吉川トリコのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
とことん現代語&マリーアントワネット視点で綴られる日記を読んでいくと、悲劇のフランス王妃が、かわいいものと楽しいことが大好きで、ファッションに夢中で、こなれた感じの悪い先輩に憧れて、恋愛に一喜一憂して、傲慢で浅はかで、だけど繊細な、要するに普通のイマドキの女の子にしか思えなくなってくる。
調子には乗りすぎたアントワネットだけど、その代償が、夫や友達皆殺しの上で斬首だなんて、いくらなんでもオーバーキルすぎる。
マリーアントワネットは、憎悪をぶつけてくる群衆に自分のことを「知らないからこそ嫌えるってこともあるのかもしれません」と思う。
確かに今でも、芸能人や、皇族や、ちょっと気に食わない親族や同僚なんかへのヘイトは燃え上がりやすく、それも彼らのことをよく知らないからこそなのかもな。自分も身につまされた。
ラスト、見せしめのように迫害され、悪口を言われまくる中で、最後までへつらわず、毅然とした態度で凛として前を向いていた気位の高さは、本当にかっこよかった。とっても魅力的。
実際に「軽やかなステップで断頭台を駆け上がって」みせていてほしいなと思った。
-
Posted by ブクログ
6編からなる連作短編集。
なつみは、若々しい美鈴ママにちょっとだけ嫉妬していた。
女王蜂(クイーンビー)の美鈴ママ。
でも、美しさは見た目だけではなかったのだ。
歳を重ね「おばさん」になるのは罪なのか?
初未は二つの名前を持つ。
佐藤初未とキム・スンエ。
15歳の平凡な女の子に知らされた在日韓国人という事実。
ままならない日常。
出自も性別も、自身ではどうしようもない。
映画の印象的なシーンに絡め、それぞれの登場人物が明るく力強く
そして前向きに描かれている。
吉川トリコさんは名古屋在住作家さん。
地名など馴染みのある場所ばかりで、それも楽しかった。 -
Posted by ブクログ
女性を取り巻く、あれこれに、とても敏感な作家さん。
初めて読んだ「ベルサイユのゆり」は、ふざけているのかと思ったけれど、
ちゃんと「ゆり」の意味を込めていたんだよね、あれ以来、
気になる作家さん。
私から見たら、若手だけれど、世の中では中堅か。
本作は、連作短編集。
彼女の世代爆発、映画や海外ドラマが次々登場し、
その上の世代の私にはよくわからないところも多々あり。
それでも、40代主婦がチアダンスチームを作り・・・
そこから仲間が広がり、今の世で、マイノリティゆえの何かを
抱えている人物が次々にスポットを浴びる。
こういった世の中の切り取りが、本当に、この人は上手。
ちゃんと物語の中で読ませてくれる。
そして、必ず、人と人とのつながりの暖かさを感じさせてくれる。
そこが好き。 -
Posted by ブクログ
8つのアンソロジーからなる作品。正直アンソロジー作品は多少はハズレがあるが、この本はそれがなくどれも当たりだなと思った。朝井リョウが大好きなので気になって買ったが、他の作家も良い作品だったのでこれを機会に読んでみたいなと思う。
各ページ冒頭の間取り図も見ていて楽しい。
1話目
◎朝井リョウ「それでは2人組を作ってください」
どうしてこんなに女子心がわかるんだろうと思うくらい、人の心の繊細さや機微を感じ取るのが上手だなと改めて感じた。『何者』を読んだことのある人だと余計楽しいと思う。朝井リョウ大好きすぎる。
2話目
◎ 飛鳥井千砂「隣の空も青い」
韓国出張に行く前と行った後の、主人公の心の変化がポジティブな形で細かく描かれていて良かった。高畑は帰国後、香奈とともに過ごしていくこの先の未来のために、同棲やお互いの国に対する考え方や抱えている思いを話し合うんだろうなと明るい気持ちになった。
3話目
○越谷オサム「シャイニングニー」
夢を追う男女が最後自分の道のために別れてしまうのはよくある設定だが、それが爽やかでお互い明るく吹っ切れたラストだったのが良かった。
4話目
◎ 坂木司「女子的生活」
小川さん(くん)が自分の性に対して自信と誇りをもって楽しく生きている姿が素敵だったし、部屋に転がり込むことになった後藤くんもいい意味で気を遣わなく気が回らないので、この2人なら自分たちらしく生活していくんだろうなと思った。小川さんが後藤くんに文句を言いつつも、後藤くんが気にしないで「でもこれも良いじゃん?」と笑顔で言ったことに「まぁしょうがないこれも良しか」となってる未来が見えて微笑ましく思った。
5話目
△徳永圭「鳥かごの中身」
これが一番平凡だったかも。多少抱いた同情で、隣のよく知らない子どもを無責任に勝手に預かって世話をするのはどうかと思った。よくあるテーマ説定感が否めなかった、、ななかちゃんは素直でいい子なんだと思った。
6話目
○似鳥鶏「十八階のよく飛ぶ神様」
SFと神話を盛り込んであるのに、厨二感がなくサラッと楽しく読めた。ミニどんでん返しがあるのも良かった。
7話目
○ 三上述「月の砂漠を」
戦争や昭和の文化観を感じながら読んだ。亡くなった大事な人が同じ男女が共に、そのつらさや思いを抱えて支え合って生きていくためには、時間と深い愛情と話し合うことが必要なんだと思った。
8話目
◎ 吉川トリコ「冷やし中華にマヨネーズ」
毎日一緒に過ごし、特別なことはしない。だらだらとつき合っているが、無意識化でかけがえのない存在だと感じる。結果的には別々の道を歩むことになったが大丈夫、やっていけるはずだと思った。リアリティがあって良かった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレあの人のことを語らせて。
パリ旅行者に話しかけてきた幽霊は、マリー・アントワネットの女官長だったランバル公妃。彼女はマリー・アントワネットの近くにいた人々から話を聞き、慕っていた王妃に再び会う時の土産話にしようと考えたのだ。そして彷徨うこと幾星霜。2018年のパリで、ランバル公妃の口から語られる、マリー・アントワネットという人のこと。
様々に王妃と関わり、王妃を愛した人たちから語られる王妃の姿。それはその人が命を終える時にランバル公妃が聴いたからか、語るその人自身についての語りでもある。あの時代を、革命を、どのように生き抜いたのか。女性として、自分として、何を求めて生きたのか。18世紀の人の感覚というよりは現代女性的な自己認識に感じるが(18世紀のジェンダー論には明るくないので)だからこそ、王妃と一緒にあのベルサイユにいた人のことが身近に感じられる。
フェルゼンからは話を聞けなかったと言うランバル公妃。彼の心のうちは、想像に任せるのが一番美しいのかもしれない。マリー・アントワネットは、愛されて、また愛した人だった。その愛のすべてが等しく、友情も恋愛も区別なく、ただの愛だったのなら、どれほど心慰められ、また寂しくなるだろう。
オタク気質のランバル公妃、話しかけた相手もガチ勢で、よい話し相手を見つけたオタクほど幸せなものはないよね、そりゃあ語るよね、と思いました。 -
Posted by ブクログ
親から独立する為の手段として始めたせいかグループの人気投票では20位前後をうろうろしている現役アイドル斉藤いと。そんな彼女に母親の訃報が届く。母赤井霧子はかつて一世を風靡したポルノ女優。追悼ドキュメンタリー映画の企画が自分の父親かもしれない監督から上がり、いとは案内役として指名される。撮影が進む中で女優としての母、アイドルとしての自分を見つめ直していく。母娘の葛藤部分より女優とアイドルの対比、光輝く時期を容赦なく搾取され(主に男に)幻想を背負わされる理不尽さ、それでも立ち続けるステージの魔力等芸能世界を垣間見る部分が興味深かった。いとの変化が終始淡々としている中でじわりと熱が発生する形なのが今時かな。劇的じゃなくても気付きはあるのだ。
-
Posted by ブクログ
スカイツリーが見える、東京の下町。
古くからのお店と新しいお店が混じり合う、明日町こんぺいとう商店街の、七軒のお店の物語を7人の作家が描くアンソロジー。
既読の作家さんは、大島真寿美さん、彩瀬まるさん、千早茜さん、中島京子さん。
それぞれの持ち味が出ていて、どれも面白かった。
大山淳子さんの『あずかりやさん』が、盲目の店主が一日百円で大切なものをあずかるというお店を舞台にしていて、にぎやかな商店街の中、しんとしずかな店という感じが良かった。
アンソロジーを手に取ると、こうして新しく好みに合いそうな作家さんが見つかるのが楽しみ。
こんぺいとう商店街シリーズとして続刊もあるらしいので、続きものんびり読みたい。
また違う作家さん、違うお店が登場するのか、それともまた同じお店も登場するのかな?
『カフェ スルス』がどんなお店になっていくのか、続きが読みたい。
表示されていない作品があります
セーフサーチが「中・強」になっているため、一部の作品が表示されていません。お探しの作品がない場合は、セーフサーチをOFFに変更してください。