あらすじ
【『人新世の「資本論」』、次なる実践へ! 斎藤幸平、渾身のプロジェクト】
戦争、インフレ、気候危機。資本主義がもたらした環境危機や貧困格差で、「人新世」の複合危機が始まった。
国々も人々も生存をかけて過剰に競争をし、そのせいでさらに分断が拡がっている。
崖っぷちの資本主義と民主主義。
この危機を乗り越えるには、破壊された「コモン」(共有財・公共財)を再生し、その管理に市民が参画していくなかで、「自治」の力を育てていくしかない。
『人新世の「資本論」』の斎藤幸平をはじめ、時代を背負う気鋭の論客や実務家が集結。
危機のさなかに、未来を拓く実践の書。
【目次】
はじめに――今、なぜ〈コモン〉の「自治」なのか? 斎藤幸平
第一章 大学における「自治」の危機 白井 聡
第二章 資本主義で「自治」は可能か?――店がともに生きる拠点になる 松村圭一郎
第三章 〈コモン〉と〈ケア〉のミュニシパリズムへ 岸本聡子
第四章 武器としての市民科学を 木村あや
第五章 精神医療とその周辺から「自治」を考える 松本卓也
第六章 食と農から始まる「自治」――権藤成卿自治論の批判の先に 藤原辰史
第七章 「自治」の力を耕す、〈コモン〉の現場 斎藤幸平
おわりに――どろくさく、面倒で、ややこしい「自治」のために 松本卓也
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今の社会を変えたいと思うなら選挙で政権を変えることに一生懸命になるのではなく、自分たちの手の届く範囲で当事者意識をもって運動することが重要だと感じた。そのためにコモンを見直し、それを自治していくことが大切だとわかった。身近なところから社会を変えていけると希望がもてた。
Posted by ブクログ
人新世の「資本論」の斎藤幸平、「永続敗戦論」の白井聡、岸本聡子杉並区長ら
そうそうたるメンバーが自治を語る、コモンを語る、自律を語る。
正直難易度が高く、頭に入らないものもあった。
一番理解しやすかったのは藤原辰史さんの農業の自治。
古来人間は集って狩猟、農業を営んでいた。そこに自治があった。
種の保管、水の確保、料理。
最小単位の集団で、自分たちで取り決めをし、少しでも全体の収穫を大きくしようとした。
ここに国が絡むと、年貢を納めることになるが、これを金銭で納めるようにすれば
商売の考えが生まれ、余剰金で新しいものが買える。そこにも自治ができる。
などなど、人類の歴史に根付いた自治の話は分かりやすかった。
岸本杉並区長も、区長が一人で考えるのでなく、区民の声が区政を動かす、
その流れをどう作るか。実験を進めてほしい。
・・と考えていくと、今の国政が自治とは程遠いことがよくわかる。
国民の声を聴かず、省庁、大企業の思惑だけで多額の税金が動き、
ものの見事にムダ金になる。
前明石市長泉氏の成功の真逆をしている国。
日本に相対的貧困者が15%もいる、というのは明らかにおかしい。
やれ五輪だ外苑再開発だ大阪万博だと無意味な金、一部に利権が流れる金の使い方
をする前に、能登半島支援もあれば、貧困層への対応があるだろう。
少子化を問題視しながら、若者や子を持つ家庭に手を差し伸べない。
大学に稼げと言い、奨学金という名の借金を学生に負わせる。
あ、自治と話がずれてきた。
いいたいのは、世襲議員と偏差値エリート官僚には、市民の声を聴く気がない、
ということ。
そんな奴らに国を任せてはいけない。
というか、国の単位がでかすぎるのだ。
今こそ道州制だ。
まさに地方自治体だ。
・・・自治体もろくな職員がいない、という説もあるが、市民が見ている。
距離が近い。空気が伝わる。
国には外交と防衛だけやってもらって、それ以外の金の使い方は各道州に任せれば
よい。
逆にそうしないと東京一極集中がますます進み、地方が死ぬ。
地方が死ぬ、ということは文化が死ぬ、ということだ。
美味しいものも食べられなくなる。それでいいのか。
・・・この本の趣旨、斎藤氏の趣旨から反れたかもしれないが、
私の問題意識だ。
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人新世の資本論で説かれていたことを、さらに具体的にどうやって実現していくか。それを斎藤幸平氏だけでなくさまざまなジャンルの人も語っている。
杉並区長の岸本聡子さんの章がとてもおもしろかった。
「共生」や「協力」「包括」「共有」といった、女性的価値で政治や選挙のやり方、組織のあり方をかえていくフェミナイゼーション、地域社会や草の根から発する市民の集合的な行動を大切にして「水平的で多様でフェミニン」なら関係を気づくことを志向することの大切さ(97ページ)とケアの視点、特にフェミナイゼーションが今年の私のキーワードになりそう。
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資本主義による大量生産、大量消費の時代は終わりつつある。この危機を乗り越えるためのキーワードは「コモン」である。私たちも生き方を見直さなくてはならない。
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「はじめに」から続く7章と「おわりに」まで、著者それぞれの立場や専門ならではの視点から、「コモンとは?」「自治とは?」を終始問われ考えさせられるのだが、事例が分かり易いし文章も読みやすく、押し付けがましくもないのでずんずん読める。これまでモヤモヤしていたことにやっぱりおかしいものはおかしいと言おうと思えたり、具体的なヒントも満載の一冊。
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岸本さんが実践されている「ミュニシパリズム」ボトムアップ型の地域主権主義がとても参考になった。
排他主義的極右でもなく、左派的エリート主義でもない、トップダウン型の国家社会主義でもなく、全体主義的共産主義でもない。
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お金儲けや、そのお金を使って物や時間を消費することに全精力を使っていて、自分たちで自主的に行動して社会を変えていこうという気もない。全くの怠慢だ。
上から何かをしてもらうことばかり考えて、自分たちは何もしようとしない。怠慢だ。
資本主義に毒されてしまっている。このままではいけないと考えている人もいるにはいる。だってあまりにもいろいろなことがめちゃくちゃだから。行動に移せている人もいるが、仕事にクタクタになって、残りの時間スマホ見てる人が圧倒的多数だ。
怠慢な人の1人である私だが、できることを見つけて少しずつ行動しよう。
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治外法権という言葉がある位、「自治」の線引きはデリケートな問題だ。コスモポリタニズム(地球市民主義)のような大きな枠組みで自治を行う方が、世界平和になって良いのではとも思ったが、結局は、自治単位が大きくなってもそれを不満とした紛争は無くならない。だからといって、自治単位が小さくなればなるほど、対立を招く可能性が増えるし、効率性も下がる。本件を考えるには、当たり前のことだが「自治単位の適切な設定」と「適切な運営」が重要である。
資本主義には資本が資本を呼ぶように富を集中させる機能があり、それをもっての強者の理論がまかり通るようになり、弱者における「自治」を蔑ろにする部分がある。本書は、万人がコモンの再生に関与していく民主的なプロジェクトの検討を通じ、コモンが可能にする平等をもとにして、市民が積極的に参加しながら、社会を共につくっていけば良いと提案する。何だかユートピア的な発想だが、徐々にそうしたプロジェクトが動き始め、資本主義の暴走から民主主義を守るための道を示しているという。
大学の自治という事を考えれば、その結果は全共闘のような大学紛争であったし、違う自治との利害対立に対して、持たざるものが可能な範囲の力で必至に抵抗する図式しか思い浮かばない。こうした旧来の自治ではなく、「コモンの再生に関与していく民主的な自治」とは何なのか。市民参加による公共財の再生という事だけではなく、本書で面白いと思ったのは、「居場所としての店」。お店は資本主義における商取引の最前線という気もしたが、お店での交流が生み出す人間関係は居場所を齎しているという事だ。これは商店街の社会交流とネット販売を対比してみると分かりやすい。どちらが「より人間的か」という尺度で考えれば、人間が疎外されている構図が見える。
また、ハーバマスの言う「順応の気構え」にも通じるが、科学の進歩により市民が技術的に理解不可能な専門知があるが、これを如何に取り戻すかという議論。この辺はAIが役に立っていくのかもしれない。放射能もワクチンも、ほとんどの市民はメディアを通じての説明に感覚的にしか意見を持つことができない状態だが、それを打破していく事も重要だ。同様の事は、専門知全般に言えることで、健康以外にも政治や経済、歴史認識にしても閉じた範囲で知識が不足すれば、我々は他者に支配されるしかないのだ。
民主化と民間企業への払下げは異なる。民間企業が財に影響を持つことは危うい。水道の民営化はいかがなものか。それを踏まえた上で、とりわけ、専門知の民主化が重要で、その民主化により、適切な投票行動や運動ができるのが望ましいのではなかろうか。
Posted by ブクログ
地元に根強く残る金物屋さんや喫茶店の見方が180℃変わった。自治の意義・当事者意識をもって身近な所からでも(だからこそ)実践していくことの大切さを学んだ。
Posted by ブクログ
とても素敵な本。「自治」の実際が語られていて,なんか,やる気が出るような来ます。著者によっては,少し難解な部分もあるのですが…。
最後の斎藤幸平さんの「「自治」の力を耕す〈コモン〉の現場」より,今の教育現場にも通じる話を引用します。
…労働問題に取り組むNPO法人POSSEの代表である今野晴貴さんは,次のように指摘します。
ブラック企業問題が解決しない原因は,労働法が存在しないからではない。むちゃくちゃな働かせ方を取りしまう法律自体は日本にもある。あるけれども,労働組合が弱体化した日本では,企業のほうが圧倒的に強く,労働者には力がない。そのせいで,法律の運用が形骸化し,「違法労働」がまかり通ってしまうのだ,と。(本書245ぺ)
斎藤氏は,このように引用した上で,マルクスの主張を取り上げて次のように述べています。
…私が専門としているカール・マルクスは,トップダウン型の法制度改革を「法学的幻想」だと批判し,「下から」の変革を重視しました。具体的には,マルクスは,「自治」を育むボトムアップ型の組織を「アソシエーション」と呼び,このアソシエーションを広げていくことが,社会を変えていくための基礎だと考えたのです。(本書246ペ)
今ある労働組合をどうするのかも大切なことですが,今一度,現場の教員にとって大切にしたいものはなんなのかを話し合い,それを実現するために,どんな風にボトムアップしていくのか,どのように仕掛けていくのか,下からのしたたかな自治を作り出していくことが必要ですね。
言うは易く行うは難し…ですが,諦めないで,ときには,子どもの人権に関わることが明らかならば,現場で闘うしかないでしょう。
その積み重ねが,職場の過ごしやすさにつながると思います。
既存の労働組合の「とにかく数だけを守る闘い」からの脱却が必要なのでは。
Posted by ブクログ
「当事者意識を持つこと」の重要性を実感しました。
「自治」というテーマのもと、様々な分野における「自治」のあり方について論じられていました。
特に、現代社会における「上から」の改革の限界を指摘し、真の社会変革は、一人ひとりが「当事者」となることから始まることを強調していました。
この著書における「市民科学」の例は、この「当事者意識」の重要性を感じられます。専門家だけに任せるのではなく、市民自身が社会問題の解決に向けて積極的に行動を起こす「市民科学」の動きは、従来の「上からの」改革ではカバーしきれない問題に取り組む、新しい可能性を感じられました。
p125~武器としての市民科学を (木村あや)
このような当事者意識を持つことの重要性を、様々な角度から浮き彫りにしています。 「上から」の改革に依存するのではなく、一人ひとりが「当事者」として社会に関わっていくことの重要性を、再認識することができると思います。
Posted by ブクログ
コモンを実際、社会においてどうやったら実行できるの?っていうことに回答するような本。それぞれの著者の具体的な取り組みや考え方が紹介され、大いに参考になる。
民主集中制の危うさについて、斎藤さんから言及があるが、やはりボトムアップ的・水平的な関係性をいかに維持していくのかが大事なんだろうなと。
Posted by ブクログ
自治という言葉は、本来素敵な言葉だったはずだが、なんだか最近は少し揶揄されているような気もする。自治会というのは煙たい存在だし、自治厨、なんて言葉もある。
だが自治は大切な行為だし、言葉だ。
コモンという言葉はまちづくりでよく聞かれるようになってきたが、広場っぽいスペースをとりあえず作って、はいコモンでございます、というものが多い。
そんな状況でモヤモヤしている中、本書に出会った。
全体的に実ある話であるが、「市場原理と贈与交換のブリコラージュ」という言葉に出会えたのがとても良かった。
(本書の初出ではないが)
Posted by ブクログ
みんなの共有財、コモンについての話の前に、今の現状は新自由主義によって生まれた資本主義はどう出来上がってきたか、白井聡さんの説明から始まります。
60s-70s学生運動から始まったとされ、その中の日大紛争がまさか最近の日大理事長田中氏につながるとはびっくりですね。それに、反共産主義の統一教会、東大駒場寮や早稲田学生会館を取り壊した経緯、段々と学生運動は衰退しやっぱり綺麗な大学が魅力的になり、そして今では学食プリペで家族にも安心など、学生を孤立化させ、安心安全の無菌室へと誘導することで国の指示通りが一番安心だと信じ込ませた現在。なるほど、本当の自由がなくなっているのに、これだと気づかれにくいですね。こうして自治は衰退してしまったという。
松村圭一郎さんはわたしたちが思い込んでいる自治と自由とは「税という対価を払って後は専門家にお任せする」という意味になってしまっているようです。
その新自由主義マーケットをどう変えていくかが課題で、そこに古着屋とライブハウスの例え話しは素敵なエピソードでした。わたしも個人経営のショップや居酒屋、カフェなどに行って無駄話したりして楽しみながら貢献したいです。
コモンと同時にケアも含めて考える杉並区長の岸本聡子さんはアムステルダム、チリ、バルセロナなど海外の事例をもとにフェミナイゼーションで自治を変えたいと熱弁。
コラムでは斎藤幸平さんの神宮外苑再開発問題で、元々住んでいた方々のお話しの中で考えることが大前提だと納得できるお話しでした。
藤原辰史さんは、権藤成卿という思想家の失敗から自治を考え、人間にとって最も重要な「食」こそ、未来の自治ではないかと考えます。
社会を良くするために、反対運動の座り込みやデモで反抗しても失敗の歴史を見ればよくわかるという。
そこで最後に斎藤幸平さんが今までの国家から考えるトップダウン型ではなく、そこで暮らす身近な地域から課題を上げていく、ボトムアップ型で解決できないかをまとめていました。
リーダーは一人ではなく何人ものリーダーを交えて、アントレプレナーの能力を養っていくそんなイメージでした。
国家は大企業がたくさん税金を納めている以上資本主義的な政策ばかりで富裕層のための政策はこれからも続くと思います。そんな世の中ではいつまでも一般庶民は変わらないままですね。本当に良くするための具体的な対策が描かれた大事な内容でした。人任せにせず自分で考え判断して協力していきたいと思います。
Posted by ブクログ
「人新世の資本論」を読む前から資本主義や新自由主義な世の中へ疑問を持っていた中で人新世〜に続いてこの本を読んだ。
さまざまな立場の方がそれぞれの領域で取り組まれている、自治が興味深かった。中でも自分の仕事に深く関わる第一章や服も好きなので第二章もおもしろかった。
自分は子どもに関わる仕事をしているが、その子ども達全員が生きやすい社会を作ることも大事な仕事だと感じた。「斜め」の自治を微力ながら、できる範囲で実践していきたい。
Posted by ブクログ
不登校の男の子と古着屋の店長の話から、「小さくてバラバラな店が町に無数にあるからこそ、システムからこぼれおちる差異にあふれた人たちの問題に関与しうる」という部分がとてもグッときた。
Posted by ブクログ
2024.04.20 読み応えがあった。コモンの自治が難しいという現実と、その一方で高い可能性があることを学ぶことができた。自分も実践しなければならない。
いまいち。
精神病に関する記述については、実につまらん、と言うしか無い。まだ、読んでる途中だが。つまらなくて読み続ける気が失せる。
著者は精神病棟の実際を知らないんじゃないのかな。私は中にいたけど、患者として。その経験から言うとこの人は実際を知らない。