あらすじ
文明化の恩恵と共に、それによって生じた土着側の危機をも捉えることで、文化史学の抜本的な見直しを志した野心的論考を収録。土着にこだわり続けた著者による日本文化史論!
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Posted by ブクログ
Ⅰでは、古代の宗教史を扱った論文が収録されている。巻頭の「大陸文化の受容」では、仏教の受容と氏族信仰との関係が取り上げられている。続く「御霊会と志多良神」「貴族の信仰生活」「聖と芸能」「今様の世界」は京都史編纂所『京都の歴史』に寄稿された論文であり、自分には馴染みの薄いテーマが扱われており、また京都に土地勘がないためピンと来ないところもあるが、著者が丁寧に論を進めてくれているので、しっかり後をついていこうという気にさせられる。
Ⅱは比較的短めの文章が収められている。特に面白かったのは、「地域差」「近代が崩壊させた重層社会」「日本文化と民俗学」の各編。柳田民俗学に親和性を持ちながらも、そこから捨象されてしまったものに十分目配りをしていること(例えば、非定住・非農耕民など)や、なるほどと頷かされる視点や見方は、読んでいてとても興味深い。