをぜひご覧ください。 -
雪国の春
「二十五、六年も前からほとんど毎年のように、北か東のどこかの村をあるいていたが、紀行を残しておきたいと思ったのは、大正九年の夏秋の長い旅だけであった。それを『豆手帖から』と題して東京朝日に連載したのであった」…この時の紀行文を中核に、北の風土に行なわれる行事、祭事、伝承をつぶさに記し、それらを日本文化論にまで広げてみせた著者初期の代表作。南国を記した『海南小記』と対をなす。 -
海南小記
著者は大正九年、九州東海岸から沖縄の島々の果てまで足をのばし、そこに行なわれる数多くの民俗を比較対照してみる機会を得た。「本書のごときは、いたって小さな咏嘆の記録にすぎない。もしその中に少しの学問があるとすれば、それは幸いにして世を同じうする島々の篤学者の、暗示と感化とに出(い)でたものばかりである」…著者はこう謙虚に述べると同時に、日本の民俗学の開眼を高らかにうたいあげた。『雪国の春』とならぶ柳田国男の生涯をかけた学問の出発点。 -
遠野物語
本書は、岩手県遠野町出身の民話蒐集家、佐々木喜善氏によって口述された遠野近辺に伝わる民話・伝承を、著者が書きとめ、編纂して1910年(明治43)に自費出版したもので、柳田国男の原点をなす著作となった。内容は河童、天狗、ザシキワラシなど妖怪にかかわるもの、山人、神隠し、死者などに関する怪談、さらには祀られる神、各種の行事など多岐にわたる。『遠野物語』は全部で119話からなるが、続いて発表された『遠野物語拾遺』には、299話が収録されている。 -
むださわぎ
メッシーナの知事の娘ヒアロウはフィレンツェの若い貴族クローディオウと結婚することになった。だが花婿に悪意をいだく者たちの策略でヒアロウの不貞を信じたクローディオウは、結婚式の当日、教会で彼女を拒絶してしまう… -
町人貴族
モリエールのどたばた笑劇(ファルス)の代表作。成り上がりブルジョワ(町人)の俗物根性を徹底的に笑いのめした作品で、あかるい笑いにみちた傑作である。トルコ人の儀式の詳細もとりこまれ、異国情緒にもことかかない。 -
人間ぎらい
潔癖で、世の不正を憎み、いっさいの妥協を許さない青年アルセストが、美しい浮気女の未亡人セリメーヌにほれてしまう。友人のフィラントの忠告もどこへやら、「理性は恋を支配するものではない」と、にべもなく、それをはねつける。だが、結局、この恋はみのらない……モリエールの代表喜劇のひとつ。 -
守銭奴
徹底した守銭奴アルパゴンを主人公にしたモリエール晩年の喜劇。今日では「タルチュフ」についで最も上演回数が多い。「泥棒、泥棒!」で始まる第四幕の最終景は、金貨を盗まれて狂乱するアルパゴンの一人芝居の見せ場で、主人公は、観客に訴えかけ、観客の視線、観客の笑いに恐怖を抱く。モリエールはここで劇場全体を舞台空間にしてしまっている。 -
タルチュフ
宗教を食い物にする偽善者タルチュフにすっかり篭絡され、イカレてしまったオルゴンは、極度の思い込みから自己中心主義のとりこになって、一家の全員を苦しめるが…コメディ・フランセーズですでに三千回以上の上演回数をほこるモリエール屈指の力作。 -
メグレ警視のクリスマス
ミステリであれ、純文学であれ、外国の作家たちは一生涯に一度はクリスマス・ストーリーを書く。エラリイ・クイーンによれば、クリスマス・ストーリーにはいくつかの約束事がある。「子供を登場させる」ことと、「奇蹟がなければならない」ことだ。『メグレ警視のクリスマス』にも子供が登場し、小さな奇蹟も起こる。『メグレのパイプ』では、メグレ夫人が十年前の誕生日祝いに贈ってくれたメグレのもっとも好きなパイプが盗まれる。毎日、メグレはオフィスのなかをさがす。帰宅しても、不機嫌で、ほとんど口をきかない。メグレがそのパイプを見つけるのは、捜査中の事件の犯人を逮捕したときであった。シムノン自身がもっとも愛している中編。 -
海底二万リーグ
次々と報告される海の「怪獣」の正体を明らかにすべく、アメリカは巡洋艦エイブラハム・リンカーン号を派遣する。フランスの海洋生物学者アロンナクス教授は正式な招待をうけて、それに乗り込む。同行するのは召使いの若者コンセイユだ。艦にはカナダ人のモリ撃ちの名手ネッド・ランドもいた。「怪獣」の正体はほどなく明らかになったが、それに気づいたとき、3人は鋼鉄製の「怪獣」の腹のなかへと引きずり込まれた。「怪獣」は見たこともない潜水艦で、ネモ(誰でもない)という名の艦長がその指揮官であった。艦長はいぶかる3人を深海の散歩に歩につれだす。ヴェルヌの「驚異の旅」の代表作。 -
グラント船長の子供たち
SFの始祖として知られ、冒険小説の第一人者として知られるジュール・ヴェルヌの「驚異の旅」シリーズ第5作。スコットランドの貴族グレナヴァンはふとしたきっかけから冒険家グラント船長の船が遭難して船長が消息を断ったことを知り、残された姉妹メァリとロバートを連れて捜索にのりだす。だが、さしあたりの手がかりは南米のパタゴニアしかない。老練な航海士オースティン、料理長オルビネット、グレナヴァンの従兄弟で沈着なマクナブズ少佐、まちがって乗船し冒険旅行に出ることになったが、該博な知識で協力する天衣無縫の地理学者ジャック・パガネル…果たしてグラント船長はどこかに生きているのか?
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