藤原辰史のレビュー一覧
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みんなの共有財、コモンについての話の前に、今の現状は新自由主義によって生まれた資本主義はどう出来上がってきたか、白井聡さんの説明から始まります。
60s-70s学生運動から始まったとされ、その中の日大紛争がまさか最近の日大理事長田中氏につながるとはびっくりですね。それに、反共産主義の統一教会、東大駒場寮や早稲田学生会館を取り壊した経緯、段々と学生運動は衰退しやっぱり綺麗な大学が魅力的になり、そして今では学食プリペで家族にも安心など、学生を孤立化させ、安心安全の無菌室へと誘導することで国の指示通りが一番安心だと信じ込ませた現在。なるほど、本当の自由がなくなっているのに、これだと気づかれにくいです -
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トラクターという存在が歴史的にどういう立ち位置だったのか分かる。
「〜の歴史」という本が好きですが、この本もどストライクでした。というか、参考文献がめちゃくちゃ多いです。これほどの量があるのに、新書として読めるという点が筆者の凄まじい努力が伝わります。
トラクターが世界大戦の際に戦車に派生し、世界恐慌の一要因になり、またソ連の集団農業を進めることになる。
個人的に興味深かったことは、戦時中の人々のトラクターの見方である。
男性陣が戦場に駆り出され、農業人口が減ってしまった時に、トラクターが農作業を効率化したこと、また、トラクターという機械に慣れておくことが、戦場での応用に効くと国が考えていた -
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現在2023年4月末。先日、まもなく新型コロナが5類になることが正式決定されたとニュースで流れた。
この本に掲載されているインタビューや手記は2020年。コロナ禍がいよいよ始まり、おそらく世界中の誰もが、今まで非日常と思ってきたことを日常的なものとしなくてはならないという不安に覆われはじめてきた、そんな時期の発言だ。そのような意味では、更に数年後、コロナ禍を振り返るための格好の史料となりうると思った。
この本の中で多くの識者たちが言及していたと思うが、人間にとって一番厄介なのは、人間の心の中に生じる差別、偏見、批判なのだ。どのような状況下にあっても生じるこの心の動きに、私たちはどのように打ち勝 -
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ネタバレ今から3年前2019年、当時の首相による日本学術会議の会員任命拒否問題は、政府による自由・学術・教育に対する介入であると大変な危機感をつのらせることになった出来事でしたが、自分の周りでこの件について同じようなことを考えていたり意見を交換したりということがあったのは、小学校教員である友人ただ一人との間でした。
そこにあるものの不穏さを感じ取った人が自分の周りにはあまりにも少なかった、と思います。
それから現在までを振り返ってみるとたった3年の間に自由というものがとても堅苦しく緊張の伴うものになってしまっており今なお進行形であると感じます。
気づいたら周りから固められてて自分は奇特な意見を述べる -
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一部ネットで嫌われてそうな論客たちからのメッセージ集。みなさん、日本から少しずつ自由が奪われていると危惧している。
ある一面の行動・発言が切り取られて批判されることが多い方々だが、その考えに直に触れると、国の在り方や自由について真剣に考えているのが分かる。
例えば表現の不自由展に携わった津田大介氏。近年、アートの世界では政権の意向に沿った展示しかできなくなってきたと言う。意向に反せば、補助金が下りないなど不自由を強いられるそうだ。
詳しく知らないが、おそらく、この展示は慰安婦像などを展示するのが目的ではなく、賛否両論のものを公の場で示すこと自体が目的だったのではないか。こうした国の動きに対 -
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テーア、チャヤーノフ、横井時敬、橋本傳左衛門、クルチモウスキー、杉野忠夫、小野武夫、川島武宜、吉岡金市、本書で取り上げられた主な人物である。かろうじて知っているのは、著作を読んだこともある川島武宜一人である。
本書冒頭、近未来の「農」が、必須栄養素の簡易摂取化、植物工場による栽培といった工学技術により根本的に変貌する可能性を指摘しつつ、著者は、“農学栄えて農業亡ぶ"を原理的に考察しようとする。農学とは、農業発展のために進展すればするほど農業を滅却させていくという逆説的な宿命を帯びているのではないか。
本書では、次の問いが示される。
1 「近代化の前進」と「農の原理の探究」 -
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トラクターなしに現代農業を語れはしないだろうに、それを主題にした本を見つけるのは難しい。
農業革命というと肥料や品種改良ばかりが注目され、失敗というと政策や気候についてのみ語られるが、
農機具の進化が如何な役割を果たしたのかが語られないのは何故だろうか。
本書はその調査対象を各国の農業史や歴史書、企業広告等は当然として、ポーランドの歴史小説からベトナムの短編小説、戦時中のソ連映画、19世紀のドイツの風刺雑誌、1937年公開のナチスと日本の合作映画など、トラクターが作った轍をすべて辿りつくすかのような徹底ぶりを見せる。
この本を抜きにしてトラクターを語ることは出来ないだろう。
19世紀末にア