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冗談に殺す ――夢野久作ベストコレクション 久の巻
怪物 夢野久作 ちくま文庫への帰還 没後80年を前にますます高まる人気熱 怪物による狂気の文学に思う存分、狂っていただきたい 傑作中・短編を2冊にまとめる決定版的作品集 【内容紹介】 没後90年を目前に今もなお新たな読者を獲得し続ける夢野久作の中・短篇を網羅する決定版的作品集。日本三大奇書『ドグラ・マグラ』をもって語られる作家だが、約10年の活動期間に発表した長篇は『犬神博士』『暗黒公使』『ドグラ・マグラ』3作であり、氏の持てる作家性は中・短篇にこそ発揮されていたといって過言ではない。「氷の涯」「冗談に殺す」「人間腸詰」他、15作を収録するシリーズ下巻。 -
恋愛少女マンガ全史 ――ラブコメと若者文化の変遷を探る
マンガにおける男女の恋愛解禁に始まり、歴史ロマンとしての恋愛物、ロマンチック・コメディからおとめちっくマンガ、そして自立する女性の恋愛へ――恋愛少女マンガの変遷は、戦後日本の若者の歩みそのものだった。ラブコメという少女マンガの王道に焦点を当て、少女マンガが表現してきた生活や気持ちの揺れの細部に注目。少女マンガ家ならではの感性を読み解いて、その恋愛観や女性像、若者たちの価値観の移り変わり、さらには戦後日本社会における夢と現実の亀裂を明らかにする。 【目次】第1章 ラブストーリー解禁にむけて――ドラマ性、美しさ、そしてかわいらしさ/第2章 大ロマンからロマンチック・コメディへ/第3章 ラブコメは何を描いたか――西谷祥子・忠津陽子/第4章 「女の一生」を描くラブコメ、メロドラマ――大和和紀・一条ゆかり・里中満智子/第5章 恋愛と欲望をめぐるラディカルな探求――大島弓子・山岸凉子/第6章 多様化する恋愛――おとめちっくのそのまま、不良の刹那、優等生の憂鬱/第7章 バブル期という恋の終わり――岡崎京子を中心に/終章 それでも少女マンガは恋をする -
アガンベンの思想圏 ――越境する哲学
20世紀を代表する哲学者・ジョルジョ・アガンベンは言う、「わたしはエピゴーネン(亜流)である」と。ハイデガー、ベンヤミン、フーコー、デリダ、ネグリ、そして道化プルチネッラ……他者という「鏡」の中に自己の哲学を見出すこの思想家の概念の起源と展開を著作群に読み解く。デビュー作『中身のない人間』から最新刊『クアデルニ』までを射程に収め、認識と無知、聖と俗、アナーキーとデモクラシー、悲劇と喜劇など、両極間を宙吊り状態のまま渡っていく、そのスリリングな思考はどこに向かうのか? 【目次】I アテンション・プリーズ――序に代えて/II 「エピゴーネン」という身振り/III アートと抵抗/IV ハイデガーを読むデリダを読むアガンベン/V ネグリVSアガンベン、あるいはオルター・エゴの応答/VI ドン・キホーテの存在論/VII 「アナーキーはデモクラシーよりも興味深い」/VIII 精神分析について彼が知っている二、三の事柄/IX 瀆聖と異端の神学/X 喜劇に始まり喜劇に終わる――結びに代えて -
モチーフで読む浮世絵
表紙になっているこの浮世絵、縁側のふたりはどんな関係? それはどこを見ればわかる?? 世界に誇る日本の芸術「浮世絵」。 この浮世絵をちょっと深入りして鑑賞し、江戸の人たちの暮らしや風俗を味わいませんか? 北斎の「神奈川沖浪裏」、写楽の「三代目大谷鬼次の江戸兵衛」……浮世絵専門美術館の人気学芸員が有名作品はもちろん怖い絵や不思議な絵なども取り上げ、作品に描かれるさまざまなモチーフを読み解きながら、図柄の魅力や江戸の人びとの暮らしや風俗を案内する。かつてなかった浮世絵を豊かに楽しむ画期的な入門書。 掲載作品127点オールカラー。好評ウェブ連載を再構成・大幅加筆した文庫オリジナル。 まるで江戸時代へタイムスリップしたように楽しく、よくわかる かつてなかった浮世絵入門書の登場!! 図版はオールカラー ちくま文庫オリジナル -
新版 日本の思想とは何か ――現存の倫理学
日本人はいかに「よく」生きようとしてきたのか 倫理思想史の大家による遺著にして最終到達点 日本人はいかなる思想を持って生きてきたのか。この問いを生涯をかけて追究した日本倫理思想史家による、遺著にして最終到達点。 === 日本人とはいかなる思想を持って生きてきた人々なのだろうか――。その探究は「今・此処」を生きる「現存」としての日本人が、どのようにして「無窮・無辺な「時・空」」を志向し、いかなる「形而上の存在」を「夢想」して生の「究極の拠りどころ」を求めてきたのかを、過去にさかのぼって解明することに他ならない。本書は、倫理学者・哲学者として「よい「生」」とは何かを問い続けてきた佐藤正英の研究の最終到達点とも言える傑作。全面改訂版をほぼ書き終えたところで亡くなった著者の遺志を継いだ研究者による校訂を経た完全版。解説 上原雅文 -
日本仏教のこころ
源流インドから中国をへて日本へ―― 厳正な眼差しで追う 独自の精神形成史 源流たる仏陀の教えから、時代とともに遠ざかってきた日本仏教。〈日本的霊性〉称揚に警鐘を鳴らし、原典研究の厳正な立場から、その精神形成史として追う。 === 共通の聖典をもつこともなく、数多くの宗派に分離した日本の仏教。キリスト教など、ほかの多くの宗教では、開祖の教えに立ち戻る宗教改革が起こったのに対して、日本仏教は実際問題として仏陀をそのように重要視してはこなかった。著者は「大陸からの伝来以来、順々と磨かれ、鎌倉期の仏教成立をもって〈日本的霊性〉を発揮する真正な宗教となったという自画自賛は間違いである」と述べる。原典研究者としての厳しい視点から、日本仏教独自の道筋に迫る不朽の名著、待望の文庫化。 -
評伝 市川房枝 ――日本最大の女性政治家
市川房枝(1893~1981)は戦後政治で異端の存在ながら、党派に属さない無所属議員として他に類を見ない国民の支持を得た政治家だった。戦前・戦時期には社会運動家として婦選運動を牽引し、戦後は87歳で亡くなるまで参院議員を務めた市川が、常に男性政治家によって動かされてきたこの国の政治世界で、生涯をかけて追求した「女が望む政治」とはなんだったのか。その生い立ちから、最晩年までの軌跡を詳細にたどり、政治理念と政治手法を明らかにする決定版評伝。 【目次】はじめに──混迷する政治と市川房枝/Ⅰ 戦前──1893年5月~1931年8月/第1章 生い立ち──時代の流れと運動家の形成/第2章 平塚らいてうとの出会いと別れ、そして渡米/第3章 イエ社会で婦選運動を展開──特殊日本的な保守社会と市川の対応/Ⅱ 戦時期──1931年9月~1945年7月/第4章 準戦時期・抵抗の実相──反戦活動と切り拓いた市民的活動/第5章 戦時期・転向の軌跡──「婦選の灯」のともし方/Ⅲ 戦後──1945年8月~1981年2月/第6章 占領期・公職追放──時代の寵児から「格子なき牢獄」の日々まで/第7章 クリーン・ポリティックスの模索──婦選の経験はどう引き継がれたか/第8章 「ストップ・ザ・汚職議員」運動への道──婦選の経験の今一つの展開/第9章 平和と女性の人権──婦選の政治の行き着いた地平/あとがき/主要参考文献/市川房枝略年表 -
悲しみから立ち直りたかったら悲しみを忘れてはいけない ――マインドフルネスと心理療法ACTで新しい人生をみつける
ACT(アクト)をはじめとする認知行動療法が提案するグリーフケア 死別、別離、離職、失恋、ペットロス……悲しみと向きあう過程では、しばしば強い苦痛の感情に襲われる。この感情を解消するためには、コンパッション、つまり慈悲の心が不可欠になる。喪失は人生の本質のひとつであり、上手に対処すればそこに大きな意味を見いだせる。自分に残された人生をいかに生きるべきかを明確にしてくれるのだ。注意深く、自分に優しく接していこう。 悲嘆にくれることは決して悪いことではない。 悲しみの居場所を作り、嘆くことを通して自分を見つめる方法を学ぶ。 悲しみによる痛みを上手に受け止めよう。 -
日本政治思想史講義 ――『丸山眞男講義録 第四冊』を精読する
1964年の『丸山眞男講義録』をサブテキストにした法政大学法学部における本講義は、日本神話や古代天皇のあり方に日本の思想的伝統の「原型」を探る丸山の講義をわかりやすく精読。とくに丸山が力点を置いていた鎌倉新仏教の革新性について、その中にヨーロッパの宗教改革に匹敵する世俗化・脱宗教化の動きを見つつ、呪術的な心性も残り続けていくという特徴と、日本独自の政治思想の展開を見る。丸山の直接の教えを受け、その研究を引き継ぎ掘り下げた碩学による名講義。 【目次】はじめに/第1講 日本とは何か/第2講 日本思想における「古層」/第3講 天皇制神話の形成とその諸相/第4講 伝統とは何か/第5講 日本における古代国家成立と日本神話/第6講 日本神話における道徳意識──「心情の純粋性」と「集団的エゴイズム」の結合/第7講 記紀神話における出雲神話の位置/第8講 天皇制の正統性/第9講 国体とは何か/第10講 カリスマ的支配の諸相/第11講 血縁共同体の擬制/第12講 日本政治思想における仏教思想の萌芽/第13講 鎮護国家のための仏教/第14講 平安仏教がもたらしたもの/第15講 末法思想と慈円の歴史哲学/第16講 プレリュードとしての「隠遁」の思想/第17講 親鸞の思想の革新性/第18講 親鸞の思想と政治/第19講 孤高の哲学者・道元/第20講 闘う宗教改革者・日蓮/第21講 鎌倉新仏教のその後──屈折と挫折の諸相/第22講 あらためて「日本」とは何か/あとがき/人名・神名索引 -
生態社会学入門 ――日本の未来を考える
少子化と人口減少で危機に陥っている日本。この閉塞状況から抜け出すには、日本列島で暮らしてきた人々に固有の生態文化を見つめなおし、現代日本の社会病理の正体を的確に見極める必要がある。言語学や民俗学、歴史学、考古学、人類学、さらにはサブカルチャーなどを材料に、日本社会の基層にあるものを西洋との対比のなかから明らかにし、原始古代から現代・未来までをつらぬく、文化の一貫性を読み解く。国家や主権権力の本来の姿を描き出す、新たな知の考古学の試み。 【目次】第1章 むらの生態――日本の生態I/第2章 都市の生態――日本の生態II/第3章 くにのちから――日本の生態III/第4章 環境と文化――生態社会学の論理/第5章 未来と制御――未来映画の分析から/第6章 近代の暴力――世界史の生態/終章 日本社会のゆくえ -
小学生から知っておきたい よのなかキーワード70 ――この1冊で語彙力・教養力がアップする!
普遍、コンプライアンス、仮説……こどもの「どんな意味?」に一発解答! 世界を「知る」「考える」ための好奇心がぐんぐん伸びる 小学生向けキーワード集! 世の中を説明する、「考える」ことの本質を知る、人の気持ちや行動を説明する、最近よく聞く新しい常識など、小学生から知っておきたいキーワードを集めて解説! 毎日1キーワード、70日で世界を「知る」「考える」ための土台をつくります。 キーワードに関連するマメ知識、歴史に残る「名言コラム」も人物伝とともに収録し、語彙力とともに教養力もアップ! 総ルビ・イラスト入りで、こどもが自分ですいすい読める一冊。自学自習の芽を育てます。 国語で出題される文章を読み解く、社会の時事問題の理解を促す……など、中学受験対策にもマル。 一家に一冊! ニュースを見ながら「これってどんな意味だろう?」と、家族で学ぶのもオススメです。 -
新編 黒柳徹子の一生懸命対談
渥美 清/畑 正憲/森 英恵/勝 新太郎/司馬遼太郎/坂東玉三郎/和田 誠/篠山紀信/市川房枝/芥川也寸志/高倉 健/沢村貞子/淀川長治/佐藤愛子/小沢昭一/宇野千代/永 六輔/黒柳徹子 人には必ず話がある。 そして、人には聞きたいことがある。 聞きたがり屋のテツコさんが、会いたい人と語り合った、貴重な対談集の決定版 年齢分の時間をかけてリハーサルを重ね、人生の舞台に立っているのだと考えれば、どんな人の人生も面白くないはずはない。しゃべるのは嫌いだという人にも、必ず話したいことはあるはず。人には必ず話がある、そして、人には聞きたいことがある。おしゃべりも大好きだけど、聞きたがりでもあるテツコさんが、会いたかった17+1人と一生懸命話をした。1975年から2006年まで、選りすぐりの貴重な対談集。 ※電子書籍版では、紙書籍版と収録内容が一部異なります。 -
幾何学の基礎をなす仮説について
一般相対性理論の概念的基礎であることが判明して再び脚光をあびたリーマン幾何学は、1854年の本書収録講演に始まる。この講演にガウスは珍しく高い評価を与えたという。すでに平行線公準の否定に始まるロバチェフスキーやボヤイの非ユークリッド幾何学はあったが、リーマンは、幾何学といいながら図形からでなく、位置を表すn個の変数の組や曲線の長さから新しい幾何学を組み立てた。数式をほとんど用いない哲学的な講義内容を、ワイルがていねいに数式展開しながら注釈。また序文でも本講演の意義を、理論物理学における遠隔作用から接近作用への潮流になぞらえ熱く語っている。ミンコフスキーの論文「空間と時間」併収。解説 H.ワイル -
仮面と神話
全世界の人類文化において、宇宙観は「三つの大きな段階」を経てきたと著者は説く。それはどのようなものなのか。本書では、言葉で伝えられる〈口承文芸〉の起源と未来、世界の神話にみられる太陽と月の重要性、地域による天父・地母型/天母・地父型の違いに、順を追って迫る。ついで、太平洋における若者組や、東アジアの成年式、日本の稲作文化と正月行事へと、徐々に焦点が絞られていく。多数の図版や具体例、地理的分布図とともに、平明に語られる、壮大な大林神話学への道案内というべき書。解説:松村一男 -
オートポイエーシス ――生命システムとはなにか
自律性、個体性、境界の自己決定、入出力の不在。これらを特徴とし、自己を産出するネットワークを不断に再生産し続けるシステム、それがオートポイエーシス・システムである。神経生理学の研究から導き出されたこの構想は、観察者の視点からではなく、システム自身からシステムを定式化しようと試みたもので、生命のみならず認知の領域をも射程に入れる。その可能性は社会学、経済学、法学、精神医学など多分野において汲み取られ、豊かな展開を遂げた。閉鎖系のダイナミクスがもたらす開放性の新たな意味とはなにか──。第三世代のシステム論のモデルを高度な記述とともに提示した独創的著作。 -
仏教土着 ――その歴史と民俗
我が国古来の民俗信仰の上にやってきた外来の仏教は、どのようにして土着化したのか。この問いに、宗教学ではなく民俗学と歴史学の手法によってアプローチした本書は、今も日本人の信仰を考えるうえで多くの示唆を与えてくれる。日本仏教の異端である薩摩のカヤカベ教が伝える親鸞のミイラ言説や、湯殿山の即身仏ミイラ信仰などに注目。そこから逆に照射される日本仏教の「正統」と、その正統に同化されなかった日本仏教の「影」の信仰とを対比させることで、仏教土着の一方で日本人が持ち続けた民俗信仰の問題を掘り下げて考察する。解説 阿満利麿 -
ホロコースト後のユダヤ人 ――約束の土地は何処か
第二次世界大戦が終結し、ナチの強制収容所から解放されたユダヤ人たち。吹き荒れたホロコーストですべてを失い、普通の人間の生活を取り戻すことを望む彼らの多くは、元の居住地に帰らず、戦後の混乱期にヨーロッパを去ることになる。彼らが実際に行きたかったのはどこだったのか。それに対してイギリスやアメリカをはじめとする国際社会やシオニストたちはどのような行動をとったのか。東ヨーロッパから連合国占領地域のキャンプへ、さらにパレスティナへと移動をつづけたユダヤ人難民(DP:Displaced Persons)たちを通して、もうひとつの現代史を抉り出した野心作。 -
アメリカの覇権喪失と世界の転換
アメリカはついに覇権国の地位から脱落し、民主的な国際社会の構築という大実験のリーダー役を自ら放棄してしまった。なぜアメリカは覇権を失ったのか。中国はアメリカに代わる覇権国となりうるのか。急激に存在感を高めるグローバル・サウス、旧覇権国であるヨーロッパの国々の動向は? そしてその中で日本はどう動くべきなのか――大転換の時を迎えた国際社会における、世界各国の動きと今後の展望を、長年にわたり国際政治を見つめてきたジャーナリストが鮮やかに読みとく。 【目次】はじめに/第1章 世界がアメリカに引導を渡す/第2章 脇役の暴走が、世界の構図を書き換える/第3章 アメリカが失ったものの大きさを知るとき/第4章 中国の夢──単なる強大国か、真の覇権国家か/第5章 グローバル・サウスは従来の世界秩序に挑戦する/第6章 我々は民主主義を捨てられるのか/終章 ヨーロッパが「新たな世界」に向けて持つ意味/あとがき -
火炎人類
アーサー・C・クラーク、スタニスワフ・レム、J・L・ボルヘスに絶賛され、物理学者フリーマン・ダイソンなど多方面に大きな影響を与えた伝説的SF作家オラフ・ステープルドン傑作選。本邦初訳多数! カッスが山歩きの途中で拾った石を暖炉に投げ入れると、不思議な炎があがり、テレパシーで語りかけてきた。それは炎の形態をした知的生命体で、太陽系形成期に太陽から飛び出し、数十億年ものあいだ地球の石の中に閉じ込められていたのだ。火炎人類との対話を通して宇宙精神と生命の秘密に迫る表題中篇に、本邦初訳の珠玉の短篇群、『最後にして最初の人類』ラジオドラマ版他を収録した傑作選。 -
法然の手紙を読む
浄土宗の開祖・法然は様々な人から教えを乞われていた。本書では、法然が熊谷直実のような武士から式子内親王、北条政子に至る人々に宛てた手紙を平易な訳文とともに紹介する。仏教を専門としない相手に書かれた手紙には、称名念仏による極楽往生こそ救いの道であることが、わかりやすくかつ論理的に説かれている。また文面からは、身分や年齢にかかわらず相手を尊重し、権力とは正面から対峙しない、優しくも強かな法然の人柄が窺える。本書はそうした手紙の読解を通じて、現実から逃げるのではなく往生を見据えて現実を強く生きるという、本願念仏の持つ実践的な力を提示する。文庫オリジナル。 -
日本・現代・美術
前近代的な土着性をはらんだ「日本の前衛」、〈つくらないこと〉の呪縛としての「もの派」、岡本太郎の「爆発」、赤瀬川原平の紙幣「模造」、読売アンデパンダン、森村泰昌、村上隆、会田誠……。世界史から切り離され、忘却と堂々めぐりを繰り返す「閉じられた円環」である「悪い場所」日本において、美術の歴史は成立しているのか? 1945年=敗戦以降の美術の動向と批評の堆積を遡行し、歴史的・政治的なコンテクストに位置づける。戦後日本の精神を浮き彫りにし高く評価された、卓越した日本文化論にして著者の主著! 解説 安藤礼二 -
ボスニア内戦 ――グローバリゼーションとカオスの民族化
1990年代に入り、解体へと向かうユーゴスラヴィア社会主義連邦共和国。ボスニア・ヘルツェゴヴィナの独立をめぐって、国内のセルビア人、クロアチア人、ボシュニャク人の間で対立が激化し、ほどなくして泥沼の争いに進展する。1992年から3年半に及んだこの戦争は、剥き出しの残虐性に貫かれていた。本書は、近代初期からの歴史を辿りながら、複雑な背景をもつ戦争の実態を解明する。〈民族浄化〉はいかなるメカニズムによって生じるのか。なぜ現代世界からは大量虐殺がなくならないのか。本書が描き出す〈特定の集団の選択的抹殺〉の実像は、ジェノサイド再発の抑止へ向けて重い問いを投げかける。 -
京劇 ――「政治の国」の俳優群像
中国の伝統劇として真っ先にイメージされる京劇。しかしその始まりは、中国文明の歴史を考えると意外に新しい。本書は清朝期に京劇が成立し、日清・日中戦争や国共内戦、文化大革命を経て現代に至るまでの歩みを、主要な俳優たちの波乱の人生と共に活写する。演劇は文字が読めなくても楽しめるため、民衆支配の手段を求めた康熙帝から毛沢東に至るまでの政治権力と密接に結びつき、ナショナリズムのシンボルや外交の道具にもなった。漢詩・漢文とは異なる「小伝統」としての京劇から歴史を照射することで、民衆の感覚に根差した生き生きとした近代中国像が浮き彫りになる。サントリー学芸賞受賞作。 -
マンダラの密教儀礼
インド・チベット密教や日本密教の世界観が凝縮されたマンダラ。日本には主に掛図の形で伝えられたため、神秘的な美術品として鑑賞されがちだが、本来それは、宗教儀礼のなかで具体的に用いられてきたものである。さらに、ヨーガ・瞑想における「悟りのための手段」としてだけでなく、秘儀を授ける入門儀礼「灌頂(かんじょう)」や本尊を決める「投華得仏(とうけとくぶつ)」など、僧院の集団儀式のなかで使われるという特徴がある。どのように制作され、どのように用いられるのか。数々のマンダラ作品やサンスクリット文献を軸に、密教儀礼の核心に迫る。仏教図像学の第一人者による貴重な書。 -
和平学入門 ――戦争を止める13の法則
戦争を止めるにはどうすればよいか。紛争を和平合意へと至らせる方法を科学的に研究してきた紛争解決学を、さらに「和平学」へと刷新。日本国内の法的な視点から紛争解決学を実践してきた弁護士と、NGOを通じた実務と研究の二刀流で国際紛争における紛争解決学を追究してきた国際政治学者が、数多くの実例から導き出した13の和平法則をもとに、和平合意までの交渉・仲介の道と和平合意後の平和構築の道を理論と実践を往復しつつ描き出す、和平への新たな知的挑戦。 【目次】はじめに 廣田尚久/序章 和平学とは何か――紛争解決学2.0/第一章 法律学からの紛争解決学(ミクロ起点)/第二章 国際関係論からの紛争解決学(マクロ起点)/第三章 和平法則――戦争を止める13の道標/第四章 和平合意――交渉と仲介の諸理論/第五章 和平合意後の和解/第六章 日本外交の羅針盤――和平法則を用いた仲介者/終章 平和実現へのパラダイムシフト/参考文献/あとがき 上杉勇司 -
日本哲学 ――世界哲学への貢献
西洋哲学の概念や思考法のみが純粋なものであるという特権的な意識は、いまや世界的に大きな批判に晒されている。西洋独占主義的な哲学観を輸入した日本が、「日本哲学」を再び検討すべき時期がやってきた。アメリカ、日本、ドイツでハイデガーの哲学、現象学・解釈学から仏教思想・京都学派までを幅広く研究し、日本の哲学史を専攻の一つとしてきた著者が、日本哲学とは何かを、定義・内容から深く問い直し、世界規模の対話に開かれた日本哲学がもつ可能性を総合的に考察する。 【目次】まえがき/序 章 日本哲学の定義と範囲を再考する/第一章 日本・哲学・とは何か/第二章 西洋独占主義的な哲学観を問い直す/第三章 日本哲学の定義を問い直す/第四章 日本哲学の内容を問い直す/終章 世界における日本哲学、日本における世界哲学/参考文献/解説 世界の思考資源としての日本哲学 中島隆博 -
谷川俊太郎のあれやこれや
魅力全開! 単行本初収録の詩やエッセー、亡き人たちへの追憶、パロディ、若き日の戯曲、そして自伝風の読む年譜。欲ばりで楽しいヴァラエティブック。【収録作品】●エッセー・コレクション:子どもの歌の歴史を語る名エッセーなど初収録の11篇 ●懐かしい人たち:寺山修司、武満徹から大岡信、和田誠まで(追悼詩も多数収録) ●戯文五つと戯詩ひとつ:ビートルズから夏目漱石まで。愉しいパロディ6篇 ●戯曲 お芝居はおしまい:29歳の若き詩人が書いた喜劇三幕の長篇戯曲を初収録 ●小詩集:石牟礼道子さんとの「空想の対詩」のほか、多彩な作風の詩集未収録19作 ●自伝風の読む年譜:自身の文章の他に、書評、インタビュー、新聞記事も多数収録 -
詳伝 小杉放菴 ――近代日本を生きた画家とその交流
若き青木繁のライバルであり、国木田独歩も認める文才の持ち主。洋画家として「日展」の前身である「文展」で二年連続の最高賞受賞。欧州遊学後は南画を手掛け、「片ぼかし」の手法を編み出すなど、横山大観ら多くの日本画家たちに影響を与えた。春陽会の設立の中心人物として活躍し、東京大学安田講堂の壁画を完成させる。美術史上いくつもの重要な役割を果たしたにもかかわらず、その多彩な才能ゆえ全体像が理解されにくかった小杉放菴の本格的評伝。 【目次】表現の地肌に触れる。──小杉未醒(放庵・放菴)への道案内 水沢勉/はじめに/第一章 日光の山中にて/第二章 不同舎入塾/第三章 『戦時画報』特派員/第四章 独歩と共に/第五章 水戸コネクションの拡がり/第六章 田端の運動家/第七章 『方寸』同人/第八章 欧州遊学/第九章 日本美術院再興をめぐって/第十章 春陽会設立/第十一章 壁画制作への情熱/第十二章 『奥の細道画冊』の旅/第十三章 摠見寺その他の襖絵/第十四章 赤倉の山荘にて/あとがき/参考文献一覧/人名索引 -
軍律法廷 ――戦時下の知られざる「裁判」
交戦下において軍律違反者を処断する軍の審判機関、軍律法廷。旧日本軍は先の大戦において、多数の敵国兵や現地住民をこの軍律法廷にかけて死罰などに処したが、その関連資料はことごとく処分され、いまだ全容は解明されていない。本書では、名古屋大空襲の際に捕縛した米兵11人を軍律法廷にかけて斬首した一件をめぐる戦犯裁判、「イトウ・ケース」に注目し、その記録から軍律法廷の実相に迫っていく。それは非道な殺害行為を正当化する建前に過ぎなかったのか、それとも戦時の無法を食い止める役割を果たしていたのか。史料を丹念に読み解き、その知られざる実態を明らかにする。解説 新井京 -
新編 人と人との間 ――精神病理学的日本論
精神病理を人間の在り方の一様相として論じてきた著者によるキー概念「間」(「あいだ」)。自己存在の根底にある超個人的な場所としての「人と人との間」は、現代思想に大きな影響を与えた。本書は、ドイツ留学時に思索した日本人論としてこの概念を世に問うた一冊である。日本人特有の精神病的生き方をさまざまな現象を通して思索するとともに、日本的精神症状とされる対人恐怖、貰子幻想の病理を解明。さらに「間」理論を和辻哲郎の『風土』、土居健郎の「甘え」理論と併せて検討して、人間存在の様相を詳らかにする。文庫化にあたり講演「人と人とのあいだの病理」を併録。解説 清水健信 -
ピース・フィーラー ――支那事変和平工作史
支那事変(日中戦争)の特徴は、戦争遂行と和平への努力が、ほぼ全期間を通じ並行してなされたことにある。この和平工作の舞台には外交官のみならず、中国通の経済人やジャーナリストなど様々な人物が登場した。本書はまず、極秘裡になされたがゆえに捉えづらい和平工作の基礎事実を確定し、これに従事したピース・フィーラーたちの実像を描き出す。宇垣工作、汪兆銘工作をはじめとする数多の試みは、なぜ一つとして成功しなかったか。日本側の事変処理政策や政府声明の決定過程を詳しく追跡することでその原因を解き明かした。日中関係、戦時外交を考えるうえで欠かせない名著。 -
海とサルデーニャ ――紀行・イタリアの島
「薄曇りの夜空のひろがるその下で、はるかかなたイオニア海の水平線に、金属が溶けあうように曙光がさしはじめた。よしと、一杯の紅茶とトーストのかけらを飲みこんだ」。1921年1月、作家は妻“女王蜂”を伴い、居住していたシチリアからサルデーニャに向けて旅立つ。近代化のさなかにあっていまだ野性味を残す島の自然と人々。市場の野菜。山々を行く汽車とバス。だがこの島にも第一次世界大戦後の世情が影を落とし……。作家は確かな直感と観察によって、旅の跡を活き活きと書き綴る。本文庫では原書初版で削除された箇所を復元。ロレンス文学の頂点と評される傑作旅行記を名訳で。 -
近代日本の中国認識 ――徳川期儒学から東亜協同体論まで
近代日本の思想史に映し出された中国像とはどのようなものだったのか。本書は、江戸時代の儒者や国学者らの中国観から、明治維新・日清戦争を経て、民族を超えた全体を目指す東亜協同体論が構想されるまで、代表的人物に寄り添いながら、中国理解の変遷や思考のありかたを追う。畏敬や脅威、軽侮という感情の振幅のなか、他国を正しく認識しようと苦闘した日本人の足跡。そこから、われわれは何を学べるだろうか。国家を超えた理念を呈示することはできるだろうか。日中関係史の精緻な考察は、いまもって喫緊の課題である〈他者理解〉に向けて読者の再考を促す。学殖溢れる渾身の思想史講義。 -
カルメル山登攀
神との合一に到るための階梯を詳述したカトリック神秘思想を代表する作品。ヨハネは自らの詩に註解を施すかたちで神学的思索を行い、魂の浄化に向かう道を指し示す。「この山にはただ神の誉れと栄光だけが住まう」とされるカルメル山。すべてが闇の内へと沈む「暗夜」を通り抜け、山の頂きへ達するには、この世のあらゆることどもから──自分自身からさえも──逃れなければならない。魂の全き赤裸と神的一致をめぐる教説は、キリスト教徒を超えて人々に多大な影響を与えた。スペイン文学の至宝でもある古典を名訳でおくる。 解説 鶴岡賀雄 -
江戸・東京水道全史
徳川家康による都市建設の当初から、江戸の水道は高低差を緻密に計算し、複雑な地形を利用する形でつくられてきた。中心部の小石川上水、それを発展させた神田上水、そして玉川上水を基盤とした水道は、明治以降には近代化され引き継がれてきた。急速な工業化や関東大震災からの復興、戦後復興・高度成長を経て水道がいかに拡張され、また経営されてきたか。江戸・東京の経営史を専門とし、東京都水道局に長年勤務してきた著者による、世界屈指の都市の決定版水道史。 【目次】プロローグ/I 江戸時代/第1章 家康と水道/第2章 天下普請の時代/第3章 城下町・江戸と神田上水/第4章 玉川上水の新設/第5章 上水経営の実際/II 明治時代~現代/第7章 近代水道にいたる道のり/第8章 近代水道の成立と関東大震災──拡張の始まり/第9章 大東京と水道/第10章 拡張に次ぐ拡張の時代──戦災復興期から高度経済成長期まで/第11章 量から質へ──低成長時代から現在まで/あとがき/索引 -
映像の発見 ――アヴァンギャルドとドキュメンタリー
映像を表現と主体意識、存在条件との間の緊張関係から考え、真の創造を探求した至高の映画論。1950年代に始まる転換期にあって、旧来的な映画観を転覆すべく、著者は思考を尖鋭化させていく。調和を失った社会のなか、見えなくなっているものを見えるようにすることを芸術における第一義の課題としながら──。アヴァンギャルドもドキュメンタリーも、つまり内と外に分かれた意識の方向も、見えないものに迫る方法として交差し、それを通じて新たなイメージは創り出される。初刊は1963年。映画史的直感や時代との格闘から生まれた洞察はいまも色褪せてはいない。 -
虚構の日米安保 ――憲法九条を棚にあげた共犯関係
そもそも日米安全保障条約は虚構であった。1960年の日米安保改正での岸首相とダレス国務長官の非公式合意が、今日も変わることなく継続している。日米地位協定、核密約、憲法九条の棚あげ、安保条約を再定義した日米安保共同宣言、そして日米政府間協議の実質的な最高権力化……。本書は歴代内閣と米国による日米共犯関係の戦後史をえぐり出す一方、米国の戦後一貫した安全保障政策、同盟国・米国と日本との信頼にズレが生じつつある実態を解明する。 【目次】序章 日米安保と日本国憲法/第一章 日米、異なる安保構想/第二章 被爆国にとっての核の安全保障/第三章 日米軍事一体化と憲法九条/第四章 「セキュリティ」──原点と変遷/第五章 地殻変動期に入った日米安保/終章 立憲主義の復権を目指して -
spring プレミアムブックレット
2025年本屋大賞ノミネート! 稀代のストーリーテラー・恩田陸の新たな代表作! 一人の天才少年をめぐる、傑作長編バレエ小説『spring』のこれまでの軌跡を振り返るプレミアムブックレット。(非売品) 立ち読み感覚で、本書からの抜粋や読者が選んだ推し文を試し読みできます。登場人物の詳細なプロフィールや朝井リョウさんの感想などを紹介。本屋大賞ノミネートに寄せた著者からのメッセージ、キャリア30年を迎えた作家・恩田陸さんのデビューから現在までの作品年表なども収録。『spring』をまだ読んでいない人も、すでに読んだ人も楽しめる一冊! (筑摩書房編 恩田陸さん協力) -
アショーカ王伝
インド亜大陸のほぼすべての地を統一したマウリヤ朝第三代の王・アショーカ。ダルマ(法)による政治を行い、八万四千におよぶ塔の建立、五年大会の開催など、仏教の守護者として歴史的に名高い。本書は、その生涯をサンスクリット原典から訳出。王はいかにして熱烈な仏教徒となったのか──。家族をめぐる劇的な出来事をはじめ、伝記は興味深い逸話に満ちている。古代インドにおける仏教徒の世界観や人生観が王の行跡から垣間見えるとともに、凡夫の煩悩を持ちながら聖なる世界を希求したアショーカの姿は、現代を生きるわれわれを引きつけてやまない。巻末には本書をめぐる詳細な解説を付す。 -
新編 意味の変容
<全体=内部+境界+外部>であり、境界は内部→外部、また外部→内部と意味を変容し得る──。他に類を見ない数学的・哲学的スタイルで近代日本文学の常識を覆した『意味の変容』。若き日を放浪のうちに過ごした異能の作家・森敦が、光学工場やダム建設現場での思索を結晶させた究極の私小説であり、その理論を代表作『月山』などにおいて具現化した文学論でもある。新編にあたり、空海の足跡を辿りつつ真言密教を独創的に読み解いた『マンダラ紀行』、京城で過ごした幼少期に始まる豊饒な半生をユーモラスに語り尽した『十二夜』を併録。森敦の思想の全貌を明らかにした決定版。 -
観無量寿経
漢文・古文の知識が必要な仏典を独学で読むのはほぼ不可能に等しい。しかし日本を代表する大作家・佐藤春夫はその筆力により、一人で経典を理解し、味わうことのできる訳を用意した。『観無量寿経』は『無量寿経』、『阿弥陀経』とともに「三部経」と称される浄土仏教の根本経典。仏や仏のいる世界を「観る」方法を説くとともに、自分の力ではいかんともしがたい人生を俯瞰し、切り抜ける方法を教えてくれる。経典の主人公はわが子アジャセに命狙われる古代インドの王妃イダイケ。なぜこのような悲劇が起こるのか説明を迫るイダイケに、シャカは因・縁・果の物語を説く。 文庫解説 阿満利麿 -
イーサリアム創世記
暗号通貨はその短い歴史の中で急激な高騰と暴落を繰り返しながらも、やがて時価総額は2兆ドルを超えるに至った。ヴィタリック・ブテリンと彼の創造物――イーサリアムがなければ、暗号通貨の成長は不可能に近かっただろう。本書は、イーサリアムの誕生から、内部抗争、ハッキング事件、ICOバブルまで、暗号通貨革命の舞台裏を描いたノンフィクションである。イーサリアムの共同設立者として名を連ねた8名全員を含んだ数多くの関係者への200回を超えるインタビューのほか、SNS投稿やEメール、オンライン資料、チャットログに至るまで膨大な量の資料をもとに、生々しく描き出す。 -
閔妃暗殺 ――朝鮮王朝末期の国母
1895年10月8日、朝鮮駐在特命全権公使・三浦梧楼指揮の下、日本の官僚と軍人が朝鮮王朝の王宮・景福宮に乱入し、王妃を殺害するという大事件が発生した。本書はその顛末を詳述したもの。韓国でも翻訳出版され、大きな反響を得た。日本で「閔妃暗殺」と呼ばれるこの事件は韓国では「乙未事変」と呼ばれ、日本人にとっての「忠臣蔵」のように誰もが知る歴史的出来事となっている。一方、日本では歴史教科書への記載も少なく、認識している人も多くはない。いったい誰がなぜこのような凶行を計画したのか? 未来のために、日韓関係に深い傷を残したこの大事件の全容を知る。 -
時間と死 ――不在と無のあいだで
過去・現在・未来という時間の様相は、言語によって作られた概念である。世界はそのつど湧き出しては消えていく“いま”の連鎖なのであり、客観的世界も客観的時間も仮象にすぎない。ならば、「私」が死ぬとは、少なくとも、私が客観的世界から消滅することではなくなる。若き日から「自分がいずれ死ぬとしたら人生には何の意味もない」という呪縛に捉われてきた著者が、本書でついに「死」という問題そのものに対峙する。そして「私の死」の裏側にはりつく過酷な意味から脱却し、「私」は単に人間として死んで終わりであるような存在ではないという地点に達する。著者の哲学的思考の到達点。 -
中世政治思想講義 ――ヨーロッパ文化の原型
社会とは神が人間に与えた秩序であり、その安定と維持こそが中世キリスト教世界における政治であった。ローマ教皇と神聖ローマ皇帝という二つの中心が社会的機能と責任を担う。だが、時に激しく対立し、グレゴリウス改革や叙任権闘争を極点として、統治の本質が根底から問われる事態へと発展する。聖書解釈に基づく両者の理論対決は、政治思想の錬磨を促さずにはおかない。普遍的で超越的なものを志向する意志と密接不可分な「合理性」がここに芽生え、やがてそれがヨーロッパ人の思惟構造を形づくっていくのである。中世の核心を伝えるだけでなく、近代の性格をも照らし出す類まれな講義。 -
江戸服飾史談
ざっと三百年間の移り変わりを述べることに致します―。大火や幾度もの改革、風呂屋や歌舞伎の流行といった時代背景・風俗とともに語る江戸服飾史入門。明治期、学者・大槻如電が三越呉服店の依頼をうけて講談調で記した原稿に、注釈や図版を多数加え、現代人向けに編集した。金ピカの裃を着て真面目な顔でいる武士たち、ひいきの役者の紋を銀簪に彫る女たち、度重なる倹約令を経てなお新たな流行を作り出す江戸の人々の姿が活写される。当時の語りの面白さを残したユニークな書であり、着物、履物、流行りの模様、髪型、帯の締め方までを詳細に示す貴重な資料である。 -
坂本龍馬の映画史
映像作品での坂本龍馬の描かれ方は大きく変わってきた。サイレント映画では阪東妻三郎や月形龍之介、榎本健一といったスターが龍馬を演じた。戦後しばらくは主役級が龍馬を演じることはなく、それを転換したのが司馬遼太郎の小説『竜馬がゆく』。土佐弁を喋る庶民的合理主義者として龍馬は映像化され一躍人気者となる。1970年代以降は革命家のイメージやテレビドラマでのヒーロー、パロディー作品など多様に龍馬は演じられていく。龍馬イメージの変遷に歴史観と時代の価値観の反映を見る。 -
現代写真とは何だろう
「真実」を「写しとる」と書いて「写真」。しかし、テクノロジーの進化により精巧なAI画像が氾濫し、これまでの「写真」の位置づけが流動化している。もはや既存の知識や古い思考では、「現代写真」をとらえられない。写真にしかできないことを理解しない限り、コンテンポラリーアートとしての写真の魅力を語ることはできないだろう。だが、それはいったい何なのか──。90年代以降、国内外で写真展をプロデュースしてきた著者が、W・エグルストン、N・ゴールディン、ホンマタカシ、杉本博司、W・ティルマンスなど現代写真の疾走者へのインタビューを交えながら、最先端の写真表現を読み解く待望の新・写真論。 -
ファック・キャンサー ――愛と科学と免疫療法でがんに立ち向かう
「がんは人生最低のギフト!」仕事と子育て真っ最中のNY在住ライターが、ある日突然メラノーマ(皮膚がん)に。がん=命にかかわる厳しい現実に直面…しかし、幼い娘たちとの日常は変わらず、ユーモラスにパワフルに。―親友から届いた「ファック・キャンサー」Tシャツを着て病院へ。―頭の手術痕を膣ブラシと浣腸ボトルで夫に洗浄してもらう日々。―母娘3人、アタマジラミと格闘。―親友もがん罹患、最期の時間と別れ。…ドラマチックなのに平凡で、決して闘いなどではない、治療の日々。胸が張り裂けそうな悲しみと、感謝の気持ちを同時に感じるがん患者のリアルな心の内。最高峰のがんセンターでの手術と、がん治療を変えた免疫療法の治験の実際を含め、ユーモアを交え率直に歯切れよく語る。がんという現実を受けとめ、明るくたくましく、愛を与え合いながら生きる姿に胸を打たれるノンフィクション。 -
人新世と芸術
人新世(アントロポセン)。人類が地球の地質や生態系に与えた影響に注目し、近年提唱されている地質区分である。人新世は、気候変動や環境破壊をもたらし地球を危機に陥れた。では芸術はこれとどうかかわってきただろう。美術作品は環境変化にきわめて敏感であり、芸術とサイエンスをつなぐものとしてエコロジーの思想は培われてきたのではないか。そういった見通しの下、17世紀から20世紀に描かれた美術作品に焦点を当て検討する。優れた観察者で、記録者だった画家たちはその変化をどう描いただろう。新たな西洋美術の見取り図を提案する。 【目次】第1章 かつて地球は寒かった――小氷期とコロニアリズム/第2章 エコロジーとエコノミー/第3章 火山の噴火/第4章 アルプスの氷河/第5章 産業革命の表象/第6章 霧のロンドン/第7章 印象派と大気汚染 -
岡倉天心『茶の本』の世界
明治時代に国を挙げて西洋化に突き進むなか、 日本美術の発展に功績を残した岡倉天心(1863‐1913)。ボストン美術館中国・日本美術部の責任者として、 東洋の美術を欧米に紹介し、1906年刊行のTHE BOOK OF TEA(『茶の本』)が全米ベストセラーとなったことで国際的に知られる。 岡倉天心の曾孫であり、近現代の国際関係史を専門とする著者が、国際文化交流の見地から『茶の本』をこれまでに知られていなかった視点をふんだんに盛り込んで徹底解説する決定版入門書。 -
論語
春秋時代の魯国、周王朝の復興を唱え、政治へのあくなき情熱とともに理想を追求した人、孔子。その言行録『論語』は、古来、多くの人々に人生の指針を与えてきた。孔子が弟子たちに教えたもの、それは学問、礼の実践、徳の涵養である。中心にあるのは徳であり、わけても「仁」を至上とした。仁とは、日常生活において状況に相応しい価値を適切に選び取れることを指し、それを体得した者が君子となる。本書は、「『論語』をして『論語』を語らしめること」を主眼に置き、何晏、朱子、仁斎、徂徠など、数多の解釈を比較考量。新たな書き下し文と明快な現代語訳、詳細な注と補説を付した決定版訳注書である。 -
訟師の中国史 ――国家の鬼子と健訟
訟師とは人びとの訴訟を助けた者たちである。彼らは狡智にたけた悪党とみなされ、清代では職業として訴状を代作しただけで、しばしば死刑一歩手前の重刑が科せられた。しかし実際には、それは中国国家が自ら生み出した鬼子であった。宋代以降、訴訟が多発する健訟社会となったのだが、伝統的な政治思想と訴訟制度そのものが逆に人びとに訟師を必要とさせたからである。また訟師には訟師であることに誇りを持つ者さえいた。訟師の全体像を中国史と世界史のなかで初めて明らかにする。 【目次】序章 訟師というカギ/第1章 悪訟師のイメージ/第2章 訟師有用論/第3章 伝統中国の訴訟制度/第4章 訴状への虚偽と誣告の書きこみ/第5章 私代書の容認から処罰へ/第6章 積慣の訟棍/第7章 名士と犯罪者のあいだ/第8章 北京への直訴/第9章 世界史のなかの訟師/第10章 江戸との相違/第11章 訟師自身による訟師観/第12章 訟師の終焉/終章 現代中国の訴訟制限/あとがき -
唯信鈔文意
南無阿弥陀仏と唱えれば来世で仏になれる。このシンプル極まりない法然の教えは庶民層から大歓迎された。しかし同時に「なぜ念仏だけでいいのか」という問いも浮上する。その問いに答えるべく、親鸞は当時よく読まれていた仏教書『唯信鈔』を解説する形で本書を執筆した。親鸞の答えはこうだ。念仏は修行などかなわない我々のために阿弥陀が用意した「行」であり、阿弥陀のはたらきそのものである。そして念仏すると阿弥陀の心が無意識下に入り込み、それが将来我々を浄土に連れていく。だから念仏の他は必要ない。『教行信証』と並ぶ代表作にして親鸞思想のエッセンスが詰まった最高の念仏入門。
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