高取正男のレビュー一覧

  • 民俗の日本史

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     Ⅰでは、古代の宗教史を扱った論文が収録されている。巻頭の「大陸文化の受容」では、仏教の受容と氏族信仰との関係が取り上げられている。続く「御霊会と志多良神」「貴族の信仰生活」「聖と芸能」「今様の世界」は京都史編纂所『京都の歴史』に寄稿された論文であり、自分には馴染みの薄いテーマが扱われており、また京都に土地勘がないためピンと来ないところもあるが、著者が丁寧に論を進めてくれているので、しっかり後をついていこうという気にさせられる。

     Ⅱは比較的短めの文章が収められている。特に面白かったのは、「地域差」「近代が崩壊させた重層社会」「日本文化と民俗学」の各編。柳田民俗学に親和性を持ちながらも、そこ

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    2024年01月14日
  • 日本的思考の原型 ──民俗学の視角

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    高取正男の本は、初めて(だと思う)。近代以前の日本で、どこにでもあった集落の暮らしは、どのようにして成立していたのだろうか、住民は、どのような一生を送っていたのか、積極的、意図的に思いを馳せて考えてみなければ、頭をよぎることすらない普通の歴史に対する興味を呼び起こす、暖かくて豊かな内容。

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    2021年10月04日
  • 宗教以前

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    ネタバレ

    民俗学者と宗教者(仏教)の出逢いによって生まれた名著と背表紙にありましたが、それに相応しい本でした。平安時代は祖先を大切にしながら、藤原北家の主流(冬嗣・良房・基経)でさえも祖父の墓の場所を知らなかった! それは墓を不吉として忌み嫌うということから来ていたという説明は説得力があります。日本人の罪からの解除法は表面を拭く消毒薬、西洋人のそれは内から大掃除する下剤という説明は実にわかりやすい喩えです。近世日本にも「世俗内的禁欲」を説く宗教が存在したと、M・ヴェーバーへ反論を主張しているという内藤莞爾「宗教と経済倫理」、中村元「日本宗教の現代性」の紹介も興味深いところです。新興宗教の中では100万人

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    2013年08月18日
  • 日本的思考の原型 ──民俗学の視角

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    ネタバレ

    原型、と書いてあるけれども、記紀万葉の昔(あくまで例え、これらが中世及び明治の政治利用のために使われたことは明らか)をとりわけて紐解いているわけではない。どちらかというと、たしかに近代化以前ではあるが、中世の様子を見出した感(読み違えていたら申し訳ない)がある。
    宮本常一氏から何度か、柳田國男氏のとくに中期の著作からも数度、引用がある(後期については批判的立場が伺える)。話し合いの発言者として村人にそれぞれ権利のあったこと、民謡と馬子歌などの『しごと「うた」』のリズム抑揚のちがい、牛との旅、歩き方の地金などは、勉強になるというよりは、ちょっとふふっと笑ってしまいながら読むことになった。
    ※話し

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    2024年02月14日
  • 宗教民俗学

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    期待していたような、時系列に沿ってシステマティックに分析、論考を重ねていく…という流れの作りではなかったが、古代~中世の社会形成において、農耕やそれに従事する人々がいかに重要な役割を果たしたかということが、漁労民や職人との対比を用いることで十全に説明されており、興味深い知見を得ることができた。
    行基や空也といった特定の人物に的を絞った終盤の考察も面白かったが、やはり体系的な総論を読みたかったなあ…と改めて感じた次第。

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    2024年01月29日
  • 宗教民俗学

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     12編の論考が収録。
     特に関心を持ったのは、冒頭の「幻想としての宗教」「遁世・漂白者」の2編。
     「これ以外に生きる場所はないという、そういうせっぱ詰まった意味での郷土」。そうした郷土=共同体に生きる者たちの信仰の問題。また非農耕民や漂白民など共同体に帰属しない者、あるいは共同体の周縁的存在の者たちとの関係。本書全体を通して著者はそれらの問題に迫ろうとしているのかと思われる。
     
     日本の社会も農業社会ではなくなって久しく民俗もすっかり変化してしまったので理解が難しいところも多かったが、読み応えのある論考が多かった。 

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    2023年10月02日
  • 宗教以前

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    ネタバレ

    宗教は時代時代の自然観によって変化していくという主張はわかるようなわからないような。本書が刊行された1960年代の日本において信仰が摩滅してゆくさまをして農村のありようが変化したためであろうとする著者の説を理由づけするかもしれないが、果たして普遍的な理由となりえるだろうか。
    昨今賑わっている陰謀論やキャンセルカルチャーは、信仰的な寄る辺をもたない人々の拠り所となっている観がある。かつてアイドルなど芸能人が果たした教祖的役割を担うインフルエンサーたちに踊らされる宗教。それも自然観の変化で語りうるのだろうか。

    タイトルから勝手に期待した内容ではなかった。勝手に期待した内容とは「原始信仰創生前夜が

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    2023年06月05日
  • 日本的思考の原型 ──民俗学の視角

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    20210820?-0905 Twitterで紹介されていたので気になって入手。最初の話が筆者が学生時代にうっかり妹の湯飲みを使って妹にひどく怒られた話だったので、分かるわかるーって感じで入りやすかった。確かに自分以外の湯飲みでお茶を飲む気はしないなあ。
     本書は民俗学入門の傑作、という帯の紹介文の通り、40年くらい前の文章ながら全くの素人の自分でもすんなり読めた。特に最終章の、例外で疲弊した北関東や東北に越後の農民が移住させられた話は興味深く読めた。もう少し深く読んでみたくなった。

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    2021年09月05日
  • 日本的思考の原型 ──民俗学の視角

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     本書で取り上げられている事例や内容を、直接体験してはないにせよ、まだ自分は実感できる。先ずはそれが
    嬉しい。

     塩の生産と交易の道の様子。馬、牛による荷物輸送と馬の道、牛の道。仕事唄のいきづかいと“民謡"の違い。伝統的な働き方所作とナンバの身のこなし。移住と定着、マレビト論との関係、などなど。興味深い事例に、鋭い著者の考察。

     小冊子ながら民俗学の面白さを味わうことのできる、読み応えのある一冊。

     
     

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    2021年07月12日