松村栄子の作品一覧
「松村栄子」の「明日町こんぺいとう商店街」「雨にもまけず粗茶一服」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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小説・文芸
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Posted by ブクログ
とても大好きな本の一冊。
心の機微が丁寧に描かれていて、現実味のない人物設定ではあるが、妙なリアリティ、説得力がある。
ただ、読むことで心に寄り添ってくれる、安らぎを得られるような本ではなくて、心が抉られるような焦燥感が残る。
それは、アイデンティティとしての「僕」を確立しようとする少女に同情以上の情を抱いてしまうからなのか、それともこの主人公以上に自分がアイデンティティを持つことに対して現実的になっていないから焦りを感じされられるのか、もしくはその両方かもしれない。
ただ、外の世界を上手に生きていくのに必要な心構えというものが永遠にできそうにない、いまの自分の焦燥感がありふれたものに感じられた。
この本の言葉で「他人に誇れる年齢は3歳と17歳しかない」とあったが、やはりその歳を過ぎてしまったら自分の年齢に似つかわしい精神のあり方というものを、人は誰しも永遠に求めていかなくてはならないのだと思う。
Posted by ブクログ
復刊記念。
文庫版だと、単行本と異なり、大分レイアウトが詰まつてゐて、またいくらか最低限ではあれど、筆者本人の手直しが加へられてゐるので、初めて読んだ時のような透明感とはまた違つてみえる。
けれど、ひとりの人間が生きること死ぬこと、存在するといふことを真剣に考へ、表現したといふ事実には変りない。かうして何度も読み直して、再び<僕>に出会ひ、<わたし>に出会ふ。読み返すたびに、また出会へる。読書の喜びはここにある。
自分とは何か。存在するとはどういふことか。誰もが一度は必ず考へること。年を重ねれば重ねるほど、その問ひは日々の生活と呼ばれるものの中で流され、蓋をされ、考へられなくなつてしまふ。ひとは何かにならないと生活できないから。17歳とはそんな最後の年齢である。
しかし、時間とは不思議なもので、17歳を過ぎても、存在を考へ続けることはできてしまふ。それが、筆者の生まれついてしまつた性質なのだ。何かに染まつてしまふことはあつても、生地そのものが変容することはない。生地は生地だ。人間は世間で生きる存在であると同時に、世間から離れたところで考へることのできてしまふ存在なのだ。この矛盾こそ、良くも悪くも人間の姿であり、同時に可能性足り得る。ずつと同じではゐられない。けれども、歩いてきたのは紛れもない変らないこの自分。
何かに染まらない人間などゐない。けれど、何かに染まり続けられる人間も同じやうにゐない。ならば仕方なし、笑つて泳ぎきつてみせやうではないか。この後、粗茶シリーズのところまで筆者は歩いてきたのだ。時間のモデルを生きてみせることこそ、生きたおとなの役目だと思ふ。