作品一覧

  • 民俗のこころ
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    長い年月をかけて積み重ねられてきた生活習慣は知らずしらずのうちにわれわれの精神や行動を規制している。家族それぞれの箸や茶碗が決まっており、自分以外はそれを使ってはならないというのはその代表例だろう。高取正男はこの日本人の無意識下にある感覚「ワタクシ」に着目し、現在の社会問題や歴史的事象の背景を探ろうとした。その際高取が重視したのは生活文化の変遷を凝視することであり、民俗調査を行い古老と向き合う中で実際に自分の内部にもひそむ日本的思考に気づくことだった。民俗学と歴史学を取り結び、新しい歴史記述のあり方を模索した記念碑的名著。
  • 民俗の日本史
    4.0
    文明化の恩恵と共に、それによって生じた土着側の危機をも捉えることで、文化史学の抜本的な見直しを志した野心的論考を収録。土着にこだわり続けた著者による日本文化史論!
  • 宗教民俗学
    3.0
    1巻1,540円 (税込)
    民俗学の見地から日本宗教史へとアプローチし、日本的信仰の淵源をたずねる。高取正男の真骨頂ともいうべき民間信仰史に関する論考を12篇を精選。解説=柴田實/村上紀夫
  • 日本的思考の原型 ──民俗学の視角
    3.3
    ふとした時に表れる日本人独特の感覚。自分の湯呑みを他人に使われてしまった時の気まずさなどはその一例といえるだろう。高取によればこの感覚は、自己の範囲を所有するモノや所属する集団にまで広げて認識していた近代以前の名残だという。また祖先としての神、他所から来る神という二種の神観念があるのも、定住だけでなく漂泊もまた少なくなかった前近代の暮らし方に由来するという。本書はそうしたわれわれの感覚や習慣を形作ってきたさまざまな事例を挙げ、近代的な自我と無意識下の前近代が交錯する日本人の精神構造を明らかにする。民俗学の傑作にして恰好の入門書。
  • 宗教以前
    3.5
    1巻1,100円 (税込)
    われわれの祖先の素朴な宗教的感覚は、仏教が輸入されてもなお生き続け、ついには仏教そのものを日本的なものへと変容させる根強さを持っていた。近代に入り、科学との出合いや共同体の崩壊を経ても、その感覚は人々の心から完全に消え去ることはなく、今日にいたっている。とりわけ「死」といった日常を超える問題に対する時には、この素朴な感覚が、当然のように顔を出す。本書では、民俗学・歴史学の手法により、日本人の伝統的な宗教意識の諸相を明らかにする。そしてそこを起点に、日本人を救う普遍的な宗教のあり方を探る。民俗学者と宗教家、二人の碩学の出逢いによって生まれた伝説の名著。

ユーザーレビュー

  • 民俗の日本史

    Posted by ブクログ

     Ⅰでは、古代の宗教史を扱った論文が収録されている。巻頭の「大陸文化の受容」では、仏教の受容と氏族信仰との関係が取り上げられている。続く「御霊会と志多良神」「貴族の信仰生活」「聖と芸能」「今様の世界」は京都史編纂所『京都の歴史』に寄稿された論文であり、自分には馴染みの薄いテーマが扱われており、また京都に土地勘がないためピンと来ないところもあるが、著者が丁寧に論を進めてくれているので、しっかり後をついていこうという気にさせられる。

     Ⅱは比較的短めの文章が収められている。特に面白かったのは、「地域差」「近代が崩壊させた重層社会」「日本文化と民俗学」の各編。柳田民俗学に親和性を持ちながらも、そこ

    0
    2024年01月14日
  • 日本的思考の原型 ──民俗学の視角

    Posted by ブクログ

    高取正男の本は、初めて(だと思う)。近代以前の日本で、どこにでもあった集落の暮らしは、どのようにして成立していたのだろうか、住民は、どのような一生を送っていたのか、積極的、意図的に思いを馳せて考えてみなければ、頭をよぎることすらない普通の歴史に対する興味を呼び起こす、暖かくて豊かな内容。

    0
    2021年10月04日
  • 宗教以前

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    民俗学者と宗教者(仏教)の出逢いによって生まれた名著と背表紙にありましたが、それに相応しい本でした。平安時代は祖先を大切にしながら、藤原北家の主流(冬嗣・良房・基経)でさえも祖父の墓の場所を知らなかった! それは墓を不吉として忌み嫌うということから来ていたという説明は説得力があります。日本人の罪からの解除法は表面を拭く消毒薬、西洋人のそれは内から大掃除する下剤という説明は実にわかりやすい喩えです。近世日本にも「世俗内的禁欲」を説く宗教が存在したと、M・ヴェーバーへ反論を主張しているという内藤莞爾「宗教と経済倫理」、中村元「日本宗教の現代性」の紹介も興味深いところです。新興宗教の中では100万人

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    2013年08月18日
  • 日本的思考の原型 ──民俗学の視角

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    原型、と書いてあるけれども、記紀万葉の昔(あくまで例え、これらが中世及び明治の政治利用のために使われたことは明らか)をとりわけて紐解いているわけではない。どちらかというと、たしかに近代化以前ではあるが、中世の様子を見出した感(読み違えていたら申し訳ない)がある。
    宮本常一氏から何度か、柳田國男氏のとくに中期の著作からも数度、引用がある(後期については批判的立場が伺える)。話し合いの発言者として村人にそれぞれ権利のあったこと、民謡と馬子歌などの『しごと「うた」』のリズム抑揚のちがい、牛との旅、歩き方の地金などは、勉強になるというよりは、ちょっとふふっと笑ってしまいながら読むことになった。
    ※話し

    0
    2024年02月14日
  • 宗教民俗学

    Posted by ブクログ

    期待していたような、時系列に沿ってシステマティックに分析、論考を重ねていく…という流れの作りではなかったが、古代~中世の社会形成において、農耕やそれに従事する人々がいかに重要な役割を果たしたかということが、漁労民や職人との対比を用いることで十全に説明されており、興味深い知見を得ることができた。
    行基や空也といった特定の人物に的を絞った終盤の考察も面白かったが、やはり体系的な総論を読みたかったなあ…と改めて感じた次第。

    0
    2024年01月29日

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