藤原辰史のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
こんなに給食について考えたのは、給食をいただいていた小学校以来どころか35年の人生初だと思う。
私の中の給食の思い出に強烈に残っているのは小学2年時、イワシか何かのマリネがどうしても食べられなくてベランダに机ごと出されて食べ終わるまで放課後ずっと残されていた…という苦い記憶。
そんなような感じで、少なからず各々の給食の思い出を呼び覚まさせる新書。
が、本書の意義や趣意はもっと広範で、戦時下の強兵育成というところから始まりアメリカによる小麦・ミルク市場としての給食、中曽根首相時代の新自由主義方針と給食の変容、と新たに知った事・考えさせられた事が沢山。まさかソフト麺や先割れスプーンにこんなに -
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購入済み
素晴らしい新書
給食を軸に、日本の近代史を辿ることで、教育はもちろんのこと貧困問題や食糧政策など、日本社会の実相を明らかにする。そもそもの着眼点とその意図を明確に論じられている著者の力量に敬意を感じます。学べたことはたくさんありますが、子どもの発達と食との密接な関連を知ることができました。私も使っていた先割れスプーンが使われた経過なども分かります。
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Posted by ブクログ
著者は農業の歴史の研究者である。そして、本書は農業に革命を起こしたトラクターの歴史について世界史的な視点から書かれた本である。通常、経済史の世界では内燃機関を搭載した輸送機械としての自動車の発明とその大々的な普及については特筆され、輸送革命、交通革命として論じられることが多いが、トラクターは輸送でも交通でもなく、人類史上画期的な農業生産性の向上を伴う「農業革命」の主役であった。またそれは大量の化学肥料投入と対になって進行した(牛馬の糞尿が肥料として使われなくなった)。
資本主義、社会主義などの社会体制を越えてトラクターが及ぼした変革の力はもっともっと考えられるべきテーマであろう。本書はその導 -
Posted by ブクログ
学校給食は子供達を飢餓から救うことから始まった。
今でも「学校給食が唯一栄養バランスの取れた食事」である子は存在する。給食費の未納を給食の停止につなげて、子供に大きなしわ寄せが行くことはあってはならない。
センター方式では給食の品質が劣化する。自校方式では人件費がかかるが、食べる人と作る人、互いのの顔が見える。それが調理員のやりがいにつながる。子供達も残しては申し訳ないという気持ちになる。
中学校の給食提供率が低いこと。
給食のもたらす意義は大きい。給食は母親の怠慢ではない。弁当では格差が浮き彫りになり子供同士が気まずい思いをする。家庭だけに食育を押し付けることは限界がある。みんなで同じ -
Posted by ブクログ
トラクターの開発・普及や、世界各地でのトラクターの導入方法などを示しつつ、農業の変化や戦争への転用など、その功罪を展望する一冊。タイトルで技術史の本かと思わせつつも、トラクターを通して農業を見る農業史の本でもあり、文化史の本でもあった。面白い。
日本のトラクター史についても、小岩井牧場や斜里農場で初期に導入していたこと、戦前日本でトラクターが意外と開発されていたこと(普及はしてなかったけど)、岡山や島根がトラクター開発の先進地だったこと、などなど知らないことも多く、読んでて楽しい。
それと、機械化でなく労働集約化の方向に進んだ近世日本の農業を考える上で、機械化による大規模農業の事例は逆にい -
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Posted by ブクログ
治外法権という言葉がある位、「自治」の線引きはデリケートな問題だ。コスモポリタニズム(地球市民主義)のような大きな枠組みで自治を行う方が、世界平和になって良いのではとも思ったが、結局は、自治単位が大きくなってもそれを不満とした紛争は無くならない。だからといって、自治単位が小さくなればなるほど、対立を招く可能性が増えるし、効率性も下がる。本件を考えるには、当たり前のことだが「自治単位の適切な設定」と「適切な運営」が重要である。
資本主義には資本が資本を呼ぶように富を集中させる機能があり、それをもっての強者の理論がまかり通るようになり、弱者における「自治」を蔑ろにする部分がある。本書は、万人がコ -