とても大好きな本の一冊。
心の機微が丁寧に描かれていて、現実味のない人物設定ではあるが、妙なリアリティ、説得力がある。
ただ、読むことで心に寄り添ってくれる、安らぎを得られるような本ではなくて、心が抉られるような焦燥感が残る。
それは、アイデンティティとしての「僕」を確立しようとする少女に同情
...続きを読む以上の情を抱いてしまうからなのか、それともこの主人公以上に自分がアイデンティティを持つことに対して現実的になっていないから焦りを感じされられるのか、もしくはその両方かもしれない。
ただ、外の世界を上手に生きていくのに必要な心構えというものが永遠にできそうにない、いまの自分の焦燥感がありふれたものに感じられた。
この本の言葉で「他人に誇れる年齢は3歳と17歳しかない」とあったが、やはりその歳を過ぎてしまったら自分の年齢に似つかわしい精神のあり方というものを、人は誰しも永遠に求めていかなくてはならないのだと思う。