高取正男のレビュー一覧
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Ⅰでは、古代の宗教史を扱った論文が収録されている。巻頭の「大陸文化の受容」では、仏教の受容と氏族信仰との関係が取り上げられている。続く「御霊会と志多良神」「貴族の信仰生活」「聖と芸能」「今様の世界」は京都史編纂所『京都の歴史』に寄稿された論文であり、自分には馴染みの薄いテーマが扱われており、また京都に土地勘がないためピンと来ないところもあるが、著者が丁寧に論を進めてくれているので、しっかり後をついていこうという気にさせられる。
Ⅱは比較的短めの文章が収められている。特に面白かったのは、「地域差」「近代が崩壊させた重層社会」「日本文化と民俗学」の各編。柳田民俗学に親和性を持ちながらも、そこ -
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ネタバレ民俗学者と宗教者(仏教)の出逢いによって生まれた名著と背表紙にありましたが、それに相応しい本でした。平安時代は祖先を大切にしながら、藤原北家の主流(冬嗣・良房・基経)でさえも祖父の墓の場所を知らなかった! それは墓を不吉として忌み嫌うということから来ていたという説明は説得力があります。日本人の罪からの解除法は表面を拭く消毒薬、西洋人のそれは内から大掃除する下剤という説明は実にわかりやすい喩えです。近世日本にも「世俗内的禁欲」を説く宗教が存在したと、M・ヴェーバーへ反論を主張しているという内藤莞爾「宗教と経済倫理」、中村元「日本宗教の現代性」の紹介も興味深いところです。新興宗教の中では100万人
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ネタバレ原型、と書いてあるけれども、記紀万葉の昔(あくまで例え、これらが中世及び明治の政治利用のために使われたことは明らか)をとりわけて紐解いているわけではない。どちらかというと、たしかに近代化以前ではあるが、中世の様子を見出した感(読み違えていたら申し訳ない)がある。
宮本常一氏から何度か、柳田國男氏のとくに中期の著作からも数度、引用がある(後期については批判的立場が伺える)。話し合いの発言者として村人にそれぞれ権利のあったこと、民謡と馬子歌などの『しごと「うた」』のリズム抑揚のちがい、牛との旅、歩き方の地金などは、勉強になるというよりは、ちょっとふふっと笑ってしまいながら読むことになった。
※話し -
Posted by ブクログ
ネタバレ宗教は時代時代の自然観によって変化していくという主張はわかるようなわからないような。本書が刊行された1960年代の日本において信仰が摩滅してゆくさまをして農村のありようが変化したためであろうとする著者の説を理由づけするかもしれないが、果たして普遍的な理由となりえるだろうか。
昨今賑わっている陰謀論やキャンセルカルチャーは、信仰的な寄る辺をもたない人々の拠り所となっている観がある。かつてアイドルなど芸能人が果たした教祖的役割を担うインフルエンサーたちに踊らされる宗教。それも自然観の変化で語りうるのだろうか。
タイトルから勝手に期待した内容ではなかった。勝手に期待した内容とは「原始信仰創生前夜が -
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