藤原辰史のレビュー一覧
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テーア、チャヤーノフ、横井時敬、橋本傳左衛門、クルチモウスキー、杉野忠夫、小野武夫、川島武宜、吉岡金市、本書で取り上げられた主な人物である。かろうじて知っているのは、著作を読んだこともある川島武宜一人である。
本書冒頭、近未来の「農」が、必須栄養素の簡易摂取化、植物工場による栽培といった工学技術により根本的に変貌する可能性を指摘しつつ、著者は、“農学栄えて農業亡ぶ"を原理的に考察しようとする。農学とは、農業発展のために進展すればするほど農業を滅却させていくという逆説的な宿命を帯びているのではないか。
本書では、次の問いが示される。
1 「近代化の前進」と「農の原理の探究」 -
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●→引用
●第三に、給食は食品関連企業の市場であること。1988年の段階で「給食は、人件費と食費をあわせて年間1兆400億円のお金の動く大事業」と述べている。ここには、アメリカを代表とする農業大国や、多くの食品産業、食品卸業、農家の利益が直接絡んでくる。調理器具も、食器も、冷凍食品も、小麦も、牛乳も、公的な給食は大企業に、場合によっては地域の小さな八百屋や魚屋や肉屋に支えられている。
●つまり、占領を円滑に進めるために、具体的には、日本で病気が蔓延して占領軍やスタッフの健康が脅かされず、占領軍の統治を安定させるために、日本の子どもたちへの給食計画を断行すべし、という意味である。すでに述べたよ -
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トラクターなしに現代農業を語れはしないだろうに、それを主題にした本を見つけるのは難しい。
農業革命というと肥料や品種改良ばかりが注目され、失敗というと政策や気候についてのみ語られるが、
農機具の進化が如何な役割を果たしたのかが語られないのは何故だろうか。
本書はその調査対象を各国の農業史や歴史書、企業広告等は当然として、ポーランドの歴史小説からベトナムの短編小説、戦時中のソ連映画、19世紀のドイツの風刺雑誌、1937年公開のナチスと日本の合作映画など、トラクターが作った轍をすべて辿りつくすかのような徹底ぶりを見せる。
この本を抜きにしてトラクターを語ることは出来ないだろう。
19世紀末にア -
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「食べる」をテーマとした、ある大学の先生と、中高生の議論をまとめたもの。
「食べる」とはどこからどこまでのことか、たとえば、食べ物を口に入れた瞬間や噛んでいる間、は食べる行為としてOKだとして、飲み込んで食道を通過している間や、胃で消化している間はどうなんだろう、さらにその先の小腸や大腸を通過している間は、などと考えると、意外に、食べるという言葉の表す意味の曖昧さ、というか広さを実感できます。
また「食べる」には、単に「食べる」だけでなく、誰が作ったものを食べるのか、誰と食べるのか、どういうシチュエーションで食べるのか、といったいろんな要素が絡んでいます。
そういった、「食べる」に関 -
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「トラクター」を通して、世界の農業史を振り返る一冊。
農家にとって、トラクターは「一度頼るとそれから離れられない農機具」。それを「政治的に農業と農民を管理する手段(p.84)」として使ったスターリン時代のソ連など、興味深い事例が多く紹介されている一冊。
歴史資料として「トラクターが出てくる小説」を多く取り上げているのも特徴。なかでも秀逸なのが、戦前・戦後のウクライナの政治・農業史を振り返る資料として紹介される「ウクライナ語版トラクター小史(=邦訳『おっぱいとトラクター』)」(p.114-)。舞台となるウクライナでもトラクターを通して農民を管理・抑圧する動きはあったことを示唆しつつ、一方でト -
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学校給食というとどんな思い出があるだろう。
学校で一番楽しい時間だった人もいれば、嫌いなものを食べなくてはならなくて苦痛だった人もいるだろう。人気のおかずが余るとお代わりに皆が殺到したり、牛乳の早飲みをする猛者がいたり。
それは授業とはまた違う、けれどもやはり学校という環境でなくては経験しえない時間であったはずだ。
「学校で」「皆で」「同じものを」食べる。
本書はそのことの意味を、その歴史を通じて見直していく1冊である。
給食成立の背景には、貧困や災害があった。
戦後の困窮期には、アジアへ向けたアメリカからの支援物資の利用があり、その影響は長く残った。
学校給食は必要なのかとの議論もあった -
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タイトルのとおり、トラクターの誕生から、世界各地での発展の仕方などを通じて、現在の様相まで、一本の線で歴史的にとらえられるように書かれています。さすがに1冊で書ききれる容量ではないので、全部という形ではありませんが、トラクターという普段触れることのなかった世界を、歴史的に知ることができて面白く読ませていただきました。
農業をするうえで、土を耕すという作業が大きな比重を占めているということ、それを克服するためのトラクターという機械と改良という人類の戦い、それに対する旧来の人々との闘い。そして最後に、トラクターは人類の夢に向かって着実にそれを実現してきましたが、それで良かったのかという投げかけもさ